ヨークシン編とか多くて楽しかったよね。
つい真似しちゃいました。
割と繋ぎ回です。
ゾルディック家は、私用の飛行船を多数所持している。
プライベート・エアシップは主に企業や資産家、報道機関などが所有するビジネス用のものや、政府や捜査機関が所有する専用機に代表される飛行船である。サヘルタ同時多発テロや、ベゲロセ国際空港ソマン事件の発生をきっかけに、不特定の人間が搭乗する一般の旅客船の安全性が疑問視されたことから、富裕層の間でも爆発的に需要が増大した。
ゾルディック家の場合は、そもそも世間的にお尋ね者であるゾルディック家の人間が搭乗することを前提としているので、身分の偽造や賄賂の手間を考えたら、ほぼ必須の移動手段である。
当然その性質上、セキュリティやステルス性は折り紙付きであり、また荒事を生業とするだけあって武装や医療設備も充実している。
ククルーマウンテンの本邸ほどでは無いが、一般人なら絶対にお近付きになりたくないゾルディック家の要塞とも言えるその飛行船の内部で、現当主の厚意に甘えて、彼のついでに最高クラスの治療を受けた上に、専門の教育を受けた執事達が作った一流の料理を図々しくも山のようにかっ食らっている怖いもの知らずがいた。"客人"に配慮して、ゾルディック家の普段の食事とは違い、毒も入っていない様だ。
「さすがセレブの専属料理人だ、いい腕してるぜ。ほら、マチも腕繋げた料金だと思って、もっと食っとけ。何食っても美味いぞ」
「うん……」
その正体は言うまでもなく、先程までこの飛行船のオーナーと死闘を繰り広げていたジョネスだ。
数刻前は半死半生といった容態だったはずの彼は、最低限の治療を受けた後、医者に指示して大型動物用の栄養剤を投与させた。
その後、人体の不思議というか強化系の不思議である圧倒的な自己治癒力の高さを発揮して、未だ安静にしている他の怪我人を尻目に、元々大柄な彼の体にもどうやって入っているのか分からない程の大量の料理を、まるでマンガのキャラクターかのように次々と腹の中へ収めていた。
なお少食なマルローはとっくに食事を終えて、与えられた部屋で爆睡している。何やら帰ったらすぐに来いと長老達から呼び出しを受けているらしい。彼は社畜である。
そのそばでは、いつに無く機嫌が悪いマチが、できるだけジョネスから目を離さないように、心なしか普段より近くに身を寄せて食事をしていた。というのも、マチは冒さなくても良い危険を冒して、普通なら死ぬほどの怪我をしたジョネスのことを、心の底から心配していたのだ。
ボロボロになって意識を失ったジョネスを見た時は、本気で死ぬと思った。その気疲れから用意してもらった個室で落ち込んでいたのだが、しばらくして病室に顔を出しに行ったら、いつの間にかジョネスはいなくなっているし、もしかしたら既に死んで別室に移されたのかと思ったら、彼は食堂室で当たり前かのようにピンピンしているしで、掛けた心労を倍にして返せと言いたくなるような有様だった。
そんなマチの前にも、食べ終わった皿がジョネスに負けず劣らず積み重ねられており、本当に血が繋がっていないのかと疑う大食いっぷりを見せ付けてゾルディック家の執事達を驚嘆させていたが、普段からジョネスと暮らしているマチはやはりその異常さに気付いていない。
「船の食糧庫を空にするつもりか、この居候が」
食堂室の入口から不意に声が掛かり、一人の男が入室して来た。ジョネス達の世話をしていた執事が、その姿を見て慌てて頭を下げる。
「シルバ、もう体は良いのか?」
「お前と一緒にするな、こっちはまだ本調子じゃない」
強化系の人外と一緒にするな、と間違いなく人外に足を突っ込んでいるゾルディック家の人間からありがたい評価を頂いたジョネスは、どの口が言うのかと不満そうな表情を見せた。
「オレだって飯がマズかったらまだ治ってねえよ。ゼノの親父さんはまだ怒ってんのか?」
「まるで他人事だな……。命の恩人だぞ、お前の」
「"オレ達の"な。ここは譲らねえぞ」
「フン、言っておけ」
お互いを殺し掛けたというのに、二人はなぜか気が合うようで、遺恨など何も無いかのように気安く軽口を叩き合う。
そんな2人を見ていた執事達は、心底首を傾げた。いつも無表情で口数も少ない自分達の主人が、初めて見た時から一目でヤバい奴だと確信したドス黒いオーラを纏う危険人物と、普段は見せないような表情でいつに無く饒舌に語らっているのだ。正直、この光景を見るまでは、いつ第2ラウンドが始まって飛行船が墜落するのかと気が気で無かった。
そんな執事達の困惑を他所に、シルバはジョネスの傍らにいた少女に目を向ける。
「マチのお嬢ちゃんもよくやってくれた、ありがとう。親父も感謝していたよ」
「あんたらはやり過ぎなんだよ。傷口が複雑過ぎて、あたしがいなかったら治ってたか分からないよ」
「ああ、正直驚いた。どこでそんな医療技術を?」
そう問われてマチは遠い目をした。念を覚えてからというもの、ジョネスがボコボコにした幼馴染の馬鹿共を毎日のように縫ったり繋いだりする日々。
馬鹿共から本気で懇願され、ジョネスからプレゼントされた難解な医学書と睨めっこしながらトライアンドエラーを重ねて技術を向上させていった訳だが、今から思えば馬鹿共は普通に死にたくなかったのと、医療費の節約を考えた結果であり、ジョネスはジョネスでいちいち手加減するのが面倒臭かっただけというマッチポンプであった。
「……まあ、経験と勘だね」
「……深くは聞かないでおこう……。嬢ちゃんも色々と苦労してそうだな……」
僅かばかりの付き合いでありながら、ジョネスの無茶苦茶さを体感していたシルバは、あんなのに四六時中連れ回されているマチの境遇を察してその労をねぎらった。
気まずい空気の中で話題を変えようとしたシルバが、ふと名案を思い付き、機嫌が急降下し続けるマチに提案する。
「そうだ、ウチの長男の嫁に来ないか? 歳も近そうだし、苦労はさせないぞ」
突如ブッ込まれた予想外の言葉に、ジョネスとマチは思わず同時に吹き出したが、シルバとしては至って真面目な提案であった。嫁探し、または婿探しはゾルディック家が長年抱えている慢性的な問題だ。
血が濃くなり過ぎないように外部から結婚相手を探すのは当然だが、暗殺一家に嫁いでくれる物好きなんてそうそう居ない上に、ゾルディック家の一員になるには仕事柄、最低限のというか最大限の強さが求められるのだ。欲を言えばゾルディック家に新しい物をもたらしてくれる特殊な技能の持ち主であれば尚更いい。
この通り、結婚までのハードルが高過ぎるので、これでは相手が見つかるはずもない。かくいうシルバも彼自身の容姿が良く、妻となったキキョウが微妙にイカれていたので、何か知らんが上手く行っただけである。
「同郷なら、気難しい妻も心を開いてくれるだろう。強さも医療技術も親父のお墨付きだ。イルミが気に入るかは分からんが、君は見目も良い。こっちとしては言うこと無しだ。後は君の気持ち次第だ。どうだ、ウチに嫁いでくれないだろうか?」
真剣な表情で頼み込むシルバを前にして、マチはあまりの動揺からしどろもどろになってしまい上手く言葉が発せなくなってしまう。そしてそんな状況に待ったを掛ける男がいた。
「待て!! ウチの娘をそんな簡単にやれるか!!」
「……ジョネス、お前には聞いていない。オレはあくまでマチの嬢ちゃんに聞いている。あと娘じゃないだろ」
「いきなり結婚なんて……、まずは文通とかから始めてだな……」
「古代人か」
当人をほったらかしにして漫才を繰り広げる2人に対して、マチは頭の中で様々な思考がぐるぐると堂々巡りし結論が出せない。一番に頭に浮かんだのは、何故か幼馴染であるクロロの顔だった。その次に保護者であるジョネスの顔が浮かび、2人の顔面偏差値の差に世界の理不尽を悟ってしまった。シルバの提案とは無関係ながら、脳内に面白過ぎる構図が出現した事により、彼女の思考はますます袋小路に陥ってしまう。
そんな時、金魚のように口をパクパクさせることしか出来なくなった彼女に助け舟が出される。
「その辺にしとけシルバ。まだ子供じゃろう、答えが出せんでも無理はない」
食堂の入り口から両腕を包帯で吊るしたゼノが姿を現す。自分をこんな目に遭わせた張本人達が、和気藹々と食事を楽しんでいるのを一瞥して、眉を顰めると、気を取り直すようにマチに目をやった。
「確かにお嬢ちゃんはこの上なく優良物件じゃが、一つ問題があるのう」
「?」
「そっちの男までセットで付いて来る可能性がある」
シルバとゼノの2人は"そっちの男"ことジョネスに目を向けた。いつの間にか食事を再開して、ほっぺた一杯に食べ物を詰め込んでいたジョネスが不思議そうな顔をして首を傾げる。
これがハムスターとかなら可愛いが、老け顔のマッチョがやってもキモいだけだし、まして彼が食っている食料が自分達の奢りだと思うと無性に腹が立って来る。
「確かに、コイツを"身内"にはできんな……」
「おい、酷くないか? オレでも傷付くときは傷付くんだぞ」
「そうじゃろう。お主も当主ならメリットとデメリットをよく吟味せよ」
「おい、無視すんな」
「ちょっと待てよ……。ミケに何かあった時の後任だと考えたらどうだ?」
「むっ、それは確かに……」
「何か酷いことを考えていないか? ミケって誰だ?」
結局、何とか気を持ち直したマチが婚約の提案を丁重にお断りして、この話はお流れとなった。
この後、犬?と同列に扱われたことを知ったジョネスが犬のように暴れ始める一波乱があったが、食後のデザートが出てきた事であっという間に沈静化した。
シルバはジョネスと戦っているときに感じた既視感の正体に気付いて、流石に笑った。
もちろんマチは誘われます。
イルミにツッコミできる姉さん女房って、結構相性良いかもね。
しかし、隣にいるバカのせいで破談する。かわいそ。
捏造設定に次ぐ捏造設定。
これが二次創作だ。参ったか。