――side 綱手
目を開くと見慣れぬ天井。
身体を起こして周りを見渡すと華美ではないが質の良いこだわりの感じさせる家具や調度品が置いてある。
さて、どこだろうかと首を傾げているとラインハルトがくれた端末が鳴り出す。
慌てて端末を起動すると
【ミッション『曹操と出会え』が追加されました。ミッション『ハイラルの勇者と出会え』が追加されました。……】
という感じで10件程の通知が入っていた。
……端末を女神に良いように使われてるが大丈夫なのだろうか……?
首を傾げていると部屋の扉が開かれた。
反射的に端末を私は懐に隠した。
「――あら、目が覚めたのね」
そこには金髪のツイン縦ロールをした娘と、アホ毛が目立つ黒髪の女、それと片目が隠れている青い髪の女が居た。
「ああ。……ここにいる経緯はわからんが、保護してくれたようだな?」
「ええ。私は曹操。字は孟徳。よろしくね」
そう金髪の娘は名乗った。
……ということはこの娘の所に庇護される必要かあるというわけか……。
「私は千手綱手。綱手で構わん。生憎真名を名乗る文化で生まれ育っていないので、真名の交換とかはできんからな」
私の言葉に曹操は興味深そうな反応をする。
「華琳様相手に偉そうに」
「まあまあ姉者、落ち着け」
黒髪アホ毛が青髪の女に羽交い締めにされている。
「こっちが夏侯惇で、こっちが夏侯淵よ」
「なるほど? ……で、なにか聞きたいことがあるようだが……」
私が問いかけると曹操は笑みを浮かべた。
「ええ。何故空から落ちてきたのかとか、貴女が天の御遣いなのか、とかね」
「天の御遣いなのはそうだが。……何故空から落ちてきたのかは……しらん」
「はぁ?」
曹操がわけわからないと言いたそうな顔をしたが、私にもわからんからな!
「この世界で役目を果たせと言われ、他の御遣いと多少話したあとから意識がなかったからな。空から落ちてきた理由はさっぱりだ」
「……嘘はついてないようね。にしても他の御遣いの事も知ってるのね」
曹操の言葉に頷く。
「ああ。――ゆんゆんは私のできぬ魔法を使えるし、ラインハルトは間違いなく単独で数万の軍勢を殲滅できる怪物だ」
「貴女は何ができるの?」
言葉を促すように曹操が問いかけた。
「私か? 私はそれなりの岩を破壊する程度の腕力と、生きていれば上半身下半身で分断された人間をつなぎ直す程度の治療しかできんな」
「何言ってるんだ?上半身を下半身が切れたら普通死ぬだろ」
夏侯惇がわけわからんと言いたげな顔でそう告げた。
「まあ信じるかどうかはそっち次第――」
そんな会話をしていたら部屋の扉が勢いよく開かれた。
「曹操様一大事です!」
駆け込んできたのはボロボロの兵士だ。
「どうした」
「曹純様が異形討伐中に毒矢を受け重症の状態で帰還!また部隊の1割が死亡し、残る過半も毒を受けており、意識が無いものもおります!」
「――なんですって!?」
目を見開く曹操。
……身内か何かだろうか。
「――そいつ等のいる場所へ案内しろ」
私は寝台から降りて履物を履く。
「は?え?」
戸惑う兵士。
「私ならなんとかできるかもしれん。さっさと案内しろ!」
私の言葉に兵士は飛び上がり駆け出した。
私もそれに続く。
「あ、ちょっと待ちなさいよ!」
後ろから声がしたが構ってられない。
死人が出てる状態なら治療できるかは時間との戦いだからだ。
案内された建物には多くの兵士が床に横になっていた。
「曹純様はこちらです」
案内された所には曹操と同じ髪色の娘がいくつかの敷物を重ねた上に横にされていた。
「……専用の解毒剤や血清の必要なだけではない毒で良かった。あとは私と本人の生きる気力次第でなんとでもできる」
私は口寄せを発動する。
出てきたのは人より大きなサイズのカツユだ。
何故か転生特典とやらでついてきてくれた?のだ。
『綱手様?ここは一体……』
「それはあとだ!数百人規模の治療だ!回復と呼吸の維持だ頼んだぞ!」
『は、はい!』
カツユにそういうと手のひらサイズに分裂。
そして怪我人の方に分散していく。
「おい案内してきたの、コレは治療に必要だから攻撃しないように伝えろ」
『綱手様コレ扱いは不本意なのですが?』
「いいからやるぞ」
私は掌仙術を発動し、曹純の肉体を活性化させ、同時に呼吸できるよう気道を整える。
「何してるの!?」
曹操たちがやってきたようだ。
目線を向けると曹操がさっきの2人に加えて文官らしいのを数人連れていた。
「治療だ。私は怪我人がいるなら治療をする。それだけだ」
チャクラを使いカツユ経由で他の負傷者にも治療を開始する。
「華琳様、やめさせたほうが」
なにやら佞臣っぽいのが口を挟むが曹操がどこからともなく取り出したデカい鎌のようなものをその男の首元に当てた。
「それなら貴方が代わりに治してくれるのかしら。だめだったら族滅考えるけど?」
「っ! 出過ぎた真似を」
茶番を横目にかなり悪かった曹純の顔色が戻ってきた。
呼吸も安定しているが油断は禁物。
「峠は越えたが、身体が毒を倒しきるまで油断はできん」
私がそういうと曹操たちは祈るような顔で曹純と兵士たちに目線を向けた……。
「……命は無いと諦めていましたが、本当に助かるとは……」
どこからかやってきた姉?とやらに抱きしめられている曹純がそう零した。
「お前の生きる意志があり、持ち合わせのない私が対処できる毒だっただけだ。――運が良かったな」
兵士たちも死ななかった者たちが抱き合い喜びに踊っているのを横目にそう告げた。
「……どうやって恩を返したらいいでしょうか」
曹純の問いかけに私はわざとらしく悩んだふりしたあと
「知らん。暫く曹操の世話になる。その間に私が困ったら助けてくれればありがたいがな」
とだけ答える。
「わかりました」
穏やかな顔をする曹純。
「……私の所に身を寄せるつもり?」
困惑するのは曹操。
「私は『曹操の元で乱世を越えろ』と『異界の勇者を手助けしろ』くらいしか言われてない。駄目なら治療対価に小銭をもらって放浪生活するか、ある意味一番安全な黄金の獣の庇護下に入るかのどちらかをするだけだ」
私がぶっちゃけると、曹操は頭痛そうな顔をしてから、半ばあきれ顔になってこちらを見た。
「……まあいいわ。私は曹操、字は孟徳。真名は華琳よ。衣食住は保証するし研究とかしたいなら可能な限り支援するわ。代わりに将兵の治療や後進の育成とかしてもらうから」
「契約成立、だな」
私は曹操……いや、華琳と握手した。
千手綱手
天の御遣いの1人。
転生特典として『悪意感知』と『カツユ口寄せ』、『木遁の取得』と『飛雷神の術取得』がある。
が、後ろ2つは燃費がかなり悪い上、飛雷神はクールタイムがそれなりにあるというデメリットを持つ。
制約は『出された酒を断れない』で破ると暫くカツユが口寄せできなくなる。
曹操
我らが覇王様。
従妹を救ってくれたことは嬉しいが、綱手は自分でスカウトしたかった。
相手が押しかけの形で来たのでちょっと不満げ。
夏侯惇
ポンコツ猪な覇王の右腕。
綱手の真剣な治療を見て『自分にはわからん世界だが、治療には真剣な奴なんだな』と理解した。
夏侯淵
夏侯惇の妹にしてら覇王の左腕ポジ。
姉が綱手の治療を真剣に見てるのを見て、『真剣に見てる姉者も良いものだ』とか思ってたりしてる。