エロゲ―の主人公だ!! エロゲ―の主人公だろう!? なあ エロゲ―の主人公だろうおまえ !! なあ!!! 作:シャーレイカワイイ
辺り一面を海に囲まれ豊かな自然が育つ島。アリマゴ島。
その島にある山の一角で少年が斧で木を切っていた。
少年は歳の割に発達した上腕筋で斧を振り上げ、力の限り振り下ろす。
振り下ろされた斧は空気を切り裂きながら木に当たり、根から幹を切り離す。
「ふぅーこんなもんでいいかな……おばさぁーん!これぐらいでいいー⁉」
幹が切り離されたのを見た少年は力が入った体に息を吐いて力を抜いていく。
力を抜き終わった少年は遠くで別の作業をしていた老婆を呼び、作業を完了してもいいかを問う。
少年がこのようにして切り落とした木は十を越えていた。
「あら~こんなに切ってくれてありがとうねぇ~もう大丈夫よ。
はいこれ、お駄賃。お夕飯の材料を買うのに使ってね」
少年は両手で収まるほどの硬貨を貰うと困惑の表情を浮かべる。それは仕事に対する報酬の少なさに困惑したわけではない。むしろその逆、報酬が多すぎるのだ。それ故に少年は困惑を浮かべた。
「おばさん……これ、間違ってない?多すぎるよ」
「ルークちゃんはいつも頑張ってくれてるからねぇ~サービスよ、サービス」
「え、マジ⁉やったー!ありがとうおばさん!」
ルークと呼ばれた少年は自分の行いが褒められたことと今日の夕食が豪華になることに喜悦の笑みを浮かべ、老婆に礼を言った。
「どういたしまして。さ、お仕事は終わりよ。友達と遊んでいらっしゃい」
老婆が指をさす。
ルークは老婆が指をさした方向に顔を向けると小麦色の肌をした茶髪の少女が手を振っていた。
「シャーレイ!わざわざ迎えに来てくれたの?」
ルークはシャーレイと呼んだ少女に駆け寄りながら話しかける。
ルークの問いにシャーレイは微笑を浮かべながら答えた。
「うん。ルークったらあまりにも遅いんだから」
「え⁉そんなに時間経ってた?」
「えへへ、じょーだん」
「なんだ。脅かさないでよー」
いやー転生して山に捨てられたときは焦ったけど意外と何とかなるもんだな。
俺、ルークは目の前のシャーレイという女の子に勉強を教えてもらいながらそんなことを考える。
前世の自分はどんな奴だったとか、何で死んだのかって言うのをよく覚えていないまま、ただ転生したという漠然とした確信を持って目を開けたらすっごい豪華な天井でびっくりしたもん。
それと同時に確信したね。
俺が転生したところはすっごいお金持ちだってことを。
これから俺の人生安泰だなーって思いを馳せていたら、なんか焦った様子の女の人が俺のことを抱きかかえて海に流されたんだよね。
命の危機にヒヤヒヤしていたところで流れ着いたこの島の山で神父さんが拾ってくれたんだよな。
本当に神父さんには頭が上がらないよ。
俺の山に住むって言う我儘も叶えてくれたし。一回山で生活するってやつをやってみたかったんだよね。
みんなの助けがあるからかそこまで不自由がない。みんなの助けが無かったらどうなってたんだろ。
そもそも拾われないから今頃海のもずくにでもなっているかな。
ああこわぁ……
あまりたらればの自分の末路を想像しない方が良いな。寒気がするし。
まあこの話は置いておいて、突然だが俺はこの世界をエロゲ―の世界だと確信している。
理由は簡単だ。
前世でこういう島が舞台のエロゲ―を見たことがあるからだ!そして今、俺の目の前にいるシャーレイそっくりな子がそのパッケージに映ってたのもな!だが、他のヒロインや主人公っぽい奴をこの島で見た覚えがない。多分まだ島に来ていないのだろう。そこだけが気がかりだがまあ時間が解決してくれるはず。
このような物思いに耽っていたからだろうか。
俺は話しかけてくるシャーレイの言葉に気が付かなかった。
「――でさーケリィがねー……ってルーク聞いてる?」
「!あ、あー何だっけ?」
「最近島に来たケリィの話。もっとシャッキとしなさいよ」
「ケリィ?」
「あ、ルークは知らないんだっけ?
ルーク、最近遊びに来てなかったし仕方ないか。
!そういえば私、先生からお使い頼まれてたんだった!ちょうどいいや、ルークちょっと手伝って!」
「え?いや勉強は⁉」
「後でちゃんと教えてあげるから!それにケリィにも会わせてあげる!」
そう言って飛び出していくシャーレイ。
まあ、ここにとどまる理由もないし追いかけるか。
*
シャーレイの運転する車に乗って村の中を走る。
あまり気にしてなかったけどシャーレイって今何歳だ?運転免許取ってるんだっけ。
……いや、あまり触れるなと俺の勘が言っている。
山で生活するようになってから、この勘というものが外れたことがない。
その勘が触れるなと言っているんだ。触れないでおこう。
そんなことを考えていると待ち合わせ場所に着いたのか、シャーレイの車が海岸沿いで止まる。
シャーレイは慣れた手つきでクラクションを鳴らす。
その音に海岸で遊んでいた少年たちの一団が振り返る。うち一人が顔に喜びを浮かべシャーレイの名を呼んだ。その声に反応してシャーレイもこう返した。
「ケリィ!」
あの子がケリィね。
黒髪の顔立ちが整っている日本人のような顔。
は!
もしやあの子がこのエロゲ―の主人公!
いーや、間違いないね。俺の勘がそう言っている。
「シャーレイ。誰?そいつ」
「ケリィはまだあったことが無かったよね。紹介するよ、ルークだよ。ほら、ルーク挨拶」
「!ルークです!好きな食べ物は自分で釣った魚。嫌いなものはカエルです!よろしく、ケリィ!」
「……よろしく」
あれ、俺なんか嫌われちゃってる?
うーん?ちゃんと自己紹介したはずなんだけど。
第一印象はしっかりしておきたかったんだけどな。
……あーなるほどね。
ケリィのシャーレイを見つめる視線、これは恋をしている者の目!
シャーレイは気が付いてないみたいだけど、乙女回路を備えた俺には誤魔化しがきかないぜ!
「あ、お使い!早く行かないと!ほら、早く乗ってケリィ」
て言ってもこれ、二人用だよな。
よし、俺が荷台に乗ろう。
「あ、俺荷台乗るよ。ケリィは助手席乗って」
「え⁉う、うん」
なんかすっごい驚かれた。
あれかな、自分が荷台に乗るとか思ってたのかな。
……フッ、安心しろケリィ。君の恋路を俺は応援しているからな。協力は惜しまないぜ。
でもこれ、原作のエロゲ―が始まる前にシャーレイルート一直線になったりしないよね?
おーい他のヒロインさーん。早く来ないとケリィ盗られちゃうぞー
頭の中で他のヒロインに電波を送っていると市場に着いていたらしい。
「見ててねケリィ。ルークの食材選びはすごいんだから」
「ふーん」
「そのために呼ばれたのか……まあいいけど。
……あーにんじんはこっち。キャベツはその小さいやつ。あ、スイカはこれとケリィの前にあるやつ」
ほとんど直感だから、あんまりあてにしないで欲しいんだけどね。
でも美少女に頼まれたらやるしかない。だって男だもん。
「ぼ、僕だってできる」
おー対抗心燃やしちゃったか。
かぁー初々しいぃーアオハルだねー
あ、それあんまり美味しくないと思う。まあいいや。
そういえば俺も夕食の材料買わないと。
「おじさん、そのキャベツとにんじん、後このスイカ頂戴」
「はいよ、毎度あり!」
こうして楽しい食材選びが終わり、シャーレイの車で山の入口まで送ってもらった。
「いやーありがとうわざわざ送ってもらって」
「ううん。付き合ってくれたお礼」
なんかシャーレイ、歯の形変わってない?
いや、気のせいか。一瞬だったしよく見えなかったから多分気のせいだろう。
「?ルークどうしたの?」
「んーいや何でもないよ。じゃ、シャーレイとケリィまた明日。」
「うん、また明日」
「……また明日」
こうして俺とエロゲ―の主人公の初対面が終わったのだった。