【Buriedbones Continue】未来の屍体 作:猫乃湯和
乙女区は臨海の工業地であり、科学工場、波止場、コンテナ用クレーン、倉庫街が集中する。西の夫婦岬の付け根にはヨットやクルーザーの波止場もあり、休暇には小金持ちが挙って海に出る。
倉庫街は19時にもなると人気が完全に消え、道を照らす街頭は倉庫をより暗く、不気味に見せる。どこからか野良犬の吠え声が聞こえる。
虎穴流通の倉庫は小規模で倉庫街に埋もれているようだが、さりげなく小型の運輸船用波止場がある。この虎穴流通が倒産したのは5年前であり、同時に倉庫の所有者も失踪してしまった。このためもうしばらくは解体も国有化もできない。だからこそ、この倉庫は好きなようにされている。
入り口はトラックのための道路に面した荷捌き用プラットホームでも事務所入り口でもない。その脇の路地に入ると車や単車が停まる駐車場になり、波止場のためのプラットホームや捨て置かれたコンテナ、倉庫に隣接する第二事務所棟が見える。第二事務所棟のドアは倉庫の影に隠れ、昼間でも気付きにくい。また例のコンテナのお陰で駐車場の様子は簡単にわからない。
第二事務所棟のドアを明けると食堂であった大部屋、ロッカー室への登り階段、そして登り階段の裏側には地下室への扉がある。灯はまばらな足元灯だけだ。その扉を開け、階段を下る。階段を下った先、扉を開けば草と酒の匂いが貴方を迎える。M0109の構成員が検問しているが、検問の奥の遮光カーテンを抜けた先は闇市場だ。
備品倉庫であったそこの棚はテーブルに作り替えられ、安っぽい布が無機質な部屋を覆い隠す。灯に照らされている不法な品が商品として揃う。ドラッグ、貴金属、美術品、武器、量り売りの死の欠片、屍布に包まれたもの──死体、ああ!
供養されるべき亡骸は腐敗阻止の魔法を施され、その足首には値札が付けられている。Buriedbones用の屍体や整備部品として。『1キロ200ペブル、全身15000ペブル』『値下げしました』と安売りの肉のように陳列されており、
「こいつは新しいな」
「一昨日死んだばかりさ」
と客は品定めと交渉をしている。普段より多く集まっている客らも商売人もやんごとありまくっている。
24時を少し過ぎてから、
「お待たせ!オークションを始めるぞ!」
倉庫の奥に移動した商売人がハンドベルを鳴らし、客を呼び込む。
彼の目の前の布が取り払われ、中からは横たわって眠る裸婦人の石膏彫刻が現れた。芸術家であればその緻密なリアルさ、美しさに見惚れるのは間違いない。
商売人はその彫刻に呪文を唱える。彫刻の色は灰色に変わり、胸と背中、額から後頭部を貫通の銃創が破っていく。彼は更に呪文を唱えると彫刻の色は人体の色になり、傷口からもう少しばかり新しい血が溢れた。若い人間族の肌色は屍色になりつつある。
「見ての通り本当に死んだばかり!ほーら、まだ温かい!これは全身売りでのみの販売、バラ売りはなし!30000ペブルからで始めるからな!」
亡骸はその写真を撮る者、死体の生暖かさに戦きながら笑う者、死体を返して品定めする者、そして、
「せめて25000にしてくれ!」
と怒鳴る男に囲まれる。
奥まった所では博打に夢中になる者、ドラッグのテーブルでスマホを触る者、隅で酔っぱらう者もいる。
「おい、何で急に繋がらなくなるんだよ。畜生」
スマホを握る若いシルフが苛立った。