未来(あす)への扉   作:飛鳥 螢

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―ラルガタワー―(1)

 水の都フェナスシティから遥か遠くに見えるバトル山の険しい峰々を望むと、その前に広がる何もない荒れ地と砂漠の中に、天を()く様にそびえ立つタワーの先端に乗っかる巨大な半球体の建造物が見える。その上には先の尖った様々なオブジェのようなモノが立ち並び、オーレの強い陽射しを反射してキラキラと光り輝いていた。

 それが遠くから見る、今話題の高級リゾート娯楽施設(カジノ)として建設されたラルガタワーの姿だった。

 近づいて行くと、荒れ地から乾燥した砂漠に渡って広がる広大な敷地の中に、幾つもの半地下構造の巨大なドームが点在し、それらを透明な強化ガラスで覆われた長い通路で繋がれた基底部が見えてくる。

 その入り口は半地下にあり、その前にある広場も一メートル程地面を掘って周りを砂埃止めの白壁で囲んだ造りになっていた。

 遠目だと四方を囲む壁の角の上にある七色に輝く多面体のクリスタルボールが回転しながら浮いているものしか見えない。

 そして、地面を美しい黒と白の大理石で敷き詰めた広場の中央には、赤大理石で造られた通路が入り口まで続き、その両脇にある十字型の池の真ん中から噴き出している噴水の上には、中央が盛り上がった円盤に乗ったクリスタル製のウソッキーがゆっくりと回転していた。

 

 

 ラルガタワーの敷地内にある駐車場に乗り入れたレオンは、そこにサイドカーを停めた。一応周りに砂止めの壁があるので、防砂シートを被せる必要は無さそうだ。

 ルナは側車から降りると、何時も羽織っている上着を脱いだ。その下は一応金持ち専用の高級リゾート娯楽施設(カジノ)だからと、いつもと違うTPOに合わせた服装になっている。これはクロに普段着で行って入れて貰えなかったと聞いていたからだ。

 とはいえ急遽決まった事なので、髪を軽く結い上げてエメラルドグリーンのリボンをつけ、リボンと同色のサテンの袖なしワンピースの上に、淡いピンクの花柄レースのボレロを羽織るくらいだ。そこにボレロと同じレースを使った少し大きめのポシェットを斜めに肩に掛けている。

 これは祖母が若い頃着ていたものだ。胸辺りがちょっとダブついて腰がきついが、それでも十分今の流行に合ったフェミニンな装いだった。

 だだ、同じく祖母から貸してもらったエナメルのストラップ付きパンプスが、履き慣れていない所為か少々歩きづらい。

 一方レオンは全くTPOなど頓着しなかった。ここには遊びに来たわけではないのだ。普段と同じ少しくたびれたゴーグルを頭に乗せ、黒のシャツとズボンの上に青いロングコートを羽織っている。そして、左腕にスナッチマシンである肩当てと手甲を付け、何が来ようと万全の状態になっていた。

 そんな二人が並んで歩いていると、お嬢様とボディーガードのように見えなくもない。

 広場中央の赤大理石の上を歩きながら、レオンはさり気なく周囲に視線を向ける。

 一目で金を掛けたと判る造りに怪しい所はなく、普通の高級リゾートの娯楽施設に見えるが、ここにはあのミラーボが居るのだ。シャドーと何らかの関係があるのは間違いない。

 だからこそ散々自分達の邪魔をしたレオン達を、表の名(ラルガタワー)を使ってここに呼びつけたのだろう。

 本来ならアゲトビレッジから下山できないレオンだったが、あの招待状の送り主がシャドーと判った以上、喩え罠だとしても新たな手懸りを得るチャンスを棒に振る事は出来なかった。

 レオンはパイラの署長と交渉し、自分の持つシャドーの情報と引き換えに特別に許可を得てここに来たのだ。

 

「いらっしゃいませ。ラルガタワーにようこそ。本日オープンでございますが、何で遊ばれるご予定でしょうか?」

 レオンとルナが広場を横切って入り口に来るなり、その両脇で控えていた黒服を着て黒メガネをした二人の男の一方が、二人に声を掛けてきた。

 言葉使いは丁寧だが、その口調も態度もそれとは裏腹に尊大な感じがした。明らかに二人を金の無さそうな格下の客と侮っている。

 レオンは答える代わりに、無言でポケットから招待状を取り出し、男の眼前に突きつけた。

 それを見た途端二人の男は顔を見合わせ、ニマリと(わら)った。

「これはこれは、レオン様とそのお連れの方ですね。お待ちしておりました、さあ、どうぞ。中へとお進みくださいませ」

 薄ら笑いを浮かべ、もみ手せんばかりの猫撫で声で言う。まるで獲物を目の前にして舌舐めずりするニューラのように。

 言われるまま二人が六角形の飾り気のない頑丈そうな扉の前に立つと、中央のモンスターボール型の開閉装置が回転し、そこから三方に扉が割れて壁に収納されていった。

 それは金持ち相手の娯楽施設の入り口の扉というより、丈夫だけが取り柄のシェルターのそれのようである。

 二人が中に入ると、円形状の壁の三方に入り口と同じような扉があり、床を大理石で敷き詰めたドームの中央には、このラルガタワーだろうか、クリスタルでできたタワーの模型が飾られていた。

 それは三本の細い脚部に支えられた大小四つの半球の盤が、中空に浮かぶように立っている模型だった。

 中央にモンスターボールのマークがある広場が多分コロシアムだろう。その周りをぐるりとスタンドが囲い、一度に何万人もの観客を収容できそうだった。

 そして、そのコロシアムの外側にある三つの半球盤の上には、そのスタンドよりも高くそびえる鋭角的な建物が林立していた。おそらくそこが金持ち連中用の自分の部屋に居ながらバトル観戦できる特等席になっているのだろう。

「よくこんな細い脚で、これだけの物を支えていられるわよねぇ……」

 模型を見ながらルナは感心した。

 レオンは模型など見向きもせずに、次々と三つの扉を開けてまわった。

 扉の向こうはどれも恐ろしく長い通路になっていて、強化ガラスで覆われた地上に出ている上部部分から燦々と陽射しが射し込み、床に敷かれている二本の細いレールに反射して煌めいている。

 多分これはこの長い通路の移動用の乗物の為のモノだろうが、まだ準備できてないのか、入り口の所には大き目の金属製の床板が一枚置いてあるだけで、それらしき物はどこにも見当たらない。

 それにしても奥に行くにはどの通路を行けばいいのか、案内図など何処にも無いのでさっぱり分からない。

 仕方なくレオンは、入り口から見て左の通路から順に行ってみる事にした。

 模型を眺め回しているルナを呼んで、通路に足を踏み入れる。

 レールの端にある床板の前で暫く待ってみたが、何か来るような気配はない。

 戻ってさっきの男達に訊きたい処だが、ここに入った途端入り口は閉じられてしまっていた。

 ここでこうしていても埒が明かない。取り敢えずレール沿いに歩いて行ってみる事にし、二人は目の前の金属製の床板の上に足を乗せた。

 と——

 ガクンと大きく足許が揺れ、いきなりそれが動き出す。

「っ!?」

 仰け反ったものの、レオンは瞬時にバランスを取って転倒を免れたが、慣れないパンプスの所為で倒れそうになったルナにしがみ付かれ、支えられずに二人揃って動く床板(ムービングボード)の上に折り重なるように倒れ込んだ。

 咄嗟に床に手を付き、ルナを潰さない様にしたが、下になった彼女と殆ど鼻が触れ合わんばかりの間近で目が合った途端、レオンは弾かれたようにバッとルナから離れて立ち上がった。

 今まで通りに振舞ってはいたが、聖なる森で彼女に醜態を(さら)して以来何となく気まずく、レオンはずっとルナとまともに顔を合わせられないでいた。それでいきなりのアップに焦ったのである。

 それに加え、何時もと違う服装に薄化粧までしているルナに内心途惑っている所為もあった。

 ルナの視線から逃れるように顔を背けながら、ぼそりと声を掛ける。

「大丈夫か?」

「え、ええ……」

 レオンに巻き添えを喰らわせてばつが悪いルナは彼の不自然さに気付かず、すまなそうに応えて立ち上がると、足許に向かって盛大に文句を言い出す。

「何よ、もうっ。動くんだったら動くって、ちゃんとどっかに書いておいてよね。もうちょっとでここから通路に転がり落ちるトコだったじゃないっ」

「そうだな」

 ぷんすか床板に怒る彼女を見て、気まずい気分が吹っ飛んだレオンは、苦笑して相槌を打った。

 通路の中に降り注ぐ陽射しは強化ガラスによって和らげられ、温度も管理されているのか、どちらかというと涼しいくらいだ。

 レールの上を滑るように移動し、ムービングボードが新たなドームに着く。

 二人はボードを降りて扉の前に立った。

 扉の真ん中のモンスターボール型の開閉装置が回転し、シュッと扉が三つに割れて壁に収納されて開く。

 気を引き締め、用心してドームの中に入った途端、二人はうっと息を呑んだ。

「ふっほほほ~。待ってたよ、レオン君」

 相変わらずのお姉言葉で出迎えたソレは、細い体にキンキラのド派手な服を着込み、悪趣味なサングラスに、頭の数倍はあろうかというボリュームたっぷりの真ん丸なアフロヘアを中央で赤と白に染め分けた男——予想していたとはいえ、二人にとって余り再会したくなかったシャドーの幹部の一人、巨大モンスターボール頭のミラーボだった。

 ミラーボは、心底嫌そうな表情(かお)をする二人に構わず喋り続ける。

「パイラではやってくれたわねェ。だけどさァ、何回も何回も負けるわけにはいかないからねェ。今度こそ、勝たせて貰っちゃうよ。レッツ、ミュージック!!」

 何時もの様に片手を挙げるが、パイラの時と違って音楽は何も流れて来ない。どうやらここには、それ用の装置はないようだ。

 即座にレオンは身構えたものの、シ~ンっと静まり返ったドームの中に何とも言えないムードが漂いまくる。

 コホンと咳払いしてそれを誤魔化し、ミラーボは何事も無かったように仕切り直す。

「……は、置いておいてぇ、いきなりバトルスタートだァ!!」

 と、手にしたモンスターボールを放り投げた。

 一匹は頭痛持ちのボーっとした顔のコダックの進化形である水タイプのゴルダックだ。

 進化した事により、八十センチ程の体長が倍の大きさになった体の色は黄色から青く変化し、額に赤い宝玉が付いて引き締まった顔立ちに変わっている。そして、鋭い爪を持った両手足の間には水掻きがついて泳ぐのが得意なポケモンだ。

 もう一匹はパイラでも使っていた、ずんぐり体型の踊り好きのルンパッパである。

 以前の戦いでは、レオンはこいつを相手に相棒達以外は、まだスナッチしたばかりの使いづらいダークポケモンを使ってのバトルだったので有効技があまりなく、かなりの苦戦を強いられたが、今は違う。使えるダークポケモンのリライブもきっちり終え、バトル山での訓練で十分鍛えられて能力も技の威力もアップしている。

 レオンは共に飛行タイプのチルタリスと、ワタッコを呼び出した。この二匹は他に前者はドラゴン、後者は草タイプを併せ持っている。

 チルタリスは優雅に羽ばたかせた翼を畳んでレオンを見ると、キッと敵である巨大モンスターボール頭達を睨み付ける。

 ボールから出た途端レオンの頭に跳び乗ったワタッコは、生真面目に相手を睨んで身構えるチルタリスの真綿のようなふんわりとした翼に目を付け、ぽよんっとその上に飛び乗った。

 今からバトルだというのに、とても気持ちが良さそうにまったりし出す。

 まだレオンの体勢が整わない隙にと、ミラーボが指示を飛ばす。

「ほら、ルンパッパは『雨乞い』 ゴルダックは草っコに鳥っコ共々『冷凍ビーム』よ」

「ワタッコはゴルダックに『眠り粉』 チルタリスはルンパッパに『ゴッドバード』だ」

 すぐさまレオンもそれに対応した指示を出す。

 チルタリスの翼の上でくつろいでいても素早さでは定評があるワタッコが、瞬時にぽんっと高く飛び跳ね、両手の綿毛を擦り合わせて飛ばした粉でゴルダックを深い眠りに落とし込む。

 一方チルタリスはルンパッパの弱点に狙いを定めて全身の気を高めていく。

 そこで漸くルンパッパの『雨乞い』が効いて広いドーム内に雨が降って来る。

「ルンパッパは鳥っコに『ダイビング』 ゴルダック、さっさと起きなさいよっ」

「ワタッコはゴルダックに『ギガドレイン』」

 雨の中でも元気に飛び跳ね、ワタッコが眠るゴルダックから体力を奪っていく。

 ゴルダックはぐらりと体を揺らしながらもそれに堪え、立ったままの姿勢でグウグウ寝ている。

 ルンパッパは足許に造り出した水溜まりに跳び込もうとするが、それより早く極限まで気を高めて全身を(まばゆ)い程に輝かせたチルタリスが攻撃を仕掛ける。

 体に(まと)う圧倒的なパワーを秘めた光が、神々しい鳥に姿を変えて雨に(けぶ)る宙を切り裂き、ルンパッパのずんぐりとした体を貫いた。

 ルンパッパが苦手とする数少ない技の一つである飛行タイプ技でも、最高の威力を持つ『ゴッドバード』を急所に受け、ステップを乱してくるりと体を回転させたルンパッパは、そのまま床に倒れ伏した。

「くぅ~っ、折角の雨受け皿も、倒れちゃったら意味ないわァ~」

 悔しげに嘆きの声を上げ、ミラーボは次のポケモンを出した。またもルンパッパである。

 出て来ると同時にルンパッパは雨に濡れた床をミラーボの手拍子に合わせ、スイ~っと滑るようにリズムを取る。

 どうやらこのルンパッパは、もう一つの特性である雨の中では素早さが上がる「すいすい」のようだ。

「ルンパッパはリズムに乗って鳥っコに『冷凍ビーム』 ゴルダック今度こそ起きなさいっ」

「ワタッコは『日本晴れ』 チルタリスはルンパッパに『ゴッドバード』だ」

 即座にレオンも指示を飛ばしたが、雨の中「すいすい」の特性を持ったルンパッパの動きはワタッコの素早さをも凌駕した。

 ワタッコが両手を上げ、雨雲を散らして晴天をもたらす前に、技に入って気の力を溜め出して動けないチルタリスに鋭い冷気を一気に吹き掛ける。

 咄嗟にチルタリスの羽毛の中にすっぽり潜ったワタッコはそれを受けずに済んだが、効果抜群の技を全身に浴びたチルタリスは大きく身震いして仰け反った。

 それでも何とかそれに堪え、溜めた気を散らすことなく高めていく。

 そして、雨が止み、眩しい陽射しがドームの中に満たされた。

 途端にルンパッパの動きが鈍る。

 そんな中でもゴルダックは眠ったままだ。

 ミラーボは再度ルンパッパに『冷凍ビーム』を指示するが、雨が止んで動きの鈍くなったルンパッパが技を出す前に、今度はチルタリスが先に技を決め、眠るゴルダックからワタッコが『ギガトレイン』で残った体力全て奪い尽くす。

 急所を突かれたルンパッパはクルクルと体を回転させて床に転んだまま力尽き、ゴルダックは眠ったままその場に前のめりに倒れ伏す。

「くぅ~っ、やっぱり手拍子だけじゃ、今一リズムが取りにくいわ~」

 無念そうに呻き、ミラーボは次のポケモンを繰り出した。

 一匹は体長一メートル程の薄紫色のがっしりとした体に、大きく開けた黄色い唇が顔の殆どを占め、頭にはスピーカーのような大きな丸い二つの耳を持つノーマルタイプのドゴームである。

 進化前のゴニョニョは大人しく普段は囁くような声しか出さないが、ドゴームはそれと対照的に常にやたらと騒々しく、足を踏み鳴らして出す大声は家を一軒吹き飛ばす程の威力がある。

 そしてもう一匹は化石から再生した岩と虫タイプを兼ね備えたアノプスの進化形である、硬い甲羅で全身を覆われたアーマルドだ。

 スレッドが解析したデータロムのダークポケモンのリストにはどちらも載っていなかった。

 チラリとレオンは念の為斜後ろに視線を走らせたが、プラスルとピカチュウを出してバトルを見守っていたルナは、小さく横に首を振った。

 どちらもダークポケモンでなければ遠慮は無用である。二匹とも全力で叩き潰す。

「ドゴームは鳥っコに『突進』 アーマルドは『岩なだれ』」

「ワタッコはアーマルドに『眠り粉』 チルタリスはドゴームに『火炎放射』だ」

 素早くワタッコがアーマルドを眠らせると、チルタリスは(くちばし)から『日本晴れ』で威力の上がった炎を放射してドゴームの全身を焼き尽くす。

 そして残ったアーマルドにワタッコの『ギガドレイン』を浴びせると、レオンは体力が残り僅かで決め手のないチルタリスを引っ込め、代わりにヌオーを呼び出した。

 眠り粉の効果はポケモンによってまちまちだ。ゴルダックの様にずっと眠ったままのヤツもいれば、すぐに目を覚ますヤツもいる。万が一アーマルドがすぐ目を覚まして『岩なだれ』をしてきても、ヌオーならば大丈夫だ。

 威力が増しているとはいえ、苦手技でもないのに一撃でドゴームが倒されて愕然とするミラーボを余所に、レオンはぽやんとした顔で立っているヌオーに、ここで一気に決める為に指示を出す。

「ヌオー、『なみのり』だ」

「ちょ、ちょっとォ~っ!?」

 ルンパッパ同様アーマルドも併せ持った二つのタイプによって、極端に有効技が少ないポケモンだったが、()りに()ってその数少ない効果絶大である水タイプの技を、眠って無防備なこの状況で繰り出してくるとは、最悪である。

 ——と、

 レオンの指示にヌオーは何を思ったのか、ぺろんと長い舌を出した。

 これで終わったと思っていたミラーボは、トレーナーの指示に従わずに舌を出したヌオーに思いっ切り眉根を寄せる。

 皆が注目する中、ヌオーは舌に乗せたお気に入りのアイテムを、舌を器用にくねらせてポンっと宙に放り投げ、それを舌の先でキャッチする。

 綺麗に舌の先に立った「先制のツメ」を見詰め、ポッとヌオーが頬を染めた。

「なんなのよ、こいつ?」

「………」

 疑問符しか浮かばないミラーボに問われ、レオンは沈黙した。

 ヌオーのお宝愛は、レオンの理解の範疇を越えていた。

 以前はここまで酷くなかったのだが、村での特訓の合間にたまたまヌオーが見せた(げい)を老人達が「凄い凄い」と喜んだ事があったのだ。

 自分のお宝を褒められたと思ったヌオーは余程嬉しかったのか、それ以来バトルの最中でもこうしてお宝を自慢す(技を見せ)る様になったのである。

 バトル中だけでも止めるようよく言って聞かせた筈なのだが、すっかり調子に乗ったヌオーにはあまり効果はなかったようだ。

 流石にそんな事情など言えるわけがない。

 レオンから返答は返って来なかったものの、攻撃を仕掛けてこない今がチャンスだ。

「アーマルド、とっとと起きるのよっ!」

 ミラーボがキンキン声でアーマルドに怒声を浴びせる。

 それが聞こえたのか、アーマルドがピクリと反応する。

 このままではアーマルドが起きてしまう。

 仕方なく、もう一度ワタッコに『ギガドレイン』の指示をレオンが出そうとした時だった。

 頬を染めてお気に入りのアイテムを眺めていたヌオーは、満足したのかくるりと舌を巻いてお宝を口の中にしまい込む。

 ふんふんと鼻歌でも歌いそうに機嫌よく小刻みに体を上下すると、いきなりガバッと大きく伸び上がった。

 そのまま眠りが浅くなったアーマルドに、目の前に呼び出したそそり立つ高波をぶち当てる。

 目覚める直前の無防備な状態でそれを全身に浴びたアーマルドは、目覚めることなくぱったりと倒れ伏す。

「もぉ~、ホントになんなのよォ~」

 トレーナーの指示を無視するようでいてきっちり決めて来る。ただそれが何時になるか誰にも分らない。何処までもトレーナー泣かせの予測不能なヌオーである。

 全くその通りだと、これに関しては不本意ながらもミラーボと同意見のレオンだった。

「あ~あ、踊りが上手くても、バトルには勝てないか~っ」

 結局なす(すべ)もなく最後のポケモンまでやられ、ミラーボは両手を広げて天を仰ぐ。

「いや~まいったね~、ホント。こりゃあ完全にボクの負けだね。しょうがない、これあげちゃおう。はいっ!」

 肩を竦めてあっさりと負けを認めたミラーボは、赤い色のⅠDバッチをレオンに放った。

 慌ててそれをキャッチし、怪訝そうにレオンは巨大モンスターボール頭を見た。

「ボク達の偉大なボス、ジャキラ様からのプレゼントだよ。それが無いとこの先には進めないよ。ボクは無くても進めるから一足先に行って待ってるけどォ、まあ、進まない方が身の為かもしれないねェ、ふっほほほ~!」

 一方的に言いたい放題言うと、ミラーボはドームから軽やかな足取りで出て行く。

「おいっ、待て!」

 直ぐにレオン達は後を追ったが、ドームから出て行ったミラーボの姿は既に何処にもなかった。

 ムービングボードもそのままである。おそらく何処かに隠し扉でもあるのだろう。

 だが、幾ら調べても二人にはそれが何処にあるか、まるで分からなかった。

「それ、何に使うと思う?」

「さあな」

 あの野郎、肝心な事を言わずに行きやがって。

 レオンは憮然として、手にしたⅠDバッチをポケットにしまった。

 ミラーボの居たドームは行き止まりになっていて、これ以上先には進めない。

 仕方なく二人は入り口のドームに戻ることにした。

 




 シャドーの招待に万全の態勢を整えてと、主人公の手持ちメンバーを厳選したら……
 あれ、これって自分がゲームで使っていたポケモン達と同じでは?
 まあ、今まで主人公が手に入れたポケモンは、主人公に自分の過去を語らせる為に出したサンダース、ブースター、シャワーズ以外は、全てゲーム内で手に入るものなので、そこから自分の好みと使い勝手を考えて選ぶとなると、やっぱり同じになるのは仕方ないか。
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