ミラクルシナリオにミラクルをちょっとだけ絡めたお話 作:わさべ。
何気ない日常ほど、幸せなものはないと思うのです。
「んー……」
お昼時、数多のウマ娘がカフェスペースでお昼ご飯を食べに来ている。山のように積み上げられた料理が一瞬で消えていくのも、今となっては常識になってしまった。
そんな風景を横目に、わたしはお昼を決めかねていた。
構内で育てたにんじんがごろごろ入ってる、日替わり定食限定のにんじんトレセンカレー。
ウマ娘が多い学園で出す…?ってレベルのにんにくを盛った混沌二郎系ラーメン。
何故か非常にリピート率が高くて、わたしもどハマりしていた時期があるゴルシ印の焼きそば。
そんな感じで幅広くB級グルメが揃っている。
お好み焼きもあるけど、セミプロのわたしから言わせてもらうとお好み焼きは自分で焼いてなんぼだと思うのだ!!
有名なにんじんハンバーグは限定だったりするので、普段は食べれなかったりとか。
一部の超大食いウマ娘しか食べきれないと言われるビックバン定食……なんてものもある。
それはともかく。
(おろしヒレカツ定食……ナポリタンも捨て難い。)
メニューをざっと見て、2択まで絞る。
「…ナポリタン、サラダ付けて大盛りに!!」
「あいよ!!」
オーダーから5分と経たずに提供された料理をもって、空いている席にすわる。流石は天下のトレセン学園。改めて感心するスピードだ。
味変用の粉チーズとタバスコを添えて準備万端。後は美味しく頂くだけ。
手を合わせて、心の中でいただきますと呟くと。
「あの、隣座ってもいいですか…?」
「…んお?」
ケイエスミラクル。わたしと何かと縁があるウマ娘。…といっても、たまたま席が隣なだけだったり。名前にミラクルが入ってたり。
…そんな些細なことでも、ちょっとだけ親近感が湧いているわたし。
相席を断る理由もないので、少しスペースを空ける。
「いいよー、座って座って。」
「ありがとう。」
(…うーん、なんて儚げな笑顔。面食いの子だったら落ちてるよね〜。)
なんてことを思いつつ。
…ミラクルちゃんのお盆にはサンドイッチ。ベーコンとレタス、そしてトマトがたっぷりの定番のやつ。あったかいコーンスープもセットについてくる人気メニューだ。
…っと、飲み物持ってくるの忘れてた。
「飲み物忘れてたから、取ってくるけど、ミラクルちゃんは何かいる……?あったかいお茶?」
「えっ…いいよ。おれのことは気にしないで。」
…遠慮しがち、人に頼りたくない、と言うべきなのか。あまり迷惑をかけたがらない。数日間ミラクルちゃんと過ごしてみて気がついたことだった。
「まーまー、わたしが汲みに行くついでだから。」
少し困った表情を浮かべてから。
「…じゃあ、暖かいお茶でお願いしてもいいかな……?」
申し訳なさそうに、わたしにお願いをしてくれた。
「はい、ミラクルちゃんの分。」
「…ありがとう。」
飲み物を渡して席に着く。ふわりとほうじ茶の香りが漂った。
「ヒシミラクルって、優しいんですね。お隣に座らせてくれたり、わざわざ飲み物を汲んでくれたり。」
「優しい、って事はないと思うけどなー。逆に座っちゃだめ、なんてことそうそうないでしょ。お茶だって、わたしのついでだし。」
…ミラクルちゃんの方が、よっぽど優しいと思うんだけどな。……人にお願いするのが苦手なのも、そこから来てたりするのかも…?
「ともかく、とりあえず食べちゃおう。わたしお腹ぺこぺこだよ〜。」
「そうだね、お昼休みも有限だし。」
2人でいただきますをして、ゆっくりと食べ始めた。
口数少なく、黙々と食べ進めていく。
それでも不思議と居心地の悪さはなく。
時々ミラクルちゃんの方から聞こえてくるおいしい、おいしいという囁き声が心地よく感じていた。
粉チーズとタバスコでの味変を堪能し終えた頃。
「…あれ、ミラクルちゃん。もう食べないの?」
「あはは、おれ、あんまり食べれないんだ。」
ミラクルちゃんの目の前には、半分残ってしまったサンドイッチが。…スープは残さず飲めたみたいだ。
「食べ盛りのウマ娘基準だしね。わたしでも時々多くない?って量の時あるし。」
ミラクルちゃんが頼んだサンドイッチは、バケットを丸々1本使って作る、少食なウマ娘や人間にはかなり量が多いサンドイッチ。
そして、何より食べにくい。食べなれていないと挟んである具がこぼれてしまうのだ。…ただ、ミラクルちゃんはそんなことなく、こぼさず綺麗に食べれていた。
(…所作まで美しいとは。)
…何故か込み上げる敗北感……!!…パスタソースで汚れた口を拭って、少しでもお淑やかに……!!なんて、今更感あるけど。
「……でも残すのもったいないし、作ってくれた人に申し訳ないからどうしようかな……」
「ねね、その残ったやつわたしにちょーだい?…実はちょっと物足りなくて……もう1品頼むのがびみょーなラインの減り具合なんだよね。」
「…なら、残りの半分貰ってくれる?」
「ありがとー!!今度なにか恩返しさせてー!!」
ミラクルちゃんから貰ったサンドイッチを自分側に寄せて、受け皿を作ってからかぶりつく。
もごもごと口を動かして、サンドイッチを堪能する。
「んー、やっぱりトレセンの食堂はハズレ無しだね。おいしー!!……でもやっぱり食べにくい。」
受け皿にポロポロと落ちていくレタスやパンくずをひょい、と口に運ぶ。
「…よくこぼさずに食べれるねー?」
「…そうかな……?おれ、あんまり気にせずに食べてたけど…?」
首を傾げて、不思議そうに唸る。……なんだか何をしてても絵になる、って感じがする。
「うわ、もしかして上品さとか生まれつき備え持っちゃってたり…?ひえぇ……コツとかないの…?」
「コツ…?うーん、少しづつ食べる、とか?……あんまり急いで食べれないから、それで丁寧に食べれてるのかも。」
「なるほどー、それは難しいことを……美味しいものがあったら早く食べちゃいたいから、わたしにはハードル高いかな……」
そんな、取り留めのない話をゆっくりとして。
「ご馳走様でした、美味しかった…!!」
「ふふ、よかった。」
お昼時も終わりごろ。空いた席がチラホラと目立ち始めた。
綺麗に平らげた後のお皿をお盆にのせて、返却口に向かう。それに着いてくるように、ミラクルちゃんも立ち上がった。
「実はさ、わたしお昼決めるのが苦手でいつも迷っちゃって。」
「やっぱり色々食べたいとは思っても2人前は多いから頼めなくて。」
「タイミングが合えばだけどさ、一緒にお昼食べない…?互いにシェアしてさ、色々食べようよ!!」
「…おれの方から、お願いさせてほしいな。……それにまだ、友達って呼べる子があんまりいないから、一緒に食べてくれると……」
…ってな感じで、わたしとミラクルちゃんの距離がちょっとだけ縮まったのでした。
……ほんすこーーーーしだけ羽目を外して、体重が増えちゃったのは内緒のお話。
「…わたしが食べちゃってから言うのもアレだけどさ。晩御飯に回しても良かったかも…?」
「…ううん、ヒシミラクルが美味しそうに食べてるのを見ててほっこりしたから、大丈夫だよ。」
「……えっ、もしかしてわたし、いっぱいご飯を頬張る末っ子みたいな感じで見られてる…?」
「…そうかも。」
「えぇー!?」