私は魔眼の勇者またの名をただの女の子という   作:✛パグだフル✛

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奇跡も魔眼もあるんだよ

☆☆☆

 

私達は『要塞仙人掌辛ぃうどぅん』の他に『要塞仙人掌と天空鮫の辛ぃうどぅん』、『千年樹の実と要塞仙人掌辛ぃうどぅん』など様々なパターンの『辛ぃうどぅん』を食べた。

どれも美味しかったけど、やっぱりお爺さんが食べた『辛ぃうどぅん』はこのどれでもないみたい。

 

「よし、それじゃあ、この後は古代松茸のトリュフを探すぞ。古代松茸は砂漠のどこかに埋まっている高級食材。天空鮫や要塞仙人掌と違い戦闘をする必要はないが、はっきり言って見つかるかどうかは運次第じゃ」

 

お爺さんの説明から察するに今回の食材は討伐では無く採取するものらしい。

だったら、私にも出来ることがあるかも。

 

私は気合を入れて袖をまくる。

それと隣に立っていたフィーデちゃんもやる気に満ち満ちているみたいで槍を構える。

 

え、槍?

 

「分かった。今度は古代松茸のトリュフの狩猟だね?」

 

狩猟⁉いや、狩猟クエストじゃなくて採取クエストじゃないかな?

 

「…フィーデ、松茸はモンスターじゃないから採取だと思う。」

「でもアリア仙人掌は攻撃してきたよ?」

 

たし、かに…………。

 

それを言われてしまえば松茸だから攻撃してこないなんてことは無いのかもしれない。

そう言えば、勇者として旅していた時も食人植物とか普通に自生していた場所もあったし、松茸が攻撃してこないっていうのは偏見かも。

 

しかも、よく考えれば古代松茸も松茸のトリュフも聞いたことが無い。

じゃあ、やっぱり松茸のモンスター?なのかな

 

私はお爺さんの方を見る。

 

「うむ、安心せい。古代松茸のトリュフは攻撃性を持たない松茸じゃ。

というのも古代松茸には土精霊を引き付ける特徴があってなそれで多くの人間に魔術的素材として重宝されていたんじゃ。そうして古代松茸はどんどんと数を減らし、生き残ったのは土の中に潜るようになったもの、つまり古代松茸のトリュフと攻撃性を得た松茸、そして土精霊を引き寄せない普通の松茸に分かれたのじゃ」

 

いやちょっと待って⁉古代松茸の歴史にもびっくりしたけど攻撃性を持った松茸って何⁉

私初めて聞いたんだけど、結構当たり前にいるものなの?

 

「成程、人の愚かさが松茸の反感を買い、反乱を許してしまったんだね。」

「…そうじゃのう人の飽くなき欲望、傲慢さ、そしてうっかり絶滅危惧において込んでしまう豪快さが生んでしまった過ちじゃな」

 

いや待って!フィーデちゃん攻撃性を持った松茸に突っ込まないの⁉

というか、絶滅危惧まで追い込んでおいてうっかりとか豪快さとかで片づけないで!

 

松茸さんが可哀そうだよ!いや、今でも牧畜とか栽培とか採取、狩猟とかやってるけど、狩りつくすのはやりすぎじゃないかな。せめて食べる分だけにしたりとか、もう少し節操を持とうよ!

 

綺麗ごとだけども!

 

私の心の声は誰にも届くことは無い。陰キャだから。

いや、陰キャだからじゃなくて伝えるべき相手(当時の人間)がもうどこにもいないから。

別に私が陰キャだからとかじゃなくて、もっとこう大いなる流れによって不可能になってしまったのだ。

時間と言うね。

 

誰に言ってるんだろう私。

あ、陽キャに憧れる内なる自分(イマジナリーフレンド)か。

いや、イマジナリーフレンド(内なる自分)か。

 

「まぁ、松茸の歴史はこれくらいにして古代松茸を探すとしよう。ほれアリアぼうっとしとらんで地面を掘るんじゃ。」

 

私は小さいスコップと熊手を渡される。

ちょっと待って潮干狩りかな?

古代松茸はここら辺で取れるのかな?

ちょっと聞いて見よう

 

「……古代松茸はここら辺に多いの?」

「うん?いや、北東砂漠であれば大体どこも変わらん。群生地のようなものは無いんじゃ。古代松茸のトリュフは土精霊の力で地中を移動できるからのう。しかも、古代松茸のトリュフ同士はお互いに距離を取り合う性質がある。」

 

なるほどなるほど、いや…この広大な北東砂漠全土から探し当てるの⁉

 

「うむ、それにどのくらいの深さにいるかもわからん。100メートル下まで掘り進めてようやく一本見つけたという話もあれば、一メートル掘り進めた場所で一本見つけたという話もある。そこも運次第じゃな。」

 

なんてこったいそんなの見つかる訳無いよ。

せめて、範囲がもっと狭かったらなぁ。

とか言いつつも、私は黙々と掘り進める。だって、人が二人以上いる場所で異議なんて唱えられないよ。陰キャ舐めんな!

 

まぁ、もう少ししたら、どっちかが諦めて辞めようっていうだろう。

うん。

 

うん?

ここなんかある?私は砂漠に埋まっていた黒い物体を引っこ抜く。

あれ、まだある。合計3本。

何だろうこれ?

 

私はお爺さんの下へ持っていく。

 

「……これ」

「これは………間違いない古代松茸のトリュフじゃ。」

 

うっそ、そう簡単に見つかるわけ無いと思った矢先に見つかったよ。

これは………私の日ごろの行いの結果?

いや、流石にそこまで徳を積んだ記憶が無くて怖いんだけど………私明日死ぬんかな?

 

ちょっと心配になってきちゃったよ。

 

ま、まぁ、今は古代松茸のトリュフが手に入ったことを喜ぼう。

 

「……なら、これで『辛ぃ』作れる?」

「うむ、ただこれだけ幸先が良いのなら転移鮭も確保しておきたいのう」

 

成程、転移鮭………これに関しては流石に狩猟系だろうか?

戦闘はあまり役に立てる気がしないし、フィーデちゃん頼りになっちゃうな。

 

私はそっとフィーデちゃんの方を向く。

しかし、フィーデちゃんは槍を構えることなく、ぼぉっと立っている。

あれ?古代松茸のトリュフのやる気はどこにいっちゃったんだろう?

 

「……フィーデ、多分今回は狩猟だよ」

「何言ってるのアリア?どう考えても採取でしょ?」

 

いや⁉採取では無いと思うよ!魚取ることを採取とは言わないし。

 

ねぇ、これはどう考えても狩猟でしょ?

転移なんて高等なことが出来る鮭なんだから凶暴なモンスターだよね?

私はその思いを込めてお爺さんに視線を向ける。

 

その私の視線に気づいたお爺さんは鷹揚に頷く。やっぱり!

 

「どちらも不正解じゃ。正解は漁猟じゃな。狩猟というのは主に鳥や獣、それとモンスターを狩ることを言う。アリア嬢ちゃんは転移鮭をモンスターと勘違いしたのかもしれんが、奴は狩人協会にて希少魚として登録されている。

一応、転移という他に類を見ない特異な力を持っているが、それだけじゃしな。

ただ、その能力で餌が多い場所や住みやすい環境に移動しているため身の質も油のノリも段違いに良い。」

 

な、成程、確かにそれは凄い美味しそう。

でも、仮に普通の鮭と見た目がそう変わらないならどうやって、捕まえるんだろう?

 

そのことに関してフィーデちゃんも同じことを思ったのか首を傾げる。

 

「それで、どうやったら捕れるの?」

「うむ、良い質問じゃ。基本的に転移鮭はオアシスにいることが多い、時折地下水脈を泳いでいることもあるそうじゃが、まぁ、仮にそうだとしても見つけることは難しいじゃろう。

儂らはここから最も近いオアシスに向かい釣り竿で気長に…………」

 

お爺さんがそこまで言いかけた瞬間ドンっという音と共に、水柱と三匹の鮭が空から降ってくる。

 

これは………

 

「…うむ、転移鮭じゃな」

 

やっぱり、そうなのか………。今度は探す暇すらなく見つけ出すことが出来てしまった。

いや、最早見つけ出してすらいない。文字通り空から降って来た。

成程、空から槍が振ってくるかもって言ったけど振って来たのは鮭だったと、ってやかましいわ。

 

「凄い、これもアリアの魔眼の力?」

「え?」

 

確かに今まで私の周りでは不可思議なことが起こることが多かったけどこれらは全て大精霊の力だったの?

でも、言われてみればしっくりくることもある。

 

私は自然と自分の瞼を撫でる。

 

「ほう……お主魔眼持ちなのか……。ふむ、確かに瞳の色が変わっておるわ。

これは大精霊クラスをその身に宿しているのかのぉ。

 

にしても、これ程強力な魔眼使いなどフェリキタスから輩出されたという2世代前の勇者様ぐらいじゃなかろうか?

まぁ良い『辛ぃ』を作ろう!また、様々なバリエーションの『辛ぃうどぅん』が作れそうじゃな」

 

やった!『辛ぃうどぅん』特に転移鮭は話を聞いていて興味があったんだよね。

 

一体どんな『辛ぃうどぅん』になるんだろう。

楽しみだ。

 

 

お爺さんはその場に鍋を置き、火をつけ料理を始めた。

 

 

 

作った『辛ぃ』は転移鮭と古代松茸のものや今まで集めてきた食材で様々なパターンを試した。

その中でも転移鮭と古代松茸のトリュフの『辛ぃ』は凄く美味しかった。

今まで一番美味しかったかも!

 

『辛ぃ』全体にトリュフの風味が移っていて尚且つ、転移鮭のうま味がしみ込んでいた。身も柔らかくほろりと口の中で崩れて『うどぅん』も良いけどご飯と一緒にかき込むと最高だった。

 

因みにフィーデちゃんは転移鮭と要塞仙人掌の『辛ぃ』がお気に入りだったみたいで

「転移鮭の持つ風味と油がしみ込んだ『辛ぃ』に要塞仙人掌が入ることで爽やかな風味が足され、比較的重めだった『辛ぃ』を格段に食べやすく変えている!シェフを呼んで!」

 

「シェフは儂じゃよ」

 

なんてやり取りがあった。

 

私自身、他の『辛ぃ』も美味しかった。

ただお爺さんからするとやっぱり昔食べた『辛ぃうどぅん』とはちょっと違うみたい。

『辛ぃうどぅん』一体どんな料理なんだ……謎は深まるばかりだね。

 

☆☆☆

 

『辛ぃ』を食べ終えた私たちは砂漠竜が出たという街へと向かっていた。

流石に今日はもう街へ着いたら一度休むことになっている。

今日だけでかなりの大冒険をしたからね。お腹一杯という奴だ。

 

『辛ぃ』も沢山食べたしね?

 

そういえば、どうやって砂漠竜の情報を手に入れたんだろう?

 

「……その情報はどこから仕入れたの?」

「ん?ああ、ここだけの話なのじゃがな。儂が拠点としている街にあるとある施設、いや儂のアジト………そこは情報が集まる一種の集会所の役割を持っているんじゃよ。どこかは言えんがな。ふふ、一応お主たちもその場所を知っているんじゃがな?」

 

お爺さんは顔に手を置きながら14歳くらいが喜びそうなカッコいいポーズをとる。凄く意味深な発言をしてるけど、多分自分の店のことだよね。

じゃないと困るよ?カジノとか秘密裏に経営してたらしょっ引かれるしね。

 

それにあれだけ繁盛しているお店なら世間話の一つや二つするだろうし、私達みたいに『辛ぃ』の匂いにつられて来店した他所からきた行商人も多いだろう。

商人は耳が早いし、情報を得られても可笑しくない。

とはいえ、今回向かっている街はムジュン。

 

私も凱旋の時に一度寄ったことがあったんだけど、その時は砂漠竜なんていなかった筈。

となるとその後に砂漠竜が来たんだろうか?

 

取り敢えずムジュンに着けば分かるかな。

☆☆☆

 

ムジュンは所感田舎町に分類される町でそこまで大きいわけでは無いし、そこまで町にお金がある訳でもない。

そのため、多少寂れた印象を抱いてしまう外観をしていた筈だが……どうやら、修繕でもしたのか町はとっても綺麗になっていた。

 

まぁ、新しいに越したことは無いから良いね。

 

町に入った私は宿泊の手続きを始める。

しかし、町に入った私たちの耳に一人の子供の声が聞えて来た。

 

「俺が、俺が砂漠竜を倒してやる!町の大人たちがやらないなら!」

 

私達が目を向けると、外で活発そうな男の子が周りの大人に向け啖呵を切っていた。

ふむ、きっとあの子も町が大切なんだろう。でも命を粗末にするようなことをしてはいけない。

蛮勇と勇敢さは違うのだ。

 

私は少年に近づくと目線の高さを合わせる。

 

「…力が無いのに、大口を叩かない方がいい」

 

しまったぁぁ!私は口下手なんだった。完全に突き放すような言い方になってしまった。ど、どうしようもっとまろやかに言って聞かせようと思ったのに随分と辛口になってしまった!

私甘口派なのに!

 

って『辛ぃ』の話はいいから、現実逃避している暇はないから!と、取り敢えず何とかフォローを入れなければ。

 

私がそう焦っていると少年はわなわなと体を震わせ、キッとこちらを睨みつける。

 

「……トォちゃんなら。トォちゃんなら俺が倒すって、砂漠竜を俺が倒してやるって言ってくれる‼でも!………トォちゃんは今いないから俺が代わりに砂漠竜を倒さないといけないんだ‼」

 

そっか……この子のお父さんが…………。

 

きっとこの子のお父さんは兵士か狩人だったんだろう。

でも、話しぶりから察するに遠征に出ているかもしくは………亡くなられているのかも。

 

 

「……そっか、辛い話をさせてごめん。砂漠竜は私たちが倒すから安心して。だから、貴方はお父さんの代わりにこの町を守って?」

「姉ちゃん………。でも、何で父ちゃんの代わりにこの町を守るんだ?」

「え?」

「だって、父ちゃんこの町で働いてるんだぜ?父ちゃんの代わりってなんか変じゃないか?ほらそこ」

 

少年の指差す先を見てみるとさっきの宿の店主さんが手を振っている。

い、いやいやさっき父ちゃんはこの町にいないって…………ていうか、狩人ですらないの⁉あれ⁉じゃあさっきの話は一体……。

 

「ああ、トォちゃんは近所に住んでる俺達子供のまとめ役みたいな奴さ」

 

ガキ大将かい‼

私のしんみりとした気持ち返せ‼

 

………いや、でも、さっきの話しぶりからするともしやトォちゃんはもう………。

 

「トォちゃんはこの前夜更かしして熱出しただけだぞ?」

 

私の心配返せ‼

ていうか、さっきからなんでこの子私の心の声が分かるの?まさかエスパー⁉

 

「いや、ちょいちょい言葉に出てるから………ハハっなんていうか姉ちゃん結構おしゃべりなんだな」

 

…………陰キャだと思われたり不愛想と思われるよりは良いけどこれはこれで恥ずかしいね。

 




この小説と全く関係がないんですけどリゼロのスバル君って死に戻りしすぎて後天的な免罪体質者(PSYCHO-PASS用語)になってるんじゃないかなぁって思っちゃいます。
自分を殺した相手とも仲良くしてますし。
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