自給自足IS貞操観念逆転モノ   作:アマデス

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意外と早く(早く…?)書き上がったので投稿しちゃいます。ボリューム控え目のイベントはこういう時助かりますね。




6話 二次創作の鬼門は原作主人公の目立たせ方

 

 

 

 

「いただきます」

 

 食堂の一画で手を合わせ、食材になった生命達及び厨房で朝早くから働いて下さっているおじちゃん達への感謝を払ってから箸を手に持った。

 

 現在は朝の6時45分程。社会人の方にとっては出勤時間との兼ね合いを考えると妥当か少し遅いくらいの朝食時間だが、此処は全寮制の学園で授業の開始時間は8時半である。仮に食事を終えるのに1時間掛かったとしてもまだ30分以上の余裕があり、()(ぽど)の事が無ければ遅刻しようの無いと云うかちょっと早過ぎる時刻に僕は食事を取っていた。

 健康を意識してるとか食事はゆっくり摂りたいとか色々理由はあるが、もっと単純に、前世で爺になる迄きっちり生き抜いた社会人経験済みの僕に取って学生の平均起床時刻は遅くて仕方無く感じるのだ。6時台に(1時間早く)起きればほんと一日の流れに余裕持てるからね。

 

 

「ん…? おっ、朔晦君だ! おはよ、ぅ……」

 

 そんな感じで一人黙々とご飯を胃袋に掻き込んでいると、クラスメイトの相川清香(あいかわきよか)さんが声を掛けて来た。おお、流石。昨日の雑談でスポーツ少女を自称していただけあって早起きだなー。

 

「おはようございます相川さん。早起きなんですね、吃驚(びっくり)しました」

「ゃ、ぁー……う、うん。朔晦君も、随分早起きな様で……」

 

 と云う事で此方も思ったままに返事をして会話をスタートさせようとしたのだが…。

 ? なんか相川さんの歯切れが悪い。と云うか此方と視線を合わせてくれないし何なら席に着こうともしない。朝ごはんの乗ったトレーを持ったまま突っ立っていた。え、何? どしたん。

 

「? どうかしましたか相川さん。食事は座らないと出来ませんよ」

「そっ、ぅ、だけどー、えーっと」

 

 続けて会話を振っていくがやはり生返事しか返って来ない。(しき)りに目を泳がせて…なんか此方を見ない様にしてる?

 

「あっ、ひょっとして僕の顔に何か付いてますか?」

「そっ……うじゃ、なくてぇ~…」

 

 ひょっとして歯に青海苔(あおのり)か頬にご飯粒でも付いてて、僕に恥をかかせまいと指摘出来ずに困ってるのかとも思ったが違うらしい。

 うんうんと唸る相川さん、首を傾げる僕という膠着状態が(しば)し続いたが、やがて相川さんが意を決した様に口を開いた。視線は逸らしたまま。

 

 

「あの、ね、朔晦君………ちょっと、薄着過ぎない?」

 

 

 ───あーーはいはいそういう事ね。相川さんの指摘で全てに得心がいった。

 今、僕は、ゆったりしたTシャツとこれまたゆるーい短パンと云う、正しく部屋着と云った感じの超絶ラフな服装をしていた。

 学園内の食堂なのにそんなんでいいの? と思われるかもしれないが全寮制なんてこんなもんだ。始業時間に制服を着てさえいればそこまで細かく注意はされない。現に相川さんも……いやめっちゃ薄着だな。僕とどっこいどっこいのラフさである。おまけにブラも着けてねーぞこれ。はしたないですよ全く! 尚、この世界の貞操観念。

 

「女所帯でそういう格好は良くないんじゃないかなー…って」

 

 とか何とか思ってたら相川さんが控え目に言葉を重ねて来る。ああうん、はいはい、言いたい事はよく解ります。ちゃんと解ってますとも。

 これ迄にも散々脳内会議(地の文)で述べて来たが、この世界に於いて僕は前世での女性に当たる存在な訳で。そんな僕が周りに異性しか居ない状況で諸に部屋着感丸出しのラフでペラペラな防御力0の格好で彷徨(うろつ)く。うーん、中々にアウトだ。8割くらいアウトだ。

 でもなー、厚着したくないんだよなー。地球温暖化現象が叫ばれる昨今、どんどん平均気温が上がっていく世の中でカッチリした服装なんてナンセンスだ。つーかもっと単純に僕の気質的に厚着したくないのである。ほら、重ね着って窮屈じゃん、日々ストレス社会で建前だの礼儀だの常識だのと色々な(しがらみ)を身に付けて生きてる訳なんだからプライベート空間でくらい開放的で居たいのである。え? 食堂(ここ)はプライベート空間じゃない? そんなー。

 

 

「そう…ですか? 別にこれくらい構わないと思いますけど…」

 

 と云う事ですっとぼけてやる事にした。

 女子校育ちでその辺の感覚判ってないお嬢様ムーヴでゴリ押ししてやるぜ!

 

「いやいや不味いってっ。流石にそれは、うん…」

「ですけど下着(ブラ)もちゃんと着けてますし……確かにラフですが、最低限隠さなきゃならない所は隠れてますよ?」

 

 そう。不思議なもので、この世界では男性も女性もブラを着けるのが一般的なのである。女性は前世と同じく乳房を支える為、そして男性は胸を隠す為。この辺の変化は中々に面白い。単純に前世と逆になるだけなら女性はブラを着けなくなりそうなもんだが、身体的に(体の構造)は変わっていない以上、それに合わせてこういう風に文化が変動している部分も多々ある。

 因みに僕は専らチューブトップを使用している。肩紐有りのブラは前世の価値観を引き摺っている僕からするとちょっと女性的に過ぎる様に思えて抵抗があるからだ。その点チューブトップは見た目シンプルなインナーだし着心地も結構楽だし。うーんチューブトップ最高。

 

「ぶ、ブラって──」

「うーん……何と言いますか…開き直る様で申し訳ありませんが、女性が男性を()()()()()で見てしまうのは、仕方の無い事…ですよね?」

「ぅえっ、え、あー…まあー……うん

「ふふ、なら、女の子のそういう所も理解して受け入れていかなきゃいけないと、僕は思ってますから。このIS学園への入学が決まった時から、そういう心構えで此処に来ていますので。僕は飽くまで自然体に振る舞うだけです」

 

 

 躊躇無くセンシティブワードを言い放たれた事で顔を(あか)くして戸惑っている相川さんに、僕は有無を言わさず追撃を入れた後、再び食事を始めた。言いたい事だけ言って、もうその話題については決着つきましたよーと勝手に態度で示してしまう。

 それを受けて相川さんも、イマイチ納得いってないけど本人が気にしてないのにとやかく言うのもなー、と云った感じの表情を暫く浮かべていたが、やがておずおずと、僕との間に椅子一つの間を空けて座った。

 

 食事中、当然会話は無かった。なんなら視線も向けてくれない。

 うーむ、この空いた一人分のスペースが今の僕と相川さんの心的距離か。さっきのは、うん…まぁちょっと褒められた対応じゃなかったからなー。でもなー、マージーでーなー、厚着は嫌なんだよなー厚着はー。

 

 ───とか思ってたのだが……いやこれ、違うな。

 視線も向けてくれないっつったけど…正確には、たまーーにチラッと、此方を盗み見て来ている。その視線に負の感情は乗っていない。純粋な下心のみがあった。

 単純に大胆な格好した男子(女子)の隣に座るのを恥ずかしがってる思春期女子(男子)だこれ。

 

 そしてそんな相川さんとは対照的に、食堂に居る女子のほぼ全員が割と頻繁に此方をチラチラと盗み見て来る。いやなんか昨日と比べても向けられる視線多いなと感じてはいたのだが、そういう事だったのね。うんうんそりゃ見たいよねーうんうん。

 

 服装云々に関しての匙加減は未だにしっくりきてない僕なのです。変わった所は在るには在るのだが、基本的には前世と同じなので感覚を忘れがちになってしまうのだ。具体例としては、この世界の女性も普通にスカート履くとかそういうのね。

 

 ぶっちゃけ貞操観念的にアカンっていうのは解ってるんだけど、マジで授業時間外はゆるーい私服で居たいという気持ちが強い。つーか服装に関しては、なんか、あの、あれだ、強制されたくないのだ。理屈抜きでなんか嫌だ。人間そういうこだわり、誰でもあるやろ?*1

 

 まーいいじゃんいいじゃん? 僕は別に見られても構わんし、君等だって女子(男子)の無防備な格好拝み放題な訳やし。誰も不幸にならない、文字通りwinwinと云う奴だ。はいオーケー、終了、閉廷。

 

 

 

 

 

 そんな感じで僕は前世から受け継がれる図太さとマイペースっぷりを発揮。ふつーに食事を行い、ふつーに食堂から去ったのだった。

 

 ───余談だが、後日より、早朝に食堂を利用する生徒が爆発的に増えた事で遅刻者が激減したと先生方が喜んでいたそうな。ほら、やっぱりwinwinじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

「おはよう諸君。早速だが、今日は授業の前にクラス代表を決めようと思う」

 

 

 IS学園登校二日目、朝のHRは織斑先生の唐突な御言葉から始まった。

 そう言えばこんなイベントもあったな、と今更ながらに思い出す。昨日は普通に授業受けて真面目に勉強頑張ってと、滅茶苦茶健全に一学生として過ごしたから完全に頭からすっぽ抜けていた。*2

 でもあれ? これって初日のイベントじゃなかったっけ? 駄目だねーほんとうろ覚え。まあ一日ずれたからってどうもしないと思うけど。

 

「クラス代表とは、今後行われるクラス代表トーナメントと云った行事に参加、及び生徒会の指示の下、クラスに関する様々な雑務を行ったりと、文字通りクラスの代表として動く役だ。まあ早い話がクラス委員と思って構わん。自薦他薦は問わん、迅速に、このHR中に決めるぞ」

 

 そんな織斑先生の言葉でざわつき出す教室。皆が隣の人とどーする誰にすると話し出す中、僕は黙って振り向き教室全体を俯瞰していた。

 やー、まー、ねえ? 原作の展開的に…いや、原作を知らなかったとしても大体予想は付く。こういう時はクラス内で目立っている人、若しくは極端に引っ込み思案で流されやすい人が人身御供にされるものだ。

 

 

「はいっ! 朔晦君が良いと思います!」

「私も賛成でーす!」

「私も!」

「はいはい私も私も!」

「やっぱ折角だから貴重な男子にやって欲しいよねー」

「うんうん、花があるって奴」

 

 そして案の定、今回は前者だった。ワンチャン男子に押し付けるのは可哀想だよーとかそういう意見が出てこないかと密かに期待していたが駄目そうですねこれは。

 

「えー私は織斑君の方がいいと思うなー」

「うん、私も。なんたって千冬様の弟だし!」

「あ、そっか! 思わぬ才能とか眠っちゃってたりして!」

「うわーどっちも捨てがたいじゃん!」

「は、えっちょ!? 俺!?」

 

 とか思ってたらやっぱり一夏の方にも矛先が向き出した。と云うか既に僕か一夏の二択に絞られたみたいな空気になっている。怖いわー。こういうのから(いじ)めって始まるんですよ君達全く。

 一夏も一夏で急に自分の名前を挙げられた事に慌てている。まあ自分の事で手一杯なのに委員長の仕事とかやってらんないよね。

 

 さて、僕はどうしたい? どうするべきか?

 

 

 

 

 

『休まずに頑張り続けて遂に掴めそうだった私の…私だけの……! なのに何でこうなる訳!? 何で、何で私ばっかり!! ……なんで』

 

『あんた、あんたなんか……あんたみたいな顔が良いだけの男にっ……』

 

『幾ら努力してもお姉ちゃんには追い付けなくて、専用機までお預けされて、なんかもう何もかも嫌になっちゃってたけど…君がそう言ってくれたから、少しだけ、自分の事が好きになれた』

 

『だから、頑張るね。あと少し、もう少し、って…一歩ずつ一歩ずつ進んでみる…本物のヒーローに、成ってみせるから』

 

 

 

 

 

 ─────まあ、昨日の内に、既に決めた様なものだけどね。

 

 

「はい、織斑先生」

「何だ朔晦」

「僕がやります。推薦を受け入れ……いえ、立候補します。僕にクラス代表をさせてください」

 

 僕は挙手をして織斑先生に自らの意思を表明する。すると一夏や先生方だけじゃなくクラスの皆が驚きの表情を浮かべた。いや推薦したの君等やろがい!

 

「いいのか。先程も述べたが、クラス代表は様々な雑務も仕事に含まれる。只でさえ学習の遅れているお前に取っては無視出来ん負担になるぞ」

「覚悟の上です。───織斑先生、クラス代表として参加するトーナメントと云うのは、ISを用いた試合、という認識で良いのですよね」

「ああ、無論だ」

「でしたら、是非。実戦に優る経験は無いと言いますし、他のクラス代表の方々との勝負はIS操縦者としての経験を積む上で、この上無い機会だと考えます。搭乗時間の多寡(たか)が能力に直結するISなら尚の事。雑務に関してはこれ等のメリットを得る為の必要経費と割り切ります。一人前のIS操縦者に成る為にも───皆さん、どうか、僕をクラス代表として認めていただけませんか」

 

 

 そう言って僕は席から立つと振り向いてクラスの皆に頭を下げた。

 

 今の一連の言葉は紛れも無い僕の本心だった。

 一端のIS乗りに成る。昨日簪と接した事で芽生えた目標、これを成す為の糧としてクラス代表の立場は実に有用だと思ったのだ。

 ISに限らず、何事も一つ一つ努力を積み重ねていくしか無い。数段跳ばしで一気に実力を伸ばしていくなんてのは極一部の天才だけに許された所業である。だったら少しでも効率的に積み上げられる環境を構築するか、自ら赴くのが重要だ。こういうのは積極的に動いた者勝ちなのよ。

 

 原作(本来)ならこれは主人公である一夏の役目(ポジション)だ。クラス代表として、唯一の男性操縦者として努力し、ヒロイン達と戦いの中で関係を深め、仲間と力を合わせて敵を打倒する。彼がクラス代表に就く事でインフィニット・ストラトスと云う物語の軸は出来ているのだから。断じて異物(オリ主)が成り代わっていいモノではないだろう。

 でもまあ、そこは開き直った。と云うか(はな)っから原作遵守とか大して気にして無かったと思う僕。此処が大人気ライトノベルを元にした世界だってのは解ってるけど、息をして、二足で立って、目に映る景色の全てが此処は現実だと僕に感じさせてくれるから。

 既定路線とか知らん。いちいち気にしてたら切りが無い。僕は僕として、一個の生命、一人の人間として背筋伸ばして生きていくだけだ。

 それで調子乗り過ぎた結果しっぺ返し喰らってくたばってしまったのなら、それはそれでしょうがない。きっと今頃、あの世(向こう)で待ってるだろう妻に盛大に笑ってもらうさ。

 

 

 そんな感じで頭を下げ続けていると、教室の雰囲気が変わる。浮わついた気配が鳴りを潜め、皆が僕の懇望(こんもう)を真摯に受け止めてくれていた。やんちゃな女子高生ではなく、難関校に合格したエリート学生の顔が出てきている。

 そうして、今にも承認の拍手が起ころうかとなった時。

 

 

 

「───お待ちください」

 

 

 空気を切り裂いて。高く、凛とした声が教室に響き渡った。

 

 

「異義有り、ですわ。───朔晦涼さん、私は貴方を認めません。貴方がクラス代表になる事に反対致します」

 

 

 ───来るかな? と、半ば覚悟と云うか予想はしていたが、本当に来たか。

 

 セシリア・オルコットさん。

 原作に於ける二人目のヒロイン。イギリスの、代表候補生。及び、専用機持ち。

 今の僕とは文字通り比べ物にならない、エリートIS操縦者だ。

 

 

「──理由をお聞きしても宜しいですか? オルコットさん」

「あら、確り名前を覚えておいでなのですね」

「勿論です…いえ、寧ろ知らない方がおかしいでしょう。イギリスの代表候補生にして専用機持ちの、入試首席様なんですから」

 

 いやほんとな。この世界で育って分かった事なのだが、原作一夏君なんでこれで彼女の事知らんかったん? ってくらいメディア露出多いからねセシリアさん。

 とか思ってたら「俺知らないけど…」なんて言葉が隣から聞こえて来た。サマータスお前もか。って云うか声でけーよ馬鹿。何でここぞという時に限って空気読めねーんだ君。

 

 

「ふふ、御上手ですわね……質問にお答えしましょう。理由はズバリ、()()()()()()()です」

 

 

 ───セシリアさんの言葉に教室の空気がピリついた。何処(どこ)か咎める色を込めた視線を向けるクラスメイトが多数。特に同じ男である一夏と──僕の隣の席に座る谷本さんは露骨に顔を顰めてセシリアさんを見ていた。

 

 原作に於いて。ISは女性にしか動かせない、故に動かせない男性より女性の方が偉いと云う、女尊男卑の風潮が世界全体に蔓延しているという説明があったが……この世界では、少し違う。

 何度も言うがこの世界の女性達のポジションは前世での男性のそれである。故に警察機構や救急隊員、自衛隊等の体を張った…悪く言えば危険で物騒な仕事に就く人は当然女性の方が割合が多い。他国の軍人さんもそうだ。

 なのでISが──既存の常識を覆す超兵器が登場しても、元々体を張るのは女の役目だと云う感じで極端に風潮が変わるなんて事は無かった。

 

 ───そう、()()()()

 

 逆に言うと、少しは変わった。変わってしまった。

 電車内での痴女行為の増加、男性に対する強引な軟派行為、そして政界や企業での男性議員、男性役員の進出減少等。

 露骨に男を下に見る様な言動をする者は滅多に居ないが、それでも、()()()()()()()()()()()に世間が染まってしまったのである。

 内心で男性の事をナチュラルに下に見ていると云うか、男性も男性でそれに強く反発出来ず萎縮してしまっている感じで。男女平等を掲げていた社会の在り方が、一昔前のそれに逆戻りしてしまっているのだ。

 無論、全ての女性がそうではない。大体の人が男性の事を尊重して、飽くまで平等に在ろうとしてくれているのだが、残念ながら世の中一部の馬鹿の方が声がでかいのが常な訳で。ISの登場によって生じた社会の歪みは、決して派手では無く、然れど無視出来ない問題となって嫌な空気を漂わせている。

 

 そして、将来の国家代表の候補足る自身がそんな発言を、況してや世界で二人しか居ない男性操縦者に対して行ったら()れ程問題になるか、セシリアさんが理解していない筈は無かった。現に今の発言でクラスメイトの大半がセシリアさんに悪感情を抱いてしまっている。

 僕はセシリアさんの真意を計る為、言葉を重ねた。

 

「…それは、どういう意味…いえ、()()()()()()の発言なのでしょう。もう少し詳細に教えて頂けませんか」

「成る程、頭の回る方ですのね。加えて冷静…言葉の表のみを受け取って軽率に噛み付いて来ない所も評価出来ますわ」

 

 此方を値踏みするセシリアさんの言葉に僕は取り敢えずニコリと愛想笑いを返しておく。褒めてくれた事への謝礼と、此方の質問に答えろという無言の催促を表情に乗せた形だ。

 そんな笑顔の意味には()()()()()()()()()()様で、セシリアさんは少し間を空けてから再度言葉を紡いだ。

 

「朔晦さん、貴方がIS学園へ入学される以前に受けた週刊誌のインタビュー、私も拝見させて頂きましたわ。その他の雑誌やテレビのニュース、ラジオ等も…織斑さんへの取材が出来なかったのも相まってでしょう、ありとあらゆるメディアが(こぞ)って貴方の事を取り上げた……───如何でしたか? ()()()()()()()()()()()()()()()()というのは」

 

 ───うぼあー。そこを振って来たかー。僕的にはもうあのインタビュー(もと)いグラビアは軽く黒歴史になってるんだが。まあ聞かれた以上は素直に答えておく。

 

「ええ……勿論、凄く気分が良かったですよ。承認欲求と言いますか……お恥ずかしい話ですが、眠っていた自尊心が大いに刺激された経験でしたね」

 

 僕の如何にも俗っぽい、赤裸々なぶっちゃけにクラスの皆はぎょっと目を剥くが、セシリアさんは優雅に微笑んだまま会話を続ける。

 

「ふふ、素直ですね。ええ、ええ、そうでしょうとも。アイドルの如く扱われて、戸惑いはすれど気分を悪くする方はそう居ませんわ。そうやって大切に扱われたからこそ……貴方、気が大きくなってしまっているのではなくて?」

 

 

 セシリアさんの目が、据わった。

 

「男性とは、花です。外見(そとみ)が美しければより優しくされ、そして愛でられる。中身がどの様であれ、最低限の体裁を保ててさえいるのなら、然程重要視はされませんわ……そう、世間が貴方に求めているのは、『IS乗りとしての実力』ではなく『男としての美しさと話題性』……貴方は愛玩の対象なのです。先程のクラスの皆さんの発言がそれを物語っていますわ」

 

 セシリアさんの指摘に幾人かのクラスメイトがバツの悪そうな顔をする。特に真っ先に僕の名前を挙げた鏡さんは表情を曇らせていた。うーん彼女クラスに一人は居るお調子者ポジだからなぁ。

 

「今のままお飾りで居るなら周りは貴方に優しいでしょう。ですが、IS操縦者として高みに登ろうとした時、途端に周囲の目は厳しいものになります。男が女より先んじよう等生意気な、と……ああ、それだけではありませんわね。何れ程の功績を打ち立て結果を残そうと、それ等より貴方の容姿ばかりが注目されて実力は正当に評価して貰えない、といった事態が必ず、必ず起こりますわ。男性が女社会に乗り出すとはそういう事なのです。只でさえISとは難しいモノなのに……一人前のIS操縦者に成る為と先程仰いましたが…貴方に、それ等の悪意全てと戦って乗り越える覚悟がお有りでして?」

 

 

 ───実に。実に現実を直視した、的を射た意見だと思った。いや全く以てその通り。

 今セシリアさんが、()()()()()()()()()()()()()事は、これから先必ず起こる。それ等全てに心を折られる事無く突き進まねば一端のIS操縦者には──いや、一端じゃ駄目だ。それじゃあセシリアさんの言った通り男としての話題性ばかりが注目されてしまう。ならもっと、もっと上を、有象無象の戯れ言なんて一笑に付せる程のIS乗りになる必要が有る。

 

 僕に、それが成せるか?

 

 

「判りません」

 

 

 そう、まだ判らない。僕はまだ何も解っていないのだから、こう答えるしかない。

 

「僕はこれ迄、ISに全く触れる事無く生きて来ました。IS操縦者としての現実が如何に厳しいものなのか…何も知りません。そんな有り様で覚悟を口にする程、滑稽な事も無いと思います。───でも、僕が、()()()()()()(こころざし)を持っているのは確かです」

 

 まあ、結局の所、そうなる。怖い、知らない、分からないで手を出す事を躊躇していたら、何時まで経っても人は何も出来ないままだ。

 開き直りと云う名の勇気を持つ事しか、今の僕には出来ない。覚悟なんてのはその場その場で現実を見て決めていくしかない。

 

「自分の心に嘘を吐いたら、人に生まれてきた意味が無いでしょう? (そび)え立つ壁の高さだけを見て、登ろうともしていないのに諦めるなんて事、僕には出来ません。実際に触れてみて、その時々で乗り越えられるよう努力する。それしか無いと僕は考えます」

 

 どれだけ焦っても嘆いても、時間は止まってくれないし山が低くなってくれる訳でもないから。マイペースに動いて休んで動いてを繰り返すしかない。

 疲れたら兎に角休め、元気になってからまた頑張れ。前世の父の教えはこういう意味でもあると僕は勝手に解釈している。

 

「何もかも未知数の僕に、どうかチャンスを頂けませんか」

 

 そう言って再び頭を下げた。これが今の僕に出来る精一杯。果たして、セシリアさんの反応は。

 

 

「駄目ですわね」

 

 駄目らしい。オーノー。

 

「その真っ直ぐな姿勢は評価出来ますが、それだけでは足りませんわ。人間、口先だけなら何とでも言えます。後からやっぱり自分には無理でしたー、なんて…この私の所属する団体(クラス)の代表にあっさり折れてもらっては困りますもの」

「では、どうすれば貴女のお眼鏡に(かな)う男に成れますか」

「単純な話ですわ。貴方の覚悟の程を、実際に目に見える形で示して頂きたいのです」

 

 

 ん? それってつまり──。

 

 

「即ち───決闘ですわ」

 

 

 やっぱりかーーい。

 いやもう突っ掛かられた時点で何と無く予感はしてたがマジで来ちゃったよこのイベント。

 ごめん一夏。僕本格的に君のお株奪う事になりそう。テンプレオリ主が腹を斬ってお詫びします。嘘だけど。

 

「私とISで闘いなさい。その闘いの中で、貴方の事を見定めさせて頂きます」

 

 真っ直ぐに僕を見詰めてそう言い放つセシリアさん。

 ───答えねばなるまい。文字通り、男が廃るって奴だ。

 

「分かりました。その決闘、お受けします」

「ふふ、臆しませんのね。これは、存外、期待してもよろしいのかしら」

「さあ? それも判りませんが……少なくとも、専用機持ちの肩書きに恥じない動きはしたいですね」

 

 そう言って僕は待機形態IS(首輪)の鎖を弄び、ピィンと、弾いた。

 

 

「話は纏まった様だな」

 

 と、そこで。腕を組んで成り行きを見守っていた織斑先生が声を掛けてくる。

 

「山田先生、アリーナで纏まった時間が取れるのは何時になりますか」

「はいっ、ちょっと待ってくださいね…………最短で使用可能なのは、第2アリーナ。来週の月曜日の午前中です」

 

 タブレットを操作してアリーナの使用予定を確認したのだろう山田先生の言葉に織斑先生が頷いた。

 

「よし、では試合は六日後の午前中、第2アリーナにて行う。異論は無いな」

「承りました」

「はい」

 

 

 

 と云う事でセシリアさんとの決闘イベントは(オリ主)(こな)す事になりました。

 って云うか何気に準備期間が原作より一日短くなってる件について。どうって事あったわ()。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
なお、ISスーツ

*2
なお、放課後タイツ脱がしイベント




いやちゃうねん朔晦君。君はあべこべコメディモノの主人公であって学園青春バトルモノの主人公じゃねーのよ()。

マジでキャラが悉く作者の言う事聞かねえっ!!
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