奴隷達がいつか自分達を救ってくれると信じた伝説の戦士。
実在したのか妄想か…人を笑わせ苦悩から解放してくれる戦士がいたそうですよ先生?
クックック……!
その体はゴムそのものの性質を持ち空想のままに戦い……
人々を笑顔にしたという
〝解放の戦士〟
そして、歴史から抹消された名。
その名を
ニカ
コレは偶然でしょうか?
それとも必然でしょうか?
いずれにせよ、数奇な因果のもとに生まれてきた神性であることに違いはないでしょう…
クックック……やはり彼のことは一度調べてみたいものです。
覚醒の条件は満たされた。
さぁ、ベアトリーチェは勝利の神の名を冠する彼を打ち破れるでしょうか?
いえ、そんな事言わずとも知れていますね…クックック……!!
黒い髪と黒い瞳で『笑顔』が印象的な生徒だった。
束縛を嫌い
我慢はせず
やりたいようにやる。
学校はほとんど行かずに他自治区に行っては問題を起こすようでヒナをいつも困らせているような子だった。
良くも悪くも自由と混沌を校風としたゲヘナの問題児だった。
キヴォトス中をまわり、
時に砂漠で、
時に廃墟で会う事もあった。
その在り方は子供のソレで、
しかし、きっと大人になった私が捨ててきたもので
その純粋さは眩しいものだったんだ。
アビドスでは校舎を守ってくれた。
『これはあいつ等の居場所なんだ例え人が居なくなろうがボロボロになろうが、冗談で建ってる訳じゃねェんだぞ!!!』
『お前らなんかがへらへら笑って壊していい建物じゃねェんだぞ!!!』
ホシノが囚われた事を知って一緒に救出にも向かった。
『あんた何で私達に協力してくれんの?』
『…今戦えなくて…!!もしホシノを救えなかったら…!!おれは後で…死にたくなる!!!』
『友達なんだよ…!!!もう2度と友達は泣かせねぇって誓ったんだ!!!』
ゲーム開発部と廃墟に潜った時もなぜか廃墟にいた。
『いや誰この人!?』
『おれニカ!よろしく』
〝やぁニカ久しぶりどうしたの?こんなところで。また冒険?〟
『先生の知り合い!?ちょ、どういうこと!?』
自由を愛する少年はいつだったか、こう言った。
『おれがやりたいって思ったことを、おれが決めたんだ。その為に戦って死ぬんなら別にいい』
ああ、この子は
とても
危うい
いつかこの子は誰かのために命をはって
その命を落としてしまう…
そんな漠然とした予感がしたんだ。
だから、
〝……ニカ?〟
あの子が倒れていた。
血だらけで倒れていた。
いつだったかデガグラマトンとやり合った時もボロボロにはなったものの倒れなかったあの子が。
「…ハァ、先…生…!どうして…ここに…!?」
〝サオリ一体ここで何があったの?〟
アリウススクワッドも満身創痍で倒れ伏していた。唯一意識があるサオリを除けばミサキもヒヨリも気絶していてヘイローが消えている。
少し先には縛られたアツコもいる。
「おや?今頃駆けつけてきたのですか先生?しかし、残念ですね〜?もう既に彼は息絶えています」
〝は?〟
……な…に…を言って…るん…だ…?
「不思議ですか?彼がここにいることが」
ソレは不思議じゃない…。ニカは私に連絡してくれたから。
『おれは指揮もできねぇ!!ゲームも作れねぇし!!!勉強もできねぇ!!!』
『おれは助けてもらわないと生きていけねェ自信がある!!!』
『だから、困った時は仲間や友達、先生に頼る!!!』
そう自信たっぷりに言う彼はきっと本心で言っていた。
だから、助けを求めた。
彼女達にも…助けを求めたはずだ。
「そこのアリウススクワッドは〝貴方ではなく〟日珠理ニカを頼ったのですよ」
私とニカは本質的に似ている。
しかし、似ているようで立つスタンスが違う。
先生という立場は生徒を教え導く存在だがそれ故に〝先生〟と〝生徒〟という壁がある。
ニカは子供だ。
生徒だ。
対等に接することができる。
彼のカリスマは人を惹きつける。
きっと、アリウススクワッドのみんなにとっては大人の私よりも身近な存在だったのだろう。
「子供を守るのが大人の責任…でしたっけ?」
ああ、その通りだよ
「今の貴方にそれができているのでしょうか?」
きっと…出来ていない…だろうね。私は…先生失格だよ…。
「滑稽ですね?貴方が守るべきと思っていた子供は貴方を頼ることをせずに太陽の神に、希望なんていうまやかしを抱き、信じた結果がコレですから」
〝違う…〟
「はい?」
〝それだけは違う!!〟
ニカの死が無駄だって言うのなら、それは絶対に違う。
〝ニカの想いはちゃんと引き継がれた!!希望はまやかしなんかじゃない!!〟
〝確かに私は先生失格だよ…ベアトリーチェ。だけどね…それでも私は生徒の…子供の味方なんだ…!!〟
「…こっの…減らず口をっ……ッ!?」
ドンドットト♪
ドンドットト♫
何だろうか、この心弾むリズムは……?
ドンドットト♪
ドンドットト♫
何処から流れている?
ドンドットト♪
ドンドットト♫
いや、
まさか、
ドンドットト♪
ドンドットト♫
「あれ、おれ負けたはずなのに……」
死んだはずの子が私達に背を向けたまま床に座っている。
黒かった髪の毛は真っ白に染まり逆巻き、
意識があるのにも関わらずまだヘイローは出ていない。
「ま、いっか…!」
瞬間ヘイローの現出。
元々は紫色に渦巻いていたヘイローは
今や白く色を変えている。
凄まじい神秘の本流が辺りを吹き飛ばす。
〝…っく!…ニカ!〟
「あり得ない……!何故生きている…!?確かに〝ヘイローを破壊する爆弾〟を使って死んだはずだ…!!」
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!うひひひ!!!!うはひゃひゃひゃ!!!!!!」
狂ったように笑い出すニカは笑いながら腹を抱えて寝転がる。
「楽しくなってきたぁ!!!!」
そして、
床を文字通り弾ませて聖堂の天井を突き破った。
ふらふらとおぼつかない足取りで聖堂の屋根の上にて満月を眺めながらソレは笑う。
「ホント何でおれ…立ててるんだ?」
でもまぁ…
「何だか今なら何でもできる気がする!!!!」
崩落した天井の穴から影が妖しく伸び、階下にいる先生やベアトリーチェにも見えるその後ろ姿はもはや別のモノ。
白色の靄が羽衣のように脇から肩にかけて羽織っており、髪は白く渦巻きゲヘナの制服も黒から白へと変わっている。
「一体何をしたのですか
笑いながら振り向くニカは目元に手を当てて指の隙間から赤く光る瞳でベアトリーチェを一瞥し「笑顔」で言う。
「気にすんな!!