直接対面し、ヤツはRと名乗った。
早速、強制的に
しばらく展開を眺めた後に《原始生命態ニビル》を落下させ、Rの展開を止めることに成功。
さて、私も同じ【青眼】使いだということを分からせてやろうかしら。
| 《原始生命態ニビル》 効果モンスター 星11/光属性/岩石族/攻3000/守 600 |
| このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。 ①:相手が5体以上のモンスターを召喚・特殊召喚した自分・相手ターンのメインフェイズに発動できる。自分・相手フィールドの表側表示モンスターを可能な限りリリースし、このカードを手札から特殊召喚する。その後、相手フィールドに「原始生命態トークン」(岩石族・光・星11・攻/守?)1体を特殊召喚する。このトークンの攻撃力・守備力は、この効果でリリースしたモンスターの元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値になる。 |
「あなたのフィールドには、今回餌食になった『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』1体と、元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値を持ったトークンが生成される。よってそのトークンの攻撃力は2100ね」
「ぐぬぬぬ…これが無ければ最高の盤面に仕上がるはずだったのに…!」
「…そうかしら?『
「あっ…」
「これがないと『究極融合』の素材となる『
「…か、完全に読まれてる………しかも面と向かって指摘されると恥ずかしいなぁこれ…!」
しかし私にとって、プレイングミスを看破したことによる精神的優位性など、どうでも良かった。
朧げに抱いていた既視感。より鮮明になっていく人物像に対して、より謎が深まっているから。
こいつ…Rが起こす度々のプレイングミスには既視感がある。それも、とても身近な存在で。
ただ、仮にこいつの正体が、仮に
何故こんなことをしてまで、私と相対するのか?
…真の目的が見えてこない。Rの想いが、今の私には分からない。
「…貴方の目的は?」
「急だな!…だがしかし、それは。キミがこの
…逆に精神的優位性を握られた気がする。
ならば強硬手段に出るのも一興かしら。
「そうね…ただ、その保証はどこにもない。となれば…グレン、ここにバイクを出して」
『マジで言ってる?アキルお嬢。相手は星外の魔術師だぞ。そのバイクが仇になる可能性が…』
「いいから。やって頂戴」
『承知。…知らないぞ、俺…』
「なんだ?通信か?…って、おぉ?!」
私の眼の前にバイクを召喚する。"星外の力"を埋め込んだ特製機を。
これで私もRも、"星外の力"モドキを限定的に使えるようになる。
「ッスー…いあ、いあ、ヨグ=ソトース」
星外の存在が作り出し、人が受け継いだ大いなる鉄槌。
眼前の敵を薙ぎ払う偽りの神の拳。
────簡単に言えば、不可視の範囲攻撃。
「っ!?!?」
Rを目掛けて、大型トラックに跳ねられた時くらいに吹っ飛ぶよう程度に威力を制限した<ヨグ=ソトースのこぶし>を打ち込む。
ま、
Rは、我々を取り囲んだドーム状のバリアに
身体を何度もきりもみ回転させながら、時には地面に手を着けて衝撃を殺し、ついには壁に激突…せず、着地する。
「予想が当たったわね。さて…何でこんなことしてるのかしら」
我々を取り囲んだドーム状のバリアを素通りした。
アレは、身内以外を取り囲むバリア。つまり、素通りしたということは身内ということだ。
それに、不意打ちで<ヨグ=ソトースのこぶし>を食らったはずなのに、身のこなしだけで着地する。つまり、人類を超越した身体能力の持ち主。
<ヨグ=ソトースのこぶし>を食らった衝撃で、Rのアバターが剥がれ落ち、本来のアバターが露出する。見覚えしかない紅い瞳。長く紅い髪。
「…っつ…痛ぇぇぇええええ!オイオイ、アタシじゃなきゃ死んでたぞ!?」
『えっ!?ケイト!?何でだ!?何でお前が!?!?』
『なんとなく引っかかっていましたが…ケイトがRの正体でしたか…。ならば、我々と共に行動していたケイトは…?』
グレンと雪奈が各々反応する。
雪奈は実際に
「皆、一応安心して。<ヨグ=ソトースのこぶし>は、死なない程度の威力に抑えたつもりよ。それに、色々ボロを出しすぎよ、ケイト」
「…さすがだぜアキル。ローズ、正体バレちまった。もう上がっていいぞ」
『了解した。ログアウトする』
今までケイトだと思って通信していた者は、ケイトの弟子であるローズだった。
確かに、別行動させることはあったから、入れ替わる隙は大いにあったかもしれない。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。ケイトの目的…本心が私には分からない。
ある時は
ある時は大胆にもSOLテクノロジーに忍び込んで何かを盗む。
そして雪奈や私と
「改めて訊くわ、ケイト。あなたの目的は一体なんなのかしら」
「まあ正体がバレちまった以上、このまま
そうでしょうね。
AIモドキと闘った際にも見受けられた、妙なプレイングミスをする。
そのミスが致命的となって、雪奈に負けた。おそらく、この
目的は達した以上、続ける意味はほぼない。
無意味となったドームバリアを消し、カードを全てデッキに戻す。
「仮の話だぞ?もし仮に、アタシという存在が、お前らの記憶に植え付けられただけの虚像の存在だとしたら、どう反応するかな?って思ってさ」
急に何を言っているのかしら。私たちの記憶に植え付けられた存在?
───繋がらない。ケイトの行動が、我々や
その大事が、我々の記憶と、どう関係しているの?
私にとってのケイト・リードとは、昔からの腐れ縁で、蒼葉家の用心棒のような存在で、大事な親友。
「アキル。お前にとってのケイト・リードは『昔からの腐れ縁で、蒼葉家の用心棒のような存在で、大事な親友』。そうだよな?」
──?
今、私が思い浮かべたケイト・リードという人物に対する評価を、そのまま返した?気味が悪い。
「どうした?アタシは『ケイト・リードに対する評価』を読み上げただけだぜ?」
心拍数が上がっていくのを感じる。
ケイトがいきなり意味分からないことを言い出したからじゃあない。
ケイトの真意が、少し理解できたような気がしたから。
「…まさか」
「じゃあさ、この『ケイト・リード』との関係が嘘だったら?そう思い込まされただけの、造られた記憶だったとしたら?」
「…っ!…ケイト。いつ、私たちの脳に入った?」
『どういうことですか?!私たちが知っているケイトという存在は、虚像であると言いたいのですか!?共に過ごしてきた記憶が、嘘偽りだとでも!?』
雪奈の反応はごもっともだ。そう、ケイトは私たちの大切な仲間。
ヤケ酒したり借金する悪癖はあれど、"星外の力"を悪用するヤツらをしばいてきた、親友。その記憶に嘘偽りはない。
──そう思っていた。さっきまでは。
ならば今、目の前で話しているのは誰なんだ?
「その答えは各々、グレンに訊いた方が良いんじゃねーかな。アタシの語彙力じゃ伝えきれるか怪しいわ」
『おい、ケイト!いきなり意味分からんこと言うなよ!各自の脳なら毎回チェックしてる!仮にこの話が本当だとするなら、お前は一体何なんだよ!』
「グレン…『自身によるメンバーの脳チェック』、それは本当にアンタがやったことなのかな?それも含めて調べ直してみたらどうかな」
『な…っ!?』
各メンバーには、電脳ウィルスの枝が付いていないか、グレンがチェックすることになっている。
だけど。それすらも「植え付けられた偽の記憶」だとするならば話は別。いつ、どのタイミングで埋め込まれたのかは分からないけども。
ただ、虚偽の記憶を植え付けられたことを事実だとするならば、やはり行き着く疑問はこうなる。
目の前の「ケイト・リード」を名乗る人物とは何なのか。「ケイト・リード」の目的は何なのか。どこまでが…植え付けられた偽の記憶なのか。
「まあ…今は色々思考が巡って整理が難しい状態だと思う。だから、アタシは待ってる。この
そう言い放った直後、僅かに視界が乱れる。
目を開けた瞬間、ケイト・リードは視界から消えていた。
だけどこの瞬間、明確に理解できたことがある。
「私の視界を…奪ったな!ケイト!!」
私は「ケイト・リード」によって、視界をジャックされている。
つまり、脳をジャックされている──。
「………」
私は
現実世界では夕立ちが降っているようだ。
「……お嬢様、目立った外傷なく、無事にご帰還されてなによりです。おかえりなさいませ」
クリス。クリス・フォスター。蒼葉家の執事にして、私が愛するクリス。
でも、それは本物か?私が知っているクリスは、植え付けられた偽の記憶ではないのか?
ならば、私の眼前にいるあなたは誰?何の目的でここに居る?
「クリス…いえ、『クリス・フォスター』。…あなたの目的は何?」
「えっ…?」
そう呟き『クリス・フォスター』の不意を突き、後ろを取り、腕を掴む。
このまま私が手を捻り続ければ、この男の腕は折れる。
「ぐっ…!お、お嬢様…!違います!私はここに居ます!!」
「私は『ケイト・リード』に脳をジャックされたことを自覚したわ。戯言は無駄よ。あなたはケイトの計画の何なの?」
「お嬢様!どうか落ち着いてください!私は現実です!」
───この男の感触。紅い瞳、結った長い銀髪。汗。体臭。
そうだ。私の身体が、この全ての要素を愛しいと認識している。私が心から愛している人そのものだ。
「…ごめんなさい、クリス。取り乱したわ」
「…いいえ、大丈夫です。お気持ちお察しします…」
「いえ、ごめんなさい!…クリス!!」
クリスの拘束を解く。そして、華奢だけど、密かに鍛えられた、彼の胸を借りる。
ふと、目頭が熱いことに気づいた。目から涙が零れ落ちていることを認識した。
「私は…彼女のことを親友だと思っていた。でもそれは違った。裏切られたの」
初めてかもしれない。彼に、本当の心情を吐露したのは。
しかし、彼は受け止める。
「私も同じ気持ちです、お嬢様。彼女は…ケイトは、確かに私達の親しい友人です。しかし…お嬢様に対する視界のジャック。到底、許容できるものではありません」
「…一旦、処理班全員と状況を共有・整理してから、また
「…はい、アキルお嬢様。私はいつでも、あなたの傍におりますよ」
彼の腕が、私を包み込む。
私もまた彼を抱きしめ、クリスという存在を再確認する。
夕立ちが止み、強い光が蒼葉邸の窓を差し込んでいる。