奴隷商人の成り上がり!   作:Reppu

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エルザ・ベリエル、俺達の所属するギルドの看板ワーカーにして王国の公式ランキングに名を連ねるランカー。ぶっちゃけ最初に知った時はコイツ転生者なんじゃねえの?と疑うくらいにはあらゆる方面で恵まれている御仁である。容姿端麗にして文武両道、おまけにご実家は王国有数の老舗シュラクトメーカーであり、彼女自身も優れたシュラクトライダーだ。端的に言ってこんなヤクザな仕事に就く出自ではないのだが、本人曰く力ある者の責務だと魔物討伐専門で活動している。因みに地方の寒村なんかだと格安で仕事を請け負ってくれるから民間から絶大な人気を誇っていて、下手すると教会より拝まれているなんて噂まであるくらいだ。…なんで俺そんな人に睨まれているんですかね?

 

「どうなの?答えなさい」

 

そう問い詰められて俺は彼女の意図を察した。おそらく彼女はクロエに目を付けていたのだろう。そりゃそうだ、イスルギ宗家の人間でアンティーク持ちなんて大物ルーキーどころの話じゃない。普通なら熾烈な勧誘合戦が起きている筈である。それを俺みたいな三流がかっさらおうとしているんだから思わず止めたくもなるだろう。だが残念、パーティーの参加はワーカー本人達の自由意志が尊重されるし、なにより新人の勧誘は早い者勝ちだ。

 

「ええ、ちょっとしたご縁がありまして組ませて貰うことになりました」

 

俺がそう返事をすると、彼女はこちらを一睨みしてクロエへと向き直り口を開く。どうやら本人の説得に切り替えたらしい。

 

「失礼だけれど貴女、彼がどんな人間か知っていてパーティーを組もうとしているの?」

 

「え?あ、いやそれは」

 

戸惑った表情でクロエはこちらへ視線を送ってくる。まあ、いきなり奴隷にされてその成り行きでパーティーを組む事になりましたなんて普通言えないわな。返答に困ったのを好機とみたのか、エルザ女史は目を細めて俺について語り出した。

 

「ギルドの評価は下の中、それも問題を起こさないからというものよ。その下は技量も性格も問題あり、つまり彼は最低ランクのワーカーだわ。受ける仕事も荷運びばかりでその上死体漁りまでしているわ。はっきり言って貴女達じゃ釣り合いが取れていないわよ?」

 

すげえ、全く反論の余地がねえぞ?ちょっと正論パンチ止めて貰えませんかね?

 

「その、彼には命を助けられたんだ。それにシュラクトの修理費も肩代わりして貰っている。確かに不釣合いなのかもしれないが…」

 

「戦場における相互扶助はワーカーの基本義務よ、恩を感じる必要なんて無い。修理費の肩代わりと言うけれど、彼にアンティークを直せるだけの資産があるとは思えないわね」

 

エルザ女史の指摘にクロエは困った顔で口を閉ざしてしまう。そんな彼女を見て俺は非常に複雑な気分になった。クロエは本気で命を救われた事に感謝しているようだし、俺のスキルについても口外するつもりは無いようだ。それに対してこちらはといえば言葉巧みに騙して奴隷契約を結んだ上にパーティーとして拘束しようとしている。それは実に不義理な行動だと思う。

 

「…幾らかしら?」

 

そんな葛藤をしていたら、エルザ女史が不機嫌な顔で俺にそう尋ねて来る。何の事か理解出来ずにいると彼女は険しさの増した声音で聞いてきた。

 

「彼女の機体の値段よ。私が買い取れば全て丸く収まるでしょう?」

 

「え?」

 

「未修理でも稼働状態のアンティークならかなりの値段になる。そうね、貴方の稼ぎならそれこそ10年単位の稼ぎと同じかしら?彼女とパーティーを組んで討伐依頼を受けたとしても、お荷物が居るんじゃ高難易度のものは無理だもの、元を取るのに掛かる時間は大差無いわよね?そしてその間に何かあれば回収すらままならなくなる。ならここで私に売ってしまうのが賢い選択じゃないかしら。そう思わない?奴隷商人君」

 

それはとても良い取引だ。英雄願望も無ければ高貴な義務とも無縁な俺は生きるためにワーカーをやっている。それこそ纏まった金があれば商売をしても良いし、なんならその金で大学へ行って何処かに就職なんて手もあるだろう。それが賢い生き方ってもんだ。でもさ、

 

「そう仰るならちゃんと覚悟は頂けるのでしょうね?」

 

「覚悟?」

 

視界の端に映ったのはクロエの何処か不安そうな顔。馬鹿な奴だ、ちょっと命を助けられたくらいで俺みたいな奴を信じるなんて。イスルギ家がクロエを軍に入れない訳だ、こんな真っ直ぐな奴は、俺みたいな奴に都合良く使い潰されかねない。

 

「彼女と組めばそんな端金簡単に稼げるのですよ。最低でも100倍は用意して貰わなければ割に合いません」

 

「ひゃっ!?」

 

俺の言葉に目を見開いて可愛い声を上げるエルザ女史。まあ驚くよな、そんだけあれば人一人が一生遊んでいられるくらいの額になる。そんな額を稼げるワーカーなどそれこそ過去にいた勇者なんて持て囃されたごく一部の人間だけで、俺は当然ながらエルザ女史だって持ち合わせていないだろう。まあ彼女の場合実家を頼るという奥の手が残っているが、プライドの為に仕事をしているような奴が我が儘の為にその手を使えるとは思えない。案の定エルザ女史は怒りの表情でこちらを睨み付けてくる。はっは、ランカーのガン飛ばしとか超怖い!

 

「すまない!いいだろうか!?」

 

俺達が睨み合っていると、意を決した様にクロエが声を上げる。視線を送ると彼女は真面目な表情でエルザ女史を見ながら言葉を続けた。

 

「私のことを考えての忠告、感謝する」

 

言いながらクロエは一度小さく頭を下げるが、再び持ち上げると彼女へ向かって口を開いた。

 

「だが、恩義にどう向き合うかは私が考えてするべき事だ。貴女の中では気にする必要の無いことなのだろう、しかし私にはなんとしても報いるべき事なんだ。そう、文字通りこの身に代えてもな」

 

そう言って僅かに視線をこちらへ向けるとクロエは微笑えんだ。やだ、なにこのイケメン。

 

「…それに、生憎だが名前も知らぬ方の言を鵜呑みにするほど世間知らずではないんだ。ご忠告有り難う、だが私は彼とパーティーを組ませて貰う」

 

クロエが言い放った瞬間、エルザ女史がもの凄い表情になりこちらに音が聞こえる程強く奥歯を噛みしめた。

 

「そう、邪魔をしたわね」

 

そうしてたっぷり数秒彼女達は視線を絡ませた後、エルザ女史が小さくそう口にして踵を返し去って行く。どうやら話はついたらしい。

 

「…クロエ、えっと彼女は」

 

「知っている、エルザ・ベリエルだろう?登録するギルドの有力者くらい頭に入れているさ」

 

俺が声を掛けると彼女はつまらなそうに鼻を鳴らしてそう答えた。いや、知ってるんかい。

 

「ならなんであんな事を?」

 

「私は彼女を知っているが、それはそれとして名乗るくらいは当然の礼儀だろう?」

 

成る程、確かに名乗らないのは凄い失礼だから仕方ないな。何処かのスレイヤーサンも言っていたから間違いない。

 

「それに彼女は、私が利益だけで乗り換えるような尻軽だと言ったんだ。そんな連中に背中なんて預けられるものか」

 

そりゃそうだ。エルザ女史の様に趣味でワーカーをやっているならともかく、普通の連中は生活のため、生きるためにワーカーを生業にしているんだ。自分の命を懸けてまで他のヤツを助けようなんて奇特な奴はまず居ない。その意味ではエルザ女史のパーティーは酷く危険だと言えるだろう。何せリーダーは当たり前と思っているのだから、作戦や行動はそれを前提としたものになる。だが果たして彼女のパーティー全員が同じ考えなのかと問われれば確実に否だ。

 

「そう考えればマルスとのパーティーは悪くない。何せマルスは私が居なくなったら困るだろう?」

 

「全く以てその通り」

 

クロエの得意気な表情に俺は笑いながらそう答え、手に持っていた申請書を改めて受け付けへと差し出す。一部始終を見守っていたギルドのおっさんは特に表情を変えること無く事務的にそれを受け取った。まあこんな遣り取りは見飽きているんだろう。手早くパーティー用のドッグタグを引き出しから取り出すと、手慣れた仕草で刻印を打ち込む。数分と待たずに俺達の前へそれが差し出された。

 

「改めて、マルス・ログホートだ。宜しく」

 

「クロエ・イスルギ、よろしく頼む」

 

そう名乗りあい、俺達は握手を交わしたのだった。

 

 

 

 

「さてと、俺としてはここからが本番だ」

 

今日の所は解散と言う事にしてそそくさと自分の宿へ戻ってきた俺は、緊張しながらスキルを呼び出す。幸いというか何というか、この世界のスキルは叫んだりしなくて良いから黙々と操作をしていく。目の前に現れたのは8bit臭が漂う白黒のウィンドウ、その中にはドット調にデフォルメされた2等身のクロエと、その横には各種ステータスバーらしきものが表示されている。

 

「うむ、正にキャラステ画面だな」

 

定番の体力や力、素早さといった項目が並んでいるのは問題無い。強いて言えば明確な数字じゃなくてバーの長さでしか表されていないから彼女がどの位の能力なのか評価しにくい事だろう。何せ俺はこの画面に誰かが写っているのを初めて見るのだから。

 

「…さて、現実逃避はここまでにするか」

 

覚悟を決めてステータス画面の上の方、具体的には彼女の名前の下に表示されている現在HPの次に並んでいる項目へ目を向ける。

屈伏度、字面的にはあれだろうか?俺の事をどの程度主人として認めているかとかそんな感じか?全体から見てあまりバーも長くないけれど今日奴隷になった奴がいきなり高くてもそれはそれで怖いからまあ妥当な所だろう。

 

「んで、依存度?」

 

これはあれだ、どれだけ俺の事を慕っているかとかそんな値に違いない。見方を変えればつまり好感度的なヤツだろう。はっはっは、全く人聞きが悪いったらないぜ。

 

「か、快楽…」

 

知ってる知ってる。これはそう、感情の豊かさ的なステータスに違いない。クロエは結構感情の起伏が激しそうだからな、他のと比べて結構高そうな長さだがまあそう言う事もあるだろうさ。

 

開発度。

 

「畜生自分を騙せねえ!?」

 

完全に調教エロゲーとかそんなノリのステータスじゃねえか!?特定部位毎に細分化されてないから全年齢対象ですとでも言い張るつもりか?このご時世のコンプライアンスを無礼るんじゃねえぞ!?あとクロエさん?なんでこの項目、バーが伸びてるんですかね?え、なに、イスルギってそっちも鍛えるの?

 

「いや、エロイのは歓迎だって言ったよ?けどさ、もっとこう、プラトニックというかイチャラブ的なヤツでさぁ」

 

夕日を背景にサムズアップしている神様を幻視してそう愚痴る。おのれ神め、俺の性癖が歪んだらどうするつもりだ。どうもしねえんだろうなぁ…。

 

「奴隷商人のスキルを上げるには奴隷との関係を深める必要がある。いやこれ商人の仕事か?」

 

商人と言うより調教師とかそんないかがわしい職種な気がするんだが。もしかして転生チートの配慮か?ちょっと想像してみよう。

 

「君のジョブは…奴隷調教師?」

 

うん、神殿でそんな神託受けた日には即日特別な施設に隔離されかねん。まだ周知されている商人の方が冷たい目で見られるだけで済むとかそんな所か。

 

「いや、でもどうすんべ?」

 

多難な前途を想像し、俺は小さく溜息を吐くのだった。




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