え?クラス転移で俺だけスキル無し?役立たずは置いていく?いや、俺、異世界召喚二度目で強い魔法たくさん使えるから普通に無双するよ?   作:taki210

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第四十三話

 

鬼山龍之介の父親は、暴力団との関わりがあるような人間だった。

 

おまけに酒飲みで、癇癪持ちで、いつも龍之介の母親に対して暴力を振るっていた。

 

幼い頃からそんな父親を見て育った龍之介は暴力を他人に振るうことに対して全く抵抗を抱かなかった。

 

小学校の頃から弱そうなやつを見つけては暴力で服従させ、金などを奪ったりしていた。

 

高校になってからもその性格は変わらず、気の弱そうな生徒を見つけては、金を貢がせたりしていた。

 

そんな龍之介が目をつけた生徒の一人が西川幸雄だった。

 

「あいつならたっぷり絞れそうだな…」

 

周囲から孤立したオタクでコミュ障の幸雄に目をつけた龍之介は、ある日幸雄を校舎裏に呼び出し、散々殴ってボコボコにした。

 

「あひっ…あひゅっ…も、もうひゃめて…」

 

虫の息となった幸雄の服を脱がせ、裸の写真を撮影した龍之介は、自分に逆らえばこの画像をネットにばら撒くと脅した。

 

「おい西川。俺のいうことを聞かなかったら…わかるよな?」

 

「は、はいぃ…」

 

それから幸雄は、龍之介に金を貢ぐ下僕となった。

 

龍之介は幸雄を顎で使い、金を貢がせ、また苛立った時などにストレス発散に暴力を振るったりしていた。

 

だからこそ…

 

「…ヤベェ…まじやべぇよ…」

 

こんな状況になって、龍之介は焦りに焦っていた。

 

自分は幸雄を脅し、金を散々貢がせてきた。

 

暴力も好き放題振るった。

 

それは幸雄が自らより弱い立場の人間だという確信があったからだ。

 

しかし、今、異世界に来てその関係性は逆転した。

 

幸雄のスキルの正体がまだわからないが、さっきから体を全く動かすことができない。

 

これは十中八九、幸雄のスキルによるものだろう。

 

龍之介のスキルは硬質化で、体を鉄のように硬くできる。

 

だが、現状そのスキルでは幸雄に対抗することは出来そうもなかった。

 

龍之介はひたすら自分に矛先が向かないよう心の中で祈り続けた。

 

「あはは!!あはははは!!!」

 

幸雄は楽しげに跪くクラスメイトたちの周りを回っていた。

 

ずっと自分は彼らに虐げられてきた。

 

だが、関係性は完全に逆転した。

 

この世界では幸雄の方が強者だ。

 

強者となった自分は……こいつらを好き勝手にできる権利がある。

 

「ふふふ…」

 

幸雄は自らのスキルによって拘束したクラスメイトたちをじっくりと眺めた。

 

中には、殺してやりたいほどに恨んでいる人物も何人かいる。

 

幸雄はこの機に、日本で受けた屈辱の復讐を果たすつもりでいた。

 

「さて…誰から料理しようか…」

 

幸雄は跪くクラスメイトたちを順番に眺めていく。

 

「僕を散々いじめてくれた龍之介くんは…メインディッシュだな…だとしたら、黒崎さんはデザートってところか…ふむ…じゃあ、まずは前菜の有馬くんからいただくとしよう…」

 

幸雄はゆっくりと膝をついている裕也に向かっていった。

 

「おい、西川…!早く俺たちを解放しろよ…!」

 

「お前、まじで調子に乗るなよ…!!」

 

「これお前のスキルの力なのか!?なぁ、そうなんだろ…!」

 

その間にも、クラスメイトたちからの非難の声は絶えない。

 

「うるさいなぁ…ちょっと黙れよお前ら」

 

「「「「…っ!?」」」」

 

幸雄がそう口にした瞬間、静寂があたりに訪れた。

 

今まで幸雄を口々に罵倒していた生徒たちが一斉に口を閉ざしたのだ。

 

いや、口自体はぱくぱくと言葉を発するが如く動いている。

 

だが、彼らの喉から声が出ることはなかった。

 

生徒たちは、しゃべりたくても一切言葉を発することができない状況に驚き、目を見開く。

 

「あはは!なんだよそれ!!みんな魚みたいだぞ?」

 

「「「「ーーーー!!」」」」

 

生徒たちが無言でぱくぱくと口を開いている様を、幸雄は笑い飛ばす。

 

生徒たちは憤慨し、幸雄に言い返そうとするが、しかしやはり声は出なかった。

 

「そうだね…そろそろ種明かしをしようか」

 

滑稽な生徒たちを見て一通り笑った幸雄は、

ついに自分のスキルの正体を明かす。

 

「もう薄々気づいていると思うけど、そう。今君たちが跪いて言葉も喋れなくなってるのは、僕の支配系のスキルのおかげだよ。スキルの名前は、ドミネーター!この世界に存在するどんな人間でも、無条件で支配できるスキルさ」

 

「「「ーーーー!?」」」

 

生徒たちが驚愕の表情を浮かべる。

 

そんな強すぎるスキルが、本当に存在するのか。

 

彼らの表情は、そう物語っているようだった。

 

「まさしくチートスキルってやつだね。僕のスキルに弱点はない。クールタイムとか、スキル発動の条件とかもないんだ。本当に制約なく、いつどんな時、どんな奴を、どれだけ支配するか、自由自在なんだ。異世界人だろうが、日本人だろうが、王族だろうが庶民だろうが、何人でも支配できるよ」

 

「「「「ーーーー!?」」」」

 

ついに幸雄のスキルが明かされた。

 

生徒たちは畏怖の視線を幸雄に向ける。

 

もし幸雄の言ったことが本当なら、生徒たちは幸雄に抵抗する術を持たないからだ。

 

いや、彼らだけじゃない。

 

幸雄のスキルの前には、この世界のどんな人間も…彼らをここに召喚したカテリーナさえも無力だ。

 

どんな人間でも、先制でスキルの力を放たれた瞬間、幸雄のいいなりになってしまう。

 

生徒たちはそのことを完璧に理解し、幸雄を…その化け物じみたスキルを心の底から恐怖した。

 

「うわぁ、酷いなぁ。そんな目で僕を見ないでよ。別に今すぐ君たちに自害を命令したりとか、そんなことしないよ?」

 

自らを恐怖するクラスメイトたちを見て、幸雄はニヤニヤ笑いながらそう言った。

 

自分を馬鹿にしていた十数人の人間の生殺与奪の権が今、自分の手中にある。

 

その事実が、幸雄に感じたことのないような優越感をもたらしていた。

 

「それにさぁ…君たちを先に支配して操っていたのは、僕じゃないんだよ?」

 

「「「「ーーーー?」」」」

 

幸雄の言葉に、生徒たちの顔に疑問符が浮かぶ。

 

幸雄はニヤニヤしながら、自らの目の前に跪く生徒を……有馬裕也を見下ろした。

 

「ね、裕也くん」

 

「…っ!?」

 

裕也の額を、嫌な汗が流れていった。

 

 

 

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