【Buriedbones Continue】未来の屍体   作:猫乃湯和

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布陣

 赤飛竜はビビアンとフェリシアを両腕に抱え飛び、マリーは箒で追走している。行き先はフェリシアの自宅。否、最終決戦場だ。

 

 フェリシアが敢えてダイナミック帰宅を決めた経緯を説明する。

 先ずはバーベキューの終わりにフュリーから受け取ったSNSメッセージを要約する。

『無実なのに指名手配されている。警察に行くから一緒に無実を説明してほしい』

『指名手配されてて帰れない。一晩泊めてほしい』

『今、路面電車で向かっている』

フェリシアはこの件を居合わせた者らに相談した。結果、

 

罠である 2票(クオレ、チャールズ)

警察に通報すべき 2票(ホセ、アンドレ)

取っ捕まえてしまえ 2票(マリー、ビビアン)

 

となった。

「胡散臭いって思ったけど、皆の意見を聞いてスッキリした。ショットガンがあるし、このまま取っ捕まえてやるわ」

最終的にフェリシアも悪党を取っ捕まえる側に加わった。

「待って待って。銃所持許可証程度で何とかできるとは思えない」

クオレが意気込むフェリシアを制するが、マリーが加わってきた。

「私も手伝うわ。フュリーのことだからBuriedbonesを使って必ず悪さをしてくる。私ならBuriedbonesを弱体化できるわ」

「貴方最高よ」

マリーとフェリシアはガッチリと握手した。友情を裏切られた同士、結束は強い。

「穏やかじゃないな。警察に任せようって発想はないかい?」

クオレはホセとアンドレの顔を立てようとしている。

「正直、私もそれを考えた」

ビビアンは更に続ける。

「フュリーがいる、つまりジョセフも必ずいるってこと。筋金入りのギャングとBuriedbonesなんて最悪の組み合わせだし、フェリスの自宅周辺は道が複雑だから警官の急行はかなり難しいわ。でも私達が先に帰宅できれば返り討ちにできる。帰宅は空を飛べば簡単」

とクオレをチラ見した。

「確かに迎撃する側は優位に立つけど、フェリスとマリーは素人同然だ。お姉さんと俺は別にして」

「ならば心配要りません。私も参ります」

チャールズが進み出たが、

「チコさん、今回は待機で」

ビビアンは勇敢な執事を制した。

「チコさん、もし22時までに片付かない場合は2人を休ませて、食事などのお世話もお願い。2人がフュリーと縁がある以上、警戒すべきだと思う」

息を飲んだホセとアンドレは顔を見合せ、

「なるほど。承知しました。ならば支度を」

と納得したチャールズが『倉庫』から革貼りの鞄を出した。この中には所持者を守る魔法の品が収まっている。指輪やペンダント用のチャーム、護符、宝石等々。この行動を素のチャールズ風に要約すると『いてまえ』と言う意味であり、その意図を受け取ったビビアンは力強く微笑んだ。

 クオレの体は赤飛竜に変わった。

 

***

 

 もう一つの勢力は箒に跨がり、現場に急行する機動隊達。その遥か先、『鋼鉄のカボチャ隊』のイングスとミヒャエルは先行して後続との距離を開けていく。本来のカボチャ隊はフュリー程度の犯罪者は相手にしない。しかしフュリーは『ヘレン・マイヤーズ』の亡骸を得ているため事情が一転した。

 

 邪眼持ちのヘレンの亡骸は通夜の折に強奪され、巡り巡ってレベッカ・ランナーの手に渡った。しかし昨晩遅く、逃走の折に待ち合わせたジョセフとフュリーに襲撃されて車ごと奪われ、この折にレベッカは意識を失う重傷を負った。夕方には事情聴取ができるまでに回復し、邪眼持ちの屍体が悪党共の手中にあることが明らかになった。そしてフェリシアからの通報でフュリーの居場所も特定済みだ。

 彼女自身はフェリシアの自宅に行くどころか、第2公園の遊具広場にいる。ここからフェリシアの自宅までは約200メートル、ド素人でなければBuriedbonesを駆使し、フェリシアに何かをすることが可能だ。

 

 さて、ただの警官隊に邪眼持ちの相手は非現実的だ。逆に言えば機動隊、そして荒事の大ベテランであるイングスとミヒャエルには経験と技術、召喚獣、果ては『倉庫』に控えるBuriedbones用屍体と強力なカードが揃っている。

 「なあ、ロブ。フェリシアは警官隊が来るまで耐久するって言ってたな?」

イングスが本部の猫人に無線で問う。音声はミヒャエルも共有している。

「そうだが?」

「誰か彼女の護衛についてるのか?」

「そうだ」

「誰かわかるか?」

「わからん」

この返事で一つの可能性が現れ、

「ビビが来たりして」

と、ミヒャエルが口に出した。3名は軽く笑ったが、最終的には不安に襲われた。

 

それって、俺達、要らないんじゃないか?

 

***

 

 フェリシアの部屋は『虎穴荘マンション』3階、ここにはショットガンを抱えつつもフュリーとメッセージをやり取りするフェリシア、武器ベルトを帯びたビビアン、護身用の杖と屍体整備道具ベルトを帯びたマリーが悪党の来訪を待っている。ワンルームの部屋は余計に狭くなっている。

 フェリシアの自宅から見える第2公園の入り口にはクオレがいる。彼は森の友達を使ってフュリーの居場所を探っていたが、そのクリームが瞬間移動で戻ってきた。彼らは何かを話し合っていたが、結果はビビアンへの着信で届く。

『遊具広場にフュリーと男がいる。でも反射結界に守られてる』

「面倒ね。妨害できそう?」

『うん。何ならゴリ押しで壊すよ』

結界を、である。

「警官隊の手に余るならそうしなさい」

『合点』

電話を切ったクオレは魔術迷彩で姿を消した。

 

 会話が途絶え、空気が張り詰める。

 

 ここでフェリシアのスマホにメッセージが入り

「第2公園が見えてきたって」

とフュリーからのメッセージを読み上げる。

「そっか、やるっきゃないわよね」

マリーは袖を捲り上げた。

「あ、でも第2公園西駅からってことは向こうからよね?」

と付け加えて問う。向こうとは第2公園を挟んだ道路、左奥だ。

「嘘吐いてなければね」

ビビアンも第2公園を見下ろした。

 

***

 

 赤飛竜のクオレは遊具広場から少し離れた芝生にそろりと降り立った。遊具広場は木立のすぐ向こうで、先着した警官隊の灯はその隙間からチラリと見える。

「警察だ。こんな夜に何をしているんだ?」

箒に跨がり、完全装備した2人の機動隊員がゆっくりと降下しながら、しかし少し戸惑いながら問う。大きな飛竜が公園にいる、つまり戸惑わない方がおかしいだろうがクオレには知ったことではない。

「お巡りさん、ちょうどよかった。そこに指名手配犯がいて、友達をボコるって聞いたから逆にやっつけてやろうって思ったんです。でも反射結界があるから面倒かなって」

 小柄な機動隊員が鋭いハンドサインで会話を制した。彼はしばし『感じた何か』を脳裏で分析していたが、

「転移石の反応なんね」

「転移石?」

「誰かが使ったんね。方向はあっち」

と相棒の隊員のために遊具広場を指差した。

 きゅん、とした声が足元から上がった。森の友達のクリームが二足立ちし、クオレに向かってスマホの画面を示している。つまり両のお手てでクオレのスマホを持っているのだ。

『フュリーが呼び鈴鳴らしてる』

『警察はまだ来てない』

とフェリシアがメッセージで曰く。

「やられた。Buriedbonesが行っちまった」

クオレは竜の姿で歯軋る。

「つまり、転移石でBuriedbonesをスタンレーさん家に送ったってことかいな?」

小柄な機動隊員が問うてきた。

「そう言うことです。フュリーを何とかしなきゃ」

「待つんね。スタンレーさん家にはフェリシアさんの他に誰かいるん?」

その彼からの問いでビビアンの存在を思い出した。

「はい。めっちゃ強い護衛がいるから、何とかなると思います」

機動隊員達は顔を見合せてから、

「それってビビアン・ウィンタースか?」

背が高い機動隊員がゴーグルを外しながら問うてきた。

「そうです。知ってるんですか?」

答えたのに2人は口を噤んでしまった。

「戦友と言うか、腐れ縁と言うか、そんな感じだ」

先程の彼は戸惑いながらも、咳払いして問う。

「ところで、その姿だが。君はもしかしてBB体質か?」

「何でわかったの!?」

今度はクオレが驚かされる番になった。

 

***

 

 BB体質については何れ説明するが、現時点では【Buriedbonesに類似するもその上位互換にあたる者、奇跡が生む者、場合によっては化け物】の認識で構わない。

 その化け物を目の前にしたミヒャエルとイングスは呆気にとられていた。

 

──ここ、化け物だらけ通り越して未曾有の世界やったわ。

──丸鮫製麺よりも未曾有の方が近いなんて聞いたことがない。どう言うことだ、おい。

 

 上空からは応援の低空警邏隊や機動隊が遊具広場に降り立ち、遠くではパトカーのサイレンが聞こえてきた。

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