私は魔眼の勇者またの名をただの女の子という   作:✛パグだフル✛

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伝説の料理『辛ぃうどぅん』への道1

☆☆☆

 

ついった~。

盗賊を倒した後は襲ってきた魔物をフィーデちゃんが蹴散らしてくれたので安全に町までついた。

 

それと街に入る手続きもスムーズに終わった。

 

「アリア、お腹空いた」

 

そうだよね。

お腹空いたよね。

だって、すっごいいい匂いするもん。

三食しっかりとった上でおやつをさっき食べたばかりでもお腹空くよ!

 

これって、スパイスの匂いだよね。それも『辛ぃ』の匂いだ。

プグナと言えば『辛ぃ』の発祥の地として有名だけど、ここまで美味しそうな匂いを漂わせている場所は他にない。

プグナ人の私が言うんだから間違いない。

ここの『辛ぃ』屋さんは絶対美味しい。

 

ぐぅ

 

ほら、お腹も言ってるもん!さっき食べたケーキとお肉とクッキーは消化したから『辛ぃ』を寄こせって!

 

「…うん、行こ」

 

我慢せずに一杯食べてストレスを溜めないのが女の子が可愛くなるための秘訣だよね?

きっとそう!

 

 

私達は意気揚々と『辛ぃ』屋さんに入る。

 

「いらっしゃい」

 

お店の人は背中が曲がってる小さいお爺さんだけみたい。

かなり高齢みたいだけど、手際は凄くよくて、凄い速さで仕事を回している。

 

「お嬢さんたちは何にする?」

 

私とフィーデちゃんが席に着くとお爺さんが注文を聞いて来る。

他のお客さんを見てみると、カッツ辛ぃやスープ辛ぃ、グリン辛ぃ、キッマ辛ぃにシーフードゥ辛ぃ、ムッギ辛ぃ、クールメ辛ぃなど様々な『辛ぃ』が食べられている。

私はその中でもグロリアやフェリキタスで一般的に食べられており、『辛ぃうどぅん』にも使われたとされるオーソドックスな『辛ぃ』ライスにした。

この店で私の頼んだタイプの『辛ぃライス』を頼んでいる人はいないけど、私はこの何の変哲もない『辛ぃ』が結構好きだ。勿論他の『辛ぃ』も美味しいけどね。

 

フィーデちゃんは悩みに悩んだ末に『揚げ物タワー辛ぃ』にしたらしい。

ライスが見えないくらいに揚げ物が積み重なり、その上から『辛ぃ』がかかっているメニューだ。

 

もう『辛ぃ』というよりも揚げ物が本体の料理だね。

 

でも、勿論美味しそう。さっき注文したばかりだから、来るのは何時になるかな。

 

「……楽しみ」

「そうだね」

「出来たぞ」

 

早い!

頼んでから二十秒も立ってない!

さっき、注文聞かれたばっかりなのに!

凄いな。今までもこうやってお店を守って来たんだろうな。

 

じゃあ、フィーデちゃんには悪いけど先にいただくかな。

注文した食べ物が直ぐに来るのもこういったシンプルなメニューの利点だしね。

 

「……ありがと、いただきます。」

「おいおい、待ってくれお嬢ちゃん。出来たのはもう一人のお嬢ちゃんの分だ」

 

えっ⁉何で?

どう考えてもフィーデちゃんの頼んだメニューよりも私のメニューの方が作るの楽だと思うんだけど。

だってフィーデちゃんのメニューって私の頼んだメニューに揚げ物タワーがついてくるんだよね?

 

「…私のが遅いの?」

「うむ、白髪の嬢ちゃんのはヒュンヒョンと出来るが、桃色髪の嬢ちゃんのはな」

 

いや待って、ヒュンはともかくヒョンってどういう意味が込められた表現⁉。

ヒョイっていうのと同じ感じの意味合いなの⁉それとももっとこう、ふわふわって感じなの?いや、ふわふわって感じって何⁉

駄目だ、混乱してきた。

 

「……取り敢えず、私のは時間がかかる?」

「ああ、…その、魔法の呪文がの?」

 

待って⁉魔法の呪文ってあれ⁉

可愛い女の子たちが一杯いる店でやる「美味しくな~れ」ってやつ?

 

い、いやいや、それは無いか、だってお爺さん…………あれっ⁉ハートマーク作って恥ずかしそうに顔背けてる!

嘘っ、本当にそうなの⁉

 

いや別にいらないけど!

言っちゃなんだけど、お爺さんじゃあんまり需要無いよ‼

あれは可愛い女の子がやるから効果があるのであってお爺さんじゃ駄目なんだよ!

 

「ふぅ、久々じゃからな。上手くできるか分からん。少し待っておれ。」

 

道理で!道理で周りに私と同じタイプの『辛ぃライス』頼んでいる人がいない訳だよ!

お爺さんは厨房に入るとなんか呪文みたいなのを唱えだした。

 

何かの魔物の骸骨とかも取り出してる。

ちょっと待って、一応言って置くけど、黒魔術みたいなのも嫌だよ?

そんな闇の魔法使いが使ってそうな食べたら呪われるタイプの魔法の呪文もそれはそれで嫌だからね⁉

 

そうして暫くたった頃お爺さんが『辛ぃライス』を持ってきた。

大丈夫だろうか?

凄い心配なんですけど。

 

 

私はお爺さんがテーブルに置いた『辛ぃライス』を食べるためにスプーンを持つ。

しかし、ここでお爺さんがストップをかけた。

 

「まてっ!まだ最後の仕上げが終わっていないだろう」

 

最後の仕上げ?ってまさか!

やっぱり、お爺さん手をハートマークにして構えてるよ!言うつもりだよ!やるつもりだよ。

 

「さぁ、お前も構えろ‼」

 

何か私まで巻き込まれちゃったよ‼

ただ、お爺さんの眼力がやれと言っている。

このままじゃ、一生食べれないよ!

 

「美味しくな~れ、美味しくな~れ、ラヴリーヴィーム♡♡♡」

「…美味しくな~れ、美味しくな~れ、ラヴリービーム」

 

よしっ、これでもう食べていいよね。私はお爺さんの方を見る。

すると、お爺さんも頷いてくれる。

 

「まぁ、及第点といった所かの。因みに今のビームで美味しくした割合は儂が9お前が1だ。」

 

 

うるせぇ、だったらやらせんな‼

 

落ち着け、取り敢えず『辛ぃ』を食べよう。

私はスプーンで『辛ぃ』を掬い口に運ぶ。

その瞬間口の中で旨味が弾けた。

口の中で大爆発が起こった。

 

う、嘘だ。こんな嫌な呪文の全部乗せみたいな『辛ぃ』がこんなに上手いなんて。

 

「どうだった、アリア」

「…お、美味しい」

「私にも、食べさせて」

 

フィーデちゃんが私の『辛ぃ』を一口食べる。これってもしや間接キッス⁉

 

「ほんとだ、美味しい。コクとまろやかさが段違い」

「ふふん、そうじゃろう、そうじゃろう。魔法の呪文の効果じゃな……じゃがな」

 

どうしたんだろう。こんなに美味しい『辛ぃ』が作れるのに、何か不満なことでもあるんだろうか?

私は首を傾げる。

何が原因でお爺さんはこんなに暗い表情をしてるんだろう。

 

「…どうしたの?」

「いや、なに、儂の『辛ぃ』などあの日妻と食べた『辛ぃうどぅん』と比べたらうんこみたなもんじゃと思っただけじゃ」

 

いや、辛ぃ』食べてるときにそう言うこと言うのやめて貰っても良いかな⁉

何か色味とか見た目とかでそう見えちゃうからさ!

 

別にお爺さんの料理を貶したい訳でも『辛ぃ』という料理を貶めたいわけでも無いけどさ。

ご飯中はよそうか?

 

「おっと、すまんかった。今うんこ食べてる所じゃったな。」

「…『辛ぃ』だけど?」

「そうじゃった。『辛ぃ』だった。儂、味に不満のある『辛ぃ』はもううんこと同じなんじゃないかなって思えてきてしまってるんじゃ。悪い癖じゃったな。すまんすまん。」

 

ほんとに勘弁してほしいよ。

でも、『辛ぃうどぅん』か、かつて存在したとされる幻の料理。

この人はそれを食べたことがあるんだ。

 

私はフィーデちゃんと目を合わせる。

やっぱり、フィーデちゃんも同じことを考えていたのか。

 

私達は頷き合うとお爺さんに向き直る。

 

「…『辛ぃうどぅん』作るつもりなら手伝わせて?」

「うん、私達『辛ぃ』には一家言ある」

「ほう?じゃがな……儂もあの日食べた『辛ぃうどぅん』を再現しようと試せるパターンは試している。後試せていないのはプグナ七代珍味くらいのもんじゃ。」

 

プグナ七代珍味。

天空鮫のフカヒレ

千年樹の実

砂漠竜の大トロ

要塞仙人掌の茎

転移鮭の皮

古代松茸のトリュフ

 

どれもこれも入手困難の高級食材。

特に、天空鮫と要塞仙人掌、砂漠竜は入手するには討伐するほかなく腕利きの狩人が必要になってくる。

それに、千年樹は天空鮫の縄張りにあり、結局は腕利きの狩人が必要になる。

 

だが、今回その点に留意する必要はない

 

「なら、私たちと七代珍味、取りに行こ?」

「……お嬢ちゃんたちもしや狩人か?」

「私はそう。アリアは違う」

「ふむ、『辛ぃ』に一家言ある狩人か、こりゃ、頼りになるのう」

 

お爺さんが嬉しそうに頷いている。

ふふふ、これで『辛ぃうどぅん』を食べるのも夢ではなくなった。

 

「して、『辛ぃ』に一家言あるというのは具体的にどの程度の腕前なんじゃ?」

 

腕前?私とフィーデちゃんは見つめ合う。

腕前…

 

「…私とフィーデは『辛ぃ』に一家言ある」

「それは聞いたのう。だから具体的には…」

「「食べる方で」」

「そっちじゃったか……」

 

すまんな。料理の方は家庭でお出しできる程度で店は開けないくらいです。

で、でも、フィーデちゃんは戦えるし、私も神の光(アインソフ)で回復とかは出来るよ?

バフとかもかけれるよ?神の光(アインソフ)で。

だ、だから、私たちを連れっておくれ~。

 

☆☆☆

 

『辛ぃ』屋のお爺さんが砂漠の真ん中、巨大な樹の下で天空鮫について説明してくれる。

 

「よいか?天空鮫の腹には魔力を探知する特殊な器官が存在する。これは魔力を保有する人間だけでなく、大気に含まれる魔力も含まれる。

つまり、生き物が近寄らなくても、それこそ投擲などの方法で攻撃したとしても直ぐに気づかれ回避されてしまう。

まぁ、奴さんの胴体じゃ当たったとしても大したダメージにはならんじゃろうがな。」

 

天空鮫。

別名スカイシャーク。

その名の通り空を縦横無尽に飛び回る空のギャング。全長は80メートル、横幅も40メートルあり、そのあまりのデカさに他の飛行型の魔物も天空鮫には近づくことが無いと言われている。

それでも、飢え死にすることが無いのは天空鮫がそれだけ速く空を泳ぐことが出来るからだ。

 

「じゃあ、どう倒すの?」

 

フィーデちゃんの疑問は尤もだ。

これだけ聞けばこんな出刃が目な魔物をどう倒せばいいんだ、となるだろう。

しかし、天空鮫には明確な倒し方が存在する。

 

そう

 

「…反応できない速度の高火力を叩きこむ」

「上から奇襲をかけるのじゃ」

「「え?」」

 

私とお爺さんが見つめ合う。

 

「……おぬし、今反応できない速度の高火力攻撃を仕掛けると言ったかの?」

「…うん」

「ま、まぁ、初めて天空鮫を見たのであれば、そう思っても仕方がない。」

「…前にパーティーで討伐したことある」

「……。……そうか……(いや、討伐したことあるの⁉それであの回答が出て来るって一体どんな脳筋パーティーじゃ!巨体を誇る天空鮫相手に一体どんな攻撃を叩きこんだんじゃ!)」

 

いやぁ、そうか。あれが正攻法じゃなかったんだ。

道理でマカローさん引き攣った顔してたわけだよ。

 

納得。

 

私が過去を振り返り一人納得していると、フィーデちゃんが目を瞑って唸り声をあげる。

 

「…どうしたの?」

「どうやって天空鮫を倒そうかと思って。

千年樹よりも高い所を飛んでるから、私が助走をつけて跳んでも届かないし。となると、千年樹を登るのが手っ取り早いんだけど……」

「それはやめておけ。千年樹に登っている途中で勘づかれて迎撃されるのがオチじゃよ。」

「そっか、なら…」

 

 

……………

 

 

私とお爺さんは天空鮫を見上げる。

フィーデちゃんの出した案は本当に上手くいくのだろうか?

 

そんな不安もある。

 

「……上手くいくと思う?」

「うむ、上手くいけばそれが一番良いな。」

 

私達はフィーデちゃんの作戦が上手くいくことを祈る。

 

そして、ドゴンという音が天空鮫の方から聞こえて来た。

直ぐ後には地上に大きなクレーターを作りながら、天空鮫の頭部を貫いたであろう槍が突き刺さる。

 

ほんとに、ほんとにやりおったフィーデちゃん。

 

天空鮫は力尽き地上に落ちてくる。落ちてくる天空鮫の頭部には大きな穴が空いていた。フィーデちゃんの投擲でやられたのだろう。

 

「ね?上手く言ったでしょ?」

 

天空鮫の背中から降りて来たフィーデちゃんは私たちの前に着地するとそう言ってきた。

 

「……まさか本当にやり遂げるとはなぁ。」

「……ね」

 

私達はフィーデちゃんの語った作戦について思い出していた。

 

 

「そっか、なら私が天空鮫の縄張りの外から飛んで、上空を取って槍の投擲で倒すよ。」

「ふむ、先ほど跳んでも届かないと言っていなかったか?」

「うん、だから飛ぶの」

「ふむ、もしや空を飛ぶということか?」

「だから、そう言ってるよ?」

 

ほほう、成程分かった。つまり、フィーデちゃんは金属魔法竜巻(トゥルボー)を使うことが出来るのだ。

それなら、空を飛ぶという発言が出てくるのも可笑しくない。

どうやら、お爺さんも勘づいたようだ。

 

「成程、お主、金属魔法竜巻(トゥルボー)が使えるのだな?」

「ううん、使えないよ?」

 

え、じゃあ、どうやって空を飛ぶの?

この世界だと空を飛ぶ方法と言ったら金属魔法竜巻(トゥルボー)を習得するのが主だ。

 

他の方法なんて聞いたことがない。

 

「……どうやって、飛ぶつもり?」

「え?槍をぶ~んってやって飛ぶよ」

 

いや⁉ぶ~んって何⁉

そんな方法で飛べるわけが……そう思ってたんだけど、フィーデちゃんは槍を自らの頭上で回転させて空を飛んでいた。

 

ほんとにぶ~んって空飛んでるわ。

 

「成程、摩訶不思議なこともあったもんじゃなぁ」

 

適応力が凄い!

ちょっと遠い目して、そんな方法もあるんだぁって感心してるよ!

 

っと、そんなやり取りがあった訳だけど、まさかほんとにあの方法で討伐するとは……。

ま、取り敢えず倒せたならいっか。

 

私たちは絶対に『辛ぃうどぅん』を食べるんじゃ!

 

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