未来(あす)への扉   作:飛鳥 螢

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―パイラタウン―(1)

 フェナスシティから更に西に進むと、砂漠から荒れ地へと景色が様変わりする。

 剝き出しの赤茶けた平坦な大地が暫く続き、その更に先にはゴツゴツとした大小様々な岩が、行く手を阻むように林立するようになる。

 その岩を縫うようにサイドカーを走らせていくと、今度は荒れ地がぷっつりと途切れ、巨大な岩山群が出現するのだ。

 その岩の山々からは、様々な良質の鉱石がふんだんに取れ、それを目当てに男達は一山当てようとこぞってここに住み着いたのである。

 幾つもの町ができて鉄道も引かれ、荒れた土地にも関わらず、ここはオーレ地方には珍しく活気に満ちた賑わいをみせていた。

 だが、それも今は昔のこと、我先にと争って人々が鉱山を掘った所為で、無限にあったと思われた鉱石も底を尽いて廃鉱になる鉱山が後を絶たず、それに合わせて一つ、また一つと町の灯も消えていったのだ。

 そして、ついに鉄道も途絶え、今では鉱山町はここパイラタウンだけとなってしまっていた。

 とはいえここも年々鉱石の取れる量は減り続け、この町も(さび)れる一方だった。

 今では住民のごく一部が鉱山夫をやっている以外は、他の町に居られなくて流れて来た、荒くれ者やいわくありげなタチの悪い連中が(たむろ)する、ゴロツキの吹き溜まりとなっていた。

 

 

 マグマラシをスナッチした後、レオンはすぐパイラタウンに行かず、ポケモンセンターとフレンドリィショップに向かった。

 これから行くパイラタウンにはポケモンセンターがない上に、まともなショップがあるかどうかも分からない。

 そしてそこは、あの黒いオーラのポケモンを持っていたゴロツキ達が逃げ込んだ所だ。何があるか分からない以上、向かう前に準備は万端にしておく必要があった。

 それに市長のバックレーが掴んだ情報も聞かなければならない。

 ブラッキー達を完全に回復させ、各種回復アイテムなども十分買い揃える。

 バックレーからは、まだ調査中の事で何も情報は得られなかったが、仕方ない。

 それらを全て終えてからフェナスシティを出発した為、パイラタウンに着く頃には陽は大きく西に傾いていた。

 町の手前には古ぼけた倉庫が立ち並び、そこに着古した灰色のTシャツに濃紺のオーバーオールを着た鉱山夫らしい男が立っていた。

 サイドカーに乗るレオンを見て、大きく手を振って停まるように合図する。

 それに従ってレオンがサイドカーを停めると、男はチラリとサイドの車に乗る少女を見てから、バイクの少年に声を掛けた。

「これからパイラに入るのか?」

「ああ」

「ならそいつはここに置いてってくれ。その図体の車体(もん)を町中に入れられると迷惑だからな」

 そう言って、鉱山夫の男は自分の後ろにある古ぼけた倉庫を顎で示す。

 その中にサイドカーを入れろというのだろう。

 その上、男は倉庫の貸し賃まで要求してきた。それもあんなボロ倉庫に払うには高すぎる金額を。

「そんな——」

「判った」

 文句を言おうとするルナの声を遮ってレオンが答える。

「倉庫はあれだ」

 金を貰うと、着古した濃紺のオーバーオールを着た男は倉庫の一つを少年に示し、そこの鍵を渡して去って行った。

「サイドカーを町に入れるなってのはまだ判るけど、倉庫に入れさせた上にあの金額、ぼったくり過ぎじゃないっ」

 倉庫の前で停めたサイドカーから降りながら文句を言うルナは、倉庫の扉の鍵を開けるレオンにも不満をぶつける。

「貴方も、何であんなにあっさりとお金渡しちゃうのよ」

「あれでサイドカーが盗られずに済むなら、むしろ安いだろ」

「え? 盗られる?」

 思いがけないレオンの言葉に、ルナはきょとんとなった。

「ああ、フェスナの連中が言ってただろ。ここはゴロツキの巣窟だと」

 平和なフェナスシティと違い、ここでは外にサイドカーを停めて置くのは、手癖の悪いゴロツキに持って行ってくれと言っているようなものだ。戻って来た頃にはサイドカーは確実になくなっているだろう。

 あの値段で鍵まで渡してくれたのだ。むしろ良心的といっていい。本当のぼったくりなら、サイドカーを倉庫から出し入れする度に高額な別料金を要求してくる。

 少しでも気を抜いたら、身包み剥がされても文句は言えないのだ。ゴロツキが幅を利かせている町とはそういうものである。

「ウソでしょ……」

 レオンの説明に、ルナは愕然となった。

 彼女にとってそれは自分の知らない常識だった。

 そんな常識(もの)がゴロツキの町であるこのパイラタウンではまかり通っていると知って、ルナはゾッとした。そうとも知らず、昨日この町中を歩いていたのかと思うと、自然と体が強張ってくる。実際ここで拉致され、袋詰めにされたのはつい昨日の事だ。

 レオンは倉庫の扉を開けてその中にサイドカーを入れ、車のトランクからザックを取り出して肩に担ぐ。

「行くぞ」

「え、ええ……」

 倉庫にしっかり鍵を掛け、声を掛けてきたレオンに、ルナは思わず走り寄る。

 彼から離れないように、恐々と朽ちかけたゲートを通り抜けて、再びルナはパイラタウンに足を踏み入れた。

 

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