――side ???
誰かが呼ぶ声がした。
「――。――! リンク――!」
聞きたかった人の声がする。
彼女が、オレを呼んでいる。
――目を覚まさなきゃ――!
目を開くとそこには翡翠の瞳と金色の髪の女性……ゼルダ姫の顔が……ドアップで映っていた。
「! リンク! 目覚めたのですね!」
その言葉とともに、彼女はオレを抱きしめる。
く、苦しい……なんか力強くなってません???
反射的に背中を軽く何度か叩いてギブアップを伝えるとハッとしたのか姫はオレから離れてくれた。
「……ここは……」
上半身を起こすとオレの棺桶?の他に棺桶のようなものが合計6つ(うち1つは開いており空。……姫が入っていたのだろう)、向かい合わせに2列で並んでいた。
オレの棺桶?は出入り口から一番奥に置かれていたようだった。
『詳しくは賢者全員目覚めたら説明しますので他の方も起こしてどうぞ』
声の方を向くとオレの棺桶の隣で本を読んでいるらしい半透明の女性(空島のラウルのような幽霊?といえばいいだろうか)がこちらを見ずにそう告げていた。
「……リンク、とりあえずみんなを手分けして」
「わかりました」
姫の言葉に頷き、ガノンドロフと戦った賢者の5人を手分けして起こすことにした……。
『全員起きてますね?2度目はありませんから耳の穴かっぽじってしっかり聴いてください』
呑気に本を読んでいた女幽霊は本を閉じてオレたちを見た。
……ユン坊、シド、別に真面目に耳の穴かっぽじる必要ないと思う。
「質問は」
『説明の後』
姫の言葉を奪い取るように告げる幽霊。
『まずはじめに、ここはハイラル王国と別の世界が合体事故起こして生まれた世界です』
……えっ、どういうこと?
『「「「「「はぁ!?」」」」」』
オレに半歩遅れた感じで叫ぶ6人。
『まあそうなりますよね。――プルアパッドにこの世界の監視砦の鳥望台前のワープマーカー登録してあるんで、説明終わったらその目で確かめてください』
腰にあるポーチをチラ見する。
たぶんこの中にあるのだろう。
『監視砦、カカリコ村、リトの村、ゾーラの里、ゴロンシティ、ゲルドの街。あとはイーガ団のアジトやハイラル城もありましたね。それらがこの世界にありますが、本来の位置や方角には居ませんのでご注意を。ああハテノ村やイチカラ村、ウオトリー村や各地に居た人たちはそれぞれ最寄りの施設に振り分けられてます。まあ詳しくは各々の目でお確かめを』
そういうと幽霊は続ける。
『融合したのはハイラルより広大な帝国。しかし現在皇帝の側近たちによる苛政で暴動の火種が燻っています。……魔王ガノンドロフは暴動と共に起こる戦乱。それにより流れる血を使いある儀式を行っています』
「その儀式とは」
姫の言葉に顔をしかめる幽霊。
『……それについては今から話す【天の御遣い】達が知っていますので彼らに聴いてください』
それだけいうとまた台詞を読むように語り始めた。
『天の御遣いと呼ばれる者たちはガノンドロフの儀式に対するカウンターであり、大陸の戦乱を早期収束の役目を持っています。魔王討伐戦や貴方たちの旅路にもある程度は助力してくれますが、彼らには魔王にとどめを刺すことができません』
そういうと幽霊は手元に秘石……それと瓜二つなものを出現させた。
『貴方たちの役目は簡単。――賢者は今持っている秘石……それの対となる秘石を手に入れて勇者の魔王討伐へ力を合わせること』
秘石の幻影を握りつぶして幽霊はこちらを見る。
『勇者の役目は武具を揃え、まだ戻りきっていない力を取り戻し、全盛期の力と武具を以て魔王を倒すことです。賢者の対の秘石を手に入れることもその一部ですね』
そういうと幽霊はオレたちを見回す。
『貴方たちが魔王を倒し、世界に平穏を戻すこと、祈っていますよ』
そう言うとふぅ、と一息付く幽霊。
『なにか聞きたいことは?』
「対の秘石とやらはどこにある?」
ルージュが食いつくように質問を飛ばした。
『5人の賢者はそれぞれの神殿に。……光の賢者の対の秘石は……己の心に向き合い、もう少し素直になったらここに来てください。そうしたら教えてあげてもいいですよ』
「それはどういう」
『次の質問は?』
それ以上教えるつもりはない、ということらしい。
……姫は基本気持ちに素直な気がするけど……。
「オレたちの里は大丈夫なのか!?」
『ゾーラの里は泥塗れで無人の状態です。まあ最寄りのこの世界の街の長が、里の民を避難させたからですが。あ、里の人たちは皆無事です。里は手に負えないので放棄してますが』
「またあのタコか!?」
『ノーコメント』
頭に抱えるシド。
……民が無事なだけマシだけど、と呻いてる。
「オイラの村は?」
チューリの言葉に少し険しい顔をする幽霊。
『今のところは高度が乱気流でマトモに飛べないのと軽く積もるくらいの雪で済んでいますが、このあとどうなるかはわからないですね』
そのままユン坊の方を向く。
『ゴロンシティはロース岩がおいし岩になったようで大人の3割が被害にあってるようですが、気がついた大人が封印したためとりあえず拡大は止まっています』
「3割……暫くは大丈夫そうゴロ」
『ゲルドの街は夜間にギブドに散発的に襲撃を受けています。まあ、数体ずつですから、消耗は殆ど無いですね』
「……散発的で数体ずつ?逆に不気味なのだが?」
『なにか理由があるのかもとだけ』
……オレも質問するか。
「監視砦に鳥望台があるようだが他にも鳥望台かあるのか?」
『あるみたいですね。ただ、プルアパッドが無いと入れないみたいなのでー、無くしたら大変なことになるかと。あとハイラル城本体も同じみたいです』
……知らないうちにプルアパッドの価値がすごく高くなっていた。
「そう言えば空島とか地下はあるのかゴロ?」
『あります……が、空島かなり高いところ、地下の大空洞はかなり深い場所にあるのでお気をつけを。……さて、これで今回の質問は最後にしますがなにか聞きたいことありますか?』
幽霊の言葉に皆頭を悩ます。
『では私から良いでしょうか』
『ええ、構いませんよ』
ミネルの言葉に幽霊は頷く。
ミネルが確認を取るようにオレたちへ顔を向けたので頷いて質問するように促した。
『では……貴方は何者なのでしょうか。この世界の帝国とやらの初代の王ですか?』
『私はこの世界を生み出して棄てた存在の同輩……その1人です。ただまあ、私もガノンドロフに手出しできないし、本来はこの世界に存在を許容されていません。ですので、回生の祠モドキというあやふやな場所で、幽霊というあやふやな形で現世に干渉しているのです』
特定の場所でしか干渉できない……。
だから姫の対の秘石について何らかの心境の変化あったら『ここに来てください』と言ったのだろう。
たしかに筋は通るな。
『では、暫くは私の役目はないのでこれにて失礼。監視砦の鳥望台にワープするもよし。この世界をある程度見て回るのもよしですので』
そういうと幽霊はフッと消えた。
「とりあえず、外を見てから監視砦に行く?」
オレの問いかけに皆が頷く。
ハイラルの盾とマスターソードを出してそのまま棺桶部屋?をオレたちはあとにした……。
洞窟から出たあと、広がる山林を少し探索した。
「……あの幽霊?の言う通り、ハイラルじゃないっぽいね」
チューリの言う通り、ハイラルとは全く違う地形なのは明らか。
それは探索をした全員の意見だった。
「散策はこの辺にして、監視砦に行くべきかと」
『そういえばプルアパッドの地図はどうなっていますか?』
ミネルの言葉にハッとしてプルアパッドを起動する。
マップを見る限り自分たちがかなり『南東の方』に居ること。
そしてマップ中央あたりに鳥望台のワープ先が選択可能になってることがわかった。
「……私の知る回生の祠とは位置が違いますね。本当に異世界と合体してるのですね……」
色々思うところがある姫が小声でつぶやく。
「とりあえず監視砦に行くのが良いと思うゾ」
シドの言葉ももっともだ。
「それじゃ、ワープするから」
各自が問題ないと確認した上でワープを発動させた……。
「そういえば最後まで名前を名乗らなかったな」
「名前がないとか?」
『あるいは名前を教えると支配されるとかあるのでしょうか』
「……相手に会ったら名前を聞いておこうか」
「ですね」