流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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前回、あの場面で何が再生されたら一番笑えるか考えていたら、キャプテン・マッスルに辿り着いた。健全に笑えるのって貴重だと思う。
淫夢はもう古いと感じて、自分の中で勝手にショックを受けた。
調子に乗り過ぎたかと思ったが、マネモブ達は出てくるだけで喜んでいるようだ。

でも本編もいい話を書けたと自負していたのに、既にタフに汚染された感想しかつかなくなった……、草。

ところ変わって本編は回収するか分からない伏線をばら撒いておくんだ。これがジュビロ式ストーリー術なり。割と繋ぎ回。



11.ボス×ト×シモベタチ

 

 

 

 ジョネスとマチの微笑ましい光景がしばらく展開された後、何とも言えない顔でそれを見ていたゼンジの携帯が慌ただしく鳴った。

 

 その音で、ゼンジとマルローにガッツリ見られている事実をやっと自覚したのか、ジョネスからくっついて離れようとしなかったマチが反射的に飛び退いて、何事もなかったかのように真面目な顔でその場に居直った。

 

 明らかに手遅れなその行動がジョネスとマルローのツボに入って、2人は同時に吹き出したが、赤い顔をしたマチに睨まれたので、已む無く笑いを堪えてゼンジに視線を移す。

 

 見慣れない番号に訝しげに通話をしていたゼンジの顔が、喜色満面といった笑みに変化して行くまでに、そう時間は掛からなかった。

 

 電話の相手はゾルディック家、依頼達成の報告と報酬の催促、入金を確認したら自分達はとっとと家に帰るとのことであった。抗争の終結である。

 

 予想外の事態は多々あったものの、何とか上の期待に応えられたゼンジが、己の明るい未来に思いを馳せて小躍りしている。マフィアなのに体型も相まって遊園地のマスコットキャラクターのように見える彼の姿に少し可笑しみを感じたが、依頼が終わったならいつまでもここに長居する必要もない。ゾルディック家の2人を見習ってジョネス達もとっととおいとまする事にした。

 

 しかし、そそくさと撤退しようとする3人に気付いたゼンジは慌てて3人を引き止めた。

 

「おい、もう帰っちまうのかよ!! 今回の護衛側の功労者は間違いなくお前らだ、組長(ボス)に紹介させてくれ。もちろん追加の報酬も期待してくれて良いぜ?」

 

「……最初に提示された報酬に納得してこの依頼を受けたんだ。そこまで厚かましくなれねえよ」

 

「言わせんな‼︎ これはオレからの感謝の気持ちだ。どうせ報酬なんてほとんど長老会のジジイ共にピンハネされるんだろ?」

 

「……ありがとう。そこまで言うならお言葉に甘えておこうか」

 

「ジョネスが行くなら、あたしも行くよ」

 

「2人が行くならボクも行く流れだよね? 貰える物は貰っておく主義だし」

 

 マチとマルローの了解をも貰ってから3人はゼンジに案内される。

 

 まあ相手がマフィアだろうがコネができるのは悪くない。そもそも依頼を建前に数え切れないほど人を殺した自分が、黒だの白だの選り好みできる立場に無いことをジョネスは分かっていた。

 

 軽快な足取りのゼンジに連れられて、今回の依頼の大元とも言えるヴェンディッティ組長の部屋に辿り着く。

 

 ゼンジが神妙な面持ちで3回ほどゆっくりとノックをしてから返事を待っていると、中から「入れ」と掠れた声が聞こえた。

 

 色鮮やかな調度品に飾られた如何にもと言った風情の執務室にて、備え付けられた大きな白いベッドの上に寝転んだ男が4人を迎えた。

 

 所狭しと並べられた医療機器や点滴に繋がれた、今にも命の灯火が尽きそうな痩せ細った老人である。だがその鋭い目付きは確かな熱を孕んでいて、いささかも衰えを感じさせない。

 

「ヴェンディッティ組の頭やってる、ガルマ=ヴェンディッティだ」

 

「流星街のジョネスだ。こっちはマチとマルロー」

 

「お前らが流星街から派遣された念能力者か。今回の抗争では随分と活躍したらしいな、おまけにウチのゼンジを間一髪で救ってくれたと聞いている」

 

「依頼者の無事も任務の範囲なんで」

 

「フン、嘘臭いくらいに真面目だな。それでも礼を言っておこう。そこにいるゼンジはオレの後継者なんだ」

 

「恐縮です」

 

 ヴェンディッティ組長がゼンジに目を向けると、不遜な彼でも組長には流石に頭が上がらないのか、一言だけ返して頭を下げた。

 

「そんでジョネスとか言ったか。さっきからそっちの壁のショーケースが気になって仕方ないみてえだな? へり下ってても、目がギラついてやがるぜ」

 

 ジョネスは悪びれることもなく頷いた。この部屋に入ったときから警戒も兼ねて、既に4回"凝"を行なっているが、そのときに発見したオーラの込められた一つの品物にずっと興味を抱いていたのである。

 

「ああ。あのナイフ、くれねえか?」

 

「ははは、単刀直入過ぎるだろ? マフィア相手だってのにちっとも物怖じしてねえと来た。いいぜ、ゼンジにおねだりしろよ」

 

「……!? ちょっと待って下さい、ありゃ組長(ボス)の私物ですよ⁉︎ オレからは許可を出せません!!」

 

「ああ、()()の私物だ。だからもうお前の物だ」

 

「まさか……!!」

 

「ああ、オレはもう長くねえ。たった今からお前がヴェンディッティ組の頭だ。励めよ」

 

「…… 組長(ボス)、ありがとうございます」

 

「もう組長(ボス)じゃねえよ」

 

 周囲をそっちのけでしんみりとした雰囲気になる2人に、オレは何を見せられているんだと感じたジョネスは、話を戻すようにゴホンと一つ咳払いをした。

 

「それでゼンジ新組長、追加の報酬を貰えるって話だったが?」

 

「あ、ああ。そうだったな。ジョネスはあのナイフ1本で良いんだな? マチとマルローは何か欲しいものあるか?」

 

「ボクは特には……、ちょっとお小遣い貰えたらそれで良いよ」

 

「同感だね」

 

「OK、金だな。それならすぐに準備できる」

 

 3人はもう会うこともないだろうヴェンディッティ組長に礼を言うと、ゼンジから希望した報酬をちゃっかり受け取って、未だに戦いの余波が残るウエストゲートビルを後にする。

 

 その途中で組の新体制を構想していたゼンジから組員に対する念の指導を依頼された、何ならヴェンディッティ組に入らないかと誘われたが、あまり長い間流星街を留守にするつもりもなかったので、組には入らないが念の指導ならいつか必ず、とだけ答えて3人は明け方のヨークシンシティに消えていった。

 

 ゼンジは残念そうな顔をしながらも、「また何かあったら依頼するぜ」と言い残して、手を振って3人を見送った。

 

 

 

 

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 リンゴーン空港にて、目的の飛行船の発着時刻までかなり時間があった3人は、せっかくなので空港内にあったジャポン料理屋で仕事の打ち上げを行なっていた。

 

「「「カンパ〜イ」」」

 

 サヘルタ合衆国で飲酒を認められているのは州によって変わるが、大体21歳以上である。ところが法の意識が希薄な修羅の街出身の3人は、マチが法定年齢に達していないにも関わらず、ジョネスの下手したら30歳以上に見える老け顔を利用して、思い思いにアルコールを楽しんでいた。

 

 ちなみにジョネスは肉体の頑強さから完全にザルなので、単純に酒の味と雰囲気を楽しんでいるだけである。それに辛うじて付いて行けるマチも相当な酒豪なのだが、普段ジョネスと一緒に飲むことが多いので自分の異常さに気付いていない。そしてそんな彼女でも仕事が済んだ気の緩みからか、いつもより酔いが進んでいるようだ。

 

「ジョネス、マジで生魚食うの!? さすが怪人だ!!」

 

「ジョネス、死んじゃやだよぉ」

 

「処理がしっかりしてれば生が一番美味えんだよ……。マチも食ってみろ、そしてまず抱き付くのを止めろ」

 

 なかなか味わえなかった前世からの好物に舌鼓を打つジョネスに、ドン引きするマルローとマチ、火を通さない生肉など世界の大多数の人間からしたら正気の沙汰じゃない様だ。

 

 ジャポン料理を初めて食べる2人が見慣れない料理に対して文句を付けると、ジョネスが傍から見たら謎の熱意で以って反論する。自覚がないまま即席のコントで店に笑いを提供している3人であった。

 

 そんな愉快な面々に近付く人影が二つ、酔いの浅いジョネスはすでに気配に気付いており、前を向いたまま背後から近付くその人物に問い掛ける。

 

「あんたらはもう帰ったと思ってたがな」

 

「依頼人が死んで、報酬がお釈迦になるのを防いでくれた恩人に何も言わんのは水臭いじゃろう。息子からも話があるそうじゃ」

 

「邪魔するぞ」

 

 伝説の暗殺者一族、ゾルディック家のゼノとシルバがそこにいた。酔いもあったとは言え、2人が正面から近付いて来たというのに、全く警戒することができなかったマチとマルローは戦慄した。

 

 ウエストゲートビルで戦った二流達とは桁違いの本物の暗殺者は、おもむろにジョネス達の隣の席に座ると、この場において最も大切なことから切り出した。

 

 

 

 

「とりあえずワシ、ビール」

 

「ワイン、なんか良いのあるか?」

 

 

 

 

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※おまけ:その頃、流星街では

 

 

 男連中が謎の映像を前にして(キャプテン・マッスルを知らないだと? ググれ!!)生殖能力を一時的に奪われている頃、ジョネスの自宅兼職場である工場に、ガスマスクを付けた流星街の長老達からの使者が、厳重に梱包された木箱を運び込んで来た。

 

 焼却処理をしていない廃棄物は容易に自然発火し、辺りには煙が立ちこめる。この街のカーストのトップである長老会の関係者は、その煙から身を守るため、このような出で立ちをしているのが常識だ。

 

 祝日に素顔で子供達にお菓子を配っているジョネスとマルローは、例外中の例外である。

 

 幼馴染のマチから引き受けた"留守番"という仕事を、比較的真面目に受け取っていたパクノダは、ジョネスの仕事への報酬だと思われるそれを丁重に引き取って、あらかじめ聞いていた机の上に安置した後、死ぬ気でその箱を守る覚悟を固める。

 

 工場の主が女子供に甘いことは知っていたが、この箱の中の物品が想像通りの物なら、何かあったらマジで殺される可能性がある。彼女にとっての、今際の際である。

 

「パク、東地区で衣料品と医薬品が足りてないみたいだよ。ジョネスの帳簿によると、今日入荷して来るやつを回すつもりみたいだけど……、その木箱じゃないの?」

 

「ジョネスへの仕事の報酬は私もマチから聞いたけど、本人が帰って来てないのに、長老会から直接送られて来るものかしら? その箱は別件じゃないの?」

 

 几帳面に纏められた工場の主の帳簿を確認していたサラサは、運び込まれた木箱を指差してそう言った。

 

 シーラもサラサに同意して首を傾げる。流星街のこういった取引は手順が無茶苦茶なのだが、まだ若い彼女には理解できないようだった。

 

 パクノダはそれを聞いて万が一があってはいけないと、一応、木箱の中身を見てみることにした。工場の壁に吊り下げられていたバールの様なもの(ジョネスオリジナル工具)を使って、木箱をこじ開けて中身を確認する。

 

 

 

 

 

 箱の中身は、ゴミ山とか油と錆にまみれた工場には似つかわしくない、見るも美しい"壺"だった,

 

 

 

 

 

 その後、長老会の使者と比べると遥かにみすぼらしい格好をした男達が、巨大なずだ袋に包まれている衣料品と医薬品を工場に納品した。

 

 流星街の狂気は"順序の狂い"だと実感する一同であった。

 

 

 

 

 




イルミの次に話が通じないのは、たぶんキルアなのでは? と思う今日この頃。お前らもしかして兄弟か?
作者は初期のイキり具合を忘れてねえぞ。

ギャグで終わりかと思えばすぐに不穏になる流星街。
書き足した部分です。
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