ゆめまぼろしに、いきたもの   作:BitterCoffee

3 / 10
LINK VRAINSに発生したバグの『上澄み』。
バグ収集屋(ガベージコレクター)が手を付けられないほどのバグではあるものの、何故手を付けられなかったのか?何故私達に気付かれなかったのか?…様々な疑問が残る。
とはいえ、私達の仕事は『上澄み』の処理。まず目の前のバグを処理することが先決。
私は、対物専門の剣士・不知火雪奈を偵察に向かわせた。


決闘0-3 Conflict

目標(ターゲット)まであと1kmほど…ビルの屋上まで移動しました。肉眼でも確認できるほどに巨大化しています。見た目は…異形の怪物といったところでしょうか。今、視界を共有します』

 

無線越しに雪奈の報告を聞き取り、共有(シェア)された視界から『上澄み』の容姿を確認。

異形の怪物か…確かに。仮想現実(ヴァーチャル)のバグらしい見た目。肉塊に腕と脚が無茶苦茶に接合されたよう。

全長は約2mといったところか。地面を蹴り、這い回り、臭いを嗅ぐ仕草…まるで動物のような動き。

その動きでLINK VRAINSのリソースを貪っているのかしら。

 

『まだこちらには気付いていないようです。どうします?一見、対話できるとは思えませんが』

 

雪奈の位置情報と共有された視界…雪奈はビルの屋上にいる。

『上澄み』は、予玖土町を模した街中にある公園にいるが…アレは砂浴びをしているのか?

周囲に人間(アバター)は感知できない。『上澄み』から逃げたか、食われたか。

何にせよ、雪奈に切り込ませるチャンスではある。

 

「そうね。待っていてもLINK VRAINSのリソースを食い散らかすだけかも。切り込んでもらえる?」

 

『承知!参ります!』

 

雪奈はビルの屋上から飛び降りたと思った矢先、ビルの壁を足蹴に跳躍。

刀を手にしたまま、『上澄み』へ一直線に、ロケットの如く突撃する。

見た目は非常にラフな服装をしている雪奈だけど、彼女の身体能力は常軌を逸してる。

グレン特製チューニングが施されたアバターとの相乗効果で、LINK VRAINSのキャプテン・アメリカ、あるいはキャプテン・マーベルと言っても過言ではない運動性能と強度。

そんな人間兵器から繰り出される抜刀術は、LINK VRAINSの物体を確実に両断する。

 

『ハッ!…手応えあり、です。侵食リスクのケアのため、少し距離を空けました』

 

ロケットのような凄まじい速度と運動エネルギーから放たれた斬撃は、『上澄み』を真っ二つに斬り裂いた。余波で周囲の空間にノイズが走る。

彼女は『上澄み』の後方、20m程の位置で納刀しながら着地する。

真っ二つに斬り裂かれた『上澄み』は、生き物のように藻掻き暴れているが、手足が分離したことで動きが止まったようだ。

 

「お見事、さすがね雪奈。…グレン!」

 

雪奈の刀もグレン特別製。

見た目はシックな日本刀であるものの、刀身の超高速振動によって斬れ味が増す機能に加え、刀身からデータを収集する機能が備わっている。

 

『俺の出番ね、了解〜。ちゃちゃっと解析しますか』

 

グレン・フォスター。執事クリス・フォスターの弟にして、『上澄み』処理班の開発・解析担当。

『上澄み』の解析を行い、バグフィックスを行う。

数多くの『上澄み』処理装置を作った、頼もしい人員であり変人。

 

『…アキルお嬢。今回のヤツは…想像以上に厄介かもしれねぇ』

 

「どういうこと?確かに不可解な点はあるけど…」

 

『…アキル。どうやら一戦、交えなければならないようです』

 

雪奈の視界が再び共有される。真っ二つに斬り裂かれた異形は液状化し、ヒトの形へと変貌していく。

 

『痛ってぇ…その身体能力と剣技、見事なモンだよ。お嬢さん』

 

異形の怪物から液体へ、液体から成人男性ほどの大きさになった動く泥人形。『上澄み』は流暢に喋り始める。

この仕草、喋り方。リソース食いの元凶は、高度なAIの仕業だったということか。

 

『お嬢、こいつの解析にはちょいと時間がかかりそうだ。かなり高度なAI。ということで…』

 

「分かったわ、グレン。雪奈、距離を保ちながら、この上澄みを鎮めてもらえる?」

 

『承知!』

 

そう言い放つと、雪奈は左腕にデュエルディスクを出現させる。

装填されたデッキがオートシャッフルされると同時に、雪奈の周囲にドーム状のバリアが形成される。

このドーム状のバリアは、プログラムを解析するためのフィールド。

グレンは、味方のデュエル中にプログラムを解析し、バグフィックス用のパッチを作り上げる。

そして…デュエルに持ち込んだ相手に勝利した際にできる隙を突いて、パッチを注入するつもりだ。

 

『それは…もしかしてデュエルモンスターズってヤツかい?オレもやってみたかったんだよねぇ、デュエルってやつをさ』

 

やっぱりこの『上澄み』…謎が深まるばかりだ。

AIが自由意志を持って、デュエルモンスターズとデュエルに興味を持っている?

能動的に興味を持ち、ヒトのように立ち振るまい、ヒトのように喋る。

いくら高度なAIとはいえ、こんなことはあり得るのか?

そして『上澄み』として両断した物体の正体はなんだ?何故、異形の怪物の姿をしていた?

 

『あなたに恨みはありませんが、ここで大人しくしてもらいます。』

 

『いいね、お嬢さん!思う存分、オレの知的好奇心を満たしてくれ!』

 

泥人形の左腕からデュエルディスクが生成され、デッキが装填され、オートシャッフルされる。

目の前の雪奈を模倣するかのように。

 

『『デュエル!』』

 

こうして、雪奈vs泥人形AIのデュエルの火蓋は切って落とされた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。