未来(あす)への扉   作:飛鳥 螢

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―パイラタウン―(12)

 あの後もバトルを続け、広場に集まったゴロツキ全員とバトルした結果、レオンは新たにモココ、ポポッコなどの黒いオーラのポケモンを数匹手に入れていた。

 大収穫と言ってよいが、あの決闘広場にいたのは、何処にでもいる単なるゴロツキに過ぎない。そんな連中が多くないとはいえ、片手で余る数の黒いオーラのポケモンを持っているとは思わなかった。

「ここの連中が、あんなにあのポケモンを持っているなんて……。やっぱりこの町には何か秘密があるんだわ」

「ああ」

 だからあの広場にいたゴロツキは誰一人逃がさなかった。

 黒いオーラのポケモンを広場の出入り口に出して置いたのも、本当は見せびらかしてゴロツキ達の欲を刺激する為でも、自分が使わないと示す為でもなかった。あのワークキャップのゴロツキのように、逃げようとする奴を阻止する為だった。

 バトルが終わった連中も、全てが終わるまでそこより出しはしなかった。

 ゴロツキ達がそれに気づいた時は、既に広場の出入り口は黒いオーラのポケモンによって封鎖されていた。

 そうやって得た情報は、コロシアムに出場する事だった。

 あのポケモンを何処で手に入れたか知りたければ、コロシアムの勝ち抜きバトルに出て優勝すれば判ると。

 それ以上の事は口止めされているのか、ゴロツキ達は口を濁して言おうとしなかったのだ。

 二人はすぐに決闘広場を抜けた奥にあるコロシアムに行ったが、ゴロツキ達とのバトルで結構時間が掛かってしまった為、今日のコロシアムのバトルは既に全て終わっていた。

 仕方なく二人はまた明日来る事にして、昨晩泊まった宿に戻って来たのだ。

 とはいえ昨日と違い、昼間のバトルでたんまり金を稼いだ今日はシングルではなく、ツインルームへと部屋が格上げされている。

 勿論部屋の中の安全確認は、レオンがしっかりとしておいた。

「でも、それにしたってあれは、ちょっとやり過ぎなんじゃない?」

 ルナは顔を(しか)め、足許に相棒達をじゃれつかせながら、一匹一匹今日スナッチしたポケモン達を出してステータスを確認しているレオンに、非難めいた視線を向ける。

「何がだ?」

「あのバトルの仕方よ。何もあんなに徹底的にやらなくても」

 レオン程の腕があれば、負かすにしてももっとやりようがあった筈だ。それを相手が立ち直れないくらいに、心を根こそぎボッキリとぶった切っていくのである。見ていても本当に相手のゴロツキが気の毒になるくらいだった。思わず顔を背けた事も一度や二度ではない。

「ああすれば、二度と俺とバトルしようと思わないだろ」

 手加減などしたら、あいつらはあのポケモン欲しさに何度でも再戦してくる。欲の皮が突っ張った連中の相手など一度で十分だ。

「それに、ラーメンや牛丼食えるだけの金は残してやったんだ。連中だって文句は言えないだろ」

「え? なんでラーメンや牛丼の値段知ってるの?」

 あの時はまだ何処に店があるかなんて知らなかった筈だ。

 帰りに買ってきて、既に空になった持ち帰り用のランチパックを見やってルナは目を瞬かせた。

 買ってきたのはビックバーガーのセットで、ラーメンや牛丼じゃない。

「広場に行く通り道にあっただろ。店前にメニュー看板だって出てたし」

 それで憶えていただけだと、驚くルナにレオンは事も無げに言う。

 スナッチ団が依頼してくるポケモンは、団員達の手に負えないレアで強いポケモンばかりだ。その中には遠方の奴も多くいた。それでレオンは目当てのポケモンの居る所まで、よく遠出をしていたのだ。

 初めての場所で即座に周囲の状況を把握し、記憶するのは当たり前の事である。でなければ、スナッチした後追っ手を撒いて逃げられなくなる。

 レオンにとってそれは、相棒達と生きていく上での常識だった。

 だから帰りに店を探すことなく、夕食を買えたのだ。

 一緒に歩いていたのに、そんな物があったなんて全然気付かなかったルナはショックだった。自分に注意力がないのか、それともレオンの記憶力が良すぎるのか……

 ——いいえ、レオンの食い意地が張ってただけよ。

 そうルナは結論付けた。

 知らぬ間にルナに食いしん坊認定されたレオンは、最後の一匹をボールから出す。

 フェナスで最初にスナッチしたマクノシタである。マグマラシより興奮しやすく、扱いづらい。

 レオンがゴロツキ達とのバトルで、黒いオーラのポケモンを使わなかったのは、マクノシタが暴走したのを見たからだ。予測不能でバトルがやりづらいのだ。特に黒いオーラのポケモンを持っている相手には使えない。あの時ムウマをスナッチ出来たのは、ただ単に運が良かっただけに過ぎない。

 ボールから出たマクノシタは何時ものように直立不動の体勢を取った。

 虚ろで何処を見ているか分からない目が、不意にきょろりと動いた。気の所為か周囲を窺っているように見える。

「マクノシタ?」

 レオンが呼びかけると、ビクっと体を震わせたマクノシタはビシッと背筋を伸ばす。

 が、やはり目だけが周りを探るように微かに動いている。

「これって、もしかして——」

 マクノシタの変化に、ルナは期待の籠った目をレオンに向ける。

「ああ」

 試しにレオンはもう一度マグマラシも出してみる。

 こちらは残念ながら、まだマクノシタの様な変化は見られない。

 二匹の違いは、バトルで興奮したかどうかだ。

 どうやらそこに閉じたポケモンの心を開く鍵がありそうだった。

「レオン、明日コロシアムでのバトル、積極的にこの子達を出してみましょ」

 そうすればもっとはっきりする。

 確かに、あのゴロツキ達の口振りでは、黒いオーラのポケモンはコロシアムのバトルでの優勝が関係しているらしい。

 という事は、そこでのバトルではこのポケモン持ちが参加する可能性は低い。

 スナッチしないのなら、こいつらが興奮しようが暴走しようが、勝てれば別に構わなかった。

 方針が決まれば、後は明日に備えて寝るだけだ。

 レオンは二匹をモンスターボールに戻すと、チラリと足許でじゃれる相棒達に視線を向ける。

 それに気付いてじゃれるのを止めたブラッキーが、甘えるように寄せて来た相棒の顔を優しくペロリと舐めた。

 体でレオンの方へエーフィを押しやると、自分はひょいっとルナの座るベッドの上に飛び乗る。

「あれ? ブラッキー、もしかして一緒に寝てくれるの?」

「ああ、そいつはお前と一緒に寝たいらしい」

「ホント!?」

 やっと馴れてくれたらしいブラッキーに、ルナは喜びに目を輝かせる。

 だが実際は、彼女を監視する為に付けただけだ。

 そうとは知らず、ルナは嬉しそうにブラッキーを抱えて頬ずりした。

「じゃあ、一緒に寝ようか」

 そのままベッドの中に潜り込む。

 レオンも相棒が取られた淋しさに、自分に甘えてくるエーフィを抱きかかえ、部屋の電気を消すとベッドに横になった。

 暗闇の中、暫くしてルナの寝息が聞こえてくると、彼女をブラッキーに任せてレオンも眠りについた。

 

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