主上に上級妃以外のお気に入りが1人増えたらしい。

※オリ主物です、ご注意ください。また性的な表現が含まれます、重ねてお気をつけください。
本文にはほとんど出番はありませんが壬猫は固定です。ご安心ください。

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ここはきっと特等席

 

 

 女の園、男の夢

 あるいは、『欲』『毒』『義務』から成る伏魔殿

 桃源郷であり地獄でもある『後宮』は実在する。

 

 

 そんな魑魅魍魎の巣窟に部屋を与えられた一人の女がいた。

 

「あらまぁ……」

 

 片手を頬に添えて呟く女。白い肌に艷やかな黒髪は腰ほど。垂れた目尻と小さい唇には幼さが残るが、赤い瞳には意志の強さが伺える。

 そしてなにより、その肉体はあまりにも暴力的すぎた。

 特に空いた片手で支える2つの夢はこの後宮の主曰く至上だという……。

 

 さて、その女がなぜ眉を下げているのかは見てもらったほうが早いだろう。

 

 女の趣味で色物が多い部屋ではあるが、そうだとしても似つかわしくないものが窓際に垂れ下がっていた。

 

 縞模様の蛇、手のひらサイズの蛙。それらが体液をぶちまけ、染みを作り悪臭を放っている。

 

――これは、どうしようか

 

 困った『いたずら』にどう片付けようかと思案し侍女に目配せしようとした瞬間、蜂蜜のような天上の声が響く。

 

 「ごきげんよう、魅音(ミオン)妃。今日も変わらず美しい……おっと?」

 

 

 現れたのは天女のような相貌、極楽の竪琴も敵わぬ美声。美貌の宦官壬氏とその従者であった。

 

 目立つところだ、当然目に入っただろう汚物にその美しい貌を歪めている。

 

 「ごきげんよう、壬氏様。本日は何用かしら?」

 

 部屋の惨状に意も介さぬ返事に壬氏は毒気を抜かれる。ありふれた後宮の女ならこの悲劇を訴え美貌の宦官に媚びを売るだろうに。

 いや、そうではないからこそ、この女性を壬氏自ら主上に勧めたのだが。

 

 その壬氏らしからぬ顔を整え、天仙のような輝きを取り戻した壬氏は従者に片付けを命じる。宦官の従者が動き出したことで壬氏の美貌に当てられていた侍女たちも我に帰ったようだ、慌てて動き出す。

 

 60点。魅音は侍女たちに点数をつける。壬氏様を見て卒倒しなくなったのは大きな進歩だ。次は鉄面皮を身につける指導だろうか。侍女達に向けていた目を戻すと壬氏と向かい合った。そして、壬氏が口を開く。

 

 「全く、貴女は肝が据わっておられる。――さて本題ですが、今宵主上が渡られます」

 

 どうやら後宮の管理人たる壬氏様は仕事をしに来ていたようだ。

 

 「承知いたしました。しかし、どうしましょう。これでは主上を迎えられないわ」

 

 後宮の女にとって寵を予告されることは歓喜の瞬間だろうに魅音の表情は大きくは変わらない。まるでただ仕事を割り振られたかのような態度だった。

 

 その様子に壬氏はため息を漏らし、侍女たちはどこか諦めたような空気が漂う。

 

 寵妃と言っても間違いないのに妃に向上心がないのだ。後宮の頂点を穫れる器を逆さにしていたら勿体無いと思うのは当然である。

 

 

 

 

 

 

 

 どうも日を改めるということはなく、今夜のためだけに別室を用意するようだ。主上は絶対であるとはいえなんとも言葉にできない物がある。しかし、従うまでだ。

 

 そんなこんなで用意された部屋へと移動する最中、中庭に人集りができていた。

 

 「おまえが悪いんだ。自分が娘を産んだからって、男子の吾子を呪い殺す気だろう!」

 

 どうやら賢妃と貴妃の争いのようだった。

 

 賢妃の産んだ東宮、貴妃の産んだ公主。そのどちらもが呪いによって命を零しそうになっているらしい。

 賢妃に至っては頬が痩せこけ、本来の美貌が失われている。

 もうすでに3人も主上の御子がお隠れになっているのだ。次代を育む場所だというのに、真逆の命を刈り取る場所と化している。これこそが後宮の本質であり忌むべき理由なのだろう。

 

 魅音の侍女たちはその光景に眉を顰める。何故か動かない己の主人に仮居へ向かうよう諌めようと侍女のうち一人が主人の顔を見、そして魔に魅入られたかのように固まった。

 

 そこには匂い立つような四肢の割に幼い顔立ちの主人ではなく。微笑みを絶やさない淑女然とした主人ではなく。

 

 赤い瞳をギラつかせ、扇の下の赤い唇は弧を引き、汗をかいているのだろうか人を狂わせる物理的な香りがむせ返るように広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 魅音は探す。とうとうこの時が来たのだ。後宮に来てしまったことは過ぎたこと、仕方がない。ならせめて……

 

 この目で壬猫が見たい!!!!

 

 周りを見渡すことわずか数巡、彼女の執念はあっという間にお目当てのものを見つける。

 

 大きな瞳、そばかす、痩せぎすの下女。

 

 猫猫だ。

 

 満足した魅音は再び歩き出す。侍女たちの混乱は想像に容易い、が反射的に付き従ってゆく。主上を迎える部屋へと……

 

 

________________________

 

 

 月明かりの夜、その部屋では女の細い嬌声と、女と男の欲とほんの少しの責務がぶつかり合う音がする。

 

 

 半刻ほど経っただろうか。寝台には肩で息をし横たわる女と、美しい髭を携えた男がいた。

 

 男は片手で女の身体を遊びながら問いかける。

 

 「なぁ魅音。朕の庭には呪いがかけられてると思うか?」

 

 

 今なお男の手によって息のまとまらない女はなんとか言葉を発する。

 

 「呪いなんてありませんわ……それに、きっともうすぐ可愛い可愛いぺんぺん草が解決してみせます」

 

 (そしてきっと月が必死に照らそうとする……)

 

 どうも要領を得ない応えに男は首をかしげる。しかし、そう言う女の顔は初めて見る貌で、毒があるかのような色気で……

 

 男は再び女に覆いかぶさる。まだ夜は明けない。




処女作を最後まで目を通していただきありがとうございます。
薬屋のひとりごと、面白いですよね。キャラクターが魅力的で壬氏様と猫猫の恋模様には弱火で炙られているような錯覚に陥ります。
しかし、私が特に好きなのは実は主上なのですよね。皇帝という生き物であり続けるその姿に色々と想像してしまいます。
この作品は主上が主人公のつもりで描きました。オリ主くんすまんな貪られてくれ。
とまぁ己の欲求を発散するために筆を執ったので苦痛はありませんでしたが、書いたつもりでもたった2000字でした。
どうやって1万字こえるんだ……普段私めに供給してくださっている方々に感謝します。

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