やぁやぁかわいい妹たち。
セミナーをクビになった結果、自由度は上がったけど権力が無くなったから実は新しい子を入学させようとする度にユウカに土下座しなきゃいけなくなっているお姉ちゃんですよ。
立場を無くすために意図的に受けたクビだったとはいえ、そこだけは少し不便ですね。
さて、そんな不便と引替えに自由を手にした俺は現在何をしているでしょう?
正解は……先生をス
…違うからね?
別に先生にホの字だからとかそんな邪な感じじゃなくて、盗聴器張ってたら先生がアビドスに行くって言うからいざって時に行動できるように監視してるだけだから。
コタマ製盗聴器を設置したのもちゃんとシャーレに正面から行った時だから犯罪じゃないよ、うん。
というかボタンに盗聴器を内蔵しなかっただけまともだと思って欲しい。
さすがに歩く超法規的機関である先生に直接はバレた時に言い訳が難しいし、最悪の場合学校間の問題の種になりかねないからね。
……俺は一体誰に言い訳してるんだろう。
まぁいい、とりあえずおさらいをしよう。
現段階で起きる可能性の選択肢は3つ。
1つ目、先生がこのまま野垂れタヒぬ。
2つ目、やばくなった段階で俺に助けを求める。
3つ目、砂狼シロコとの接触。
1つ目は俺が今ここにいるので無い。
2つ目は他校の生徒が知らない大人を連れてくるという最悪の第一印象になる可能性があるが、俺がアビドスに連れていくことになるだろう。
そして3つ目、正直これがストーリー通りだし、内部の人間が連れてくることもあって受け入れられやすいという点で大当たりだ。
だから…今そこで倒れかけてる先生を放置しているのもしょうがない事なんだ。
というかこんなとこでろくな準備もなしに遭難って…よく生きてるな…。
とりあえず…祈るか。
「頼むぅぅぅ…発見されてくれぇぇぇ…。というかそもそも先生はなんで事前調査も無しで行こうとするかなぁ!?」
そう、アビドスが砂漠化していて昔の地図がほとんど役に立たないことなんて、少し調べれば分かること。
そのため、これで先生がポンコツと言われても擁護することが出来ないレベルの痴態なのだ。
「まったく、そんなのだから何も無い所をさ迷った挙句、空腹やらでぶっ倒れることになるんだよ…まぁこれで少し待ってればシロコが来て助けてくれるだろ」
………あれ?シロコさん?
先生倒れてからなんやかんや10分くらい経ってるしそろそろ来てくれてもいいんですよ?
………あのぉ…シロコさん?さすがにこんな序盤でゲームオーバーは困るんですけど?
いや、いつでもゲームオーバーされたら困るけどね!?
「………ああもう!先生!大丈夫ですか!?」
「"うぅん…シノ…?どうしてここに…"」
「その話は後でしますから!とりあえず飲んでくださいこれ!」
ずっと外にいたせいでだいぶ生温いけど、未開封だし衛生面的には大丈夫なはず。
「"……ふぅ…ありがとう。助かったよ"」
「それならよかったです。それで、先生はなんでこんなところで遭難してたんですか?」
ここら辺はもちろん把握してるので聞いてる風に相槌しておく。
「なるほどなるほど…とりあえず先生は今度から目的地の現状についてちゃんと調べてから行動してください。アビドス近辺の砂漠化なんてちょっと調べれば分かることなんですから」
「"ごめん…"」
「まぁいいです。とりあえずアビドスに行くんですよね?私道わかるんで一緒に行きましょっか。動けます?……お腹が減って歩けない…と。私もエネルギーバーくらいしか…あっ、もう無いや…。とりあえずどうにかします」
うーん、盾があるせいでそのまま先生を背負うわけにもいかないし…。
盾に運搬モードとかつけて貰っとくべきだったな。
…あっそうだ、盾の上に先生を乗っけて俺がそれ担いでけばいいんだ。
シノピクミンは縁の下の力持ち(物理)だからね。
そう思いながら先生を担ごうとしていると、背後から透明感のある可愛らしい声が聞こえてきた。
「…あの…。…大丈夫?」
声のした方を見てみると、銀色の髪に同じ色のかわいらしいモフモフのケモ耳、そして水色のマフラーにアビドスの制服……アイエエエ!?シロコ=サン!?シロコ=サンナンデ!?
……もしかして俺……早とちった?
『私は何か選択を間違えてしまったようですね』って俺の脳内魔族さんも言ってるし!
「あの…?」
「ああごめんね、ちょっと考え事してて。先生、大丈夫そうですか?」
「"うん、なんとか"」
「そう、ならよかった。その制服…ミレニアムの人?」
「うん正解。そういう君は制服を見た感じにアビドスの子だよね?」
「ん、驚いた。制服見ただけでアビドスって分かるんだ」
「ふふ〜ん、未来の妹たちの所属校の校章くらい分からないとお姉ちゃんなんて言えないからね!」
「えっと…?」
「"ごめんね。気にしないでこういう子だから"」
「貶してますよね!?その言い方絶対貶してますよね!?」
まったく、失礼な人だ。
生徒の夢を笑う(冤罪)だなんて先生失格だよ。
オマエラワラウナ!
「…まぁいいです。それよりも先生、アビドスに用があったんですよね?」
「"あっ、そうだった"」
うっそだろこの人…。
「そうなんだ、じゃあ久しぶりのお客様だ。アビドスに行くなら私が案内してあげる。すぐそこだから」
「よかったですね先生。これで遭難することなくアビドスに辿り着けますよ。逸れたりしないで下さいねこの、えーっと…」
「シロコ。砂狼シロコ」
「シロコちゃんから。いいですね!あ、そういえば自己紹介してなかったよね?私は如月シノ。お姉ちゃんって呼んでくれてもいいよ?」
「ん、遠慮しとく」
「うーむ、また断られてしまった。キヴォトスの子たちは恥ずかしがり屋さんが多いみたいですね、先生」
「"あはは…そういうわけじゃないと思うな…"」
「むぅ…まぁいいです。それじゃあ先生の事よろしくね、シロコちゃん」
「ん、一緒に行かないの?」
「うーん、先生を丸投げするみたいになるのは申し訳ないけど、連邦生徒会関係者の先生ならまだしも他校生徒の私がいたら警戒させちゃうかもしれないからね」
というもっともらしい建前で逃げたい!
俺の早とちりで無駄に干渉しちゃったし、ここら辺で軌道修正したいんです!
いや、もちろん不都合なく干渉できるならそれにこしたことはないんだけどね?
「"私たちと一緒なら大丈夫なんじゃないかな?"」
「ん、私もそう思う」
うーむ、たしかに先生と一緒ならシャーレの関係者ってていで関われるし、シロコが一緒にいるから身内の連れてきた客としてもいれるのか。
……あれ?ベストなのでは?
アビドス編の段階で接触しておきたい人がいるし、ここで内側に入れて段階を常時把握できるのはかなりお得だ。
それにここまで言われて断るのは余程の理由がない限り違和感を持たれてしまうだろうし。
よし、そうと決まれば。
「しょうがないですね。先生が、このミレニアムが誇る超癒し系文武両道お姉ちゃんである、私の力がどーしても必要だとそこまで言うのなら!着いて行ってあげましょう!」
「"うん、シノがいてくれると頼もしいからね"」
うわぁ…。
みなさん見ました?これが先生という人なんですよ。
私にはあなたが必要なんだ発言をこんな恥ずかしげもなくするとか、本当にわーお案件だよこれ。
まぁこのクソボケ先生さんは素で言ってるんだろうけど、もし俺がただの生徒だった (ry
「先生、そういうところですよ」
「"なにが!?"」
「このクソボケさんはほっといて行こっかシロコちゃん。……あ、そういえば動けないんでしたねクソボケさん」
「"さっきから酷いね!?"」
「とりあえず私が先生のこと背負って行くから、シロコちゃんにはこの盾持ってもらってもいいかな?」
「ん、任せて」
「助かるよ〜、ありがとうシロコちゃん。それじゃあ背負いますけど、汗かいてるので匂い嗅いだりしないでくださいね?」
心は乙女じゃないとはいえ、さすがにずっと外でも張り込みしてて汗もかいてる状態でゼロ距離吸引されるのはちょっとあれだからね。
「"気にしないで、むしろいい匂いだし"」
やっぱり引き摺ってこうかなこの人…。
◇
「私のロードバイクと同じスピードで走れる人なんて初めて。しかも人を背負いながら。きっとシノには素質がある、今度一緒にキヴォトス縦断しよう」
「あはは…考えとくね」
「"シ、シノ…!もう、ちょっとゆっく、りお願い出来る!?揺、れが…!"」
引き摺られてないだけありがたいと思え。
「無理です、我慢してください。あんまり喋ると舌噛んじゃいますよ〜」
「ん、見えてきたよ。あそこがアビドス」
「おー、あれか〜。ん?……先生失礼、下ろしますね」
「"え?…わっ"」
「シロコちゃん盾ちょうだい。ん、ありがとね。じゃあ先行ってるね」
おかしい、どう見てもあれは襲撃されている最中だ。
………そうか、俺が関わったせいで若干のタイムロスがあったせいか。
また、俺のせいで…。
いや、後悔するにはまだ早い。
ここでまた諦めるんなら俺はなんのために力をつけたんだ?
もう同じ失敗はしない。
あのヘルメット団の子たちには悪いけど……
大事なもの:シノの手帳
✓ アビドス廃校対策委員会編スタート