未来(あす)への扉   作:飛鳥 螢

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―ラルガタワーコロシアム―(2)

 入れ替わるように、新たなトレーナーが姿を現わす。

 ライダースーツに身を包んだ、焦げ茶の髪のにやけた顔の男だ。

『次の対戦相手は、破壊力抜群の悪タイプポケモンをこよなく愛するライダーのイージーです。ランビーの(かたき)、人のダークポケモンを奪う極悪少年トレーナー・レオンに、どのような報復を加えるのでしょうかっ』

「極悪なのは、そっちでしょっ!」

 あんまりな女性アナウンサーの言種(いいぐさ)に、思わずルナがツッコミを入れる。

 イージーは、バトルフィールドのトレーナーの立ち位置に来ると、すかさずベルトからモンスターボールを掴み取った。

「次はオレの番だっ!」

 そう言い放ち、ボールをフィールド内に放り投げる。

「ちょ、ちょっと、レオンはまだポケモン達の回復が済んでないのよっ」

「そんなもん、バトル中にやりゃいいだろ」

 慌てて抗議する少女に、イージーはしれっと言い返す。

「さあ、さっさとポケモン出しなっ、それともおまえが代わりにこいつらと戦うか?」

 イージーが出して来たのは、体長が二メートル近くある、発達したアゴと鋭く尖った牙を持つ水と悪タイプを併せ持つサメハダーと、(わざわい)が近づくと姿を現わすと言われている悪タイプのアブソルである。

 前者はキバニアの進化形で、腹にあった黄色い星印が額に付き、体の色も黄色いヒレが紺色なり、赤い腹が白く変化している。凶暴さには更に磨きがかかり、一匹で大型タンカーもバラバラにしてしまう程だ。

 それから後者は体長が一・二メートル程で、鋭く尖った黒い刃のような尻尾と、こめかみから鎌のような湾曲した細長い鋭利なブレードが突き出ている。

 長く美しい純白の毛並みをした四つ足の獣の体に、赤い瞳に額には楕円形の黒い玉が付いた人間のそれに酷似したすっきりとした顔付きは、何処か見る人に禍々(まがまが)しい印象を与えていた。

 どちらも人間どころかポケモン相手でも剣呑過ぎる。ポケモンを回復しながら戦って勝てる相手ではない。

 勿論相性が最悪なエスパータイプのエーフィは使えない。水タイプと相性が悪く、殆ど体力が残っていないバクフーンもだ。折角悪タイプに効果抜群な格闘技を持っているのにだ。

「レオン、気をつけて。あのアブソルはダークポケモンよ」

「ああ」

 ルナの呼び掛けに頷き、残る四匹の中から選び取った二匹を呼び出した。

 草と飛行タイプを併せ持つワタッコに、漆黒のドレスの様な体と髪をなびかせて宙に浮かぶゴーストタイプのムウマである。

 ワタッコはふよふよと宙を漂うムウマを見、またお気に入りの相棒じゃないのにむっすりとしてレオンの頭の上に跳び乗り、ムウマはそんなワタッコに悪戯心を起こしてちょっかいを掛け出す。

 こういう時はすぐさま指示を出すに限る。

 レオンは相対する悪タイプの二匹を見据え、冷静に指示を出す。

「ワタッコ、アブソルに『眠り粉』 ムウマはサメハダーに『十万ボルト』だ」

「サメハダーっ、先にムウマに『噛み砕く』を決めろ! アブソルは『剣の舞い』だ」

 威勢よくイージーが叫ぶ。

 不満をぶつける相手を見つけたワタッコが、その場で技を出そうとするアブソルを、レオンの頭の上から躱す暇も与えずに眠りに落とす。

 それを後目(しりめ)に、サメハダーは鋭い牙をぎらつかせ、大口を開けながらムウマに突進していく。

 悪戯の標的をワタッコからそっちに変えたムウマは、サメハダーの牙に噛み砕かれる寸前、ふっと姿を消してそれをやり過ごす。

 ガチンと思いっ切り上下の牙をぶつけ、噛み砕きそこねたサメハダーが慌てて方向転換すると、そこに特大のプラズマの塊を頭上に浮かべたムウマが、ニンマリと口の端を吊り上げていた。

 再度噛み砕こうと大口を開けたサメハダーの顔面目掛け、バチバチと放電するプラズマの塊を投げ付ける。

 避ける間もない。

 十万ボルトにも及ぶ電撃が、大きく開けた口から体内を貫いた。

 全身を硬直させてサメハダーは体をくるりと反転し、白い腹を上にして力尽きる。

「くぅっ、ゴーストタイプの分際で電気技など使いやがってっ」

 罵声を上げてイージーは次のポケモンを呼び出ず。

 体長一メートル程の黒と灰色の毛並みをして鋭い牙を持つ。アブソルと同じ純粋な悪タイプのグラエナだ。

 これで、併せ持った他のタイプの弱点を()いて攻撃する戦法はもう使えない。

 牙を剥き出し、低い唸り声を上げてグラエナが威嚇する。

「グラエナ、ムウマを『嚙み砕く』 アブソルっ、さっさと起きやがれ!」

「ワタッコ、グラエナに『眠り粉』」

 レオンの指示にすかさず反応し、ワタッコがグラエナに『眠り粉』を振り掛ける。

 これで相手のポケモンは両方眠ってしまった。後はこいつらが目覚める前に決着を着ければいい。

 ——と、

 さっき眠らせたばかりのアブソルが、パチリと目を覚ます。

「よっしゃ、アブソル。ムウマに『だまし討ち』だっ!」

 ——しまったっ。

 慌ててレオンがムウマをボールに戻そうとしたが、遅かった。

 ふっと姿が搔き消え、一瞬にして宙に漂うムウマの下に移動したアブソルは、跳び上がり鋭利な前足の爪でムウマの黒い体を思いっ切り薙ぎ払った。

 声にならない悲鳴を上げ、ムウマが勢いよく地面に叩き付けられる。

「ムウマっ」

 レオンの呼び掛けに弱々しく微笑んだムウマの体が、赤い首飾りを散らして消えるようにボールに戻る。

 初めて敵ポケモンを戦闘不能にまで追い込んだシャドーのトレーナーに、どっとスタンドから盛大な歓声が上がった。

 それにイージーは得意気に手を振って応える。

 まるでもう勝ったような態度である。

「………」

 一方レオンはムウマの戻ったボールを握り締め、自分の油断を悔やんだ。

 元々ムウマは悪タイプに弱い上、有効技は持っていなかった。それを敢えて出したのは水タイプでもあるサメハダーに効果抜群の『十万ボルト』を持っていたからだ。

 それなのに相手がどちらも眠っているからと、サメハダーを倒してすぐに交代せずにいた所為で、しなくていい大怪我を負わせてしまった。

 唇を噛み締め、レオンは次のポケモンを呼び出した。

 最も信頼する相棒の片割れであり、相手と同じ悪タイプのブラッキーである。

 闇色の体の随所で月光のような光を明滅させ、ブラッキーはニマリと残忍な笑みを浮かべるアブソルをキッと睨み据える。

「ワタッコ、アブソルに『眠り粉』 ブラッキーは『かみつく』だっ」

「躱せっ、アブソルっ!」

 イージーが余裕を持って叫ぶ。

 ワタッコが放った眠りの粉を、今度は軽く跳躍して躱すと同時に、アブソルは深く身を沈めて高々とジャンプした。

 向かってきたブラッキーの真上。

「アブソル、そいつを切り裂けっ」

「避けろっ、ブラッキー」

 だが、アブソルは器用に中空でくるりと体を返し、上を見上げて慌てて避けようと身を返したブラッキーの背中目掛けて凶器の爪を振るった。

 ただでさえ抜群の攻撃力を誇るアブソルである。それがダークポケモンにされて更に攻撃力を引き上げられた『切り裂く』の威力は、効果抜群でなくとも絶大だった。

 悲鳴を上げ、仰け反るようにブラッキーがバトルフィールドに倒れ込む。

「ブラッキーっ!?」

 血相を変え、レオンは声を張り上げた。

 それに応え、ブラッキーは渾身の力を振り絞ってゆっくりと立ち上がった。

 よろりとよろける。

「ブラッキーっ」

 思わずレオンは駆け寄り、手を差し伸べる。

 ブラッキーはその(てのひら)を軽く舐めると、闘志に燃える赤い瞳でレオンを見上げてからアブソルに向き直った。

 そして、指示を催促するように力強く一声鳴く。

 その声にホッと息をつき、レオンはトレーナーの立ち位置に戻る。

「よし、ブラッキー、アブソルに『あやしい光』 ワタッコはそれが決まったら、もう一度『眠り粉』だっ」

「そんなもん、効くかよっ」

 イージーは鼻を鳴らし、指示を飛ばす。

「アブソルっ、も一度ブラッキーに『切り裂く』だっ」

 (めい)を受け、険しい岩場を飛び移るような身のこなしで、相手に狙いを定めさせない様に左右に飛び跳ねながら隙を窺い、そして、次の瞬間。

 アブソルは一足跳びにブラッキーの目の前に迫り、前足を振り上げた。

 その刹那、

 ブラッキーは体の随所でゆっくりと明滅していた光を一気に輝かせ、アブソルの顔面に浴びせる。

 至近距離で強烈な光に目を焼かれ、アブソルは悲鳴を上げた。

 混乱し、頭を振ってこめかみに生えている鋭いブレードを振り回し、鋭利な爪を立てた前足で闇雲にそこいら一面を薙ぎ払う。

 しかし、苦し紛れのそんな攻撃は、流石にブラッキーには通用しない。

 ひらりと躱して、混乱したアブソルから距離を取る。

 そこへ、すかさずワタッコが両手の綿毛を擦り合わせ、眠りを誘う粉を振り撒いた。

 混乱しながらも、肌でそれを察したアブソルは、さっと飛び退いてそれを避ける。

 流石に災害などを事前に察知する能力があるだけに、身の危険にも敏感で、喩え混乱しても簡単に同じ技を喰らったりはしないようだ。

 ——あれを躱されるとは……

 レオンは内心で苦々しく舌打ちした。

 混乱している所為か、アブソルは苛立たしげに激しく辺り構わず爪で薙ぎ払い、こめかみのブレードを振り回す。

 多分今ので興奮してハイパー状態になったのだろう。これでは危険過ぎて近寄る事すらできない。

「アブソルっ、どれでもいい。手近なやつからおまえのその爪で切り裂けっ」

 ますます凶暴化したアブソルにそう命じると、イージーは眠ったままのグラエナを罵倒した。

「さっさと起きろっ、この役立たずがっ!!」

 だが、グラエナは眠ったままピクリともしない。

 一方混乱して見境の無くなったアブソルは、トレーナーの命令通り手近な奴に狙いを定めた。頭にポケモンを乗せた相手のトレーナーに。

 全身の筋肉をたわめ、一気にレオンに躍りかかる。

 慌ててレオンの頭から跳び下りたワタッコには目もくれない。

 その半瞬前、アブソルが狂気の目でレオンを捉えた瞬間、ルナは叫んでいた。

「プラスルっ、ピカチュウっ!」

 その声に、すかさずプラスルは相棒に『手助け』し、それを受けたピカチュウが全身に力を込め、取って置きの技を繰り出す。

 直後、ガキンっと硬質な音がフィールドに響き渡る。

 レオンに振り下ろしたアブソルのこめかみのブレードが、何もない宙で弾き返されたのだ。

「なっ!?」

 決まったと思っていたイージーは思わず目を剥いた。

 スタンドの観客全員も同じである。

 そしてそれは、アブソルの攻撃に合わせ、飛び退いて躱そうとしていたレオンも同じだった。

 弾き返されて体勢を崩したアブソルが、巧みに体を捻って地に着地するや否や、再び地を蹴ってレオンに躍り掛かる。

 前足の左右の鋭い爪が、立て続けに一閃する。

 だが、やはりそれはレオンに届く前に阻まれる。

 自分の攻撃が(ことごと)く防がれたアブソルが、唸り声を上げて忌々しげに血走った目で何もない中空を()め付ける。

 そこに陽光を浴びて微かにキラリと光るものがあった。

 半円球の透明な壁のようなものである。

「やったね、ピカチュウ、プラスルっ」

 ルナが喜び一杯に声を上げ、二匹と共にガッツポーズする。

 ——まさか……

 ハッとして振り返ったレオンに、ルナと二匹のポケモンが誇らしげに笑みを浮かべる。

 レオンをアブソルの凶刃から護ったのは、プラスルの『手助け』で強化されたピカチュウの『守る』だったのだ。

 元来『守る』は自分の身しか守れない技だ。それを使ったポケモンと密着しているならともかく、数メートル離れた相手を、喩え『手助け』で技の威力を上げたとしても、その障壁の中に取り込む事など出来ない筈だった。

 それを、ルナのピカチュウはやってのけたのである。

 ——今度はあたしが絶対貴方を護ってみせる。

 ただの口先だけの言葉ではなく、レオンの力になりたい。そのルナの一念にピカチュウ達は見事に応えたのだ。

 とはいえ、それを実現させる為にした彼女達の努力は並大抵の事ではなかっただろう。村で秘密の特訓と称して、よく別行動していたのはこれの為だったのである。

 ふっとルナ達に口許を綻ばせると、レオンは再び対戦相手を鋭い双眸で見据えた。

 ——だったら次は俺の番だ。あの暴れ狂うアブソルを、必ずスナッチしてみせる。

「ブラッキー、アブソルに『かみつく』 怯んだ処でワタッコは『眠り粉』だっ!」

「アブソルっ、噛み付かれる前にブラッキーを引き裂けっ!!」

 イージーも傲然と叫ぶ。

 ブラッキーはすぐに噛みつこうとはせず、一足跳びに跳び掛かれる距離を保ちながら、暴れ回るアブソルの隙を窺う。

 反対にアブソルが猛然と突っ込んで来た。

 大きく振りかぶり、こめかみから突き出ている鎌のような鋭利な黒いブレードを一閃させ、足の鋭い爪で薙ぎ払う。

 そのどれもが狂気に満ちた一撃必殺の凶刃である。一撃でも受けたら終わりだ。

 それらをぎりぎり紙一重でなんとか躱し続けるブラッキーに、余裕は全くなかった。

 それでもレオンの期待に応えるために、必死に躱し続ける。

 業を煮やしたアブソルが、更に激しく攻め立てる。

 矢継ぎ早の猛攻に、とうとうブラッキーも対応できずに僅かに体勢を崩す。

 それを見逃さず、ニヤリと(わら)ったアブソルが渾身の一撃をみまう。

 鮮血が飛び散り、ざっくりとこめかみのブレードが地面に突き刺さった。

 それが思う様に抜けず、アブソルは苛立たしげに左右に頭を振る。

 その隙を()き、すかさず背後から体を鮮血に染めたブラッキーがガブリと噛み付いた。

 アブソルの上げる悲痛な咆哮が、バトルフィールドに響き渡る。

 さっきブラッキーが体勢を崩したのはワザとだった。

 増々激しくなるアブソルの動きに付いていけなくなる前に、自らを囮にして相手に隙を作らせようとしたのだ。

 それにアブソルはまんまと引っ掛かったというわけだ。

 トレーナーの意思を汲み、それに応える為に自分で考え行動する。心を閉ざされ、ただトレーナーの言いなりしか動けないダークポケモンには出来ない芸当だ。

 体を塗らす鮮血は、鋭すぎる攻撃を完全に躱し切れずに掠ってしまった所為だが、ブラッキーはその痛みに堪えて噛み続ける。

 あまりの痛みに、アブソルは噛みつくブラッキーを体から引き離そうと、こめかみのブレードを振るう。

 その瞬間、ばっとブラッキーはアブソルの体を蹴って跳び離れた。

 切れ味抜群の鋭いブレードが目標物を失い、深々と自分の後ろ足の付け根を抉る。

 ハイパー状態で更に威力が増した自分の攻撃に悲鳴を上げ、アブソルはガクリと後ろ足の膝を落とし倒れそうになった。

「ちいっ」

 イージーは思いっ切り舌打ちした。

 アブソルは攻撃力が異常に高い反面、受けた攻撃に対する耐性が殆どなかった。下手をすると、急所じゃなくとも効果抜群の技をたった一撃受けただけで倒れてしまう。実に両極端なポケモンなのだ。

 ——このままじゃ、アブソルがやられちまう。

「起きろっ、グラエナ! 何時までも寝てんじゃねーよっ!!」

 焦燥に駆られ、イージーは役立たずの相棒を八つ当たり気味にどなり散らす。

 その間にも動きが鈍ったアブソルに、ワタッコが再度『眠り粉』を振り撒く。

 それから逃れようとするが、自らの攻撃で負傷した足が痛み、思うように動かない。

 今度こそアブソルは寝入ってしまった。

 すかさずレオンが左肩のマシンで、ボールをスナッチマシンに造り変えて投げ付ける。

 眩い光が眠るアブソルを捕らえ、ボールの中に引きずり込む。

「そんなモンに捕まるなっ。アブソル、出て来やがれっ!」

 必死になってイージーが喚くが、アブソルを取り込んだボールは、大した抵抗も見せずにコロリと転がって止まった。

「やったわっ」

 ルナが二匹の電気ポケモンと共に喝采する。

 スタンドのあちっこちからは、悔しげな声や溜息が漏れる。

「くっ、まだだっ。まだバトルは終わっちゃいないぜ!」

 イージーは声を張り上げ、残る自分のポケモンに怒声を浴びせた。

「いい加減起きやがれっ」

 その罵声に、漸くグラエナが目を覚ます。

「よっしゃ。行くぜっ、グラエナ——」

 やっと起きたグラエナに、喜び勇んでイージーが指示を出そうとする。

 それより早く淡々とレオンが指示を出す。

「ワタッコ、『眠り粉』だ」

 頭の上でひょんぴょこはね跳んで両手の綿毛を擦り合わせ、ワタッコが再び大量の『眠り粉』を撒き散らす。

「なっ!? よ、避けろっ、グラエナっ」

 慌てて叫ぶが、起きたばかりのグラエナの反応は鈍かった。

 再びイビキをかいて寝てしまう。

「またかよ——っ」

 髪の毛をかきむしり、イージーが絶叫する。

 その隙にレオンはブラッキーを引っ込め、代わりにバクフーンを呼び出した。

「ワタッコ、『メガドレイン』 バクフーン、『瓦割り』だ。後一回頑張ってくれ」

 さっきのバトルで傷付いた体を(いた)わり、指示を出す。

 こくりと頷き、バクフーンは眠るグラエナに持てる力の全てを込めた一撃をみまった。

 ワタッコに体力を奪われ、無防備に眠っている状態で急所に効果抜群の一撃を受けたグラエナはとうとう力尽き、見せ場が何一つなく終わってしまう。

「くうっっ、聞いてはいたが、予想以上に強いぜっ」

 ガックリとその場に両膝を付き、項垂(うなだ)れたイージーは悔しそうに呻いた。

「やったわね、レオンっ」

「ああ……」

 勝った喜びでルナの声は弾んでいたが、レオンの表情(かお)は冴えなかった。

 これで手持ちの六匹の内、ムウマが倒れ、バクフーンはこれ以上戦うのは難しい。ブラッキーも元気に見せてはいるが、動きに何時ものキレがない。残る三匹は十分戦えるが、それでも戦力の低下は否めない。とはいえ回復させたくとも、既に新たな対戦相手を乗せた出入口のカプセルが姿を現わし始めている。

 この状況で悠長にポケモン達を手当てしている暇はない。

 レオンはぐっと拳を握り締め、バトルフィールドの向こうにいる項垂れる男の後ろに迫り上がるカプセルを見据えた。

 

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