その筋書きは、ありきたりだが
役者が良い。至高と信ずる
ゆえに面白くなると思うよ
第一話 3人の御遣い
――side ???
目を覚ますとそこは500席ほどある室内劇場。
劇中と言わんばかりに舞台にだけ光があたっており、周囲は暗がりに包まれている。
そして私はその座席の一つに座っていた。
「やっと目を覚ました?」
蜂蜜に砂糖ぶちまけたような声がした。
横を向けば何処ぞのつるぺたメスガキのような姿をした娘が足をゆらゆらしながらこちらを見ていた。
「……ラインハルトの総てを手にするために十桁回以上は想定外だったな」
「20桁越えてるけど、正確にカウントしてないからそれはさておき……。今から『他の2人』と転生前の顔合わせするから準備よろしく~」
そういうと彼女は座席を降りて何処かに去っていく。
「……」
暫く暇を持て余していると、舞台を照らしていた明かりが消えて闇に包まれる。
指を鳴らす音がしたと思えばスポットライトが私に……否、『私達』に降り注ぐ。
「わぷっ」
「な、なんだ!?」
円を描くように配置された私たち3人の席。
いつのまにか舞台の上に座席ごと移動していたようだ。
眼の前には2人の女性。
1人は紅い瞳と黒髪の何処か不安げな顔をした娘。
1人は女傑と言える雰囲気をしたスタイルの良い女。
「はいはい、見とれるのは後々」
メスガキが私の隣にしれっと現れ、私の膝上に座る。
「ここに居る3人に『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』と『恋姫†無双』が悪魔合体した世界に行ってもらって〜、天の御遣いとして勇者を助けたり完全体魔王の降臨妨害とかして世界に平和をもたらしてもらいます」
「「……?」」
同輩(予定)は困惑が勝って言葉が出ないようだ。
というか転生先について伝えてないなコレ。
「詳しくは転生した後に話すから。とりあえず3人で仲良くしておいてね。所属先はバラバラだけど、3人が力合わさないと世界滅んじゃうかもだから」
そういうと私の膝から降りてメスガキは去っていく。
……さて、年長者として話を振るとしようか。
――side ゆんゆん
ダンジョンに潜っていたら爆発に巻き込まれて、気がついたら知らない場所にいました……。
変なお姉さんと面談?みたいなことしてたら舞台のようなところに居て、すっごくスタイルいいお姉さんと魔王みたいなオーラ纏ってる金色の髪の男の人と一緒に転生することになっていました。
「――まずは自己紹介をしようか」
男の人がそう口火を切りました。
……重々しい声と思ったらかなり爽やか?でかっこいい声でした。
「私はラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。ラインハルトとでも、ハイドリヒ卿とでも、獣殿とでも好きに呼ぶと良い。よしなに頼むよ」
「私は千手綱手。元いた場所では火影……里の長をしていた。綱手で構わん」
「私はゆんゆん……です! 紅魔族と呼ばれる種族……民族?の長の娘です!ゆんゆんとお呼びください!」
私の言葉にラインハルトさんが頷いた。
「綱手にゆんゆんだな。……さて、紹介も終わったことだ。力を合わせねばならぬ間柄故、転生経験者として多少助言できるがお節介しても構わんかね?」
「ほう? 何をお節介するのやら」
綱手さんの言葉にラインハルトさんが遠い目をし始めた。
……えっ、なにか大変なことなのかな……。
「まずは転生に伴い、何らかの制約が課される場合がある。小麦粉料理が食べられんという意味のわからん縛りから、特定の相手を傷つけられんという宿命のような縛りまでピンキリだ」
……簡単な縛りならいいんだけど……。
「ちなみに縛りの内容は転生の契約書にある。転生の度に契約の結び直しがされる故、随時確認するといい」
こめかみに指をあてて転生契約と唱えてみるといいと伝えてくるラインハルトさん。
私も試してみると
『転生特典 宮崎のどかのアーティファクト+マジックアイテム(不壊)、メレブの魔法、フリーレンの魔法、ハリー・ポッターの魔法を不定期に習得』
『転生制約 魔王ガノンドロフへの攻撃は一定の体力以下になるとダメージが0になる(ノックバックなどは発生)、ぼっちめしをすると能力にデバフ。5人以上と食事すると能力にバフ。食事の時間にバフ・デバフはリセット』
……制約の、特に後者については嫌がらせでしょこれ!?
「……なかなか面倒な……」
険しい顔をする綱手さん。
「あとはコレを渡しておこう」
ラインハルトさんが指を鳴らすと私たちの眼の前に金色の波紋が現れて私たちに四角い板――にしては少し分厚いもの――を出現させた。
「これは同じ世界にいる相手と話したり手紙のように文字でやり取りできる道具だ。私たちと此度の転生に携わった3人の女神が連絡先になっている。……最も女神たちが返事するかは運任せ故、あまり期待しないほうがいいがな」
そういって使い方を実演して見せるラインハルトさん。
……そう言えば女神様が所属先はバラバラとか言ってたけど、どういうことだろう……。
――side 千手綱手
「つまりなんだ。人しか居ない巨大な国家のある大陸に突然、赤い月と共に復活する異形の怪物や異世界の民が流れ込んで大混乱。おまけに国家も苛政のせいで不満が溜まり爆発寸前。そんな状態の中、私達は女神が気まぐれに決めた勢力の一員として振る舞いつつ、魔王の完全復活を妨害したり、勇者とやらの手助けをせねばならんと」
「そうなるな」
ラインハルトの説明を咀嚼し、確認を兼ねたまとめを告げるとラインハルトは頷いた。
「……責任重大では??」
私の言葉にゆんゆんも頷く。
するとラインハルトは同意しつつも少し否定の色を見せる。
「否定はせんが……意味のわからん二択による世界の命運を1人で背負うよりは精神衛生上マシだとおもうぞ」
……たしかにそうだが、そんな目にも合ってるのか……。
「話は少し変わるが覚えておくべきことを伝えてなかったな。現地には真名という文化がある。許してない相手の真名を呼べは殺されても文句が言えないという厄介な代物だ」
「なにそれこわい」
ゆんゆんが顔を青くしている。
……まあ私なら死なんだろがな……。
「あの文化圏にとって許してない相手からの真名呼びは『町中で突然裸に剥かれて尻の穴まで視姦される』ようなものらしいからな……」
そこまでか……。
「殺しに来るのは怖いが、相手が自己紹介したときの名前で呼び、人づてに名前を言われたらそれが真名かを確認しておけば済む話だ」
ゆんゆんが私の指摘になるほどと頷く。
「でも私たちに真名の文化はないのですが……」
私の言葉にラインハルトは問題ないと告げた。
「大陸の外の国でも真名の文化がない国があるそうだ。もし聞かれても天の御遣いには真名の文化はないと伝えれば良い。それで理解される故、あまり気にする必要はない」
「なるほど」
とりあえず確認したいことは確認できた。
「そろそろ良いかなー?」
ラインハルト曰く『じゃあくな次女女神』がやってきて、ラインハルトの膝上に座る。
「まあ通信端末もあるし、経験豊富なおにーさんいるからこまったら聞いたりすればいいから大丈夫だよね」
そういうと彼女はラインハルトから降りて私たちの中心に立つ。
「じゃ、頑張ってね」
その言葉とともに私たちの視界は暗転した――。
――side じゃあくな次女女神
「さて、これから始まるのは三流喜劇か二流の悲劇。どうなるかは私たちにもわからない。だけど――」
彼女は『私たち』を見る。
「歌劇はさながら一時の夢。観客が『応援』したり『リアクション』しないと演者は夢から醒め、歌劇は泡沫へと消えてしまう。どうか夢の続きを望むなら――傍観者気分は投げ捨てて、応援やリアクションよろしくね?」