激重感情ベクトルホルダー(無自覚)   作:しっとりパーチー

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スカーフェイス with アルケミスト

 その学校を選んだ理由は、単に通院への利便性からだった。

 まあ、色々と説明されたけども、処置だったり、経過観察だったり、その他諸々必要で、親父たちにこれ以上迷惑をかけるのもどうかと考えてちょいと勉強を頑張った

 だから、ハッキリ言ってそこが有名な中学だとか、偏差値高めだとかどーでもいい事なんだわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、とある中学は入学式を迎えていた。

 一年のとある教室にて、注目を集めるのは二人の男子生徒。

 一人は、ド派手な紫色の髪に水色のメッシュ、黄金の瞳と奇抜な外見と、それライに一切合切負ける事のない端正な顔立ち。

 もう一人は、普通の髪色に顔立ちも整っていない訳ではないが、それでもイケメンか、と問われれば首を捻られる顔立ち。

 その左目を中心とした顔の左斜め上を覆った真っ白な包帯が印象的だった。

 

 以上の理由から目立っている二人。その注目を助長するのが、二人の並びが連続である事か。

 

「神代類です。よろしくお願いします」

 

「木原徹っす。んまー、よろしくー」

 

 簡単な二人の自己紹介。特に面白みも無いが、寧ろここで個性を全面的に押し出す程変人ではないという事だろう。

 そのまま進んだ自己紹介の時間。それが終われば、後は自由時間。入学式が終われば、新入生にやる事はもう無い。

 

「なあなあ、神代だっけ?」

 

 後ろから掛けられた声に、神代類は振り返る。

 彼の優秀過ぎる脳内で考えられる事といえば、自身の見た目の事だろうか。そんな当たりを付けていた。

 だが、

 

「お前、身長幾つ?」

 

「……えっ、身長?」

 

「そうそう。入学式の時にも思ったけど、神代って背高いよな?もう、170は超えてるのか?」

 

「ええっと、最後に測った時が175……位だったかな」

 

「マジか!かぁ~~っ!羨ましいぜ。俺なんて、まだ170に届いてもねぇってのに」

 

 良いよなぁ、と机に突っ伏する隻眼の少年に、類は目を白黒させつつも愛想笑いは絶やさなかった。

 勿論、髪色など以外から身長なども問われると思ってはいた。だが、こうまで裏表なく真っ直ぐな目を向けられるとは思ってもみなかったのだ。

 類から見て、この後ろの席の木原徹という少年は、何というか変わり者の印象。

 特に目立つのが、やはり左目周囲の包帯だろう。これさえなければ、周囲からも浮くことが無かったはず。

 

「――――気になるか?」

 

「ッ……ごめん、そこまで見るつもりじゃなかったんだけど」

 

「いやいや、気にすんなよ。俺だって、こんなグルグル巻きに目の辺りに包帯巻いてたら見ちまうって」

 

 気まずそうに視線を逸らした類に、徹は快活な笑みを浮かべて手を振った。

 とはいえ、クラスメイトに周囲を囲まれたような状態で語る様な事情でもない。徹自身、別に傷自慢がしたい訳でもない。

 

「なあなあ、神代はこの後暇か?」

 

「え?そう、だね……時間は作れるよ」

 

「そっか。んじゃ、適当な所で昼食おうぜ。ついでに、こいつ(左目)の話もしてやるよ」

 

 距離の詰め方がえぐい。サラッと昼食に誘ってくるあたりも手慣れているというか、何というか。

 対人能力がそれほど高くない類としても、再び目を白黒させるが、しかし同時に興味も引かれる相手である事は間違いない。

 

「……確か、近くにコンビニと公園があった筈だよ」

 

「OK、決まりだ。そこ行こうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 春空の公園は、しかし平日という事もあって閑散としていた。

 

「神代って、野菜喰わねぇんだな」

 

「うん。野菜は僕の敵だね」

 

「っはっはっは!言うじゃねぇのよ」

 

「そう言う木原君は、大食いじゃないか。そのカルボナーラを食べる前に、五目あんかけご飯も食べてたのに」

 

「燃費悪いのさ、俺ってば」

 

 パクパクと景気よく食べ進めていく徹に対して、類は肩をすくめて菓子パンを齧った。

 弁当系ならば屋根のある方が良いだろう、とテーブル付ベンチのある四阿を陣取った昼飯時。

 猛烈な勢いで食べ進めた昼食分の空をレジ袋に纏めて、一緒に買っておいたほうじ茶のペットボトルと呷ってから、徹は一つ息を吐き出した。

 

「んじゃ、まあ、俺の左目に関してな」

 

「…………本当に話して良いのかい?ここまで来てアレだけど、僕も無理強いはしたくないんだけど」

 

「良いって、良いって。別にそこまで深い理由はないんだ」

 

 ひらひらと手を振る徹。実際、彼としては()()()()()()()()に過ぎない。それこそ、周りが悲観するようなものは何も無いのだ。

 

「つっても、まあ、運の悪かった話さ。神代は、知らねぇ?少し前に不審者が出たって騒がれてた話」

 

「ああ……確か、ナイフを持った不審者が…………ッ、つまり君の目は」

 

「そう、そいつに斬られた。お陰で失明するは、顔にでっかい傷は残るはで色々と参っちまうが、まあ終わった事さ。な?運が悪かったんだよ。交通事故みたいなもんさ」

 

 本当は、そんなに軽い事ではない。そりゃあ、交通事故で命を落とす事も重い事だろう。だが、だからといって不審者に襲われて片目を失う事もまた、決して軽い事では無いのだから。

 自身の好奇心を悔やむ類。やはり、思うがままに突っ走るのは宜しくない、と。

 そんな彼の様子を見咎めたのは、話した側の徹だ。

 

「気にすんなって、神代。お前も、優しい奴だなァ」

 

「そうは言うけどね……」

 

「よし…………良いか、神代。優しいお前には、厳しい事を言わせてもらう」

 

 ビシッと指を突きつけ、徹は隻眼を細めた。

 

「こいつは、俺が背負っていくもんだ。お前じゃない。ぶっちゃけ、外野である事は事実だしな」

 

「それは……」

 

「あんまり背負い込むなよ。何でこう、優しい奴ってのは何でもかんでも背負おうとするのかねぇ」

 

「いや、僕だって背負ってるつもりはないよ?」

 

「いいや、背負ってる。それが意識的、無意識的に限らずな所がマジで質悪い」

 

 やれやれ、と肩を竦めた徹の脳裏に過ったのは少女の顔。

 中学進学を機に学校は分かれてしまったが、こまめな連絡を取り合ってもいた。

 

「折角の中学生だぜ?もうちっと、楽しく行こうや」

 

 ペットボトルのキャップを閉めて、徹は緩い笑みを浮かべる。

 何というか、類の関わって来なかったようなタイプの人種だ。

 陽キャであり、その一方で本気で相手の事を思いながら、同時に突き放す事へのちゃんとした覚悟をもって、その上で厳しい言葉でも真っすぐに投げてくる。

 

「……凄いな」

 

「お?どしたよ、急に」

 

「いや……?そうだね、君の話を折角聞いたんだ。僕の話を聞いてくれるかい?」

 

「良いのか?」

 

「勿論。それに、一度客観的な意見を取り入れても良いかと思ってさ」

 

「ほほう?んじゃ、まあ……話してみろよ。言っとくけど、俺はガンガン行くぜ?」

 

「望む所さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あるところに、孤独な錬金術師が居ました

 

 彼は優れた技術と、奔放な発想を持っていました。ですがそれは、多くの人々には受け入れられるものではなかったのです

 

 いつしか彼は、他者との関りを諦めるようになっていきました

 

 そんな錬金術師の転機は、一人の傷顔との出会い

 

 傷顔の彼は、共に肩を並べて舞台に立つような人ではありません。強いて挙げても、観客の一人に収まるそんな人でした

 

 ただ、彼はいつだって錬金術師の荒唐無稽とも言える発想を正面から受け入れて、その上で必要な事ならば助言をし、時には苦言を呈する事だってありました。

 

 ですが、彼は一度だって錬金術師を否定する事はなかったのです

 

 苦言も助言も、いつだってそれは錬金術師を慮っての事

 

 多くの発明品が生まれ、その中で傷顔も巻き込まれる事がありました。そんな時でも彼は常に笑っていました

 

 いつしか、錬金術師は孤独ではなくなっていたのです

 

 何故なら彼には、大切な友が出来たのだから

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