朝靄が立ち込める緑の森に囲まれた聖なる祠の周囲に広がる白い石畳の上に、大地を思わせる茶色と清流のような澄んだ水色、それに鮮烈な閃光の如き黄色の毛並みをした三匹のポケモンが、目の前のアッシュブロンドの少年を見下ろすように佇んでいた。
少年が手を差し伸べると、それに応える様に三匹の誇り高きポケモンは
一匹一匹頬に片手を添え、少年は
そして、少年は体に付けていた肩当てと手甲を取ると、三匹の前に差し出した。
三匹を代表して澄んだ水色の毛並みのポケモンが、少年の手からそれを
暫し三匹は無言で少年と視線を交わし、やがてのそりと鮮烈な黄色い毛並みのポケモンが森の方へ身を翻すと、それに倣って他の二匹も体を返した。
ダンっと白い石畳を蹴り、そのまま振り返る事も無く三匹は深緑の森の朝靄の中に姿を消していく。
それを見送ると、少年は体を返してゆっくりと石畳を踏み締めながら森を後にした。
頭上の梢から鳥ポケモンの
昨日フレンドリーショップ前の広場で、村人総出の宴会が開かれた。
レオンが今日この村を旅立つというので、村人——特に老人達が張り切って壮行会を開いてくれたのだ。単に家族の目を気にせず好きなだけ酒を飲む口実に使われたともいえるが。
その所為か今朝は何時も散歩している老人達の姿はなく、今外にいるのはレオンとローガンの二人だけだった。
アゲトビレッジの入り口に架かる橋の傍にある空き地に停めたサイドカーの脇で、レオンは進化したイーブイの兄弟達をボールから出して遊ばせていた。
「行ってしまうんじゃな」
「ああ」
淋しくなるのうと呟く長い顎鬚をたくわえた老人に、レオンは小さく頷いた。
ラルガタワーでホウオウを見た日から、既に一ヶ月が過ぎていた。
あの後レオンは、この水と緑豊かな自然に囲まれたアゲトビレッジに戻り、ラルガタワーでスナッチしたダークポケモン達のリライブに励んだ。
そして、昨日で最後のダークポケモンのリライブが終わり、もうここにいる理由が無くなった彼は、今これからこの地を去ろうとしている処だった。
そのレオンの左肩と手の甲に、常に装着されていた小型のスナッチマシンはなかった。
すべてが終わった今、それはもう必要ないからだ。
とはいえ、捨てたり壊したりしたわけではない。いつかまたダークポケモンが現れるかも知れない。
それでレオンは既にボールから解放した伝説のポケモン達の力を借り、人が入り込めない聖なる森の奥深くに封印したのである。二度とそれを使う事がないことを願いながら。
「最初は何処に行くんじゃね?」
「まずは北に出て、それから東に行こうと思っている」
リライブしたポケモン達を、本来のトレーナーに返す為に。
元々シャドーの戦力を削ぐと同時に、ダークポケモンの価値を下げる目的で奪っていたに過ぎず、その後それらをどうするかまでレオンは考えていなかった。
大体ダークポケモンにされてしまったポケモンなど、返してもらっても相手も嬉しくないだろうから。
だが、元に戻った今なら話は違ってくる。
スナッチした時点でそれらのトレーナーはレオンになってしまっているが、ポケモン達が元のトレーナーの事を忘れたわけではない。むしろ憶えていたからこそリライブできたのだ。
だから連れて行ってやろうと思う。スナッチされて無理矢理引き離されたトレーナーの許に。
リライブした後も一緒にシャドーと戦ってくれたポケモン達への感謝の
そしてその多くが、スナッチ団アジトのあったエクロ峡谷に近い北と東の地方に集中していたのだ。
「元のトレーナーと言っても、何処に居るか判っておるのか?」
「ああ、大体は」
二週間ほど前に事情聴取の為ヘッジにパイラに呼び出された時、レオンが以前スナッチしたポケモンやその他、彼が知り得る限りのスナッチ団やシャドーの情報を提供した代わりに、ダークポケモンにされたポケモン達の元トレーナーについての情報を教えて貰っていた。
データ重視のボルグが、ダークポケモンの研究に集められた実験体の育成状態を正確に把握する為に、それらのデータもラルガタワーの地下に造られていた新たなダークポケモン研究所のコンピューターの中に入れておいたのだ。
だが、本来ならそれらの情報を外部の者に漏らす事は許されない。レオンがスナッチしたダークポケモンにしても、シャドーの悪事の証拠として没収されてもおかしくはなかった。
それをヘッジは、リライブしたポケモン達を元のトレーナーに返すと言うレオンの言葉を信じ、ポケモン達を没収せずにデータを渡してくれたのだ。
証拠ならコンピューターのデータだけで十分だし、どうせ没収しても結局ポケモン達は本来の飼い主に返す事になるのだから、君がやってくれるのならこちらとしても助かると。
「では、その後はどうするんじゃ?」
以前のレオンにこんな質問をしたら、「あんたには関係ない」と冷然と突っ撥ねられただろう。
が、何処となくぶっきらぼうな口調は変わりないが、最初の頃と違い、人を拒絶するような冷めた雰囲気はすっかり陰を潜め、幾分
「あちこち旅してみるつもりだ」
今まで自分は相棒達以外の全てを
両親の親友の裏切り。膨大な借金ができてしまった途端、よそよそしくなった近所の人達や遊ばなくなった友達たち。
家を追い出されても、ずっと一緒だと思っていた両親にも突然の死別という形で、レオンはたった独りでこの世の中に放り出されてしまった。
それから手元に
そして、自分がバトルに負けたと同時に見せた、仲間だと思っていた者達の豹変——
幼い頃、立て続けに嫌という程人の汚さを
人間なんて皆自分の都合の良い時だけいい顔をし、都合が悪くなれば
そんな人間を信じてまた騙されたと傷付くくらいなら、最初から信じなければいいと心を閉ざした。
全てを拒み、両親の遺してくれた二匹のイーブイ達と一緒に、ただ今日を生き抜くだけの生活を繰り返し、レオンは
そんな暮らしに疲れ果て、全てを終わらせる為に来たこのオーレで、レオンは行き掛り上助けてしまったルナに、何故か懐かれて行動を共にするようになった。
そこで彼女にダークポケモンを見分ける能力がある事を知った後、その力を利用する為に一緒にいたルナの理解し難い言動の数々に、レオンは驚きと途惑いを覚えながらも興味を持ち、固く閉ざされていた彼の心は次第に揺れ動いていった。
そして、シャドーとの闘いの中でポケモンの為、レオンの為に自らの危険も顧みずに体当たりで頑張るルナの、レオンが何者であろうと変わらずに「仲間」として厚い信頼を寄せる嘘偽りのない想いに触れるにつれ、自分でも気付かない内にレオンはルナに心を開いていた。
確かに世の中には人を利用し、陥れる奴は一杯いる。だけどそんな奴だけじゃないのだと、ルナによって漸くレオンは気付くことが出来たのだ。
『もう戻ってくんじゃねぇぞ。こんなゴミ溜めなんぞに』
そう言った後、餞別だと古ぼけたゴーグルを投げてよこしたスラムのジャンク屋の親父の顔を思い起こし、レオンはふっと口許に笑みを浮かべた。
イートンに勝った後マーカス達との思い出の染みついた廃工場を捨て、他に行くアテもなくスラムの中を
あの親父は、廃ビルの軒下で独り雨に濡れて
——あの親父も、もしかして金の為ではなく、俺を気遣ってあの部屋を貸してくれたのかもな……
そう思うと、もう昔の生活に戻る気にはなれなかった。
けれど、これからどうするか、自分は何をすればいいのか、まだ何ひとつ決めていない。
だからリライブしたポケモン達の元トレーナーを訪ね歩きながら、それについて考えてみるつもりだ。
それでも答えが見付からなかったら、更に各地を巡り、もっと色んな場所や人と出会ってみようと思う。
そして、その出会いの中から、この先自分の進む道を見つけられたらとレオンは思っていた。
「そうか、それも良いかも知れんのう。旅は
懐かしむように昔を想い出してうむうむと頷いたローガンは、心の扉を開け、
「じゃが、旅に疲れたなら、何時でもここに戻って来て良いのじゃぞ。君はもうこの村の一員なのじゃからな。君が使っていた部屋はそのまま残しておくからのう」
「…——ああ……」
もう用の無くなったここへ再び来ることはないだろう。
それでも戻る場所があると思えるだけで何となくホッとする。心を閉ざしたあの日からずっと根無し草だった自分が、漸く足が地に付いたように感じられた。
レオンの
それを見てローガンは、懐から取り出した一枚の紙を少年に差し出した。
「これは……」
それを受け取って見たレオンはハッとなった。
その紙には、ある人物の住所と電話番号の他にメールアドレスが書かれてあったのだ。
「あちこち旅をして、心の整理が付いてからでいいんじゃ、ゴトー氏は何時まででも待つと言っておったからのう」
「………」
今はまだ、会いに行く気にはなれない。けれど、何時か彼が引き取った両親の墓参りには行きたいと思う。自分の進む道を見つけ、それを二人に報告する為に。祖父の事を考えるのはそれからになるだろう。
「レオ——ンっ!」
不意に元気一杯の少女の大きな声が村中に響き渡った。
振り仰ぐと、段々になっているこの村の一番上にある巨大な切り株の下に建てられたローガンの家の前で、明るい栗色の髪をした快活そうな少女が、嬉しそうに二段下の村の入り口に架かる橋の袂に佇む二人に手を振っていた。
——ルナ……
このオーレに来てからずっと行動を共にし、何時の間にか相棒達と同じ心許せる存在になっていた。
けれどシャドーを倒し、スナッチしたダークポケモン全てをリライブした今、もう一緒にいる理由は無くなってしまった。ここで別れれば、多分もう会う事もないだろう。
ジムリーダーの娘とスラムのゴロツキである自分。本来なら住む世界が違う二人が出会う事などない筈だから。
長いようで短かったルナと過ごした日々を思い返しながら、感慨深げにレオンが少女を見上げていると、家から彼女の祖母が出て来て、孫に一抱えもある大きなバスケットを差し出した。
礼を言ってそれを受け取ると、ルナは大急ぎで家の脇にある割と急な坂を駆け下りて来る。
ちょっと駆け下りるスピードが速いように思え、レオンは嫌な予感がした。
ルナが二つ目の坂に差し掛かる。
——と、
一気に駆け下りようとして、途中にあった小石に
「っ!?」
慌ててたたらを踏み、ルナは何とか転ばない様にしようとするが、勢いづいたこの状態では、一度崩したバランスを立て直すには無理があった。
努力虚しく転びそうになる。
その刹那、駆け上がって来たレオンが間一髪でルナとバスケットを受け止めた。
ホゥっと安堵の息をつく。
「あ、ありがと……」
レオンにしがみついて盛大に息を吐いたルナは、バツが悪そうに礼を言う。
「気を付けろよ。おまえ、前もここで転びそうになっただろ」
「ゴメンね。遅くなっちゃったから、急がなきゃって思って、つい……」
ちょっと言い訳しながら、ルナは落とさずに済んだバスケットを示す。
「これ、お昼のお弁当。お祖母ちゃんと一緒に作ったの」
成程、バスケットの隙間から、何やらほんわりと
——すぐ行くから先に行っててと言った割には、一向に見送りに姿を現わさないと思ったら、餞別のこれを作る手伝いをしていたのか……
それにしても、一食分にしてはやけに大きい。ひょっとして夕食の分まで入っているかもしれない。
もしそうなら、ルナは自分の為に弁当を作って、それを早く届けようとするあまり危うく怪我をするところだったのだ。
——それなのに、俺はえらそうに窘めたりして……
レオンは何となく気まずくなった。
「さっ、早く行こ」
そんなレオンの気持ちなどお構いなしに、ルナは彼を促して村の入り口の橋の袂にいる祖父に駆け寄った。
「それじゃ、お祖父ちゃん。元気でね」
「うむ。ルナも気を付けるんじゃぞ」
と、お互いに声を掛け合う。
それを聞いたレオンは、思いっ切り眉根を寄せた。
今の会話、どう聞いても別れの挨拶にしか聞こえない。
そういえばバスケット以外に荷物を持っていたが、ルナもこれから家に帰るつもりなのだろうか?
そんな事を考えて訝しがっているレオンを
側車のボンネットに弁当のバスケットを置くと、その脇を抜けて後ろに回って車のトランクのフタを開け、肩に掛けていた自分のショルダーバックを無理矢理詰め込んだ。
それから、遊び疲れて側車のシートに寿司詰め状態で座っていた五匹のイーブイの進化形を一匹ずつそこから降ろし出す。
そして五匹を全て降ろすと、ルナはボンネットのバスケットを抱えて当然の如くそこに収まった。
一体何をし始めるのかと、その一部始終をやや呆気に取られて見ていたレオンは、そこに至りハッと我に返った。
慌てふためいてサイドカーに駆け寄る。
側車から追い出されて所在無さげにしていた五色のポケモン達が、訴えるように彼の足に纏わり付いてくる。
それに構わず、レオンはルナに問い
「おい、おまえ、ここに乗ってどうする気だ?」
仮にルナが家に帰るつもりだったとしても、これから自分が向かう所と彼女の家のある地方は全くの別方向だ。便乗されても困る。
しかし、レオンの迷惑など、ルナは全く意に介していなかった。
「だって、昨日寝る前に『これからどうするの』って、あたしが訊いたら、『ポケモン達を元のトレーナーに返しに行く』って、レオン言ったでしょ。だからわたしも一緒にいくんじゃない」
つまり大きすぎるバスケットは、二食分ではなく二人分だったというワケだ。
とはいえ、確かに昨夜そう言ったが、それがどうして一緒に行くことになるのか。理解に苦しみながらも、レオンは降りるよう説得を試みた。
「判ってるのか。
少なくとも一年は楽にかかるだろう。相手が引っ越したり、修行の旅にでも出ていたら、それを捜し出すだけでもどれだけの日数が掛かるか分からない。
「ただでさえ、おまえはここに来るのに勝手に家を飛び出して来たんだろ。おまけに俺に付き合った所為で散々危険な目に合ったんだ。その上また長く掛かる旅になんか出てみろ。家で待っている親が心配するだろ」
レオンにそう言われ、彼には何処に行こうと心配してくれる親はもう居ない事を想い出し、ルナは一瞬気が引けたが、ここで言い負かされるわけにはいかない。
「平気よ、トレーナーなら修行の旅に出て一年や二年、家に帰らないのはよくある事だし」
と、ルナはバスケットをシートに置き、レオンに詰め寄る様に側車から身を乗り出して更に畳み掛ける。
「それに、レオンってば、会ったばっかりの頃に比べれば大分マシになったけど、今一不愛想だし、口調だってぶっきらぼうでしょ。
おまけに今まで自分を人に理解してもらおうなんて努力してないから、言葉が全然足らなくてロクに人とコミュニケーションが取れないんだもの。
そんなんじゃ、ポケモン返しに来たって言ったって、変に疑われて誤解されまくり間違いなしよ、絶対。
特に、相手がレオンのスナッチしたポケモンのトレーナーだったら、貴方の事憶えてるから、会った途端警察に通報されて捕まっちゃうでしょ。
だから、そんな事が無いように、あたしが一緒に付いてってあげて、レオンの代わりに相手のトレーナーにしっかり説明してあげるのよ」
だから感謝するよーに、と胸を張る。
酷い言われようだ。まあ、確かに反論できない処も無きにしも非ずだが。
だからといって、ここで彼女に頼るような真似は、レオンとしても大いに抵抗があった。
「それくらい、自分でどうにかできる。それにダークポケモンの中に、俺がスナッチしたやつは一匹もいない」
「え? そうなの?」
憮然と言い返したレオンを、ルナは驚きの目で見返した。
「ああ、俺は相手の注文に応じて、特定のレアなポケモンだけをスナッチしてたからな。
第一、完成してたならともかく、まだ実験段階のダークポケモンにそういうポケモンを使うと思うか?」
確かに、レアで強くとも元々野生で誇り高く、人を見下していた伝説のポケモンなどは、心を閉ざさないとかえって扱い辛いが、トレーナーからスナッチした人に十分慣れているレアポケモンは、実験に使うよりもむしろ売ってその資金にした方が遥かに実用的だ。
だからレオンはこの間パイラに呼び出された時、今頃金持ちの好事家に売られ、手が出せなくなっている自分がスナッチしたポケモンの事を署長に話したのだ。
リライブした元トレーナーのデータを貰う代わりに、まだ警察が把握していなかった研究所に残されていないポケモンのデータを。あの色違いのパッチールを含めて。
「判ったら、さっさと降りろ。俺はもう行く」
「いやよ」
ふいっとルナはそっぽを向き、拗ねたように言う。
「それじゃ、レオンがそれを終えるの待っていたら、『時の笛』を探しに行くの何時になるか分からないじゃない」
その言葉に、レオンはハッとなった。
昨夜わざわざ部屋に来て今後の予定を彼に聞いた後、ルナは「時の笛」はどうするのと訊いてきた。
それにレオンは「そのうちにな」と気のない返事を返したのだ。
以前サンダース達をリライブする為に呼び出したセレビィが消えた時、ちゃんとお礼を言いたかったのにと残念がるルナに、この一件が終わったら「時の笛」を探してみるかと言ったレオンだったが、それは単なる思い付きで言ったに過ぎない。
まぁ、一応気には掛けてみるが、積極的に探す気は今のところなかったし、ルナと一緒に探すというのは、
それを自分も一緒に探す気になっていたルナは、レオンに全くやる気がないと判断し、こんな強硬手段に出たという事らしい。
さっき散々自分の必要性をアピールしたのも、一緒に行ければなし崩しに「時の笛」探しに、レオンを引っ張り込めると思ったからだろう。
漸くルナの本音に気付いたものの、レオンは困惑して言葉に窮した。
伝説のポケモンであるセレビィを呼び出す事の出来る「時の笛」は貴重なアイテムだ。探せば他にもあるかも知れないと思っても、そう簡単に見つかる物じゃない。
あれを持っていたセネティも、手に入れたのは全くの偶然だったのだ。それを探すとなると、それこそ何時終わるとも知れない旅になってしまう。
そもそも彼にとってこれからの旅は、もう一度じっくりと落ち着いて自分を見詰め直す旅だった。
なのに行く先々でトラブルとみると、関係ないのに見境なく首を突っ込むルナが一緒では、必然的にそのとばっちりを受ける事になる。
どう考えてもレオンが考えているような旅には間違ってもならないのは、今までの経験から容易に想像できた。
レオンが答えあぐねていると、ルナは尚も一生懸命自分の考えを言い募った。
「——ポケモン達を元のトレーナーに返しに行くついでに探した方が、時間も手間も省けるじゃない。だから、ねぇ、いいでしょ、一緒に行っても」
と、上目使いに
——確か、フェナスで初めて会った時も、こんな
自分をさらったゴロツキ達がまた戻って来たら怖いから、暫く一緒に居て欲しいと。
そして、自分が折れるまで絶対に諦めなかった事も想い出し、レオンは困り果てて妻と共に橋を渡ってきたローガンに、救いを求めるように目を向けた。
だが、ルナは昨夜の内に祖父母に自分の決意を伝えていたらしく、ローガン達は小さく
どうしても孫を連れて行けないのなら、自分で説得してくれと。
溜息をついて再びルナに目を向けると、不安そうに自分の答えを待っていた。
何となく
——そんな
「…——判った、連れてってやるよ」
「ありがとうっ、レオンっ!」
パッと表情を輝かせ、喜び一杯にルナはレオンに飛びついた。
「だけど『時の笛』探しは、あくまでもついでだからな」
ルナの体を受け止めたレオンは、そう念を押す。
「ええ、分かってるわ」
本当に分かっているのか、ルナは一緒に行けるのが嬉しくて上機嫌にバスケットを手にシートに座り直す。
レオンは仕方なさそうに溜息をつき、側車から追い出された五匹をモンスターボールに戻してベルトに付けると、バイクのシートに跨った。
「あ、レオン。どうせならあの町外れのスタンドに寄って行きましょ」
エンジンを始動するレオンに、ルナが声を掛ける。
「ポケモン達を元のトレーナーに返すなら、手持ちがその子達だけになってしまうでしょ。それじゃあ可哀想だから、これからは他のポケモンもゲットして、色んな仲間を増やしてあげましょうよ」
それにはまずモンスターボールである。それを手に入れる為にも、あの町外れのスタンドは寄って行きたい。
「そうだな……」
本当はここから北の地方に行くつもりだったが、東の地方を先にしても変わりはない。
それに、シャワーズをゲットした時助けてくれた礼も、まだあの趣味人の厳つい顔のマスターに言っていなかった。
「——判った」
頷き、レオンは頭に乗せていたゴーグルをする。
「じゃあ、お祖母ちゃん。行って来るね」
「ええ、体に気を付けるんだよ」
「レオン君、ルナをよろしくな」
「ああ」
互いに短く言葉を交わし、レオンはサイドカーを発進させた。
爆音が
それは、村の横合いにある絶壁から流れ落ちる瀑布の音と共に、
かくして、
《
ちょっとエピローグが長くなりすぎたので、半分に割ることも考えたのですが、もう最後なので一気に上げる事にしました。
これからレオンはルナと共に「時の笛」を探しながら、各地の元トレーナーの許を訪ね歩くワケですが、それがどのような旅になるかは、それぞれのご想像に任せます。
ルナはレオンの手元に残るのはブラッキー達五匹だけと思っているようですが、リライブした後ずっとパソコンに預けられていたポケモン達は素直に元トレーナーの許に戻るだろうけど、共に戦ってくれた連中は微妙なのではと思います。
元トレーナーから酷い扱いを受けていたバクフーンと、妙に懐いてしまったフライゴンは、元トレーナーの許には戻りたがらず、レオンの許に残りそうな感じがします。
となると、ムウマも悪戯しがいのあるバクフーンが残るなら残りそうな気もするし、問題はヌオーですね。はっきり言って何を考えているか判りません。
バトルそっちのけでアイテムにぞっこんになってしまったヌオーを返して貰っても、元トレーナーも困惑するだけだろうし……
おそらく自分では手に余るからと、レオンに引き取ってもらうのではないかと。そうなると、もれなくワタッコも付いて来ることに。
あとチルタリスとデンリュウは、元トレーナー次第といった処でしょうか。
こうやって色々想像してみるのも楽しいかもしれません。
ポケモンコロシアムのシナリオモード、書いてみたら思った以上に長くなってしまいました。
原作のゲームがかなり古いので、読む人がいるのだろうかと思っていましたが、最後まで読んでいただいた方、高く評価してくださった方、そして感想を送ってくださった方、本当に今まで有難うございました。
「ここ好き一覧」で前半部分だけでしたが、気に入ったシーンを投票してくれたりと、それぞれ楽しんで読んでもらえたようなので、自分も書いた甲斐があったというものです。
それでは皆さん、お元気で!