え?クラス転移で俺だけスキル無し?役立たずは置いていく?いや、俺、異世界召喚二度目で強い魔法たくさん使えるから普通に無双するよ?   作:taki210

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第二十一話

 

深夜。

 

気にもたれかかってうとうととしていた麗子に近寄る気配があった。

 

「…っ」

 

はっと目を覚ました麗子はすぐさま起き上がって、構えをとる。

 

裕也が夜這いにでもきたか、あるいはモンスターかと思ったのだ。

 

が、そこにいたのはモンスターでも、裕也でもなかった。

 

これまで一度も会話したことのない男子生徒……西川が立っていた。

 

麗子は目の前の男の下の名前を覚えていなかった。

 

それほどに影の薄い生徒なのだ。

 

「大丈夫?黒崎さん」

 

優しげな声で西川が呼びかけてくる。

 

麗子は警戒を解かない。

 

裕也に何かを命じられている可能性も考えられるからだ。

 

「…」

 

「ああ、安心してよ。僕のことなら、あのクズのスキルで操られたりとかしてないから」

 

麗子の警戒の意図を察してか、西川がそんなことを言う。

 

麗子は非常に違和感を持った。

 

それは西川に、日本にいた頃のおどおどした雰囲気が少しも感じられなかったからだ。

 

日本では、常に下を向いて誰とも喋らず、他人…特に異性から話しかけると挙動不審な態度を見せていたはずだ。

 

それが、今は堂々として、どこか周囲を見下しているような雰囲気さえ感じられる。

 

一体この劇的な変化の原因はなんだろうと、麗子は考えていた。

 

「酷いよねぇ…あいつ。みんなを操って黒崎さんを孤立させて…」

 

「…」

 

同情するようにそんなことを言う西川。

 

麗子は未だ警戒を解いていない。

 

性格のガラリと変わった西川を、どこか不気味に感じていたのだ。

 

「新田さんも置いて行かれたし…今頃モンスターに殺されてるのかなぁ…?あーあ、もったいない。あの子、僕のサブヒロイン候補だったのに」

 

「…?」

 

突然わけのわからないことを言い出す西川に、やはりどこかおかしいと麗子はさらに警戒を増す。

 

そんな中、西川が麗子に向かって何かを差し出してきた。

 

「ほら、麗子さん。これ、隠しておいたんだ。お腹空いてるでしょ?食べてよ」

 

「え…?」

 

それは大きな葉に包まれた食料だった。

 

焼いた肉やきのこ、魚などが香ばしい香りを放っている。

 

「僕はあのクズのスキルで操られてないからね、黒崎さんのために取っておいたんだよ」

 

「ど、どうして私のために…?」

 

じわっと口の中に唾液が黙る。

 

朝から何も食べておらず、空腹だった麗子は、すぐにでも目の前の食料にありつきたいと思った。

 

が、迂闊に飛びついては危険だ。

 

この世界では何が起きるかわからない。

 

麗子は一旦堪えて、西川の意図を見定めることにした。

 

「そりゃあ、黒崎さん。君は僕のメインヒロインだからね」

 

「はい…?」

 

食料をとってくれていた理由を尋ねると、西川の口から意味不明な単語が飛び出てきた。

 

麗子はぽかんと口を開いてしまう。

 

「はははっ…僕はずっと虐げられてきた…みんなに見下され、後ろ指さされて生きてきた…あいつは根暗だ、陰キャだってね…でも、それもここまでだ…!」

 

くつくつと西川が不気味な笑い声を漏らす。

 

「僕はね…黒崎さん…とんでもないスキルを手に入れてしまったんだ…あのクソッタレの有馬のスキルなんかよりももっとすごいスキルさ…これがあれば、異世界チーレムだって夢じゃない…!やっと僕のターンが来たんだよ…!」

 

「…」

 

麗子は先ほどから西川が何を言っているのかさっぱりわからなかった。

 

だが、西川があまり関わらないほうがいい人種であることだけは本能的に理解してしまった。

 

「安心してよ黒崎さん…君は僕のメインヒロインだからね…!死なせはしないさ…!僕が今にあの有馬を倒して君を助け出す…それまでの辛抱だよ、黒崎さん…!君は必ず僕が守るから…!!」

 

「…っ」

 

西川のねっとりとした視線を受けて、ゾワゾワとした怖気が麗子の背筋に走った。

 

いつの間にか食欲も失せて、今はとにかくこの男から離れたいと麗子はそう思った。

 

「うひひ…黒崎さぁん…」

 

徐に西川が麗子に向かって手を伸ばしてくる。 

 

パシッ!!

 

「触らないで!!」

 

生理的嫌悪を感じて、麗子は西川の手をはたき落とした。

 

「ん…?」

 

西川は何が起きたのかわからないと言ったふうに叩かれた自分の手を見る。

 

「黒崎さん…?」

 

怪訝そうに西川は首を傾げた。

 

なぜ拒絶されたのか、理解できないと言った表情だ。

 

「…っ」

 

これ以上ここにいるとまずい。

 

本能的にそう感じた麗子は、バッと立ち上がってその場から逃げ出した。

 

西川は追っては来なかった。

 

振り返ると、元の場所で、未だ自分の手を見つめて呆然としていた。

 

 

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