未来(あす)への扉   作:飛鳥 螢

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―スナッチ団アジト―(7)

「よし、行くぞ」

 エーフィをボールに戻し、レオンは最初と同じ経路で二階に上がる。

 そして、左右の壁に穴がある部屋に入り、あの時バトルしたスナッチ団員が逃げて行った右側の壁の穴を抜ける。

 その先に一階に降りる階段があった。

「こっちの方に、ベルデって(ひと)がいるの?」

「後捜してないのは、ここだけだからな」

 まだこのアジトにいるのなら、この先にいる可能性は高い。

 二人は慎重に階段を降りて行った。

 誰も居ない。

 一階の通路に出、更に先にある扉を開ける。

 そこに、お馴染みの恰好をしたスナッチ団の男が一人、二人に背を向けて立っていた。

 扉が開いた音に振り返った男の顔を見て、レオンがハッとなる。

「よお、レオン」

「……デジタス」

「え? デジタスって、まさかさっきの——」

 レオンとあの傲慢なスナッチ団員との会話に出て来た、リングマの前の持ち主——

 驚くルナに構わず、二人はゆっくりと対峙する。

「こんな形で、おまえと再び会うことになるとはな」

「ああ……」

 何処となく残念そうに呟くデジタスに、応えるレオンの声も沈んでいた。

「オレは、おまえが理由もなく裏切るとは思っちゃいねぇ」

「………」

「やっぱり、ダークポケモンの所為か?」

 ポケモン窃盗団であるスナッチ団は、スナッチしたポケモンを闇ルートで売り捌くことで金を儲けている。スナッチしたポケモンがレアであればある程、また強ければ強い程高額で取引され、大儲けできるのだ。

 だが、そういったポケモンを持っているトレーナーは大抵強かったりする。そんな奴からスナッチするのだから、こちらもそれなりの強さを持つポケモンと腕が必要になる。

 とはいえ、ポケモンを強く育てるにも、腕を磨くにも、それ相応の時間が掛かる。そこが元はただの弱小ポケモン窃盗団に過ぎなかったのが、スナッチマシンを手に入れた事で急に名を上げたスナッチ団の唯一の悩みの種だった。

 でなければ、レオンの腕などアテにしないで、自分達の手で幾らでもレアで強いポケモンをスナッチしている。

 ところがある日、何処からか手っ取り早く弱いポケモンを強くする方法を聞きつけて来たヘルゴンザが、早速手下のポケモンの中で特に弱そうな奴を何匹かある場所に送ったのだ。

 そして、それから一ヶ月ほどしてそのポケモン達は戻って来た。まるで別ポケモンのように強くなって。

 それが心を人工的に閉ざして好戦的にし、攻撃力を極端に上げられたポケモン——ダークポケモンだった。

 そのダークポケモン達の力は想像以上だった。まだ研究段階だという事だったが、これだけ強ければ文句はなかった。

 それに満足したヘルゴンザは、この研究が完成した(あかつき)には、スナッチ団のポケモン全てをこのダークポケモンにしてしまおうと考えたのである。

「相棒達をダークポケモンにしたくねぇから、おまえは——」

「いいや、それだけならここまでやらなかった」

 正式にスナッチ団員になったわけではない。その時は拒否すればいいだけの話だ。それでも無理強いするようなら、以前のように返り討ちにすればいい。自分達にすれば、戦闘力を上げただけの心の無いポケモンなど、倒すのは造作も無い事だった。

「じゃあ、何故だ?」

「………」

「何故アジトを破壊し、そのスナッチマシンを奪った?」

 デジタスは答えないレオンに再度問い質す。

 そしてそれは、ルナも知りたかった。

 二人が見守る中、静かにレオンは口を開いた。

「…——おまえには関係ない事だ」

「そうか……」

 息を吐き、デジタスはモンスターボールを手に持つ。

「言うつもりはねぇんだな?」

「ああ」

 レオンもボールを手に取った。

 同時に投げる。

 四つのモンスターボールから閃光が(ほとばし)り、同時に四匹のポケモンが二人の間に姿を現した。

 デジタスが出した二匹は、どちらも体長一メートル程の、飛行と氷タイプを併せ持つデリバードと、同じく飛行に虫タイプを兼ね備えたアゲハントだった。

 前者は進化しないが、後者はケムッソの最終進化形で、黒地に赤青黄色の美しい模様の付いた大きな(はね)に、くるりと丸まる細長い口を持っている。

 一方レオンが出したポケモンは、バクフーンとエンテイだった。

 後ろ足でしっかりと立ち上がり、顔つきも精悍になったバクフーンだったが、少し不安そうにレオンを窺い見、リライブ途中のエンテイは威風堂々とその場に出て微動だにしない。

 レオンはデジタスの出した二匹を見て、軽く目を見開いた。

「ポケモンを変えたのか?」

「おまえもな。そのデカいやつはダークポケモンか?」

「ああ……」

「どうやら本当らしいな。おまえが片っ端からダークポケモンをスナッチしてるって噂は」

「………」

「まあいい」

 お互いの繰り出したポケモンを見て、短く言葉を交わした二人は、淡々とそれぞれのポケモンに指示を飛ばす。

「向かってきたやつにデリバードは『プレゼント』 アゲハントは『銀色の風』だ」

「バクフーン、アゲハントに『火炎車』 エンテイはデリバードに『ダークラッシュ』」

 バトルが始まるとおどおどしていたバクフーンは、レオンの指示に一転して目付きを鋭くし、すぐさま行動を開始した。

 一足跳びにくるりと体を丸めて首の周りに吹き上がらせた炎を全身に(まと)わりつかせ、回転する炎の輪となってアゲハントに突っ込んで行く。

 それを寄せ付けさせまいと、アゲハントは慌てて綺麗な翅を羽ばたかせ、激しい気流を巻き起こしてバクフーンに叩き付ける。

 炎に彩られて回転するバクフーンは、銀色の刃のような気流を引き裂き、逃げる間も与えずに大きな翅ごとアゲハントの体を自分が纏う炎で覆い尽くす。

 全身を炎に包まれたアゲハントは悲痛な声を上げ、ぽとりと床に黒焦げになった翅を広げて力尽きた。

 バクフーンと同時に動いたエンテイも、前屈みに床をダンっと蹴り、そのまま一気の距離を詰めてデリバードに襲い掛かる。

 丁度尻尾から伸びた袋の口から、リボンの付いたプレゼントの箱を取り出した処で技を喰らったデリバートは、箱を落として吹っ飛んだ。

 そして残されたプレゼントの箱は、床に落ちたと同時に閃光を放ち大爆発する。

 すぐ傍にいたエンテイはそれをモロに喰らい、大きく仰け反ってぐらりと倒れかけるが、ぐっと四肢に力を入れて持ち堪える。

 かなりの大ダメージだ。前にもデリバードと対戦した事があるが、あの奇妙な技にこれほどの威力はなかった筈だが。

 グルルッと低く喉を鳴らし、牙を剥いて唸るエンテイの瞳は血走り、全身から発する高熱で、周囲の空気が陽炎(かげろう)の様に揺らぐ。

 今の攻撃でハイパー状態になってしまったのだ。

「落ち着け、エンテイ!」

 レオンが叫ぶ。

 その声に、ハッとエンテイが我に返る。

 ホッとレオンは息をつくが、またあれを喰らうのは流石にマズい。

「バクフーン、デリバートに『火炎車』 エンテイは『ダークラッシュ』だ」

 ハイパー状態のエンテイに気を呑まれたデジタスが、次のポケモンを出す前にレオンが指示を出す。

「デリバート、『プレゼント』しろっ」

 慌てて次のポケモンを出しながら、デジタスも指示を飛ばす。

 吹っ飛ばされて床に叩き付けられたデリバードが、尻尾の袋の口に手を突っ込みながらよろよろと立ち上がった。

 そこへバクフーンとエンテイが立て続けに猛攻をかける。

 それを受ける直前、デリバートは尻尾の袋からプレゼントを引っ張り出していた。

 自身は吹っ飛びながらも、手にした赤いリボンを付けたプレゼントの箱を放す。

 コロリとそれは丁度バクフーンとエンテイの間に転がり落ちた。

 そして、次の瞬間、閃光を放って四散する。

 それを浴びた二匹の体を、緑色の光が包み込む。

「っ!?」

 プレゼントの爆発に一瞬顔色を変えたレオンは、それを見て思いっ切り眉根を寄せた。

 あの光はどう見ても回復系の技でよく見る奴だ。実際浴びた二匹はダメージ処が、気の所為か元気になっているように見える。

 ——どういう事だ?

「どうやらハズレを引いたみたいだな」

 力尽きたデリバードをボールに戻したデジタスが苦笑する。

「ハズレ?」

「ああ、おまえ達にとってはアタリだな。こいつ専用技の『プレゼント』は使う度に与えるダメージが変わる上、時たま相手を回復することもあるんだよ」

 つまり、使っているトレーナーにも予測がつかないという事だ。ダメージ量が変わる技は他にもあるが回復するとは。何とも使いどころが難しい博打技である。

 どうせ倒されるならその前に一発逆転を狙ったのだが、今回はそれが裏目に出たようだ。

 デジタスは肩を竦め、新たなポケモンを繰り出す。

 入れ替わって出て来た二匹は、やはり飛行タイプのポケモンだった。

 一匹は体長七十センチ程の、顔から胸元にかけて赤いが腹は白く、それ以外は艶のある濃紺で、鋭い嘴と爪を持つ精悍な顔立ちをしていた。ノーマルタイプを併せ持つスバメの進化形のオオスバメだ。

 そしてもう一匹は、毒タイプを併せ持つズバットの進化形であるゴルバットだった。体長はオオスバメの倍以上はあり、暗青色の体に大きな口には鋭い牙が生えている。

「エンテイ、オオスバメに『ダークラッシュ』 バクフーンは『スピードスター』」

「オオスバメ、躱して黒いヤツに『燕返し』 ゴルバットはデカブツに『毒々の牙』で噛み付けっ」

 即座にバクフーンが応え、星型の礫を対戦する二匹に浴びせかける。

 オオスバメが華麗にそれらを躱し、身を翻してバクフーンに突っ込む。

 その刹那、オオスバメの体が吹っ飛ばされた。

 エンテイが床を蹴ってオオスバメに跳び掛かったのだ。

「なっ!?」

 デジタスが目を()く。

 あの図体で、オオスバメのあのスピードに付いてこられたというのか。

 オオスバメを弾き飛ばし、悠然と床に降り立ったエンテイの体に、ゴルバットが鋭い牙を突き立てる。

 不快げな唸り声を上げ、エンテイが体を振ってゴルバットを振り払う。

 その顔は苦痛に歪み、立っているのも辛そうに小刻みに四肢を震わせる。

 噛まれた時、ゴルバットに猛毒を体内に注入されたらしい。

 猛毒に冒され、エンテイの体力がどんどん奪われていく。

「オオスバメ、あのデカい図体に『がむしゃら』をぶちかませっ」

 チャンスとばかり、デジタスが叫ぶ。

「躱せ、エンテイっ」

 だが、猛毒に冒されたエンテイに、先程の素早い動きは無理だった。

 突っ込んで来たオオスバメの猛襲を、避ける間もなく急所に受ける。

 さっき受けたダメージを活かしたオオスバメの技の威力はかなりのものだ。

 グラリとエンテイの巨体が揺れ、そのまま仰け反る様に倒れ伏す。

 今の一撃で残った体力も、猛毒によって全て奪い尽くされたのだ。

「………」

 見事にしてやられ、レオンは無言で次のポケモンを繰り出した。

 長年の相棒の片割れのエーフィだ。

 エーフィはデジタスを見ると、少し途惑(とまど)ったようにレオンに目を向ける。

 そして、レオンが小さく頷くのを見て、さっと攻撃の構えを取った。

「エーフィ、ゴルバットに『サイコキネシス』 バクフーンは『スピードスター』」

「礫を躱して、エーフィにオオスバメは『がむしゃら』 ゴルバットは『かみつく』だ」

 エーフィに突っ込んでくる二匹に、星の礫が迎え撃つ。

 その間をすり抜けるオオスバメを目の端に捉え、エーフィが額の紅玉に集束させたサイコパワーを、わたわたと礫を躱すゴルバットに叩き込む。

 同時に、さっとエーフィは後ろに跳び退(すさ)った。

 その鼻先を、スピードが有り過ぎて軌道修正できずにオオスバメが通り過ぎる。

 その背後で、躱し損ねた星の礫に効果抜群のエスパー技を受けたゴルバットが、大きく開いた口を歪め、ポテリと床に落ちた。

 ——更にとんでもなく威力が増してやがる……

 デジタスが呆れたように溜息をつく。

 毎回これで返り討ちにあっていたものだ。

 だからまず先にエーフィを倒しておきたかったのに、やはり相手の方が一枚上手だった。

 しかも最近仲間にした他のポケモン達も、見事に使いこなしている。

 ——だが、このままじゃ終われねぇ。

 決意を込め、デジタスは最後のポケモンとなったオオスバメに指示を出す。

「オオスバメ、エーフィに『がむしゃら』だ」

「バクフーン、『煙幕』 エーフィは『サイコキネシス』」

 愚直に突っ込んでくるオオスバメに、黒い煙玉が迎え撃つ。

 それをひらりと躱し、オオスバメは狙いを定めたエーフィに向かう。

 エーフィの瞳が迫り来るオオスバメの姿を捉える。

 額の紅玉がキラリと光り、不可視の力が解き放たれた。

 真っ向勝負に出たオオスバメの体が押し戻される。

 それに抗い、オオスバメはあらん限りの力を翼に込める。

 エーフィも更にサイコパワーの威力を増してぶつける。

 その(せめ)ぎ合いに、須臾(しゅゆ)の間、時が止まった。

 そして、次の瞬間——

 濃紺の体がブレて見えたと思ったら、凄まじい勢いでオオスバメが後方に弾け飛んだ。

 背後のコンクリートの壁に叩き付けられ、そのまま力尽きて床に落ちる。

「また一段と腕を上げたようだな、レオン」

 オオスバメをボールに戻し、デジタスはほろ苦い笑みを浮かべる。

「おまえの捜しているやつは、この先の二階にいる。何者かは知らねぇが、気を付けるんだな」

 そう言いながら、脇の通路を塞いでいる瓦礫の一角を蹴る。

 大きな音を立ててそれは崩れ落ち、ぽっかりと穴が開く。

 そこを潜り抜けて外に出ようとする男の背に、レオンは声を掛けた。

「デジタス、さっきミサンゴが持っていたリングマをスナッチした」

 ビクっと肩を震わせ、デジタスは驚いた様に振り返った。

「リングマをリライブして元に戻したら、おまえに返す」

「いらねぇよ」

 デジタスが小さく鼻を鳴らす。

「また元の弱っちくなったリングマなんか」

「そんな、元は貴方のポケモンなんでしょ。それを——」

 たまらず言い返したルナを片手で制し、レオンは念を押す。

「本当にいらないんだな?」

「ああ、もうそいつはおまえのモンだ。おまえの好きにすればいい」

「わかった。元に戻ったら、リングマは放す。もう二度と人間に捕まらないような場所に」

「そうか……。ま、どっちにしろ、オレにはもう関係ねぇ」

 一瞬しんみりとしたデジタスは、そう言い捨てると逃げるように去って行った。

「なんて酷いのっ。弱ければいらないなんて、ポケモンをなんだと思ってるのよっ」

「リングマは、あいつがヒメグマの時から可愛がってきたヤツだ」

「だったら、なおさら——」

「あいつは不器用なんだ」

 だからああ言う事でリングマへの未練を断ち切り、レオンに託したのだ。

 ヘルゴンザに忠誠を誓い、スナッチ団から抜けられない自分の許に居ては、またどんな目に合わせられるか分からないから。

 元々あのリングマはバトルには向いていなかった。臆病過ぎて敵を前にすると、怯えて逃げ出してしまうのである。それだからこそ、ダークポケモンにされてしまったのだ。その性格さえ何とかなれば、抜群の攻撃力を誇るポケモン故に。

 ヘルゴンザに差し出したリングマが帰って来た時、見違えるように強くなっていたのを見て、デジタスはボスに感謝した。これでもうリングマは見掛け倒しの役立たずと、仲間に笑いものにされなくて済むと。

 だが、それも束の間、自分のバトル指示以外何の反応も示さなくなったリングマに、デジタスがどれほど嘆き悲しんだか。ヘルゴンザの手前そんな素振りは人前では決して見せなかったが、レオンは知っていた。

 そして、自分の力が足りなかった所為でこんなになったのだと、自分自身を責めていた事も。リングマをダークポケモンにしたのはヘルゴンザなのだというのに。

 本当にデジタスは、悪名高いスナッチ団員とは思えないくらい真っ正直な奴だった。

 レオンの相棒達をスナッチしに来た時も、何度やっても(かな)わないのは判っているのに、卑怯な()は一切使わず、何時も馬鹿正直に正面からぶつかってきては玉砕し、また性懲りも無くやって来る。その繰り返しだった。

 さっきのスナッチ団員の事を、何もかも解っているようなレオンの口振りに、ルナは意外そうな表情(かお)をして思わず呟いた。

「…——レオンは、あのデジタスって人を信用してるのね……」

「信用?」

「ええ、そうよ」

 だからこそ、レオンはあの(ひと)の誘いに乗って、スナッチ団に手を貸すようになったのだろう。これがさっきの傲慢なスナッチ団員だったら、幾ら金が欲しくてもレオンは絶対に受けなかったに違いない。

 そう確信を持って言うルナを、レオンは不可解そうに見返した。

「別に、信用してるわけじゃない。ただ知ってるだけだ。そういうやつだと」

 何度もバトルを繰り返していれば、(おの)ずと相手の性格も分かって来るようになる。それでレオンはデジタスが悪党とは思えない程お人好しで、人を騙すような奴じゃないと判断したのだ。

 とはいえ所詮スナッチ団員だ。ヘルゴンザに忠誠を誓っている以上、ボスの意向には決して逆らえない。ボスに言われれば、それがどんなに意に染まない事だろうと奴はするだろう。デジタスの性格上、それは間違いないといえる。

 だからこそ何時裏切るかも知れないデジタスを信用するなど論外だった。あくまでお互いの利害が一致したから、一時的に手を組んだに過ぎない。

 そう言うと、まだ何か言いたそうな顔をするルナを放って、レオンはデジタスの開けた穴を抜けた。

 そこは、さっき自分達がいたパソコンのある通路に通じていた。

 丁度いいと、レオンは傷付いた相棒達を回復させる為に、パソコンの電源を入れる。

 その作業をぼんやりと見ながら、ルナはさっきのスナッチ団員の事を考えた。

 レオンはああ言ったけど、あれほど「仲間」というものを毛嫌いし、人を寄せ付けようとしなかった彼が、今の男にだけは心を許していたように見えた。

 以前あのスナッチ団員との間に何があったのかは知らないけれど、今まで出会った団員達と違って、「おまえには関係ない」と突っ撥ねながらも、何処か心の奥底の方でしっかりと通じ合っている、(きずな)のようなものを感じたのだ。

 だからリングマの事も、何も言わなくてもレオンにはあの(ひと)の気持ちが解ったのじゃないかと。そして、あの(ひと)の方も——

 そう思うと、ルナはとても(うらや)ましく、そして淋しかった。あんな風にレオンと解り合えていない自分が、まだ彼にとって名ばかりの仲間でしかないことを見せつけられたような気がして。

「…——おい」

「え?」

「どうした?」

 何度呼び掛けても応えないルナに、レオンが訝しげな目を向ける。

「ううん、何でもないわ」

 慌ててルナは首を横に振る。

「いよいよダーク・ベイリーフね」

「ああ」

 準備を整えた二人は、ダーク・ベイリーフのトレーナーが居るという、二階に通じる階段を上がって行った。

 

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