俺はブルーアーカイブの世界にTS転生した。
端的に言えばそれだけで終わりだ。
でも少しだけ自分語りをさせて欲しい。
俺はオタクだ。
さらに詳しく言うなら基本的になんでも食えるタイプの雑食系のオタクだ。
だからTS転生ものも見たことあるし、なんなら比較的好みと言える部類だ。
しかし、いざ自分がそうなると意外と冷めるもので、自分が赤子になっていても、息子が消えていても、「おぉこれが噂の…」と思う程度だった。
だが、頭の上に光輪のようなものが浮かんでいるとなれば話は別。
好きなゲームの世界に転生できて興奮しないオタクなんていないのだ。
名前は如月シノ。
アルビノのような真っ白な髪の毛と真紅の瞳、そしてラチェットレンチの穴のような円形の上に名前の由来でもある、工具のしのをクロスしたようなヘイロー。
俺の姿は、育てばお姉様と呼ばれるに相応しい見た目をしていた。
正直な話、前世知識を駆使して俺TUEEEEからの美少女力を駆使し百合ハーレムでも作ってやろうと思っていた時もあった。
しかしそんな俺は今…ミレニアムで青春を謳歌していた。
しょうがないじゃないか、失ったはずの青春がキャピキャピしながら帰ってきたんだから。
もちろんミレニアムは他学園と比べて勉強が難しい。
しかしそれすらも青春なのだ。
まぁ、百合ハーレムを諦めた理由としては背も乳もあまり育たなかったことも関係するのだがそれは一旦置いておく。
さて、そろそろ本題に入ろう。
そんな青春を謳歌していた俺には一つの心変わりがあった。
それはネームド、モブに問わず、この世界の存在をキャラクターとしてではなく、一人の人としか見れなくなってしまったということだ。
すると一つ懸念点が生まれる。
それは、この世界線は俺がやっていたブルーアーカイブの世界線なのかという点。
ブルーアーカイブの世界は奇跡の綱渡りの果てに得られる物語。
しかし、ここは現実。
奇跡が起こるまでリセマラすることも出来ないし、物語みたいな伏線なんて存在しないし、確実なハッピーエンドが存在しているわけでもないそんな世界。
もし、ここが先生が現れない世界線だったら?
もし、ここがゴールへ向かうことが出来ない世界線だったら?
もし、もしここが…未来ある少女達が笑うことが出来なくなるような世界線だったら?
今この瞬間もバッドエンドへと向かっているかもしれないこの世界。
奇跡が見つかるまでに切り捨てられるかもしれないこの世界。
……大切な人達が生きているこの世界。
考えろ、奇跡が起こらない世界だった時に打開策を作る方法を。
考えろ、あの子達を、そしてこれからやってくる未来ある少女達を守れる方法を。
考えろ、奇跡が起こる世界だった時に未来を先生に預けられるようなポジションを。
考えろ、俺に出来ることを。
考えろ!考えろ!考えろ!
……ああ、あるじゃないか。
子供のままでいることができて、尚且つ大人に保護者を託せるような立場。
私、如月シノは
キヴォトスのお姉ちゃんになる
◇
「ねぇヒマリ、チーちゃん、私決めた」
「あら、今日は随分と固い物言いですね」
「…で、何を?」
「私…キヴォトスのお姉ちゃんになる」
「……は?」
「キヴォトスのお姉ちゃん…とは?」
「私、思うんだよね。みんな大変なのに、甘えられる場所がないんじゃないかって」
キヴォトスのお姉ちゃんと言う、一見意味不明な言葉に、なんだいつもの事か。と、言わんばかりの視線を向ける2人だったが、俺の真剣な声色を聞くと再び耳を傾けてくれる。
「私達の先輩は無理かもしれないけどさ、これから入ってくる私達の後輩とかには甘えられる場所を、自分を見せられる相手を作ってあげたいって思うんだ。いい頑張りはいい休息から。そう思わない?」
正直な話、これはただの自己満だ。
今守れないものは切り捨て、勝手に命の取捨選択をしようとしているくせに、先生みたいに権力も特別な力もない俺が、いざという時に手の届く範囲だけでも助けたいという反吐が出るような自己満。
でも、そんな自己満で少しでも誰かを救うことができるのなら…俺はクズにでも、悪にでもなってやる。
「はぁ…また突拍子もないことを…」
「ふふっ、ですがシノらしいじゃないですか」
「でもね、ちょーっと問題があるんだよね」
しかし、もしこの2人に同意を得られたとしても問題がある。
「問題…と言いますと?」
「見てもらった方が早いかな。はいチーちゃん!今から私がチーちゃんのお姉ちゃんです!セイカモン!O・NE・E・CHA・N!」
「え、嫌だけど」
一つ目の理由がこれ。
お姉ちゃんと呼ばれるほどの名声や、他人に慕われるくらいの能力が必要なこと。
「それに、シノなんてむしろ妹側でしょ」
そして二つ目の理由がこれ。
色々と育って無さすぎること。
「まぁこんな感じで、私の性能的にも物理的にも包容力が足りないんだよね」
「なるほど…」
「だからね、ヒマリとチーちゃんにお願いがあるの。3年生になるまでのあと2年、少しだけでもいいから私に協力して欲しいんだけど…ダメ、かな…?」
「……ふふっ、いいでしょう。この超天才清楚系病弱美少女ハッカーであるこの私がシノ、あなたに力を貸してあげましょう」
「…正気?」
「もちろんですよチーちゃん。彼女の一人の友人として、手伝ってあげたくなった…ただそれだけです。それになにより、面白そうじゃないですか」
「…むしろそっちが本音でしょ。…まぁ、一人の友人としてっていう点なら同じかな」
「!じゃあ…!」
「うん、協力してあげる」
「ッ〜!ありがとう2人とも!大好き!」
「そういうところが姉らしくないって言ってるの」
「ふふっ、まあまあチーちゃん。これがシノですから」
「…それもそっか。それとシノ、手伝いはしてあげる。その代わりしっかりとホワイトハッカーになってもらうから…覚悟、してね?」
「アッ、オテヤワラカニ…」
◇
「そろそろ着きますよ先輩」
「……先輩?」
「シノ先輩!!!」
「うわぁ!?なになに!?敵!?…って、ユウカ?」
「ユウカ?じゃありません!もう少しで着きますよ。まったく…先輩が来たいって言って着いて来たのに…」
「あはは、ごめんごめん。あっ、着いたね。それじゃ行こっか」
懐かしい夢、だったな…
キヴォトスのお姉ちゃんを目指し始めた日。
ヒマリが、チヒロが、ウタハがネルが…色んな人が俺のためにくれた時間。
「さっきまで寝てたくせに…まぁいいです。まずは連邦生徒会に一言文句を言ってからです」
「そうだね。まずは連邦生徒会に行ってからだ」
いつも想定は最悪の展開だったけど、よかった。
あの時間は無駄じゃなかったみたい。
◇
「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの…い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて…!」
「こーら、挨拶は大切なんだからちゃんとしなきゃダメだよユウカ。さて…初めまして先生!私はミレニアムサイエンススクールの如月シノ
キヴォトスのお姉ちゃんになる予定の者です!」
まずは第一関門突破。ってところかな
大事なもの:シノの手帳
︎︎︎︎︎︎✓ 連邦生徒会長の失踪
✓ 先生の登場