ミラクルシナリオにミラクルをちょっとだけ絡めたお話   作:わさべ。

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大きな幸せを貰ったら、それに慣れてしまいそうで。

だから、普通が1番だと思うんです。



お嬢様

 

その日、事件は起こった。

 

「…失礼致します。」

 

突如現れた、いかにもなウマ娘。漂うオーラから近寄り難い雰囲気を感じる。ここにわたしが居ることが間違いだと錯覚してしまいそうになる。

 

「ケイエスミラクルさんはあらせられますでしょうか。」

 

赤い大きなリボンを身につけて、綺麗に整った髪をなびかせてそう言った。

 

 

(こ、高貴なお嬢様…!?なんてま、まばゆい…!!……みんな固まって対応できてない…!?……目が合った……!!)

 

よりによってわたしに…!?あわわ……

 

お、落ち着けわたしぃ…!!深呼吸、無礼のないように……

 

「あ、えっと、ケイエスミラクルさん、なら今は、イナイデス、ハイ………」

 

「…そうですか。」

 

…き、気まずい。胃がキリキリするぅ………

 

「ケイエスミラクルさんのお席はどちらでしょうか。」

 

「そこ、です。わたしの隣の、そこです。」

 

「有難う存じます。」

 

ぺこりと綺麗な一礼をしてから、ミラクルちゃんの座席の傍に寄って立ち止まった。

 

つまり、わたしの隣でオーラを放ちながら佇んでいる。ひ、ひぇえええぇ………ただの立ち姿のはずなのになんだろうこの存在感…!?

 

(何か会話した方がいい…!?それとも、暇を潰せるようななにかを…!?)

 

普通なわたしには荷が重いっ……!!ミラクルちゃん早く、早く来てえええええ!!!!

 

内心はてんやわんや、どうにかして逃げ出したいのを抑える。…せっかく案内したわたしが居なくなったらそれはそれで無礼な気がする…!!

 

「……!!」

 

丁度、教室にビロちゃんとハートちゃんが帰ってきた。…わたしの様子を見て驚いている。

 

(たすけてーっ!!)

 

口パクで助けを求める……!!ここぞと言う時に頼りに……?

 

……向こうも口パクで、何か言ってる。

 

(……おもろ………?……がんばって………?……えぇ!?)

 

…ビロちゃんとハートちゃんが面白がって写真撮ってる……!!

 

 

 

きっと時間としては1、2分も経ってない。……そのはずなのに途方もない時間を過ごしている感覚に襲われている。変な汗も出てきて少しだけ暑い。

 

用事があるフリをして、席を外そうと思っていると、丁度ミラクルちゃんが帰ってきた。……助かった!!

 

「…あ、ルビー。どうしたの?わざわざおれの教室まで来て。」

 

「…ミラクルさん、こちらを。」

 

そう言って持っていたカバンから封筒を取り出す。

 

「…ありがとう。忘れ物、届けてくれたんだね。…そういえば、今日提出だっけ。」

 

「…いえ、お気になさらず。……それと、別件で申し伝えしたいことが。」

 

「うん、どうしたの…?」

 

……暫く会話を続けるふたりをぼんやり眺めながら、心を落ち着かせる。ひぃ、落ち着かない…!!

 

……なんか距離感近いし、対等に話せてるミラクルちゃん凄いし、なんかよくわからない煌びやかなバラのオーラが漂ってるように見えるし。

 

一体、このお方は……!?

 

 

…思い切って聞いてみることにした。

 

「…ミラクルちゃん、このお方は…?」

 

「ダイイチルビー、おれの同室の子だよ。」

 

ダイイチルビー…!?ダイイチルビーって華麗なる一族のご令嬢さんでは…!?わたしでも、知ってるレベルの……!!

 

「ダイイチルビー、と申します。」

 

深く一礼をする。さっきのお辞儀よりもより洗練されている。

 

「あ、えと、ひ、ヒシミラクルですぅ。」

 

声がひっくり返る…!!さっきより緊張する…!!聞かなきゃ良かったぁ!!

 

自己紹介をすると、少しだけダイイチルビーさんの表情が和らいだように見えた。…どうして?

 

「…貴方がヒシミラクルさん、でしたか。…ケイエスミラクルからご高名はかねがね承っております。」

 

そんな信じられない発言を言い放った。

 

(…ご、ごこうめい…?…わからないけど、わたしに興味を示されていることだけは何となくわかる…!!)

 

何か、悪いことしたっけ…?と、実際に悪いことをしていないはずなのにどこか脳裏によぎる不思議な感覚。

 

「噂の丁寧な言い方、かな。…それであってるよね?」

 

わたしのキョトン(それ以外の表情も浮かべているとは思うけど)、とした顔をみて通じていないと察したミラクルちゃんは、そう補足説明をしてくれた。

 

「その認識でおおよそは。」

 

「ふふ、よかった。」

 

 

どうして、わたしの事を知っているの!?

 

「…?……おれがよくヒシミラクルのことを話してるから、ルビーも気になってたみたいで。」

 

…声に出ていたらしい。ちょっと恥ずかしい。……そして何より、私がいないところでお嬢様からの株が上がり続けている。

 

「ちょ、ミラクルちゃん?何を話したの?わたし、ふつーで平凡なウマ娘ですよ?話すこと、ある…?」

 

「…?何って、それは……いろいろ?」

 

こてりと頭を傾ける。…すこーーーしだけ、あざとく感じた。

 

「ミラクルちゃん…?わたしのこと、過大評価しすぎだよ…?そんな盛られても困っちゃうよわたし……」

 

だって、普通なことをしてるだけ。困ってたら助けたいし、辛そうなら手を差し伸べてあげたい。

……それに、たまたまお隣さんだから、仲良くなってるってだけだよ……多分。

 

「…そうかな?……だって、おれのこと沢山助けてくれてるし、お話し相手にもなってくれてるし。」

 

…そして。

 

「それに、ここの教室の初めての友達だから。つい、教えたくなっちゃって。沢山話しちゃうんだ。」

 

満面の笑みを浮かべながらそう話したあと、迷惑だった……?と少し不安そうに見つめられて。

 

恥ずかしいから、やめてなんて。言えるわけがなかった。…正直、今も絶賛恥ずかしいけど。

 

「…そんな、迷惑なわけないじゃん…!!」

 

つい、声を荒らげてミラクルちゃんの言葉を否定する。…皆が一瞬こっちを見たけど、わたしは悪くない。

 

「…よかった。ヒシミラクルのいいところ、もっと伝えられる。」

 

(なんてことを言うのー!?)

 

迷惑じゃないと言ってしまった手前、取り消す訳にもいかない…よね……

 

「うぅ〜、ずるいよミラクルちゃん…!!わたし、すっっっっごく恥ずかしいんだからね…!?せめてわたしがいないところで…!!」

 

 

…このときは気が付かなかったけど、わたしとミラクルちゃんが話している間、ダイイチルビーさんはわたしたちのことをじっと眺めていた……らしい。

 

あとからミラクルちゃんに教えてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

「ケイエスミラクルさん、少しだけ席を外して貰ってもよろしいでしょうか。」

 

どうにかしてわたしを褒めちぎるのを止めようと試行錯誤をしていると、ダイイチルビーさんがそう言った。

 

「うん、わかった。ルビーもヒシミラクルとお話したいんだよね。」

 

「えっ。わたしがダイイチルビーさんと…?」

 

抜けきらない緊張。…キリキリと胃が痛くなってきた。ご、ご勘弁を…!!

 

「ルビーもとっても優しいから、緊張しなくて大丈夫だよ。」

 

「はい。また、私のことはルビーとお呼びくださいますと。」

 

恐れ多い…けど、頼みであるなら無礼じゃないよね……?

 

「あ、あの、よろしくねルビーちゃん。」

 

「…………。」

 

わたしがルビーちゃん、と呼ぶとわたしの目をじっくりと覗き込んで様子を伺ってきた。……ただ、わたしを見つめている表情はわたしじゃ何も汲み取れない……

 

だ、黙らないで…!!なにか反応して…!!不安だよわたし…!!

 

「…ふふ、良かったねルビー。」

 

「…………。」

 

そうミラクルちゃんが微笑みながら言うと、ルビーちゃんは目線だけをミラクルちゃんの方に移して、またこちらに向きなおった。

 

どうやら喜んでもらえているらしい。…表情が、読み取れないっ…!!

 

「…じゃあ、おれはこの封筒出してくるから。戻ってくるまでゆっくりしてってよ。…おれの席座っていいからね、ルビー。」

 

そう言ってミラクルちゃんは教室を出ていった。

 

 

少しだけ、静寂な時間が流れる。…いつの間にか教室も落ち着きを取り戻していて、皆が皆いつも撮りにすごしている。

 

それはそれとして、ビロちゃんとハートちゃんは未だにこっちの様子を伺っている。

 

(……後で絶ッ対に仕返ししてやる。)

 

 

 

窓から入ってくる風が心地よい。……緊張して火照った体を冷やしてくれる。

 

…ルビーちゃんがミラクルちゃんの席に座ると、改めてこちらに向きなおって、丁寧なお辞儀をわたしにしてくれた。

 

「先日のケイエスミラクルさんの件、ありがとう存じます。ケイエスミラクルさんから看病をして貰ったとお伺い致しました。」

 

「…あ、あの時の。」

 

記録的大寒波の日のことだろう。…結局わたしがしたことは保健室連れていくことだけで……

 

「…でも、わたしは大したことしてないよ……?どっちかって言うとたづなさんの方がいろいろしてくれていたみたいだし……」

 

…なにより、例のチケットを貰ってひとりで楽しんでしまったから、少しだけ罪悪感が……!!

 

 

「…ですが、ケイエスミラクルさんの体調不良を見抜いて看病してくださったことは事実。」

 

まっすぐな瞳でわたしを見つめる。

 

「…なにより、ケイエスミラクルさんはかけがえのない時間を共有する、大切な方です。」

 

…かけがえのない時間を共有する、という言葉にルビーの想いが詰まっている。ほんの少しの付き合いだけど、それでも感じられるほどの熱量。

 

ルビーにとって、ケイエスミラクルは大きい存在なのだろう。

 

(…薄っぺらいことしかわからないけど。大切、なんだろうなぁ…ミラクルちゃんのこと。)

 

友達として。同室として。ライバルとして。

 

きっと、それ以外の感情もいっぱい詰まってて。

 

だからこそ、わたしにお礼をわざわざ伝えてくれたのだろう。

 

(わたしにも、いつかそう自信を持って言えるほどの子が現れるのかな。)

 

 

「…ささやかですが、お礼として何か送らせて頂きたく存じます。希望があれば、そちらの物を。」

 

「…えっ。」

 

突然、そんなことを言われてまた思考が止まる。

 

わたしが知っているほどのご令嬢。その子からの贈り物……?えっ。

 

そんなの、受け取れないに決まってる…!!なにより恐ろしい…!!

 

「い、いいよ別に…!!気にしないで…!!気持ちだけで嬉しいよ〜!?」

 

「…そうですか。」

 

「そうだよ!!…それより、ルビーちゃんの食べたことのあるお菓子で美味しかったものとか、そういうのが聞きたいな…!!普段どんなものを食べてるか気になるなーわたし!!」

 

どうにか話を逸らして、ものとして受け取らないように仕向ける。

 

「…そのような事で本当によろしいでしょうか?」

 

「…いいよいいよ!!」

 

「……では洋菓子から。」

 

「おおっ、楽しみ…!!」

 

 

…なんだかんだ、お菓子の話は盛り上がって。結局ミラクルちゃんが帰ってきた後も続いて。

 

気がつけばビロちゃんとハートちゃんもお話に混ざって。たわいもない、楽しい時間を過ごしたのでした。

 

 

 

後日、結局送られてきたお菓子の値段を興味本位で調べて、ルビーちゃんにやりすぎと言いに行くのはまた、別のお話。

 

 

 

 






(ヒシミラクル、さん。友達思いの方。)

(私からも、お礼を。)



(…かなり、緊張されていらっしゃる。)

(……っ。)




(…ルビー、ちゃん……?)

(…ルビーちゃん…ルビーちゃん。)

(……そう親しく呼ばれたことは、初めてです。)

(…嬉しい、のでしょうか。)


(…ヒシミラクルさんと、お話。…とても、気兼ねなくお話できて───)

(……楽しい。)


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