さやさやと梢を揺らし、しっとりとした森の大気の中に清涼とした風が吹き抜ける。
会話が途絶え、森の
そんな中、ルナは一人もの凄く気まずい思いをしていた。
チラッとレオンを見ると、もうルナの事など気に留めず、丁度自分にすり寄って来たエーフィの体を優しく撫でてやっていた。そして、同じようにねだって来たブラッキーも撫でてやる。
そんな時のレオンの
さっきまでルナに見せていた不愛想な表情とは大違いである。
——あ~あ、前途多難だわ、こりゃ……
ハーっと、ルナは盛大に溜息をつく。
その音が耳に届いたのか、レオンは怪訝そうにルナを見た。
「どうかしたのか?」
「ううん、何でも——」
ないと言い掛け、ふと思い直したようにルナは口を
本当は一つだけ、話したい事があった。レオンに自分の事を話して貰いたかったら、まずは自分の方から話さなければと祖父に言われ、思い付いた事。それは今回一匹のポケモンも持たずに祖父に会いに来た
——どうしよう……
話をするなら、周りに誰も居ない今がチャンスだ。それに、後回しにしてしまったら、きっと話しづらくなって、結局何も言えなくなってしまう。
一息ついて気合いを入れると、ルナは何気なさを装って口を開いた。
「ねぇ、レオン。以前パイラで、何であたしがポケモンを持つのを嫌がるか、訊いたでしょ」
「……ああ」
確かにそんな事を訊いたような気がするが、別にどうでもいいと思っていたレオンは、何故ルナが急にその話を持ち出したのか分からず、
それに構わず、ルナは言葉を継いだ。
「あたしのパパは、ここの南隣の地方でジムリーダーをやっているの」
という事は、ルナはジムリーダーの娘という事になる。
思わずブラッキー達を撫でる手を止め、レオンはまじまじとルナを見た。
「驚いた? ジムリーダーの娘が、一匹も自分のポケモン持ってないなんて」
「ああ……」
「もちろん、家に帰ればちゃんといるわよ、あたしのポケモン。こう見えても結構強かったんだから」
ちょっと自慢げにルナは言う。
「パパがジムリーダーだったから、小さい頃からバトルのやり方を教えてもらったり、ジムに通うトレーナー達のバトルを見たりして、自分のポケモンが持てるような歳になった頃には、近所で同じ年頃どころか、結構年上の人でもあたしに勝てる人はいなかったのよ。
だから、何時かパパやお祖父ちゃんみたいに、ポケモンリーグに出て優勝するんだって思ってたの。実際あちこちのジムを回ってみたりしてね」
そう言って、ルナはふっと表情を
「でも、強い人って何処にでもいるのよね。今年のポケモンリーグに挑戦しようと三個目のバッチを取って、次のジムに行く途中でそんな人にばったり会っちゃって、ボコボコにやられたの。その時まで負けず知らずだったから、すっごくショックだったわ」
「それで、トレーナーをやめたのか」
「ううん、そうじゃないわ」
慌ててルナは
「負けたのは自分の力が足りなかった所為だし、そのバトルで学んだ事も一杯あったもの。ただ……」
と、言い淀み、辛そうな
「ただ、傷付いて倒れている
一方のポケモンが全て戦闘不能になるまで戦い続ける真剣勝負だ。倒れなくとも無傷でいる事は滅多にない。ポケモンバトルとはそういうものだ。
ルナもその時まで、たとえ戦闘中に相棒達が倒れたとしても、頑張ったねと
だが、出すたびになす
体力が尽きて気絶しているだけだと頭で判っていても、ポケモンセンターに連れて行って、ちゃんと回復した姿を見るまで生きた心地がしなかった。
自分の指示の
「パパ達は、そう思うならもっと修行して、負けないようにすればいいって言ったけど………。
でもそれじゃあ、自分がそんな思いをしたくないから、相手にそれを押し付ける為に勝つみたいで。そう考えたら今までの様に、バトルをやっても全然楽しくないし、段々バトルをやるのが怖くなって、とうとうバトル中、指示が出せなくなってしまったの」
本当にどうしていいか分からなくなり、ルナは思い余って電話ではなく直接祖父に会って相談したくて、家を飛び出してこのオーレに来たのだ。自分のポケモン達を全て家に置いて。持っていると、バトルを申し込まれてしまうから。
ポケモン達の事だけでなく、相手にも自分のように辛い思いをさせたくなくて、バトルが出来なくなってしまうとは。いかにもルナらしかった。
似たような経験をしているレオンは、偶然とはいえ何とも不思議な気分だった。
ただ、レオンはルナとは逆に誰よりも強くなることを選んだ。スラムで一人生きていくには
レオンが立てた膝の下を
「それなのに、ダークポケモン達を助けたいからって、レオンやブラッキー達にバトルを押し付けて、酷い怪我までさせて……」
と、心苦しそうに言う。
「ごめんね。本当は怪我の事、言われなくたって気付かなきゃいけなかったのに、責めるようなこと言って……」
「ダークポケモンのスナッチは、別におまえに言われてやってる訳じゃない」
唇を噛み締めて俯くルナに、レオンは素っ気なく言った。
「それに、おまえにはスナッチマシンは扱えない。俺がダークポケモンの黒いオーラが見えないようにな」
また「おまえには関係ない」と突っ撥ねられたみたいで、謝る事もさせてもらえない悲しさに、ルナは思わずギュッとブラッキーを抱き締める。
驚いたブラッキーは、慌てて身を
ブラッキーに逃げられ、ルナは更に傷付いた
それを見たレオンは、言いにくそうにぼそぼそと言葉を継いだ。
「——だから、お互い協力し合うんだろ。………仲間…なんだから……」
「っ!?」
弾かれるように顔を上げ、ルナはレオンを見た。
彼の口からそんな言葉が出るなんて、聞き違いかと思ったのだ。
レオンはらしくない事を言った気恥ずかしさから、ふいっとルナから顔を
そんな彼に、ルナは嬉しくなって抱きついた。
「ありがとうっ、レオンっ!」
「うっ……」
思いっ切り抱きつかれた拍子に胸に痛みが走ったのか、レオンは顔を
慌ててバッとレオンから離れ、ルナは心配そうに胸を押さえる彼を窺う。
「ご、ごめん。大丈夫?」
「ああ、今のはいきなりだったから、痛みを堪え損ねただけだ」
そんなレオンの言葉にルナはムッとなった。
——やっぱり全然分かってない。
「そうじゃなくて、痛かったら我慢しなくてちゃんと言って。お願いだから」
本当に仲間と思ってくれるなら、もう隠し事などして欲しくなかった。何でも一人で抱え込むのではなく、自分にもっと頼って欲しかった。
「……分かった」
真剣な
肩に掛けたロングコートのポケットから軽やかな電子音が鳴った。メールの受信音である。誰かからメールが届いたのだ。
ポケットからP★DAを取り出し、メールの画面を見ると差出人はパイラのレンとなっていた。
そういえば、さっき見たメールに、レンが
そう思い、レンからのメールを開いて目を通したレオンは、その興奮して慌てて書いたような内容に眉を
このシナリオモードで、主人公の行動と同じく謎に思っていたのが、ヒロインの言動です。自分に縁も
一体何者と思っていたら、後で伝説のトレーナーと