奴隷解放の戦士、自由と太陽の神ニカ   作:絶対正義=可愛い

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不定期更新が過ぎる……。
ゴメンナサイm(_ _)m。


前話をすこーしだけ修正。



忘れ形見

ねぇねぇ□□兄ぃ

 

なんだ■■?

 

□□兄ぃはどうして身体がびよよ~んって伸びるの?

 

それはなぁ……おれが強いやつだからだ!!!!

 

ひぃん!!耳元で叫ばないでよ〜□□兄ぃ!!

 

にしし……!!■■は泣き虫だなー!おれは泣き虫は嫌いだ!!

 

ひぃん……。うぅ……もう泣かない!!私もう泣かないもん!!

 

どうかな〜、■■はいつもそう言ってるけど、それで泣き虫が治ったことなかったもんなー。

 

うぅ…このぉ!!

 

うわっ、やめろ■■それはおれの帽子だー!!

 

へへん!!意地悪ばっかの□□兄ぃに仕返しだ〜!

 

このぉ…!!

 

むぅ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇホシノちゃんホシノちゃん!!」

 

「はいはい、何ですかユメ先輩。えらく機嫌がいいですね」

 

「ふふん……!!何でだと思う〜?何ででしょう〜?その答えはねぇ〜、なんと私のお兄ちゃんがアビドスに遊びに来るんだって!!」

 

「あーはいはいまたその妄言ですか……」

 

「もうー、ホシノちゃんまだ信じてないのー?」

 

「ええ、正直頭の病院に行ったほうがいいかと」

 

「ひぃん…!うぅ…ホシノちゃんが辛辣だぁー」

 

「馬鹿なこと言ってないで早くバイトに行きますよ。今日は賞金首を狩るんですから」

 

「あ、ちょっと待ってよホシノちゃ〜ん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな所にいたんですね。ユメ先輩……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おれは!!!!弱いっ!!!!」

 

辺り一帯が砂に覆われた街の片隅で、少年は自身の無力さに咆哮した。

 

「……何一つ守れねぇ!!!」

 

頭を地面に何度も何度も、自罰するかのように打ち付ける姿は、とてもじゃないが目に当てられない。

 

「ニカ……先輩」

 

その直ぐ側で、青髪の少女がなんと声をかければいいのか迷うように、その手を彷徨わせている。

 

「向こうへ行け……!!もう一人にしてくれ!!」

 

「……ッそういうわけにはいきません。これ以上、自分を傷つけるあなたを見るのは……イヤです」

 

自暴自棄になっている尊敬できる先輩、いや友人を少女は、一人にはさせられなかった。

したく…なかった。

 

「おれの身体だ!!勝手だろ!!」

 

たしかに、そうなのかもしれない。

だが、その身体が傷ついて、痛むのはあなたの身体だけじゃない。

 

あなたを想う人まで傷つける行為だ。

 

だから、少女は普段は決して使わない、強い口調と意地の悪い言い方で少年に現実を突きつける。

 

 

「……なら、梔子ユメさんの体も本人のもの、彼女が死ぬのも彼女の勝手です」

 

言いたくなかった。

彼に嫌われたくないし、こんな言葉を吐きたい訳じゃない。

でも、誰かが言わなければ……。

 

「…お前黙れ!!…次何か言ったらブッ飛ばすぞ!!!」

 

案の定、少年は怒気を孕んだ瞳で少女を睨んだ。

腹に響く、謎の圧迫感が少女を襲った。

少女でなければ、失神でもしてしまいそうな、そんな圧が。

 

 

「それで気がすむならやってみてください」

 

気丈に、それでいて挑発的に少女は言った。

ズタボロの少年が少女に向かって殴りかかる。

 

 

「……おおおおおおお!!!!」

 

 

それに対して少女は身を捻り躱し、いとも容易く背負投げし、地面に組み伏せる。

 

普段なら、ありえない。

 

いくら彼女が超人と呼ばれようが、こうも簡単に彼を組み伏せることはできない。

 

それが、いつもなら……。

 

 

「……もう何も見えていないんですかあなたには!!!」

 

そのことに、得も言えぬ悲しみが湧き上がる。

 

「どんな壁も乗り越えられると思っていた〝自信〟!!疑う事もなかった己の〝強さ〟!!!」

 

藻掻く彼を押さえつけて、彼女は叫ぶ。

 

「それらを無情に打ち砕く手も足も出ない敵の数々……!!このキヴォトスでの唯一の〝妹〟!!無くしたものは多いでしょう」

 

そんな、情けない彼を見たいわけではないのだから。

 

「世界という巨大な壁を前に、次々と目の前を覆われる!!!それでは一向に前は見えません!!後悔と自責の闇に飲み込まれている!!」

 

ぽろぽろと、少女の涙が少年の顔に落ちる。

 

「今は辛いでしょうが、ニカ先輩……!!それらを押し殺して下さい!!!失ったものばかり数えないで下さい!!!」

 

泣いては駄目と、言い聞かせているのに、止まらない涙がどうしようもなく恨めしい。

 

辛いのは、彼だ。

 

私が泣いて……どうする…!

 

そう思っていても、言うことの聞かない涙腺は涙を零すことを止めてくれない。

 

 

「無いものは無いんです!!!確認してください!!あなたにまだ残っているものは何ですか!!!」

 

 

少年が指を折って数えていく。

一人一人……名前を呟きながら。

グズグズと鼻を鳴らして少年は、慟哭を上げる。

 

 

 

 

 

「仲間がいる゙よ!!!」

 

 

 

 

 

ここが一つの区切り。

 

『終わり』であり、『始まり』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ってきたぞ」

 

石の塊を積み上げただけの、小さなお墓だった。

名前が刻まれることもなく、しかしそれは確実に誰かの墓だった。

 

砂が被ってしまった墓石。

 

ニカはその墓の前で片膝をつきながら花を供えていた。

そして、静かに黙祷した。

 

「……後は、任せろ」 

 

そう一言呟いて、墓石に被った砂を手で払い落としてニカは踵を返す。

 

行き先は、アビドス砂漠。

 

妹の忘れ形見が囚われている場所だ。

 

サーッ……と微かな乾いた風が頬を撫でる。

 

 

―――ありがとう

 

 

そんな声が聞こえた気がして、ニカは振り返る。

 

もちろん、そこには先程の墓石しかない。

 

それでも、思わず口元に笑みを浮かべてしまう。

 

何か言うこともなく、ニカは歩み始めた。

 

クチナシの甘い匂いがどこまでも漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その鋭い一撃は、唐突に先生達の後ろからやってきた。

 

 

 

「ゴムゴムの~〝銃(ピストル)〟!!!!」

 

 

その掛け声とともに、カイザーPMC理事がぶっ飛んだ。

正確には、異様に腕の長い拳が、理事の頬を捉え殴り飛ばした。

 

 

「おまえが……ホシノを攫った奴か」

 

「ぐっ……なんだ貴様…いや、まさか……ッ!」

 

尻もちをつき、手の甲で頬を拭う理事が下手人を見て、驚愕する。

 

ザッザッ…と砂の大地を踏みしめる音が先生達の背後から聞こえる。

 

バッと振り返れば、そこにはこの作戦の前に別れた一人の生徒が。

 

 

「おまえを……ブッ飛ばしに来たッ!!!」

 

 

力強く拳を握ったニカの顔は…怒りが滲み出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いや〜腹一杯だ!ありがとな〜!お前らはおれの命の恩人だァ!』

 

――セリカちゃんが拾ってきた、正体不明の謎の生徒。どうも学校に帰ろうとして迷ったみたいだ。……怪しい、警戒しといて損はない。

 

『おれゴム人間だからな!にしし……!!』

 

――都市伝説の男みたい。ふざけた戦い方だったが、相当腕が立つ。先生とか言う不審者と組まれたら厄介だ。……私がみんなを守る。

 

『へらへら笑って……壊していい場所じゃねぇんだぞ!!!この校舎はなァ…コイツラの居場所なんだよ!!!』

 

――……………変な人。

 

 

『おれの飯がァァ!?!?!?』

 

――底なしに楽観的で笑顔が眩しい人……、まるでユメ先輩みたいな……。

 

 

 

『仲間が居るだろ!!!』

 

――うるさい……。

 

『おれ達の命くらい一緒に掛けてみろ!!!仲間だろうが!!!!』

 

――お前に一体何がわかる……!

 

『死ぬことが恩返しじゃねぇぞ!!!そんなのは弱い奴がすることだ!!!』

 

 

 

 

 

 

「そんなこと、君に言われなくても………………分かってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グッ……なぜ貴様がここに居る!?」

 

理事の戸惑った声が響く。

だが、ニカはその声に我感せずといった様子で、身体をグイグイと動かし続けている。

 

準備体操のようだ。

 

「……おれがホシノの友達で、仲間だからだ。友達は助ける」

 

「ばかばかしい……!!そうやって貴様らは有りもしない絆やら夢やら希望やらを語る!!もう希望など有りはしない廃校寸前の学校にいつまでも拘る!!理解が出来ない!!本当に、目障りだ!!!」

 

「そうか」

 

バギボキとニカの関節が鳴る。

 

「もういいか?」

 

「ッこのクソガキがァァァ!!!!」

 

その叫びが引き金となった。

今まで待機していたカイザー理事の兵が一斉に銃口をニカに向ける。

 

その反応に対して、ニカはシンプルだった。

 

足を肩幅にひらき、右拳を地面につける。

そして一言。

 

 

「〝ギア2(セカンド)〟」

 

 

プシュウウウ……

 

足をまるでポンプのように潰した。

直後にニカの身体から蒸気のようなものが噴出。

 

 

 

そして。

そして。

そして。

 

 

 

その場からニカが消えた。

 

「いや、違う……!!」

 

シロコが唖然とした表情で目を見開いて言った。

 

「消えたんじゃない……、すごく速く動いているだけ?!」

 

目で追えないスピードで移動し、いつの間にか、カイザー兵達の後方にニカはいた。

 

そして

 

「ゴムゴムの~〜〜〝JET銃乱打(ジェットガトリング)〟!!!!」

 

 

 

ドドドドドドドドドドドォン!!!

 

 

無数の拳がカイザー兵に突き刺さる。

一撃一撃が銃よりも速く、重い。

 

文字通り、銃の乱射。

速すぎる拳は無数の残像を残してカイザー兵を薙ぎ払う。

 

そうして、カイザー兵およそ30以上を一瞬にして叩きのめしたニカは、理事の方を向き、先生達に振り返ることなく言う。

 

 

「ここはおれがやる。先に行って、バカを連れ戻してこい」

 

 

「……っうん!ありがとうニカ!」

 

 

「おう」

 

短くとも、とても頼りになる返事をバックに先生達はホシノの待つカイザー基地の地下へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけた男め……!!」

 

倒れ伏したカイザー兵を見て、忌々しそうにそう呟くのはカイザーPMC理事。

 

先ほど、ニカの手によって自身の私兵は全て潰され、対策委員会を追うことはもはや無理だと悟ったところだった。

 

 

理事の脳裏に『敗北』の二文字がよぎる。

 

 

「諦めろ……お前はおれを怒らせた」

 

 

「たかが一介の生徒風情が……!!」

 

 

そう悪態をつくも、だからといって何か状況が変わるわけでもない。

 

理事の奥の手だった強化外骨格は跡形もなくニカに破壊された。

 

兵は…一応まだ残っている。

 

しかしそれらの兵は風紀委員会やトリニティ、などにあてがわれている。

 

孤立無援。

 

絶体絶命。

 

万事休す。

 

そんな言葉が相応しい、そういう状況。

 

もはやここまでか…と理事が苦虫を噛み潰したような表情を作った、その時だった。

 

 

『至急報告したいことがあります!!』

 

 

通信が入った。

手負いの理事は耳元に手を当てて苛立ちを隠そうともせずに怒鳴る。

 

「なんだ……私は今忙しい!!手短に言え!!」

 

『は、ハッ!例のヤ(・)ツ(・)が動き始めました!!このままでは直に会敵します!!』

 

「ッぐう……こんな時に…、いや待てよ…?」

 

ニヤリと、理事が笑った。

これは、好機(チャンス)だ。

 

「何がおかしい?」

 

身体から蒸気を吹き出しながらニカはそう凄む。

 

「フッフッフッ……どうやら私にもまだ勝利の女神は微笑んでくれるらしい……、今すぐ例の実験場までヤ(・)ツ(・)を引き付けろ!!」

 

『ハッ!!!!』

 

「おまえ、なに言って……ッ!?まさか、おまえ!?」

 

「ほう…?中々察しが良いじゃないか。そうだとも、貴様が過(・)去(・)に(・)敗(・)北(・)し(・)た(・)かの化け物だよ」

 

「ッ!!!!」

 

ダッ!!!!とニカがその場から跳んだ。

直ぐに先生達の居る方へ向かう。

 

 

「先生達が……やべぇ……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カッコよく出ていこうと思ったのに………?カヨコ課長?」

 

「………そんな、だって……ぇ?」

 

「カヨコちゃん…?大丈夫?」

 

「な、何か、ありましたか…?」

 

「………やっと…見つけた……でも、どうして……」

 

「カヨコ!!」

 

「ッ……ごめん、社長……ちょっと…取り乱した」

 

「ちょっと取り乱した……って『ちょっと』には全然見えなかったよ?」

 

「……うん、大丈夫。ニカを追おう」

 

「………ま、言いたくなったら言いなさい、いいわね?」

 

「うん。ありがとう社長」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

「なに…この揺れ…!!」

「ちょっと、作戦成功でこのまま終わるんじゃないの!?」

「これは……熱源反応です!!それに……これは……地面の下!?」

「うへ〜……おじさんヒロイン気分は終わりみたいだねー」

「ホシノ先輩……?」

「うへへ〜……ごめんってノノミちゃ〜ん」

 

“みんな、気をつけて!!なにか……来る!!!!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遠い昔」

 

「キヴォトスの端、誰も足を踏み入れない旧都心のある廃墟で、奇妙な研究が進められていました」

 

「神を研究し、その存在を証明できれば、その構造を分析し、再現できるだろう。すなわちこれは、新たな神を創り出す方法である……」

 

「誰もが嘲笑う滑稽な仮説でしたが、そんな理論に興味を示した者たちがいたのです」

 

「『ゲマトリア』と呼ばれる者たちがその研究を支援し、莫大な資金と時間が費やされ神の研究を証明するための超人工知能が作られたのです」

 

「神という存在に関する情報を収集、分析、研究し、それを証明する人工知能……。対・絶対者自律分析型システムは、そうして稼働し始めたのです」

 

「……月日は流れ、都市は破壊され、研究所も水の底に沈みました。そのような研究が行われていたという事実すら忘れられるほどの時間が過ぎたにも関わらず、このAIは、己の任務を遂行し続けました」

 

「……そしてついに、AIの宣言が、廃墟に声高らかに鳴り響いたのです」

 

「『Q.E.D.』、と」

 

「……」

 

「これは証明され、分析され、再現された新たなる神の到来です」

 

「『音にならない聖なる十の言葉』、と己を称する新たな神」

 

「DECAGRAMMATON(神名十文字)」

 

「彼の者はまた、己の神名を予言する10人の預言者と接触し神聖な道である『パス(Path)』を拓きました」

 

「これぞまさに、新たな『天路歴程』」

 

「これは本当の神なのでしょうか?……ああ、私にはわかりません。そのようなことは、実際のところどうでもいいのです」

 

「ただ、彼の者自身の神性を証明する過程であるそれは、間違いなく真理の摂理に至る道、『セフィラ(SEPHIRA)』と呼んでも、遜色はないでしょう」

 

「……先生」

 

「あなたがこれから遭遇する預言者は、セフィラの最上位に位置する、天上の三角形の一角」

 

「そのパスは理解を通じた結合。『違いを痛感する静観の理解者』の異名を持ちます」

 

「それは……ビナー(BINAH)です」

 

「デカグラマトンの預言者相手に、あなたのいる『シャーレ』はどこまで耐えられるでしょう?あなたが積み重ねてきたその繋がりの力が果たして新たな神の御前でどれだけ意味を持てるでしょう?」

 

「あの少女たち……あるいは彼(・)の(・)少(・)年(・)の神秘は、新たな神の神秘に比肩しうるでしょうか?」

 

「そうです。これは非常に興味深い研究なのです」

 

「……先生、あなたは神を目の当たりにしたことがありますか?」

 

「なるほど……それは何よりです」

 

「しかし今回は、あなたの知っているそれとは、少し違うと思いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如先生たちの前に出現した巨大な蛇。

鋼鉄の体は白く、異様なほど大きい。

その巨体は砂から出てくるたびに砂嵐が巻き起こり、吹き飛ばされそうになる。

 

「なんなのよ!!」

「アヤネ掴まって!!」

「す、すいませんシロコ先輩!!」

 

“っく、撤退……は難しそうだねコンチクショウ!!”

 

先生が素の顔を出しながら悪態を吐く。

 

そんな先生が珍しかったのか、状況が状況なのにも関わらず対策委員会の面々は目を丸くする。

 

 

「…どうするの先生?」

 

 

シロコにそう言われて先生は考える。

 

(砂の中で動く巨大な蛇。鋼鉄の体。何より、ヘイローが存在している。つまり生徒たちのように銃弾に対して耐性のあるということ。こちらはさっきまでカイザーと交戦して若干の体力の消耗もある。そもそもあの体で押し潰されるだけでも命の危機に瀕する。ここは……撤退が一番安牌。…なんだけど、どうもそれを許してくれる雰囲気じゃないね。それに、もしコレが街なんかに侵入してきたら都市機能が機能しなくなるレベルだ。何としてでもここで食い止めないと…。でも、まだヒナたちやヒフミたちはこちらに増援に来れるほど余裕があるわけじゃない。……これなんて無理ゲーだよ本当に!!)

 

 

ここまで、およそ0.7秒。

即決即断しなければ、こちらが狩られる。

 

だからこそ異常に回る思考。

そして導き出される答えは……。

 

 

“迎え撃つよ…!!”

 

「マジで!?」 

 

“マジだよセリカ。ここを退けないと……ハッピーエンドで終わらない!!”

 

とは言ったものの、この戦いの勝率がとても低いことは先生が誰よりも理解している。

 

いくら先生の指揮が優れていようが、敵との圧倒的な格(レベル)の違い。

それだけは埋められない。

 

 

それでも……ここはやらねば。

やるしかないのだ。

 

最悪、アレを使わなければ……と先生は懐にある〝とあるクレジットカード〟の存在を微かに感じながら考える。

 

先生が冷や汗を流しながらも指揮を執ろうとした瞬間。

 

 

「わりぃ先生!!遅れた!!」

 

 

“ナ〜イスタイミングだよニカ!!”

 

 

身体から蒸気を放ちながら頭上からドン!!とやってきたのはニカ。

 

仄かに身体が赤くなっている仕組みを先生は知らないが、とにかく、この状態のニカは目茶苦茶強い。

 

それはさっきのカイザー兵無双で理解している。

 

キヴォトスでもトップクラスの戦力。

キヴォトスに来て間もない先生でも分かる、小鳥遊ホシノや空崎ヒナに並ぶ実力者。

 

それがニカ。

 

“……よし、ニカ、ホシノ、シロコをメイン火力にする陣形を組む!!できるだけ散開して敵戦力を削るよ!!ノノミ、セリカは援護射撃!!アヤネは敵の分析お願い!!”

 

「任せろ!!今度は負けねぇ!!」

「うへ〜、本当におじさんをこき使うね〜先生」

「了解」

「わかりました〜☆」

「わかったわ!!」

「了解しました!!」

 

対策委員会に指示を飛ばし、先生はできるだけ戦場から離れるように走る。

 

その際に走りながらシッテムの箱を確認して状況把握も忘れない。

 

“ヒナ!!そっちは大丈夫!?”

 

『ええ、そろそろ全滅できるわ。それより先生、さっきものすごい振動が来たのだけれど……』

 

“ごめんヒナ。できれば早く来てほしい。今けっっこうピンチ!!”

 

『すぐ行くわ』

 

すぐには来れないと分かっていながら、それでも応援を呼ぶ。

 

“ヒフミ!!大丈夫!?”

 

『ち、違いますヒフミではなくファウストです!!』

 

“あ、うんごめんね?ってそうじゃなくて、こっちに来れそう!?”

 

『え?ええっと…たぶんいけますが、そちらに到着するのはそれなりに時間がかかるかと……』

 

“できるだけ早く来てほしい、お願い!!今ピンチ!!”

 

『……ただごとじゃないんですね。…わかりました!!至急応援に向かいます』

 

かなり無理を言っている自覚はあるが、それでも助けを願う。

 

“アル!!そっちは片付いた!?”

 

『さっきの変な黒髪の人……人?とにかくその人が全部片付けちゃって出る場所なかったわよ!!お株を奪われた気分だわ』

 

“あー、うん、えっと……どんまい?”

 

『そこで疑問符をつけないでちょうだい!?』

 

“そんなことよりアル救けて!!”

 

『そんなことって……いえ、何があったの?』

 

“でっかい蛇が出てきて大変なんだ!!”

 

『…?よくわからないけど、行けばいいのね?』

 

“そう!!ニカが来てくれて助かったけど…それでもキツイ……気がする!!”

 

『わかった、それに今向かっている最中だったn『先生……さっきの男の子……名前は本当に日珠理ニカ…なんだね?』……カヨコ?』

 

“え…?あ、うん。私はそう聞いてるよ?もしかして知り合い…?”

 

『……………まぁ、そんなところ』

 

“へー……って、そろそろヤバイ。一旦通信切るね!!”

 

 

さぁて、カヨコが少し気にはなったが、取り敢えず準備は整った。

 

今にも食いちぎってきそうな雰囲気でこちらを睨んでいたビナーが動き出す。

 

 

“そろそろ限界かな……。それじゃあみんな!!”

 

 

 

 

 

 

 

 

総力戦開始だ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだホシノ」

 

「ん〜?どうしたのニカ君」

 

「後でおまえ一発殴る」

 

「うへぇ!?」

 

「ん。賛成。ホシノ先輩硬いからたぶん大丈夫」

 

「シロコちゃん!?」

 

「にしし……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビナーの咆哮があたりに衝撃波のように拡がっていく。

それによって砂嵐が発生して視界が悪くなる。

砂によって銃弾と

 

先鋒ニカ。

 

「『武装色』硬化!!」

 

瞬間。

ニカの腕が黒く染まった。

 

「うへ〜……びっくり人間だねー?」

「ん、ニカがよくわからないことするのはいつも」

 

 

「ゴムゴムの~〝鷹(ホーク)ライフル〟!!!」

 

腕を後ろに引き伸ばしそこに捻りが加わる。

張力と回転力の乗った黒い拳は真っ直ぐビナーの額に直撃する。

 

しかし。

 

「全然効いてないね……」

 

「ニカ君の一撃でも無理か〜……。これは、ちょっと不味いかもね」

 

ビナーの頭にめがけて銃を発砲するシロコとホシノがビクともしないビナーにさらに警戒心を高める。

 

〝ホシノとシロコは重点的に頭を狙って!!ノノミはタゲを取らないように全体的に、セリカはアイツの眼を狙って!!」

 

ビナーはそれに対してまるで怒りをあらわにしたかのようにニカ達にその口を大きく開ける。

 

その口の中に、全てを焼き焦がす光が収束されていく。

 

 

アツィルトの光

 

 

その動きに見覚えがあったのか…。

ニカは直ぐ様自身の指を噛む。

 

 

「〝ギア3(サード)〟」

 

 

「〝骨風船〟!!!」

 

 

瞬間。

ニカの腕が肥大した。

 

 

“まーたニカがなんかやってる……いや何それ!?”

「腕が大きくなった……?!」

「ニカ君の身体って本当にどうなってるの〜?」

 

各々がニカの変わり様に驚いている最中、ニカは左腕を頭上へ伸ばしていた。

 

 

「にしし……おれの技はみんな…戦いの中で一段階進化する!!」

 

 

まるで謳い文句のように声高らかにそう言ったニカの口元はニカッと笑っていた。

 

 

「骨から骨に移動する空気(パワー)!!」

 

 

肥大した右腕から、身体を経由して頭上へ伸ばした左腕に移す。

 

 

「みろ!!この左腕は巨人族の腕!!!」

 

 

肥大した左腕を後ろに引き伸ばす。

やけに丸みを帯びたその腕は、漆黒に染まっていた。

 

 

「骨のある戦いなら見せてやるよ……!!」

 

 

そして、振り抜かれる。

 

 

「ゴムゴムの~〝象銃(エレファント・ガン)〟!!!!」

 

 

 

力を溜めていたビナーの口から勢いよく殲滅の光が吹き荒れたのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

“ッ…!!今がチャンスだよみんな!!総攻撃だ!!”

 

“というか、ニカはゴム人間なら、熱に対しての耐性はないはず何じゃないの!?”

 

ニカがゴム人間なのは先生達も理解しているため、打撃系の攻撃などは無効化したりしても、熱に耐えられる訳ではないことは自明である。

 

実際のところ、武装色と呼ばれるソレを纏ったニカが腕を焼かれることはないのだが……。

 

しかし、その声を聞いたホシノの行動は迅速だった。

 

 

「ちょっくら失礼するねニカ君!!」

 

 

ニカの巨人の腕と見紛う巨腕に跳躍だけで飛び乗りそこを駆ける。

 

熱の発生源に近づけば近づくほど熱く、身が焼かれそうになるも、全身に駆け巡る神秘でゴリ押す。

 

“……!そういうことか……、シロコ、セリカ、ノノミ!!全員でアイツの眼を狙らい撃ちにして!”

 

 

「ん、了解。火力支援を始める!!」

「もぉ〜〜〜!!ホシノ先輩もアイツも無茶しちゃって!!許せないっ!!」

「後でお説教ですね〜☆では、全弾はっしゃー!」

『ホシノ先輩!!後方支援到着しました!』

「うへ〜、ありがとねアヤネちゃん。タイミングバッチリだよー」

 

 

ニカの〝象銃(エレファント・ガン)〟とビナーの〝アツィルトの光〟が拮抗している最中。

 

シロコはドローンからミサイルを。

ノノミは愛銃から乱射を。

セリカはアサルトライフルとは思えない狙撃力を活かしてビナーの眼と思わしきところを徹底的に撃ちまくった。

ホシノはアヤネから貰った補給品で銃弾を補給しながら駆けていく。

 

 

GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!

 

 

ビナーから苦悶の叫び…のようなものが木霊する。

 

そこに、ホシノが立ち幅跳びのようにビナーの顔に乗り、そのショットガンでゼロ距離から全力で撃つ。

 

 

ズダンッッッ!!!!

        ズダンッッッ!!!!

   ズダンッッッ!!!!

                 ズダンッッッ!!!!

      ズダンッッッ!!!!

               ズダンッッッ!!!!

           ズダンッッッ!!!!

 ズダンッッッ!!!!

 

 

 

GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?!?!?!?

 

 

 

ビナーが再度咆哮を上げるも、丁度ニカの拳がアツィルトの光を打ち破り貫く。

 

直ぐ様バックステップでそこから離れるホシノ。

 

直後。

 

ビナーは数百mブッ飛んだ。

 

 

 

「ハァ……ハァ……う、うへ〜…おじさんちょっと疲れちゃったかもー」

 

さすがのホシノも消耗したらしく、お尻からドスンと地面に座り込んでしまう。

 

『さ、さすがにやったわよね……?』

 

「ん。セリカのおバカ」

 

 

「……まだだ!!まだ、終わってねぇ!!!」

 

『うぇ!?』

“!?”

「ん、これはセリカのせい。責任取るべき」

『え、私のせい!?』

 

『先生!!ニカさんの言うとおりです!!熱源反応が、まだ…!!』

 

シッテムの箱在中メインOS『アロナ』が先生にしか聞こえない声で忠告する。

 

まだ、終わっていない……!!

 

 

 

GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!

 

 

街一つ分を覆い尽くすような砂嵐が、遥か遠くのビナーから発生した。

 

 

「………!!」

「うへー、これは、本当にまずいかも……」

「砂嵐が……!!これは、ちょっとまずいかもしれませんね…」

「ど、どうすんのよ!!」

 

『早くそこから離れて下さい!!』

“ッ!!!みんな直ぐそこから離れて!!”

 

このままでは砂嵐に呑まれる。

さすがのキヴォトス人と言えども、砂に埋もれて呼吸が出来なくなれば……〝ヘイローが壊れる〟。

 

その時、ニカが息を吸い込んだ。

 

「ゴムゴムの~〝風船〟!!!!!!!」

 

吸い込んで、吸い込んで、吸い込んで、吸い込んで……。

 

「いやどこまで吸うつもりさ!?」

 

もはや身体だけでとんでもない大きさに肥大したニカは、さすがに無理がたかったのか辛そうだ。

 

「おい、いおお!!おいお!!おえおういおにあうええお!!!(おい、シロコ!!ホシノ!!おれの後ろに隠れてろ!!!)」

 

「なんて?」

 

「たぶん、下がれとかだと思うよ?」

 

「なるほどねー」

 

適当なことをシロコが言いながら、ちゃっかりニカの後ろに隠れる。

 

そして、砂嵐が目前まで迫ったところで……。

 

 

ブオオオオオオオオオ!!!!!!

 

 

溜めていた空気を吐き出した。

 

その衝撃で砂嵐が裂ける。

 

“いや、そうはならないでしょ!!?”

 

『先生、もう諦めよう?アイツ、だいたいあんなんばっかよ』

 

“え、えぇ……?”

 

その光景を目の当たりにした先生は思いっきりツッコむが、死んだ目でセリカがそう言うのに対して若干たじろぐ。

 

こころなしか、ビナーですら引いているように見える。

 

「よーし、晴れた!!」

 

「おじさんついていけないよ〜……いやマジで」

 

「ホシノ先輩。キャラが壊れかかってるよ」

 

兎にも角にも、砂嵐という現実的な驚異はニカが文字通り吹き飛ばした。

 

「でも、どうする〜?このままじゃジリ貧だよー」

 

「ん、やっぱりニカが来た程度じゃ無理みたい」

 

「おまえ失敬だな!!おまえ失敬だな!!!!」

 

 

(茶番をする暇がある位には余裕……ってことでいいのかな?)

 

 

先生がそんなことを思ったりするが、ホシノの言った通りこのままじゃジリ貧だ。

 

あちらは機械。

こちらは人間。

 

両者には明確に〝体力〟という限界に違いがある。

 

……ヒナ達を待ってから攻めた方が現実的かも、と先生が思い始めたとき。

 

グイッグイとニカが伸脚をしたり、腕十字をし始めたりした。

 

 

「まだ秘策とかない?」

 

「うへー、赤くなったり、黒くなったり、大きくなったり……もうコレ以上はおじさん驚かないぞ〜?」

 

「にしし……!!ああ、ある!!」

 

ニヤリと口元を笑顔に歪めながらニカは断言する。

 

「〝2(セカンド)〟でも〝3(サード)〟でもねェ…!!」

 

黒く染まった腕にいきなり噛みつくニカ。

 

「〝筋肉風船〟!!!!」

 

その腕が先程のように肥大していく……否。

 

何かが違うことに、近くにいたシロコとホシノは気づく。

シッテムの箱でニカを見ていた先生も、その異様さに目を見張る。

 

黒い腕が、肥大していく。

問題は腕だけでなく、全体的に肥大していく。

 

白い煙がニカの体から吹き出て、それが暴風となってシロコとホシノに襲う。

 

思わず目を瞑るシロコとホシノが次に目を開けた時。

 

まだ、煙は晴れていなかった。

だが、その奥に見える影が……おかしい。

 

ざっと4m位だろうか?

ナニカがいる。

 

 

「………おれは、2年間!!怪物みてェにデカイ猛獣達と戦い続けて来たんだ」

 

煙が晴れる。

 

「あいつらをねじ伏せる為に、この〝巨体〟と〝弾力〟が必要だった!!まぁ…まだ、未(・)完(・)成(・)だけどな」

 

 

その巨体が露わになる。

 

 

「〝ギア4(フォース)〟」

 

 

「『弾む男(バウンドマン)』!!!!」

 

 

どん!!

 

羽衣のような蒸気で身を包み、四肢は赤黒く染まっている。

髪は逆上がり、顔は歌舞伎役者のように厳つい。

構え方も歌舞伎者を意識しているのか、妙に様になっている。

 

だが……。

 

「……秘策…?」

 

ゴイン!

ゴイン!

 

凄いんだろうけどもう少し何とかならなかったんだろうか?と首を傾げるホシノ。

 

「…………ニカ、真面目にやって」

 

ゴイン!

ゴイン!

 

シロコは思いっきりふざけていると思い込んでいる。

それもそうだろう。

ニカは今何もしてないのに、地面を間抜けに跳ね続けている。

 

「秘策だし真面目だ!!おまえら失敬だな!!」

 

ゴイーン。

ゴイーン。

 

ゴムの弾力が強化されたニカのギア4『弾む男(バウンドマン)』の力の一つ…自身が立つことすらできない程の弾性を得る。

 

そして、この形態はまだニカは未完成と言った。

 

5分だ。

 

5分間、ニカに敵う者はいなくなる。

 

 

「ここから先、おまえは手も足も出せねェぞ!!」




ゲヘナに行こうとしたら迷ってアビドスへ。

餓死寸前でセリカに拾われニカはアビドス高等学校に。

先生とアビドスで再会するも、ヘルメット団を倒した後にどこかに去る。

ゲヘナに戻り、風紀委員会や万魔殿とイザコザ。

かつての仲間に会いに行き、また冒険に行こう!!と誘うもヒナに強制連行され、進級試験と留年の間に溜まっていたレポートの提出のため数日間地獄を……。 

赤点ギリッギリで何とか3年に進級。

授業などをボイコットしてアビドスへ。

丁度対策委員会がアビドス砂漠へ行き、カイザーと揉め事する前だったため、一緒に同行。

仲を深める。

ホシノとの問答。

現在へと至る。


目茶苦茶端折った……。
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