え?クラス転移で俺だけスキル無し?役立たずは置いていく?いや、俺、異世界召喚二度目で強い魔法たくさん使えるから普通に無双するよ? 作:taki210
「そうですが…俺たちのことをご存知なのですか?」
「はい…ええ、まぁ…」
「…?」
裕也が日本人であることを肯定すると、職員らしき人たちはあからさまに面倒そうな顔をした。
「どうして日本人がここに…?」
「また王族が召喚したのか…」
「おそらく試練の最中なのだろう…」
「どうする…?」
「追い出すか…?」
「しかし、ここを出て野垂れ死でもしたら、我々が王族たちに報復される恐れが…」
「体裁を整えるためにも、少しぐらい手助けした方が…」
時折裕也たちに視線を送りながら、声を潜めて何かを相談している。
あまり歓迎されているといった雰囲気ではなかった。
本当にここにいて寝床と食事の問題が解決するのだろうか。
そんな疑問を裕也が持ち始めた、その時だった。
「日本人の方々、ここへきたのはどのような理由で?」
どうやら相談を終えたらしい職員たちがそう訪ねてくる。
「ええと…俺たち困っていることがあって…」
「ほう?それはどのような?」
「我々でよければぜひ手助けをさせてもらいたい」
先ほどとは打って変わって態度が軟化する職員たち。
裕也は違和感を覚えながらも、寝床と食料を求めていることを伝えた。
すると、職員たちはここの裏手にある冒険者専用の宿を貸し出すと言ってくれた。
裕也は驚いて聞き返す。
「いいのですか?本当に?」
「ええもちろんです」
「空室ですのでぜひ使ってください」
「大浴場もありますよ、ぜひ旅の疲れを癒してください」
「お食事も提供させていただきます」
口々にそういう職員たち。
「よかった…」
「やっとだ…」
生徒たちは安堵の吐息を漏らす。
一方で裕也はというと、唐突な高待遇を少し不気味に思っていた。
何か裏があるのではないかとどうしても疑ってしまう。
しかし現状、彼らのお言葉に甘える以外に寝床や食事を調達する方法がないのも事実で、ひとまずは彼らの施しを受けることにした。
「それじゃあ…ありがたく使わせてもらいます」
「ええ、是非」
「日本人の皆様に使っていただけるのは光栄です」
「こちらです、案内しますよ」
そう言って歩き出す職員たちに先導され、裕也たちは裏手にあるという宿へと向かうのだった。
冒険者ギルドの裏手には合計で三棟ほどの冒険者専用の宿があり、職員たちは親切にも、三十人余りの裕也たちに一人一部屋を提供してくれた。
さらにそれだけでなく、今後一週間の間、無料で夕食を提供し、大浴場も好きに使っていいということらしい。
このような明らかに異常な厚遇を、生徒たちが訝しむことはなかった。
彼らは自分たちが異世界より召喚された世界を救うための救世主であり、街の人々が丁重に持てなすのは当然のことと考えたのだ。
そうして生徒たちは、大浴場で体を洗い流し、無料で提供された美味しい夕食にありついた。
そしてもうじき日が暮れるという時間帯になって、裕也が生徒たちを招集した。
「みんな!寝る前に明日からどうしていくのかを話そうと思う!」
今後の方針を生徒たちに伝えるためだった。
「まず俺たちの第一目標は王都にたどり着くことだ。だが、道のりはまだまだ長い。王都にたどり着くにはたくさんの路銀が必要になるだろう…だから…俺たちはここに無料で泊まれる一週間を有効に活用しなくてはならない!ここにいられる間に、なんとしてでも王都までの路銀を稼がないといけないんだ。ここまではいいかな?」
「うん、そうだね」
「その通りだ」
「流石の分析だな、有馬」
クラスメイトが好意的な相槌を打つ。
裕也は頷いて、話を続ける。
「お金の稼ぎ方は、もう考えてある。それは冒険者になることだ。冒険者っていうのは、モンスターと戦う職業で、ずいぶん実入りがいいらしい。さっきギルドの職員に聞いたんだけど、冒険者になれば、王都への路銀は数日で稼げるらしいんだ!」
「へぇ、冒険者か…!」
「モンスターと戦うのは怖いけど…でも日本に帰るためだもんね…!仕方ないよ!」
「すごいな裕也は…!驚異的な情報収集力だ!」
口々に裕也を褒めそやすクラスメイトたち。
裕也は、冒険者という職業の死亡率の高さには触れずに話を進める。
「というわけで俺たちは冒険者になろうと思う…でも全員じゃない…!冒険者になるのは戦闘スキル持ちと一部のサポートスキルを持った生徒だけだ…!その他の生徒には別のことをしてもらう!」
「別のこと?」
「なんだろう?」
生徒たちが首を傾げる中、裕也が答えを口にする。
「それは情報集めさ!これはとても重要なことなんだ。俺たちは現状、この世界に関してあまりに無知すぎる…!だから、この世界の情報を冒険者にならない生徒たちに集めてきて欲しいんだ…!」
「なるほど…!」
「情報集めか…!」
「確かにそれも重要だよな…!」
「さすが有馬…!抜け目がないな…!」
生徒たちから拍手が起きる。
誰も異議を唱えるものがいない。
裕也は自分の意見を全肯定する生徒たちに満足しつつ、ちらりと麗子の方を見た。
「…」
麗子は虚な瞳で俯いていた。
生気が失われ、すっかり憔悴している。
裕也が職員に手を回して、麗子の部屋だけには食事を運ばせなかったためだ。
おかげで、麗子は極度の空腹状態にあり、抵抗する気力も失われているようだった。
「くふふ…さて、いつ屈服するのか、実物だな…黒崎麗子…」
そんな麗子を見て、裕也は一瞬どす黒い笑みを浮かべそうになる。
が、慌てて生徒たちの前だったことを思い出し、咳払いをして話に戻る。
「そういうわけで、明日からは冒険者組と情報収集組の二手に分かれて行動することになる…!じゃあ、今からそれぞれのグループのメンバーを発表していくね…!」
裕也は冒険者組と情報収集組のメンバーを発表していく。
基本的には冒険者組には戦闘スキルを持った生徒、そして情報収集組にはあまり役に立たないスキルを持った生徒を配置した。
その際に、戦闘のサポートと銘打って、今後一切役に立たないであろう使えないスキルを持った生徒を何名か、冒険者組のメンバーに配置した。
裕也は、この一週間という期間を利用して、何人かの役に立たない生徒を切り捨てるつもりでいた。
具体的には、わざと使えないスキルを持った生徒を冒険者組に配置して、モンスター対峙に同行させ、モンスターと戦わせて殺してしまおうという魂胆だった。
モンスターと戦って命を落としたという事実さえあれば、あとはカリスマスキルで生徒たちを簡単に説得できるだろう。
最終的には、生徒たちを半分ほどに減らし、より少数で裕也は王都を目指すつもりだった。
カテリーナがわざわざ自分たちに王都にたどり着くという試練をかしたのも、道中で役立たずを篩い落とすためだと、裕也はそう理解していた。
故に自分の行動はカテリーナの意思にそぐわないものでは決してないだろう。
「さて…まずはどいつを間引くか…」
裕也はそれぞれのグループのメンバー発表を行いながら、明日切り捨てる生徒を吟味するのだった。