トニートニー・ワイ「だっておれは……飽き性だ!!! 語彙力だって…文章構成力だって無いし……!! 遅筆だし…………!!! そりゃ…連載は続けていきたいけどさ…!! おれはそもそも原作全巻読んですらいないんだぞ!! 社畜だし…!!! おれなんかじゃ読者を楽しませられる二次創作者にはなれねェよ!!! …だから…お礼を言いにきたんだ!!!
今まで読んでくれて、ありがとう…。
おれはここでエタるけど…いつかまたさ…気が向いたら読みに──」
モンキー・D・ワイ「うるせェ!!! 書こう!!!!」
トニートニー・ワイ「お゛お゛!!!!」
つーことでお恥ずかしながら何とか生還しました。2年振りとかシャボンディ諸島気取りかバッキャロー()
「───ごめんなさい、お待たせしましたっ」
時刻は既に17時半ちょい過ぎ。
たった今、簪達との待ち合わせ場所であるIS学園第2アリーナ、その入り口に僕は漸く辿り着く事が出来た。
先行してくれていた一夏、コーチを担当してくれる簪と如月先輩に加え、一夏と同じく僕の訓練の見学を申し出た箒さんの計四人が既に揃った状態で僕を待ってくれていた。
指導を受ける本人がドンケツという一番アカンパターンになってしまった事を認識した僕は直ぐ様皆に駆け寄って頭を下げる。
「おっす、来たな涼。思ってたよりちょっと遅かったな。千冬姉の話が長引いたのか?」
「ううん、違う。ちょっと思い出した事があったから自室に寄っててさ、その分ロスしちゃったんだ」
待たされていたにも関わらず、何等機嫌を損ねた様子も無く話し掛けてくれる一夏に内心で感謝しつつ、僕は遅れた理由を説明した。
いやほんと、もうちょい早く来れる筈だったのだが、先述の通り、織斑先生と別れた後、急遽思い出した…と言うより思い至った事があったので、先に寮の自室に寄っていたのだ。
何にせよ、補習の時間も合わせると大分待たせてしまった事には変わり無い。簪と如月先輩、箒さんの方に向き直り再度頭を下げる。
「申し訳有りません。指導を受ける立場でありながら一番遅くなってしまうなんて。弁明のしようが有りません」
「ううん、補習が有るのは事前に聞いてたから。そんなに待ってないよ」
「そーそー。私も此処に着いたの、ほんの20分前くらいだし。寧ろ雑談してる分には丁度いいくらいだったかも?」
そう言いながら如月先輩は手に持った缶ジュースを揺らして軽く笑ってくれた。簪も淡々とした口調で本当に気にしていないと示してくれる。
「あー、って云うか、寧ろ
───そう言って如月先輩は本当に申し訳なさそうに謝ってくれた。
マジかよ……教えを請う側の人間が時間に遅れて来るとかめっちゃ舐め腐った事してしまったと云うのに、あっさりと何でも無い事の様に許してくれるどころか自分の方に至らない所があったと謝罪までしてくれるなんて…。
え、もう、ヤバくね? 天使じゃねこの人。ガチのガチで惚れそう。
「いえいえいえっ、そんな、如月先輩が謝られる事じゃ」
「いやいや、謝る事だよ。ほら、此処って観客者席とか管制室とか整備室、果てはピットにグラウンド…それぞれに繋がる通路の分岐が多過ぎて分かりにくかったでしょ?」
「それは、はい、確かに」
如月先輩が
いや、限られた土地面積の中に色々と重要施設ぶち込まなきゃいけない大変さが有るってのは理解出来るんだが、もーちょいどうにかならんかったんかと文句垂れたくなるくらいには一見さんに優しくないレベルなのだ。
「私も入学したての頃にこの
「それを言ったら、僕もそうです。
如月先輩に必要以上に自身を責めて欲しくない一心で、僕はそう言葉を紡ぐ。
実際、これくらいの
あーやっちゃったなー、まあ次は気を付けようどんまいどんまい。人生そんくらいで丁度良いのよ。
「んっふふ、ありがとありがと。朔晦君は真面目な上に優しいのね」
「いえ、これくらいは普通ですよ。それを言ったら、如月先輩の方がよっぽど真面目で優しい、素敵な方です」
僕がそう言うと如月先輩は僅かに目を
───ん? 何か……あれ、ひょっとして、よいしょし過ぎた感じ? え、なんか口説きにいった感じになっちゃってた?
「も゛、ん゛ん゛っ! ……もうっ、口も上手いとか流石ね朔晦君は。でも、あんまり軽はずみにそういう事言っちゃ駄目よ? 言った本人は只の社交辞令のつもりでも、女は直ぐ本気にしちゃうんだから。特にこの学園の生徒なんて男の子に対して免疫無い娘ばっかりだし」
「ぁ…はい、気を付けます」
一瞬
───いや、でも。
「社交辞令じゃないんだけどな」
今のは正真正銘僕の本音だったのに。如月先輩の発言に、独り言のつもりで小さく反論する。
だが、どうやら近くに居た簪には聞こえていた様で、『お前そういうところやぞ』と言わんばかりのジト目を喰らった。*1
アカン。昼休みに引き続いての失態、このままでは簪の僕に対する表情が
……うん、ちょっと想像してみたけどそれでも可愛いわ。すげーぜ簪!
「ま、まあ兎に角、そっちの事情は分かってたし、此方も先輩としてのフォローが足りてなかった訳だし。喧嘩両成敗…はちょっと違うけど、お互い様って事にしときましょっか」
「そう言って頂けるのは有難いですけど…そもそも此方は無償で教えを受ける側です。お互い様で済ませてしまうには流石に…」
「そんなに
「えぇ…いやそれはそれでどうなんですか先輩」
「うん…友達は選んだ方がいいと思います」
「大丈夫よ、ちゃんと良い所も一杯ある娘達だもの」
何と無く交友関係の不穏さを漂わせる如月先輩の発言に一夏と簪が突っ込む。その、昼休みの時には確かに在った壁をまるで感じさせない軽いやり取りから、大分打ち解ける事が出来たのだと解った。どうやら待っている間の雑談が随分と弾んだらしい。
いや、でも……一夏は昼休みの時、あからさまに先輩を警戒していたし、自分から仲良くなる為に話し掛けにいくとは考えづらい。簪も内向的な性格だからこれまた自分から積極的に話し掛けるとは思えない……となると、これだけ打ち解けられたのは
やっぱ凄いなー。昼休みの時も思ったけど、なんか一種のカリスマ性を有してるよね如月先輩って。……ん? 待てよ、如月先輩の言葉が本当なら雑談していた時間はほんの20分程度なんだよな。それでここまで仲良くなれるって……え、冗談抜きで先輩凄くね? コミュ力の化身じゃねこれ。
───とまあ、個人的な感嘆はさておき。
当人達が軽く許してくれたとは云え、それに甘えて当の僕がこの件を流してしまう訳にはいかない。
お詫びはきちんとしなければ。誠意って何かね? って話である。
「…分かりました。この場は一先ず、そういう事で。ですけど、如月先輩の、御友人との普段のやり取りがどうであれ、僕が教えを請う立場でありながら、指導してくださる御二人を待たせてしまったのは事実です。今は何も用意が有りませんが、
「え……えーっと、いやいやほんとそんな気にしなくても……」
僕の謝罪の念押し、と云うか押し売りに如月先輩が怯んだ様子を見せる。今まで僕みたいなタイプの人間と関わった事が無かったのだろうか。まあ確かに、十代半ばでここまで畏まった丁寧な、悪く言えば堅物染みた頑固な対応をしてくる
だがこの場を退く気は無い。貸し借りはきっちり精算しろ、前世の父の教えシリーズの一つである故に。
「ありがとうございます。ですけど、相手の寛大さに甘えてばかりいては、
僕は如月先輩の目を真っ直ぐ見据えて己の信条を告げる。
それを受けた如月先輩は呆然と、感心した様に口を開き───そんな僕等を横から見ていた簪は、まーーたやってるよこいつ、みたいなジト目を寄越してくれた。本日4発目の直撃弾である。*2もう簪の中での僕の株価は大暴落やんねこれ。
「……昼休みの時も、貴方の話に聞き耳立ててて思ったんだけどさ。朔晦君って、凄い良い子なんだね」
ふっと肩の力を抜いて朗らかに笑いながら、如月先輩はそう言ってくれた。いや、それ程でもないですよ。いやほんとマジで。
実際、特に誰にも迷惑掛かってないなと判断した時は基本すっとぼけるしね僕。根が真面目なのは確かだが、同時に図太いのも本当である。
「ん、オーケー分かった分かったっ。えーっと、それじゃーねー……今度の日曜日、デートでもしてもらっちゃおっかなー、なーんて──」
「分かりました、いいですよ」
「──へ、え……え!? な、ちょ、え……え、本気で、言ってる…? って云うか、意味解ってる…?」
「はい、勿論。楽しんで頂けるように頑張りますね」
カラカラッとした調子で、半ば冗談めかした提案をしてきた先輩にノータイムで了承の返事を返す。僕に云わせれば、如月先輩みたいな年上美人お姉さんからデートに誘われてOKしない訳が無いんだが、向こうとしては予想外だったのだろう。またもや目を白黒させて狼狽えている。
自分で言うのも何だが、世界にたった二人しか存在しない男性IS適正者。その片割れである
そりゃ狼狽えるのも仕方無いだろう。余りにも都合の良過ぎる展開だ。一体前世でどれだけ徳を積んだのかって話である。まあ如月先輩は素でそれくらいの徳は積んでそうだけどね。
「あ、いや、待って。やっぱ無しっ! ほら、決闘って来週の月曜日にやるんでしょ? だったら前日にそんな、呑気にデートなんてしてる暇無いし……うん、それに何より、やっぱそんな軽い気持ちでデートOKするってのは良くない──」
「でしたら、デートは来週の日曜日に持ち越しましょう。───それと、僕は決して軽い気持ちでデートのお誘いを了承した訳ではありませんよ。先輩として後輩に力を貸してあげたい…そんな、打算無しの真っ直ぐな優しさを示してくださった、如月先輩からのお誘いだから受けたんです」
「え、あ…」
「ですから、デート。楽しみにしてますね」
「──…………えーーっと………はい、分かりました…」
うーむ、普段の大人の余裕ってものを感じさせる
「おい、おいっ、涼っ」
「ん? どうしたの一夏」
「どうしたもこうしたもあるかよ。お前、そんなあっさりデートOKするっておかしいだろっ」
如月先輩の可愛らしさを内心で存分に堪能していると、斜め後ろから一夏が耳打ちしてきた。
耳打ち故、声のボリュームこそ小さいが語調自体は中々に激しいもの。これは、僕の身の心配と、僕の行動に対する
「大丈夫だよ。一夏も、もう解ってるでしょ? 如月先輩なら早々酷い事にはならないよ」
「馬鹿っ、お前の認識は甘過ぎる。女ってのはな、普段がどれだけ良い人でもいざ
そう眉を
意外だな…未だ高校生の身で、異性に対する理解度がこれ程迄に高いとは。──いや、千冬さんからその辺口酸っぱく教えられているのだとしたら納得出来るな。
「その時はその時さ。受け入れるか、拒絶するか、ちゃんと考える───まあ正直、如月先輩に
そう言った僕に対し一夏はポカーンとした間抜け面を晒した。心做しか背後に宇宙を背負っている様に見える。
完全に停止した同性の友人に僕はふっ、と息を
「恋愛ってものは沢山するべきだよ。普段どれだけ良い人でも、いざ付き合ってみたら全然理想と違ったとか自分とは合わないって感じたとか、そんな話よく聞くでしょ? やっぱり、人生に於いて経験は重要なものだから。一夏みたいに貞操観念を確り持つ事は勿論大切だけど、それで異性を徹底的に遠ざけてたら
先程の一夏の台詞を引用しながら、自身の価値観を伝えてみる。
僕だって前世では初恋の人と結婚出来た訳じゃない。生涯を共にした妻は、通算3人目の恋人だった。その前に付き合った女性二人とはなんやかんやで破局している。
人間何事も最初は未経験者、初心者だ。一発で自分にとっての正解を得られる人なんて稀だろう。況してや恋愛は
そう考えると三度目で結婚までいけた僕は結構なラッキーマンだな。まあ相手の親族との付き合いや、産まれた子の子育てとかもあるが、その辺は自分達の努力次第になってくるので除外。
兎にも角にも、恋をする気が有るのなら異性に対しては慎重であると同時に大胆さも必要と云う事だ。
故に、恋愛に於いてチャンスが来たと思ったら、僕としては前進一択なのである。
え、お前男女の付き合いは誠実さが大事とか抜かしてただろって?*3
HAHAHA、何を仰るのかね。特定の誰かと付き合い始めたら、その娘にだけ向き合うに決まっているじゃないか。僕はちゃんと誠実だとも。
だから誰とも付き合っていない現時点では色んな女の子達と積極的に仲良くなりにいっても何も問題ないのさ。何等矛盾はしていないよ君ぃ。*4
「………なあ、そろそろ行かないか。只でさえ時間は押しているのだろう」
如月先輩と一夏が機能不全に陥った事で、なんかぎこちない空気感が流れたが、そんな僕達に対し痺れを切らした様で、ここにきて箒さんが初めて声を上げた。
それに従ったのかどうかは判らないが、誰ともなくアリーナの入り口に向かってぞろぞろと連れ立って行く。
「え、何これほんと、何、脈ありな感じ…? え、イケるの? イッちゃっていいの? いやいやいや待って落ち着きなさい私流石にそれは無いわよまだ知り合って24時間も経ってないってそんな都合の良い展開…」
「どういう事だよ……え、まさか涼ってビッチなのか…? いやでも小中と男子校だったって……え、学外では結構遊んでたとかそういう…?」
「ガードが緩過ぎる…と云うよりカウンターがエグ過ぎる……こんなんじゃ本当に会話した女、
何か僕と箒さん以外の三人がそれぞれぶつぶつ喋りながら歩いている様子はちょっと怖かった。
∵∵∵
そんなこんなで漸く第2アリーナに入場完了である。
いやほんと永かったな。心做しか、此処まで辿り着くのに2年くらい掛かった気がする。そんな訳無いのにね。
決闘に向けた訓練なら、決闘する場所と同じ所で訓練しようと事前に打ち合わせていたが故の集合場所なのだが……ふーーむ、ISでの試合を行う為の場所と言っても、基本的な形は野球や陸上なんかの
僕がアリーナ内を見渡すのと同時、既にアリーナ内で訓練に励んでいた大勢の生徒──時期的に、恐らく全員上級生──のほぼ全員が此方に視線を向けて来た。そりゃこの学園に二人しか居ない男子が纏めて訪れて来たら注目されん方がおかしいわな。
とは云え、今日は此処に動物園のパンダに成りに来た訳ではない。周囲からの視線には特に取り合わず、早速とばかりに如月先輩が声を上げた。
「ごめんなさいね、訓練機の貸し出し申請が間に合ってれば、手取り足取り指導してあげられたんだけど」
そう、一夏と箒さんは言わずもがな、如月先輩も上級生とは云え普通の一般生徒なので専用機持ちではない。そして簪は未だに専用機を受理しておらず、
「いえ、訓練機に関しては仕方ありません。元よりISの絶対数の問題がありますから」
「まあ今日は無理だったけど、今週の日曜日、朔晦君の決闘前日にはギリギリ間に合ってたからさ。そこは安心してよ」
「そうなんですね。あ、でも…貴重な訓練機を使える時間を、僕の指導の為に浪費させてしまってごめんなさい」
「いーっていーって。此方からやるって言い出した事なんだし。それに、
だから気にしないで、と言って朗らかに笑ってくれる如月先輩。はーー好き。
「でも私の申請は間に合わなかった…実技、実際の戦闘を想定した模擬戦は如月先輩に丸投げする事になっちゃいそうですね」
「ん? いや、そこは交互に交代してやれば……ああそっか、代表候補生とは云え、簪さんも新入生だったわね。訓練機に関しては私が借りれた奴をシェアして使えば問題無いわよ」
「え、でも…私が申請した機体じゃないのに、ちゃんと手続きしていない機体に申請者以外が乗って大丈夫なんですか?」
「本来の規則的にはグレーなんだけどねー、実際には先生方も黙認してくれてるのよ。只でさえISの数が少ないのにその辺までガチガチに縛り過ぎると全然供給間に合わなくなっちゃうからさ。だから一度に2機申請して、それを5、6人のグループでシェアして試合形式の実戦訓練を積む、っていうのが
「成る程……」
僕が如月先輩に惚れそうになっている横で、簪と如月先輩はそんな事を話していた。
ほえー、やっぱ暗黙の了解とか、その集団限定の社会性や空気っていうのは何処にでも在るもんなんだね。
「じゃ、時間が勿体無いし、早速やっていこうか」
「はい。御二人共、よろしくお願いします」
「取り敢えず今日は~……先ず歩いて、でその後飛んで、剣振って銃射って…兎にも角にもISに慣れる所から始めよう。色々細かく詰めるのは動作が自然体になってからだね」
「分かりました」
如月先輩の述べた今日の方針に頷く。不自由無く動ける様にならないと技術を身に付ける身に付けない以前の問題だもんな、全く以て道理である。
如月先輩の横で簪もうんうんと頷いているのを確認した僕は───早速とばかりに制服のボタンを外し始めた。
「じゃあ此処から近い
「ぅ、んしょ」
ボタンを全部外し終え、制服の上を脱いだ。
「「「「は?」」」」
脱いだ制服の上着をパパパッとその場で素早く畳んで曲げた脚の上に乗せる。
人前でやるのはちょっと行儀が悪いが、アリーナの地面は普通に土、その辺の
という訳で片足立ちのまま制服の下のインナーもパッと脱ぎ──更にその下に着ておいたISスーツ姿になる。
「ぇ、え」
「ちょっ」
そして一纏めにした上着達を脇に挟んで固定してからズボンのベルトを緩めて、此方もパッと脱いでしまう。
これで今身に付けているのはISスーツのみになった訳だが……やっぱり布面積少ないよなー。さながら陸上選手のセパレート型ユニフォーム…それもどっちかと云うと女性のそれに近いんだよねこれ。
まあISバトルは
ズドゴォンッッ!!!
「わっ!?」
──とか何とか考えていたら割と直ぐ傍からもんのすっごい爆発音が響いた。咄嗟にそちらへ顔を向けるともうもうと土煙が立ち上っている。
え、何だろう、火器武装の暴発とか、なんか事故でも起きた?
そう思って土煙の中に目を凝らすと……10秒程の後、煙が晴れた先にはクレーターの中で折り重なる様に
え、オイこれガチで事故ってね!? アカン、要救助や!
「あ、ちょ、朔晦君っ」
「おい涼っ」
如月先輩と一夏の声に取り合わず、僕は持っていた制服をその場に放り捨てて倒れている二人の女生徒の方に駆けた。
「ぅ、おいっ、フォルテっ、てめっ何してんだ馬鹿っ!」
「こっちの台詞ッスよダリル先輩! 何男子の方見て固まってるんスか! お陰でぶつかっちゃったッスよもーーっ!!」
「アホか!! 男の方に視線向けたまんま突っ込んで来たのはテメーの方だろ! 責任転嫁してんじゃねえ!!」
「模擬戦で相手の方に向かって行って何が悪いんスか! 私の目測では問題無かったのに先輩が馬鹿みたいに棒立ちだから予定してた動きが狂ったんスよ! 責任転嫁はそっちッス!!」
「どの道二人共余所見してたんなら無駄に動かずにその場で静止してた私の方がまだマシじゃねーか! 脇見運転とか将来取り返しの付かねー事故起こすぞテメー!」
「あのっ、大丈夫ですか!?」
クレーターの
ああ、良かった。何か叫び合ってた、って云うか罵り合ってたっぽいし、取り敢えず意識は確りしてるみたいだな。
「え、あ…お、おう」
「何処か怪我は在りませんか?」
「い、いや、問題ねえ。ISを纏ってるんだ、これくらいで怪我なんざする筈もねえ」
「そうですか、良かった」
推定先輩二人の傍にしゃがみこんで怪我の有無を確認する。一人は応答してくれたが、もう一人の方は……なんか顔紅くない? あれ、ほんとに大丈夫かこれ。
御二人の詳しい容態が気になった僕は何が起きたか聞いてみる事にした。
「でも、これくらいとは言いますが、何だか物凄い音でしたよ。一体何が起きたんですか?」
「うぇ!!? ぇ、えーと、あのー……あっ、あれッス! ダリル先輩が君の事盗み見してたせいで事故って──」
「テメー死にてえらしいなフォルテぇっっ!!!」
黒髪の小柄な先輩が事故の詳細を説明しようとするのを遮る様に金髪のグラマラスな先輩が飛び掛かった。そのままギャーギャー大声で喚きながら喧嘩を始めてしまう。
なんだ全然元気だな。本当に何も怪我とか負ってなさそうなのは何よりなのだが……あれ? これどう収拾付けりゃいいの?
「おい涼っ!!」
先輩二人のキャットファイトを呆然と見ている事しか出来なかった僕の背中に、一夏の声が投げ掛けられた。その脇には僕が放り捨てた制服が抱えられている。どうやら拾ってから追い掛けて来てくれたらしい。
僕は友人の呼び掛けに応えてクレーターの外に出た。
「一夏。制服持って来てくれたんだ。ありが──」
「いや、んなこたぁどうでもいいわ!! 何してんだお前!」
───なんか一夏に物凄い形相と勢いで怒鳴られた。え、何、どしたん。
「ぇ、急に叫んでどうしたの」
「どうしたも何もねえよっ! ちょま、おま……っ、ほんとお前さぁ!」
僕に詰め寄りながら片腕を中途半端に広げて、周りを頻りにキョロキョロと見回す一夏。なんか怒ってるって言うより焦ってる感じ。
───あ、そうか。
「あー、ごめんね、いきなり突っ走っちゃって。確かに、ISの装備が暴発したのかもしれない爆心地に生身で向かうのは危険──」
「いや、そっちでも──……無いことは無いがそうじゃねえよ馬鹿!!」
事故現場に何の備えも無く赴いた無茶無謀を叱り付けられているのかと思って謝ったら更に怒鳴られた。中々肺活量凄いね君。
え、ほんとどうしたの? 一夏のテンションについていけず、ヘルプの意を込めて駆け付けてくれた他三人とのアイコンタクトを
如月先輩は気不味そうな表情で俯き気味に顔を背けている…が、眼球だけは
簪は両手で顔を覆ってはいるが、指の隙間からチラチラと…はい再度訂正。チラチラではなく普通にガン見してきている。
そして箒さんに至っては何かに気圧されたかの如く体を仰け反らせてはいるが、顔を逸らす事も手で隠す事もせず、両目を思いっきりかっ
そして何だ何だと周囲に集まってきたアリーナ内の他の先輩方の視線も、クレーターの中の御二人ではなく僕一人にのみ注がれていた。
………え、そういう事?
いや、こんだけ分かりやすいリアクションされたら流石に察するけど……え、でも…えー?
「なんっっっで……何でいきなり服脱いでんだよお前もーー!!」
頭を掻き毟りながら何処か悲痛ささえ感じる声色で一夏は喚いた。
あ、やっぱそういう事なのね。いやでも、それ今更って云うかしょうがないって云うか…僕の中ではもう色々踏ん切り着いた話なんだよね。
「何でって……訓練する為に、
「いや何で更衣室じゃなくて周りに女子が居る外で着替えてんだっつー話だ馬鹿!!」
「だって…此処、IS学園だよ? 去年迄は完全に、って云うか今も殆んどそうだけど、ほぼ女子校じゃん」
「それが何だよ!?」
「男子用の更衣室がまだ無いって事」
「ぇ、あ……」
僕の言い放った一言を聞いた一夏が、さっき迄の勢いを急速に殺して静止してしまった。が、直ぐに
「い、いや待て待て待てっ。そんな事無いだろ!? ほら、あの、えっと…話長過ぎて細かい所は覚えてないけど、確か男子が利用出来る時間帯が各更衣室
その通り。厳密に述べるなら、男子専用更衣室がまだ無いと云うだけで、男子が更衣室を利用出来ない訳ではない。実際使えなかったら普通に問題である。
…のだが、その決まり事に忠実に従えば何も問題は起きないのかと言うと、ちょっと話が変わってきてしまうのである。
「そういう事だよ一夏」
「どういう事だよ」
「今自分で言ったでしょ? 細かい所は覚えてないって。今日でまだ新学期二日目なんだし、たぶん変更された規則の隅から隅まで正確に理解、記憶してる生徒はそんなに多くないよ。下手に
僕の言い分を聞いた一夏は再び静止すると眉根を寄せながら唸り出してしまった。
まあ、そういう事である。
その性質上、絶対的に女子校だったIS学園に急遽男子と云う異物が入り込んだのである。入学したてでまだ校風に馴染んでいない新入生は元より、周りに同性しか居なかった環境で年単位過ごした上級生の方がそれ等の変化に慣れていない筈だ。いくら一日目のHRで周知したと言っても、うっかり決まり事を忘れて動いてしまう人が確実に出てくるだろう。
況してや、男子がやって来てまだ二日目。本来なら新しい環境に慣れるのに精一杯でまだまだ大きな動きは出来ず、周りを窺いながら縮こまっていると考えるのが普通だ。だと云うのに、この短期間で早くもアリーナを利用しISの訓練に励む等、誰も予想していなかった動きだろう。
学園中に僕とセシリアさんの決闘の噂は広がっている様だが、そういう噂話に興味の無い人だって一定数は居るだろうし。そしてそういうマイペースな人の中には自分の世界に閉じ籠って人の話を碌に聞かない性質の人もこれまた一定数は居るもので。そんな人が何も考えず更衣室にやって来て、間の悪い事に僕が
───みたいな感じで、規則だから規則通りにやりましたー、と思考停止して動いたら、たぶんヤバイ事になると思う訳だ僕は。
悪い予想なんて幾らでも考え付く。少数派な立場である以上、そういうのには常に注意して立ち回らねば。
だからこそアリーナに来る前に寮の自室へ寄ってスーツを下に着込んで来た訳で。
お前昨日の時点ではISスーツを着る事恥ずかしがってなかったっけ?*5 みたいなツッコミが次元を超えて飛んできた気がするが、もうその辺はとっくに開き直った。つーか開き直るしかないじゃんマジで()。
一人前のIS操縦者に成ると決めた以上、どう足掻いても衆人環視でこの格好を晒す羽目になるのは避けられないのだ。ならもう気にするだけ無駄という奴である。
簪とのアブノーマルプレイを乗り越えた今の僕に最早そっち方面で怖いモノは無かった。人これを
「クラス対抗戦とかもあるし、将来的に大勢の人にこの格好を見られる事は変わらないんだから。一々騒いでられないよ」
「………涼、お前の言い分は解った。それでもなあ──」
─────僕の理路整然とした説明(←?)に、それでもと文句(←?)を付けようとした一夏。
その言葉を遮って───簪が、地獄の閻魔の如き絶対零度の声色で僕の名を呼んだ。
余りにも迫力に溢れたその一声に、僕と一夏は
そんな静寂の中、簪はズンズンと歩を進め僕の目の前迄やってくると───
またかよ。いや今回は跪かされる所まではいってないけど、何か簪に首輪引っ張られるのがデイリーノルマみたいになってねーか僕。
「涼の理屈は解った。下手に周りを男女のトラブルに巻き込まない為に敢えて更衣室を避けたのも。今後IS乗りとしてやっていくなら羞恥心なんて持ってられないって事も」
「はい、そうです」
「───だからって周りに異性が大勢居て尚且つ何の遮蔽物も無いグラウンドの真ん中っていう状況下で、急に脱衣するのはどう考えてもおかしいから」
ド正論だった。
「昨日会った時から…って云うかさっき如月先輩も言ってたよね? そうやって軽はずみな事はしちゃ駄目だって。何されても文句は言えないって。そうなったら不幸になるのはお互いなの。加えて貴方は超貴重種の男性IS適正者。変な噂が立ったら一瞬で立場が危うくなる」
「ぁ、はい…」
「貴方は周りの事を考えて動ける優しさを持ってるけど、その結果相手がどうリアクションしてくるかって部分に対する思慮が足りない。今だって、如月先輩が貴方の準備の為にピットを借りに行こうとしてたのに聞いてないし、いきなり男子が目の前で服脱ぎだしたらそりゃ女子はびっくりするに決まってるでしょ事故を回避する為に狭い脇道を避けたところで表通りを時速300kmでかっ飛ばしたら何の意味も無いって判んないねえそもそも最初に貴方の訓練に付き合うって言ったのは私なのに何で私を差し置いて如月先輩とデートする事になってるのおかしいでしょ専用機と云い何で私はここぞという時に美味しい所かっさらわれる運命なの」
「簪、一旦落ち着いて」
至極
僕の制止を聞き入れてくれたのか、俯きながらフーーッ、と空気を吐き出してクールダウンしている様子…なのだが一向に鎖は手放してくれない。そろそろ腰が辛いです簪様。
とか思ってたら顔を上げた簪が再び至近距離で僕の目を覗いてきた。その紅い瞳の中心になんか黒いモノが渦巻いてる気がする。やべぇよやべぇよっ…!
「デートしよっか、涼」
「え? あ、はい……え?」
「来週、如月先輩との予定が入ってるなら、その次、再来週の日曜日に私と出掛けてよ」
「構いませんけど、随分急ですね」
「多少強引にでも、君の在り方…貞操観念は矯正した方がいいって判断した」
そこまで言って一旦言葉を止めた簪は、眼鏡の奥の双眸を細めてから───艶やかに告げた。
「改めて、女の怖さ教えてあげる───今度は、昨日みたいに中断してあげないから」
まさかの第二回戦、開催決定だった。
ひょっとしてこのやり取り、卒業まで続くことになるんか()
簪「ワカラセなきゃ…(使命感)」
おい……なんで13000字以上かけて、訓練描写が無い……?
正確に述べますと、朔晦君は相手の反応を考慮に入れてない訳じゃないですし、地の文からも分かる通りあべこべになってる貞操観念も、異性に対する自身の魅力と価値が何れ程のものかも理解しています。
ですがそれ等を理解して尚、可能な限り誠実であろうという自身の中のルールを貫こうとする頑固さ。二度目の人生故の警戒心と危機感の低さ。更には男として標準装備してる純粋な下心からの積極性。トドメとして普通に天然入ってる等、色んなモンがミックスしてしまっているが故の、ご覧の有り様です。
おい何でこんなクソ傍迷惑な性格になっちまったんだよこのオリ主ぅ!!?
そしてかんちゃんは、もうフォロー云々以前にコイツ自身の貞操観念を矯正しねーとどうしようもねーじゃんと判断してワカラセる方針にシフトしました。間違いなく英断。
頼む、もう君だけがオリ主の暴走を抑制する最後の希望だ()
はーーーーーっ、さんざ放置した挙げ句2年振りの更新がこんな中身スッッカスカとか恥ずかしくないん? 辞めたら二次創作者?
って感じでもう既にモチベは死にかけです。燃費カスか? 長いこと待たせてしまってほんっっとうに申し訳ありません。
次がいつになるかは未定。
書き溜め? そんなものは無いよ()