超大型巨人「誰かがやらなくちゃいけないんだよ……誰かが、自分の性癖を、ネットに晒さないと!」
ヒーローが好きだ。
勧善懲悪。善を成し、悪を挫き、命を護り、心を救い、助けを求める人を決して見捨てない。そんな、
私の生まれは、更識の家。日本政府の懐刀たる暗部の元締め。影から国を、人々を護る為に闘う
だから努力した。私もまた、誰かを助ける事が出来るヒーローに成りたくて。
暗部としての現実が、子供の頃に憧れた理想のヒーロー像とは外れていると解っても、それは変わらなかった。
でもヒーローには成れなかった。
私の一つ上の姉、更識楯無は、私なんかとは比べ物にならない程に優秀な人で。
まだ成人すらしていないのに更識の当主の座を継ぎ、更には
表の世界でも裏の世界でも、周囲の人間を圧倒し、従わせ───そして、
私にとってお姉ちゃんは、本物のヒーローで。正しく私の理想の体現そのものだった。
そして私にはお姉ちゃん程の才能は無く。故に、理想に追い付く事は出来ないのだと悟った。
それでもいいと思った。
悔しくはあったけど、それなら本物のヒーローの隣で、ヒーローを支え、助け合う仲間に成れればいいと思った。
何より、お姉ちゃんが好きだったから。お姉ちゃんの力に成りたいと思った。
でも、現実は冷たくて。
元々歳の近い姉妹と云う事もあって、何かと私とお姉ちゃんを比較する声は多かったが、お姉ちゃんが当主になり国家代表になり、頭角を現せば現す程にそれは増えてゆく。
ヒーローの隣に立つ事が許されるのは、同じくヒーローだけで。私は周りにそうだと認められる事は無かった。
そして遂に当のお姉ちゃんからも、無理して私に並ぼうとしなくていいと、言われてしまった。
私を気遣っての発言だという事は百も承知しているけれど、それでも私はショックを隠し切れなかった。
だってそれは、裏を返せば、
それ以来、私はお姉ちゃんと上手く話すどころか、顔を見る事も出来なくなり。それを感じ取ったお姉ちゃんも私と接する時間を目に見えて減らして。一度入った亀裂を修復する事が出来ぬまま、私とお姉ちゃんはどんどん疎遠になっていった。
隣で支えたいと願った筈の人との距離が離れていく。それでも幼い頃から懐き続けた想いを捨てる事は出来ず。未練がましくも足掻き続けた末に、遂に専用機を与えられる事になった。
ISと云う兵器の
これなら認めて貰える。お姉ちゃんもきっと褒めてくれる。───また、お姉ちゃんと一緒に居られる。
そう思ったのに。
専用機の開発はまさかの中止。理由は、ISを動かせる男子が発見され、その専用機の開発に注力する為。
何故よりにもよって今なのか。何故よりにもよって倉持が開発を担当する事になるのか。何故周りはこの決定に否を唱えてくれなかったのか。───何故私の家は、
(そんなの、どうでもいいと思われてるからに決まってる)
そう
鬱屈とした心持ちに何の折り合いも付けられないまま、姉の居るIS学園に入学する日が来てしまった。
姉は学園の生徒会長を務めている。この場所に於いても姉はヒーローだった。本当に優秀な人間は何処に居ても輝けるのだという事がよく解る。幾らでも代替品を用意出来る、
そうして、
彼は来た。
「失礼致します。1年1組の朔晦涼と申します。更識簪さんに用件があって参りました。此方のクラスにいらっしゃいますか?」
───
「更識さんの専用機の件で──」
専用機と云う言葉を聞いた瞬間、私は
駄目だ、抑えろ。今此処で感情のままに口を開けば、どんなに醜い文句が吐き出されるか自分でも判らない。世界でたった二人の男性操縦者、その片割れに対して悪意を持った対応をすれば、私の今後の学園生活に支障を
───何より、お姉ちゃんに迷惑が掛かる。
僅かに残っていた理性でそう判断し、目の前の男を空き教室に誘導する。ついさっきまで無気力極まっていた癖に、人間結局、最後の最後まで保身に走るんだな。そんな自虐的なんだか
意外にも朔晦涼は私の提案に一切躊躇せず、直ぐに返事をして私の後をついて来た。
女の私から、
単純に馬鹿なのか、それとも私の事を舐めているのか。いや、或いは、これまで
良いご身分だな、なんて、自分でも自覚出来る程に悪意の有る解釈をして。
「専用機の件について、謝罪に来たんです」
そんな私の汚れ切った内心を嘲笑うかの様に、
それだけで心が幾分軽くなるのが、何だか酷く惨めで情けなくて悔しくて認めたくなくて。何でそんな風に謝るの、これで許さなかったら私の方が悪者じゃないか。もっと、もっと嫌な奴だったら思う存分当たり散らせたのに。狡い男め、くそっ。
酷く身勝手で子供染みた自分の心をこれ以上直視したくなくて。当たり障りの無い事を言ってからさっさと退散しようとしたのに。
「……償いを、させてくれませんか」
なのに、この男には私を逃がす気は無いようで。
尊敬しているだの、折り合いを付けて欲しいだの、此方が言って欲しい事も言って欲しくない事も全部纏めてぶつけて来て。
いよいよ抑えが利かなくなった私は、女の暴力に訴えた。此方が黙っていれば好き勝手言いやがって。舐めてんじゃねえよクソ男。精々急な手出しにビビればいい。
「じゃあ、このまま泣き寝入りでいいんですか?」
そう思ったのに。それすらも叶わなくて。まるで
巫山戯るな、私はお前みたいな……お前なんかに同情されて、見下される程、
『代表候補生にまで登り詰めた貴女の努力を想うと、本当に尊敬の念が絶えません』
──ああ、そっか。違った。
この男は私を見下しているんじゃなくて、見上げているからこそ、これ以上落魄れるなって。そう言ってるのか。
どうやらこの男に取って、私はヒーローらしい。
何年頑張っても、一番認めて欲しい人には認めて貰えなかったのに。
今日初めて会ったこの男には、こんなに簡単に認めて貰えるのか。
ああ、なんか。
もう、どうでもいいや。
「……そのまま跪いて、私の足…舐めてみてよ」
無理矢理跪かされた目の前の男は、突拍子も無い私の言葉にきょとんとした表情のまま私を見上げて来て。
漸く不意を突けた事に少しばかり
「ほら、どうしたの。本当に私の事尊敬してるんだったら、舐めてよ。私に、媚び
口角を吊り上げ、眼鏡の奥の瞳を細め
(どうせ舐める訳ない)
冷め切った内心でそう独りごちる。
当たり前だ。こんなの、セクハラを通り越して強制猥褻だ。人の負い目に付け込んで無理矢理性的な行為を強いる……世の性犯罪者共と何も変わらない。
これで本当に落魄れた。落魄れ切った。
数秒後、この男は走って逃げて、職員室に駆け込んで、そこで私の行為の全てを告げ口するだろう。
そうなれば私は終わる。この世界のどんな男性よりも貴重な存在に手を出そうとした下劣極まる女として、世界中から後ろ指を差されながら学園を去る事になる。
どうだ、お前達がちゃんと認めてくれなかったから、こんな事になってしまったんだぞ。
ざまあみろ、精々後悔するといい。
そんな支離滅裂で、
そしてそのまま、歩いて出口の方へ向かって行った。
へー、ほんと意外。走って逃げないんだ。
何処か他人事の様にそう思いながら、遠ざかっていく背中を見詰めた。
どうだ。今どんな気分なんだ。軽はずみに女と二人っきりになった事を後悔してるのか。それとも女のリアルな肉欲をぶつけられた事に恐怖しているのか。───或いは、尊敬していた人間の、皮一枚剥いだ下に在った浅はかさに失望しているのか。
どれでもいい。精々傷付け。私はこんなに傷付いて来たんだ。貴方も傷付いてよ。
そう思っている内に、朔晦涼は教室の出口に辿り着いた。ほんの少しだけ隙間が開いていた扉に手を掛け。
きっちり閉め切ると、扉の電子ロックを掛けた。
(─────は?)
予想外に過ぎる行動に此方が呆けている間にも、朔晦涼は動き続けた。部屋中の窓を回って、取り付けられている電子パネルを弄るとブラインドを下ろしていく。程無くして、部屋の全ての窓のブラインドが閉め切られた。
これで外からこの部屋の様子を覗く事は出来ない。扉のロックも掛けられている以上、侵入する事も出来ない。
その事を理解した私の前に、朔晦涼が戻って来て。
再び跪くと、私の履いている靴に手を掛けた。
∵∵∵
さてどうしたものか()。
簪さんの、まさかの足舐めろ発言に僕は今絶賛困惑中だった。正しくウッソだろオイって感じの心境である。
いやまあ、自分で言うのもなんだが、
だが足舐めってあんたちょっと()。なに、簪さんまさかのそういう趣味有り? それとも生意気な口利いた僕を分からせてやろうという感じなのか?
考えても答えは出ない。あたりめーである。マジで予想の斜め上からぶん殴られた感じ。お陰で思考が上手く回らない。くそっ、確りしろ僕。
「ほら、どうしたの。本当に私の事尊敬してるんだったら、舐めてよ。私に、媚び
そう言ってデスクに腰掛けた簪さんが僕に向けて足を突き出して来る。地味にパンツ見えそう。
───ふむ? これは、つまり……うーん?
たぶんだが簪さんは本気で僕に足を舐めさせようとしている訳じゃない。如何にも意識して演出しましたって感じの表情だし。そういう芸風は似合いませんよ君。
だが、それでは駄目だ。
簪さんに対して述べた言葉に、僕は何一つ嘘を含んでいない。今回の件は僕にも責任の一端が有ると思ったから謝罪して、それでも簪さんの心が晴れていないと感じたから、それを成す為に償いがしたいんだ。
原作でも色々強調されてたけど、マジでISと云う技術は操縦も整備も開発も、ありとあらゆる面で難解極まっている。現実としてそれ等に触れた僕はその事を本当に実感していた。
そしてそんなISの分野の一つで、専用機を与えられる程の実力を身に付けた代表候補生である更識簪さんに、僕は本気で敬意を抱いている。
一体
そんな事は絶対にあってはならない。簪さんには何としても再び立ち上がって貰わねば。
だからきっちり簪さんが納得のいく償いをさせて欲しいのだが……今の、この現状では、それは流石に難しいだろう。
先ず説得はほぼ無理だ。簪さんこれかーなーり自暴自棄になってる感がある。こんな事人にさせちゃいけませんと正論を言った所で効果は絶対に無いだろう。僕、根が真面目だから口を開くと基本正論マンになってしまいがちなのである。光のコミュ障。
んでもって逃げるのはもっと論外だ。そもそも簪さんが望む形で償いがしたいと言ったのは僕なのに、此処でそれを反故にしたら僕の言葉は二度と簪さんに届かなくなるだろう、それは不味い。僕が直接コミュるのは諦めて一夏等他の人に頼るというのも有りっちゃ有りだが、僕のしくじりで周りの人に手を焼かせるのも心苦しい。
となると、だ。
……うーん………えー……………やるしかない感じ?
……………。
よし、やろう(開き直り)。
ええねんええねん、どーせ人生2周目やし(標語)。大胆にいこ。
と云う事でささっと部屋の扉に内側から鍵を掛け、窓もブラインドを張って外から覗けなくする。余談だが鍵は電子パネルで操作するのにドアの開閉は手動なのが絶妙にシュールだなこれ。
そして、場を整えた僕は再び簪さんの前に跪いた。
先程述べた僕の考えが正しいなら、恐らく簪さんは僕の行動に面食らって頭を冷やしてくれるだろう。文字通り冷や水を浴びせられた様にと云う奴だ。そして心に隙が出来た簪さんに対し、改めて言葉と態度を尽くす。
まあもし予想が外れて暴走されても、それはそれで構わない。互いに
そんな事を考えながら簪さんの靴を両方とも脱がせ終えたのだが。
……これ脱がして良かったのか? いや、靴を舐めろじゃなくて足を舐めろって言われたから取り敢えず脱がしたのだが……。って云うか簪さんタイツ履いてんだよな。え、これも脱がすの? 脱がした方が良いの? それともこのまま脱がさずにタイツ越しに舐めればいいの?
駄目だ、判らん。当たり前っちゃー当たり前なんだが僕は人の足を舐めた経験なんて前世今世通して無いのである。こういう時の作法が分からない。いや作法って何だよ、ねーよそんなもん。その辺は人それぞれの性癖次第だろうよ。
分からないので、取り敢えずタイツ越しでいいかと、そのまま簪さんの足に顔を近付けて、口を開く。
舌を、伸ばして──。
「─────っっ!!」
──いよいよ触れそうになった所で、簪さんが足を引いた。
見上げると、これでもかと
暫く、お互いに停止していたが、やがて簪さんは引き攣った笑みを無理矢理と云った風に浮かべて。
「───た、タイツ……脱がして、よ」
そんな事を
ふむ。
まあ、御要望とあらばという事で、簪さんの足に手を伸ばそうとしたら。
「て、手……使わないで……口だけで、脱がしてみてよ」
えぇーーー………。
∵∵∵
私の両足の靴を脱がした朔晦涼が、そのまま私の足に舌を伸ばしてくるのを見て、咄嗟に足を引っ込めていた。
おかしいおかしいおかしいっ!!
信じられない信じられない信じられない!
こんな…だって…っ!
ふ、普通逃げるでしょ!? 幾ら本気で償う気があったって…あんな、性的な行為強要されたら…男ならっ、誰だって逃げるに決まってるのに!
まさか、本当に舐めようとしてくるなんて……それも、部屋を完全に外から干渉出来ない様にしてから。こんなの、私が変な気起こしたらっ、起こしても拒めないのに!
なんで?
分からない、分からない。
単純な、人の善さとかじゃない。それだったら先程の様に正論で私の行為を咎める筈だ。なのに、それをしない。只、粛々と私の下衆な要求を呑もうとしている。
何故?
何を考えているの? 一体何がしたいの、何をする気なの。
本気で、私の要求に従う事が、償いになると思ってるの……?
「───た、タイツ……脱がして、よ」
───気付いたら、追加でそんな命令をしていた。
違う、本気でさせたい訳じゃない、違う。単純に足を舐めろと言っても退いてくれなかったから、より追い詰める為に言っただけ。大丈夫、私はまだ冷静だ。
無表情で、然れど何処か退廃的な淫靡さを纏って私を見上げていた朔晦涼が、私の命令を聞いて再度手を伸ばしてくる。
─────っ!!
「て、手……使わないで……口だけで、脱がしてみてよ」
更なる命令を──今度は飛びっきり理不尽な要求をしてやった。
これなら、流石に逃げる筈だ。こんな人の尊厳を蔑ろにした屈辱的な命令、男なら絶対逃げる。
逃げろ。
早く逃げろ。
───お願いだから、早く逃げて。
理不尽な要求をしているのは此方なのに、追い詰められているのも此方だった。
そんな私の内心を見透かす様に、目の前の男は
やがて腕を後ろで組むと、私の爪先部分を包む布に噛み付いた。
「───────っっ!!! ひ」
咄嗟に両手で口を押さえて声を閉じ込める。
触れた。
今、確かに、男の人の唇が。
僅かに、でも確かに!
私の爪先に、触れていた。
バクンバクンバクンっ!! と。
私の心臓が嘘の様に早鐘を打つ。
余りにも現実離れしたその光景から私は目を反らせなかった。
タイツを破かない様にだろうか。朔晦君は歯を立てる様な事はせず、唇を丸めて押し出し、柔い力加減で少しずつタイツを引っ張ってゆく。
口しか使えない以上、タイツを脱がす為の前後運動は首を、引いては体全体を動かさなければならない。腕を後ろで組んでいるのも相まって、随分とバランスが取りづらそうだ。
ある程度、ほんの少し引っ張ってから唇を離し、また体を前に倒して、はむっ、と。タイツを唇で
目が、離せない。
両手で口を押さえたまま、只管に。私は朔晦君の痴態を凝視していた。
単純な前後運動では脱がしにくいのか、朔晦君の体が左右にも揺れ始めた。
首を曲げ伸ばし、布と足の間に余裕を作ろうと四苦八苦している。
タイツを引っ張る為に反らされる首のラインがこの上無く艶やかで。──あ、今、鎖骨が僅かに覗いた。
体の方もそうだ。前に倒された時に強調される腰の括れ、左右に回した時に強調される胸筋の膨らみ。
いい加減焦れったいのか、動きが随分大胆になってきた。
息もかなり上がってきている。荒く、熱い吐息が、タイツを咥えようと近付けられた唇から、布越しに私の肌を撫でる。
ビクリと、思わず足を跳ねさせてしまったせいで、朔晦君の口からタイツが弾かれて離れ。
───ポタリと、その唇から。
唾液が床に垂れた。
「……っ」
そこで、今更ながらに気付く。
私のタイツは既に朔晦君の唾液まみれになっている事に。黒い染みがあちらこちらに染み付いて。まるで、マーキングの跡の様。
流石に疲れたのか、朔晦君は息を整える様に動きを止めて少し俯いていた。
でも、その間も後ろに組んだ腕を解かない。腕を組んでいる事も忘れる程に思考が鈍ってきているのか。───或いは私の命令を忠実に守ろうとしているのか。
チャリ、と。
朔晦君の首元で、僅かに鳴った金属音に目を奪われる。
高い位置に腰掛けた私の足下で、女の理想を体現したかの様な日本男児が、手を後ろで組んで跪いている。───そしてその首には、隷属の証の如く、輪が嵌まり、鎖が垂れているのだ。
「すみません……
「───う、ん」
未だ俯いたままで、朔晦君がそう話し掛けてきた。
その声を最後に聞いたのが、随分と昔の事の様に錯覚してしまう。
朔晦君の要求に応じて、デスクに両手を突き、腰を浮かしながら少し前に突き出す。
すると朔晦君はその脚の間に、大胆にも顔を突っ込んだ。
「っ! ひ、ぁ」
デリケートゾーンへの急な接近に、思わず声を漏らしてしまう。が、何とか抑えた。
別に股に顔を押し付けられた訳じゃない。でも、かなり近い位置にまで体ごと押し入られて、流石に羞恥心が湧いた。
そのまま朔晦君は、
息が、荒いっ。唇の感触が、
「ん、むっ」
「ぁ、や、ごめんっ」
余りのこそばゆさに筋肉が強張って、思わず脚を閉じてしまった。それに顔を挟まれた朔晦君に慌てて謝る。
すると朔晦君は私に流し目を送って。少し、目を細めながら、笑った。
~~~~~っっっ!
何、今の表情。
狡い。上手く言えないけど、狡い!
そうして、朔晦君は私の太股を覆っていたタイツを全て取り払ってしまった。
此処までくれば、足と布の密着もだいぶ緩くなっている。
ラストスパートとばかりに、朔晦君は大胆な動きでタイツを引っ張った。
思いっきり上体を倒して、私の爪先辺りまで一気にタイツを剥き下ろす。
殆んど上体を床に着けたその姿勢を、私は上から見下ろしていた。
体と首の位置を調整する為に小刻みに動かされる足、それに合わせて揺れる肉付きの良い臀部、引き締まった腰、未だ律儀に背中で組まれている両腕……。
目の前の少年の動き全てに、私の劣情が煽られていくのを感じた。
そうして、とうとう。
私が履いていたタイツは、脱がされてしまった。
目の前で荒い息を
唇、だけで。
「……!」
ゴクリと。生唾を呑み込んだ。
本当に?
本当に、これから、この少年は。
私の、足を。
「舐める時も、手は使わない方が、良いですか……?」
ずいっ、と。
体を寄せて、朔晦君がそんな事を聞いてくる。
「………す、好きに、すれば」
自分が何を言っているのかよく判らない。
今この場で、どうする事が正しいのかも。
もう、何も判らない。
私の言葉を聞いた朔晦君が、腕を組んだまま上体を倒していく。
汗で湿り、上気した顔を傾けながら。
濡れた唇から、この上無く肉感的な舌が差し出された。
エロ過ぎる。
真っ赤で、てらてら光って、柔く揺れている。
そんな人体で最も敏感な粘膜が。
普段何者にも触れられる事の無い、許す事の無い場所が。
私の、足、に─────。
『貴女の邪魔をしてしまった事を、本当に申し訳無く思って』
────あ。
『貴女のこれまでの努力を想うと、本当に尊敬の念が絶えません』
────ああ、あ。
『だから、貴女の心をそのままにはしておけないんです。また、歩き出して欲しい。僕はそう思ったんです』
────っっっ!!! ああああああああああっ!!
私は机から転がり落ちる様に床へ逃れ、朔晦君と距離を取った。
朔晦君は何処か呆然とした様子で、地べたに尻餅を着く私を見詰めていた。
吐き気がしてくる。
涙腺が弛む。
私は───……私は、なんて、馬鹿な事を…!
「…ごめんなさいっ」
一度決壊したら、もう駄目だった。ボロボロと、珠の様な涙が溢れ出て来る。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ! ごめんなさい!! ごめんなさい!!! ごめんっ! ごめんねぇ!」
土下座をする様に。いや、事実、私にとっては土下座のつもりだった。
床に頭を擦り着けたまま、只管謝罪の言葉を連呼する私を、朔晦君は只、静かに見ていた。
誓って宣言させていただきますが、私は足舐めフェチでもタイツ脱がしフェチでもありません。
私の性癖は拘束系のSMです(大胆な告白)。