かの者、無貌の使徒。   作:テムテムLvMAX

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2話

 ___一度目の死は私と出会い、二度目はハスター。では、三度目は誰だろうね。いやぁ私の仕掛けが上手く作動して良かった良かった、裏技も裏技だから心配だったけど何とかなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 

「全く同じだ」

 

 

 ミッグコーズはネットカフェに来ていた、何かと落ち着ける空間だからだ。

 

 廃病院から出て服を買いSNSで闇バイトをする、そして彼がハスターに狙われた日と同日同時刻にネットカフェでクトゥルー神話について調べていた。

 

 ミッグコーズはハスターと出会い、たしかに死んだ。精神から殺された。今もその記憶がこびりついている、だがここに今生きている。

 そしてだ、時間が戻って世界の流れがやり直されていた。どのニュースを開いても同じ時間に同じ内容、一言一句ブレることがない。

 

 

「同じ時間に同じ事件、しかも日付も全く一緒……死んで生き返ったかと思ったが……そう単純な話ではないぞ……」

 

 

 彼は震える手でキーボードを叩く、ハスターに見つかった状況を再現するために。

 サブカルチャーにどっぷり浸かっていた彼は自分が置かれている状況を何となく把握して居る、時間逆行、同じ時をループしているのだと。ただし何も確たる証拠はない、何度もループ出来るのかどこまで時間が巻き戻るのか何も分からない状態なのだ。

 だからこそ彼は同じことを繰り返しループしている証明をしたかった、ハスターに出会い死んだあの時をもう一度やるのだ。

 

 

「ラヴクラフト……ヒット0件、よし……」

 

 

 覚えている限り条件は揃えた、クトゥルーについて調べ、ラヴクラフトについて検索し、一線を超える覚悟を決めた。

 夜の帳が降りる頃、あの時と同じ条件が揃いつつある、あとは時間が来るまで待つだけだ。

 

 

 1分……30秒……5秒……時間だ。

 

 

 

()()

 

 

 ___ミツケタ

 

 

 脳の奥で張り詰めた弦を弾いたかのような高音で言葉を紡ぐ、この時点ではやはりナニカ分からないが、何がいるかはぼんやりと察する。

 

 ミッグコーズはネットカフェを飛び出した、同じ路地裏を走り抜け同じ時間に砂浜へたどり着く。

 

 前と違う所は一つとしてなく、完全にあの夜を再現していた。事細かに思い出せたのは彼も自分で驚いていたが邪神が与えた体であれば数十年の記憶程度は余裕で覚えられるのだろう。

 現にここに至るまでの過程は一挙手一投足まで正確に前回の通りに動いていた。

 

 だから今、こうして黄衣の王と対面しているのだ。

 

 

 

 ___ミツケタ、無貌ノ使徒

 

 

「出たなっ……!」

 

 

 ハスターは前回と同じ様にそこにいる、それだけでミッグコーズの精神を食い破り冒していった。

 もがき苦しみ喉を掻きむしる、無いはずのナニカがある筈のナニカを蠢き身体の中で暴れている、神経が全て逆立ち血涙が溢れ出ていく、なのにどうしてこんなにもハッキリと意識が保たれてしまうのか、見せつけられ狂わされ心を守るための唯一の逃げ道てある発狂すら出来ずに彼の息が途切れたのだった。

 

 

 

 ___不可解、観測ノ観測……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 

 

 

「目を覚ませばそこは廃病院、成る程な……少し分かってきたぞ」

 

 

 例の如く廃病院に寝かされていた、発狂出来ずに発狂していたのに今では極めて安定した精神状態ということはループ毎に状態がリセットされて、お世辞にも居心地が良いと言えないここがループの始発点であることが分かった。逆行のトリガーは言わずもがな、ミッグコーズの死だ。精神的死がトリガー足り得るなら肉体的死もトリガーとなるだろう。

 

 

「蘇りじゃなくてループか、なんのつもりでこんな事を……いや、今はありがたいのか」

 

 

 ただの蘇りだと目をつけられたままだったがループであるなら世界がリセットされ動きやすくなる、かの邪神はそこまでして目標を達成してもらいたいようだ。

 ループの仕様をざっくり把握出来れば次はどうすれば乗り越えられるか考えなければならない、何度も繰り返しハスターをどうにかしなければマトモな活動は出来ないのだから。ハスターは邪神を調べようとするとその意思を汲み取りミッグコーズを見つけ出していた、それに対する対策も無い今どうにかしなければ無限の狭間で生き地獄を味わうことになる。

 

 

「ひとまず目標はハスターの攻略、ハスターの……?」

 

 

 無理なんじゃない……? 彼の言葉の後ろにはそう続くだろう。彼我の戦力差、持ち得る力、想定される被害、もろもろを無い頭で必死に考えて導き出すのはやはり無理の一言。

 何も打つ手がない、もし仮にハスター以外の邪神または神話存在にコンタクトを取れるのは話は変わるが世にも恐ろしい代償が付き纏うと思うとループを乗り越えるための最善とは言えない。

 100分の1をぶち抜く幸運と類まれな閃きでもあれば、あるいは状況はひっくり返せるかもしれない。無い物を強請っても仕方ないのだが。

 

 ひとまず廃病院を出てネカフェに向かうのだった、リスポーン地点から近いこともあり迷わず到着した。今回は行動の再現はしていない……今回は思考のターンである。

 

 

 

「ハスター、ハスターか……」

 

 

 ___ミツケタ

 

 

「これでもか……!?」

 

 

 

 幾度か呟くだけでも駄目らしい、今度は発狂して自分で首を絞めて死んだ。

 

 

 

 ___予測、待機? 不可解。

 

 

 

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 廃病院のベッドだ。

 

 

「油断した。もう死に慣れたような気がする」

 

 

 邪神達は軽率に名前を呼ぶとこちらを察してやってくる、この体にあるナイアルラトホテップの力がビーコンの役割になってしまっていると気付くまでそう時間は掛からなかった。

 

 

「となると言葉に出すだけでも、文書にするのも駄目らしいな……特に声に出すと一発だ。気をつけよう」

 

 

 そこを気を付けるとして、未だハスターの突破口は見つからない。クトゥルーとハスターは兄弟でありながら不仲であることは彼の魂に刻まれている記憶から知り得ているが、だからと二柱をぶつけ合おうものなら巻き込まれて死、盛大な自爆となる。

 

 

「どうにもならない、か……そりゃ邪神相手なんだ、どうにかなると思うのが可笑しいんだ……、あ? そうか、どうにかしようとしていたら駄目なんだ……」

 

 

 ある意味では原点回帰であり、逆転の発想だった。

 

 邪神は一旦無視して先へ進むのだ、邪神の目を欺き、時として利用もして良いだろう。

 

 方針が定まった。あとは実行するだけだ。

 

 

「進むことで得られるものがあるはずだ、進んだ先で無貌の神の眼の前に堂々と立ってやろう」

 

 

 ミッグコーズは街へ行く、その足取りは軽やかだった。

 

 

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 

 

 

 ___う〜んハスターめ、しつこいな……えぇ? 私の使徒に手を出すだなんて見所あるけど許されないよ〜? 

 だけど彼なんとかなりそうだし、放置で良いかな〜? 

 

 

 

 

 

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