奴隷解放の戦士、自由と太陽の神ニカ   作:絶対正義=可愛い

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主人公が登場しない……。
先生がオリキャラじみてる。
うへ〜…こんなはずじゃなかったのに……。


記憶にない生徒。記録にある生徒。

ビルに入った途端ニカを襲ったのは警報と赤色の警告色だった。

 

「何があるのっかな〜」

 

呑気に鼻歌を歌いながらズンズンと先に先にと進んで行く彼を止める者はいない。

 

正確には、廊下のいたるところから、銃弾の嵐が彼を襲うが全く堪えていない。

 

それもそのはず。

 

彼の身体にあたった銃弾は、少しめり込んだ後に明後日の方向へと飛んでいく。

 

「ちょっと鬱陶しいな…コレ」

 

物理攻撃無効。

 

それが彼の神秘。

 

しかし、物理攻撃無効だからといっても、衝撃は来る。

 

痛くはないが鬱陶しい。

その一言だった。

 

「よ〜しなら、ゴムゴムの~……」

 

空気を思いっきり吸い込み身体をどんどんと大きくしていく様は実に間抜けで、それでいて人外じみている。

 

 

 

風船(ふうせん)!!」

 

 

 

膨らみ続けた身体は廊下を埋め尽くし、銃口に触れる。

 

そんな事などお構いなしに銃口から火が吹くが、ゴムの肉壁にあたり、そのまま反射。

 

銃口の中に吸い込まれるように跳ね返り、おおよそ、そこに設置された防衛システムを根こそぎ破壊した。

 

「これでよし!!」

 

何も良くはないし、お前が侵入しているのは『あの』シャーレだ。

 

そんな事など知らないニカはさっさっと上に上がっていく。

 

そうして、侵入から2分もせずに扉を蹴り開けた。

 

そこにいたのは〝先生〟。

 

「おれ、ニカ。よろしくな〝先生〟」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニカという少年との衝撃的な出会いから1時間後。

 

私はアビドス高等学校からの救援要請に従いアビドスへとやってきていた。

 

徒歩で。

 

件のニカは自己紹介をした後に用事を思い出したようでさっさっとシャーレから退室した。

 

 

嵐のような子だった。

 

少し気になり、調べて見たところゲヘナ学園所属の生徒だったようだ。

 

どおりで見覚えのある制服だと思った。

チナツが着ていた制服を着崩した感じだったため既視感があった。

 

それにしても、と思う。

 

(キヴォトスに来て初めて男子生徒に出会ったな)

 

その一言に尽きる。

同じ同性として、彼とは仲良くなれそうだ。

もちろん、依怙贔屓はしない。

それは先生として不適切だろうから。

 

それでも、女子生徒しか今の所見ていなかった身としては、何処か安心したような気持ちだったのだ。

 

最近は何かとそういう事に敏感だから。

 

 

 

 

 

 

それはそうと、

 

 

 

 

 

 

 

〝ここはどこだろう?〟

 

 

ヒュー……と吹く風が虚しさと焦燥感を煽る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アロナの言っていた事は誇張表現でも何でもなかった。

 

冗談抜きに何日か遭難した。

 

このままだとマジで不味い。

どれくらい不味いかというと、街中で腐臭を発するグロテスクな肉塊か、白骨死体になるとか、そういうレベルで不味い。

 

そろそろ手持ちの食糧が消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

自転車の音がする。

 

…………

 

自転車の音?

 

「……あの…………大丈夫?」

 

〝ごめん大丈夫じゃないお願い助けて!!〟

 

道端で倒れていた私のそばにロードバイクをとめた銀髪の獣耳少女。

恥も外聞もなく、救助を求めたのは仕方がないだろう。

実際死ぬかと思った。

 

「あ、生きてた。道のど真ん中で倒れているから、死んでいるのかと」

 

目茶苦茶物騒なこと言うね君。

その気持ちはわかるけど。

 

〝お腹が減って倒れていたんだ……。もう食糧がなくて〟

 

「……ホームレス」

 

一応これでも教職についた立派な公務員だと思う。

キヴォトスで教職が公務員なのかどうかは知らないけど。

 

〝ちょっとこっちに用があってね。ただ、お店が一軒も無くて脱水と空腹で力尽きたのさ〟

 

ロードバイクを固定して停めて、私の前に来る少女。

 

「ただの遭難者だったんだね」

 

遭難者を「ただの」と言えるとは、アビドスどれだけ広いんだろう?

 

「ああ、ここは元々そういう所だから。食べ物がある店なんか、とっくに無くなってるよ」

 

へ〜。ちゃんと調べてから来ればよかった。

 

「こっちじゃなくて、もっと郊外の方へ行けば市街地があるけど」

 

〝土地勘がないんだ〟

 

「……なるほど、この辺は初めてなんだね」

 

アナログでもいいから地図とか持ってくるんだった。

そんな事中学生だって分かるだろ。

 

「……ちょっと待って」

 

何やら鞄をゴソゴソと探し私の眼の前に一つの瓶を差し出す。

 

「はい、これ。エナジードリンク」

 

……女神だろうか?

こんな私に何かを施してくれるだなんて。

 

「ライディング用なんだけど……今はそれくらいしか持っていなくて。でも、お腹の足しにはなると思う」

 

マジですか?私今脱水症状で頭がフラッフラしていてやばいんですありがたく頂戴します!!

 

「えっと、コップは……」

 

あー…。

 

生き返る。

生命の水だ…。

私にとっての生命の水とかお酒しかないと思ったのに。

今日からはこのエナジードリンクが生命の水。

ひいてはこの少女が私の命の恩人だ。

 

「……!」

 

なんだろうか?

 

「あ……それ……(//∇//)」

 

顔を赤くしてどうしたのだろうか?

……もしかして、彼女も脱水!?

 

〝ごめん。これ最後の一本とかだった?〟

 

「……ううん、何でもない。……気にしないで」

 

え…これ本当に大丈夫?

私何かやらかしてない?

昔友達に「お前は肝心な所で変に抜けてるクソボケ」とか言われたことあるんだけど……。

 

それはそうとお礼は言わなければなるまい。

 

〝本当にありがとう!!このままじゃ私はここで白骨死体なって人知れず人生を終了するところだった〟

 

「うん。見た感じ、連邦生徒会から来た大人の人みたいだけど……お疲れ様。学校に用があって来たの?」

 

連邦生徒会……あぁ、この白い服か。

これあんまり好きじゃないんだよね。

カレーとか飛んだら終わりだし。

醤油が飛んでも終わり。

食事するのも神経使うってそんなのって無くない?

少なくとも私はこの年(25歳)だけど、食事まで気を抜けないなんて少しいやなんだけど。

 

「この近くだと、うちの近くの学校しかないけど……もしかして」

 

うん?

この子ってもしかして……?

 

「『アビドス』に行くの?」

 

〝そうだけど〟

 

「……そっか、久しぶりのお客様だ」

 

すごいな、運命かよ。

……いや、よくよく考えてみればこの近くの学校ってアビドスしか無いんだ。

そこの生徒に出会うのが必然だな。

一瞬でもロマンチックな事を考えた私がバカだった。

 

なるほど。

自意識過剰はこれだから……ハッ!

 

「それじゃあ、私が案内してあげる。すぐそこだから」

 

やったね。

現地民に頼るのが旅の定石ってのは間違いではなかったんだ。

 

でもさ、

 

〝ごめん、お腹が減って動けない〟

 

動けない。結構マジで動けない。

 

「うーん……どうしよう」

 

〝そのロードバイクに乗せてくれない?いや、本当に情けない話なんだけど〟

 

本当に情けないな。

この絵面酷いぞ。

かたや、死にかけの成人男性。

かたや、獣耳正統派美少女。

………。

これから私は死ぬのかな?

 

「えっと、これ一人乗りだから」

 

そりゃそうですよね。

ロードバイクが二人乗りだなんて聞いたことないし、そもそも自転車の二人乗りは犯罪だよ。

一応は教職者が犯罪行為を生徒に頼むって……。

 

〝それなら背負っt…いやなんでもない〟

 

流石にそれはだめだろう。

よし、身体に鞭うって歩くか。

 

〝大丈夫。ごめんね無理言って。私が歩くよ〟

 

 

「……」

 

ぷるぷると震える足を叩き立ち上がる。

 

〝それじゃあ、案内お願いできる?〟

 

「……無理そうなら言って。背負うから」

 

さっきのバッチリ聞かれてんじゃん。

だめじゃん。

でも意思を固く持て私。

 

私は大人としての尊厳とか、ほら、その他諸々あるだろ?

 

「……ちなみに、学校までは後10kmはあるけど……」

 

〝背負ってもらってもいい?〟

 

さよなら私の尊厳。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝そう言えば少し聞きたいことがあるんだけどさ〟

 

自分よりも一回り小さい未成年の女の子(生徒)に背負われる成人男性(教師)って……、ここがアビドスで良かった。

誰かに見られたら死にたくなってくる。

 

「……どうしたの?」

 

それにしてもキヴォトス人は力持ちだなー。

私も一応男で大人なのだが、腕力ですら彼女達に余裕で負ける自信がある。

 

〝キヴォトスに男子生徒って珍しいの?〟

 

取り敢えずシャーレ出立前に会った少年ニカが今の所初めて会った男子生徒だったため、そう聞いてみる。

 

「……ん。キヴォトスに男子生徒はいないよ」

 

ん?

 

〝でも私、シャーレを出る前に会ったんだけど〟

 

そう言うと銀髪少女、シロコは一瞬足が止まって、何事もなかったたかのように歩き始めた。

うん?

 

「……先生。私のことからかってる?そんな都市伝説、今どき誰も信じないよ?」

 

〝んん?〟

 

あれ?

もしかしてあの子女の子だった?

 

いやいや、体つきとか完全に男だったじゃん。

シャツ全開にして超綺麗な腹筋と傷跡あったじゃん。

胸も立派な胸筋が……。

あれ?

 

男だよな?

あの腹筋と胸筋で女子は流石に無理がある。

 

生徒のデータベースにもちゃんと男って記載されてたし……。

 

 

??????




とある都市伝説のお話だ。

誰の記憶にも存在せず、しかし、記録上には存在する男子生徒のお話だ。

ゲヘナでまことしやかに囁かれた噂は、あっという間にキヴォトス全土へ巡り、誰もが知る都市伝説と化した。


が、

そもそも男子生徒はこのキヴォトスでは存在しない。

その理由は分からない。

しかし、現にキヴォトスにおいて男子生徒は全く見当たらない。

いるのは性別上男の「大人」だけだ。

だからこそ、都市伝説となったのかもしれないが……。

しかし、噂にしてはその生徒の情報はあまりにも具体的過ぎた。

曰く
「身体が弾性を帯びている」
曰く
「銃弾が効かない」
曰く
「黒髪黒目のゲヘナ生」
曰く
「目元に傷」
曰く
「悪魔」
曰く
「渦巻き型の紫色のヘイロー」
曰く
「幻の8人目の七囚人」


噂には尾ひれがつくが、それにしても情報が多い。

今じゃ専らポピュラーな都市伝説。
知らぬ者など殆どいない。

故に、誰もがその都市伝説を一度は信じ、そんな者は居ないと理解する。

曰く、彼の名は

「ニカ」

「日珠理ニカ」





その真実を知る者は




























公的には…万魔殿の議長及び連邦生徒会長のみである。
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