【Buriedbones Continue】未来の屍体   作:猫乃湯和

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隠れた援軍

 乙女区は3つの地域に別れている。

 

乙女湾に面する北側は臨海工業地域。

北東、乙女川の三角州にあたる煉瓦島。

工業地域南部の国道8号線(通称乙女通り)、その南側の工業団地地帯。

 

 揉め事が起きているのは煉瓦島。

 島の北側はンリマ・ニヨタタウンだ。この下町の昼間は雑貨屋や飲食店で活気に溢れ、街角ではンリマ・ニヨタ音楽の生演奏が聴ける。また、港湾への出向社員や日雇い労働者向けの安宿も多く、バックパッカーの穴場でもある。しかし裏通りはンリマ・ニヨタ系ギャング・V0012の支配下にあるため、夜の外出はお勧めしない。

 下町の一角、場違いな豪邸がある。白い塀に黒い門があるが、その門は開きっぱなしになっている。道を真っ直ぐに進むと噴水があり、その向こうの扉も開け放たれている。リビングに続く扉の全ても然り。

 リビングのソファーの上では震えながら両手を上げるギャングの獣人がおり、彼を取り囲む部下の男達は全員彼に小銃を突き付けている。彼らの瞳孔は開ききっている。侍らせていた女達はそこら辺で何れも気を失っている。

 男達を操り、女達を失神させたのは美少女の吸血鬼だ。小柄で色素の薄い少女は所謂ゴスロリであり、長い髪はツインテールに結い上げている。しかし、

「何故こうなったかはわかるかい?」

エド・ウッドヘイムの声で、ンリマ・ニヨタ語でボスを詰問する。口調には明らかに手心がない。

「待ってくれ、話をしたい」

「一般人に迷惑を掛けるなって僕は言ったはずだ。恐喝、記憶が残った欠片の販売、誘拐、殺人未遂、果てはWi-Fiへの不正アクセス。これだけのクレームがあったのに君は解決しなかった。イメージアップのいいチャンスを逃すとは」

「後生だ。知らなかった」

「僕は先週も警告したよ。ンリマ・ニヨタ語でね。何なら通信会社と裁判所を挟んで話をしようか?」

赤い瞳に睨まれ、ボスは黙った。

 サイレンの音が重ね重ねで迫ってくる。

「この気の毒な街を君が管理すると聞いたから託してみたんだが、良くなるどころか余計に悪くなった。もう捨て置けない」

「勘弁してくれ。迷惑だってかけない。きちんと稼いでここに、あんたに還元する」

エドの瞳が輝き、ボスと部下達は一斉に昏倒した。吸血鬼の力だ。

 機動隊がリビングに駆け込んできた。

「ウッドヘイムさんですね」

隊長格の男が近付き、

「迎えを用意しました。長官と大統領がお待ちです」

そっと耳打ってきた。エドの顔から険が消え、

「ありがとう。できればそこらの居酒屋で会いたいんだけどなぁ」

いつもの間延びした口調に戻った。昏倒しているギャング達は小麦粉袋のように運び出されていく。

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