流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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過去編です。
書きたい物を詰め込んでいたら、他の話とは一線を画す大ボリュームになりました。

皆様から温かい感想を頂いた結果、少しやる気が復活して新しく書き上げた話になります。

ジョネスは善人なのか悪人なのか。それは正に表裏一体であり、判断は皆様の感性に委ねられています。

世界とは悲劇なのか……、今怪人が試されようとしている。
流星街を救うのは、本当にヒーローや聖人なのか?
今更ですが、今話には残酷な描写が含まれています。ご注意を。



過去と現在の解体屋
17.ヒョウリ×ハ×イッタイ


 

 

 

 

 流星街の住人であるマチのここ半年程は、人生の中で激動の時期だと言えた。

 

 数ヶ月前に母親が死んだかと思うと、頼んでもいないのに長老会にいきなり拉致され、里親候補の大人達と面会することになった。

 

 下心が見え見えのクソみたいな候補者達を見て、脱走して孤児達の兄貴分であるウボォーギンにでも匿って貰う方がマシなんじゃないかと思い始めていた時、面会部屋に新しい男が入って来た。

 

 母親とも知り合いだった、地区の顔役をやっているジョネスとかいう男である。この街でも有数の実力者であり、近くの倉庫を魔改造して、この街でも有数にまともな生業(なりわい)を営んで生活している。

 

 ジョネスはちょっとマチの様子を確かめに来ただけで、里親になる気は全く無い様だったが、マチとしてはこれが最初で最後のチャンスだと思い、必死でジョネスに縋り付く様な、懇願する様な熱い視線を送った。

 

 ジョネスは頭を掻いて何か思案するような仕草を見せると、ややあってからハァと深い溜め息を吐いて、しぶしぶといった感じでマチを引き取る事を了承した。

 

 

 

 

 

「こんなのはガラじゃねえってのに……。親の愛も知らねえ奴が、まともな親をやれるかよ……」

 

 

 

 

 

 まるで割れ物を扱うようにマチの手を取ったジョネスは、思い出したくもなかった2人の"父親"の顔が不意に頭に浮かんで、悲しげな顔でそう呟いた。

 

 

 

 

 

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 "工場"で暮らし始めてから数ヶ月後、マチは大きなリュックサックを背負って、流星街の孤児達が集まる地区に向かっていた。

 

 中でもその地区にある"教会"は、子供達の溜まり場として有名だった。

 

 背負った荷物の重さに息を切らしながら、やっとの思いでその教会に辿り着くと、中で幼馴染のクロロとパクノダが親しげに会話をしている姿が目に入った。

 

 二人に近付き声を掛ける。

 

「クロロ、パク、久しぶり。他のみんなは? 工場からお菓子とか服とか持って来たんだ。今からみんなに配ろうと思うんだけど……」

 

「うわっ!! 凄い量だね、マチ!! シャルとフランクリンなら、もうすぐ来ると思うよ。もしかしたらウボォーも一緒かも知れないけど……」

 

「その時はあたしが仲立ちするよ」

 

「いいなあマチは、ウボォーにいじめられなくて……。女の子だし、親がアレだからね……」

 

「マチの身に何かあったら……、考えたくもないわね……」

 

 ウボォーギンは元々、女子に弱いが、マチの場合は保護者が例のアレなので、尚更手が出せない。

 

 なお、まだ彼女が工場で暮らし始めて数ヶ月でしかない。例のアレはマチを溺愛している訳では無く、引き取った以上は面倒を見る責任があると思っているだけだ。ペット扱いである。

 

 マチはいい加減肩が痛かったので、一旦会話を切り上げると、おもむろにリュックの中身を教会の床にぶち撒けて、他の子供達が集まって来るのを待つ事にした。

 

「うわあ!! 綺麗な服に、美味しそうなお菓子でいっぱい!! でも……、これって工場の商品でしょ? 勝手にオレ達に配っちゃって良いの?」

 

「この街の悪い子は狼男に攫われるって、神父様が言ってたわ……」

 

 二人はその豪勢な光景に目を輝かせるも、すぐに現実に戻って、躊躇するような表情を見せた。

 

「これは配って良いやつだよ。あの人は直接言わないけど、仕入れた商品の中にわざと帳簿に載せてない物があるんだ。後はあたしの給料(とりぶん)に、謎のボーナスが付いてる事もあるね。"子供達に何か配ってこい"って合図だよ」

 

「困った人ね……。そんなだから子供達に怖がられたままなのに」

 

 マチの説明に対して、パクノダは心底呆れたといった風に言葉を漏らした。素直じゃないなんてレベルじゃない。もはやツンデレである。例のアレはツンデレである。

 

「本人に帳簿や給料が間違ってるって指摘しても、"うっかりしてたぜ"って言って、直そうともしないよ。なんだかかわいいよね?」

 

「かっこいいなあ……」

 

「男の子ならそう思うんだね」

 

「意味が分からないわ」

 

 そんな風に3人で話していると、友人のシーラとサラサが教会に入って来て、床に散らばった品々に対して驚きを露わにする。そんなこんなで、噂を聞き付けた子供達が、にわかに教会に集まって来た。

 

 荒くれ者のウボォーギンやフィンクスとフェイタンも、品物を全部奪い取ってやろうと、意気揚々として教会に突撃して来たが、マチの顔を見た瞬間、うげっと嫌そうに顔をしかめてすぐに大人しくなった。

 

 後は滅多に食べる事が出来ないお菓子や、普段身に付けているボロ布とは段違いの綺麗な服の数々を前にして、当然の如く盛大なパーティーが始まる。

 

 

 

 

 

 その日の夜、マチがこの事を例のアレに話したら、「オレの物を勝手に持って行きやがって……、クソガキ共が……」とか悪態を吐いていたが、それ以上は何も言って来なかった。すごくいい人かも知れない。

 

 

 

 

 

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 子供達が教会でパーティーをしている頃、ジョネスは工場の前で穴を掘っていた。ザクンッ! ザクンッ! とショベルが地面に突き立てられる轟音が辺りに響き渡る。一発ごとにとんでもない量の土を掬い上げて、ものの数分で大人が2人分入る程の大きな穴が完成した。

 

「ヘコーッ!! ヘコーッ!! もごおおおっ!!」

 

「コーッ!! ホーッ!! むごおおおっ!!」

 

 そのそばで、針で僅かに穴を開けたビニール袋を被せられて、後ろ手に拘束された二人の男女が、呼吸を制限された苦しみにのたうち回っている。

 

 街の外のとあるマフィアを後ろ盾にした、流星街で活動する人攫い組織に所属する夫婦だ。二人が所属する組織を潰された報復として、ジョネスの自宅兼職場である工場を襲撃したものの、あえなく失敗に終わって今に至る。

 

 彼らはジョネスがいつもの様に工場の前で機械を修理していた所に、突然車で乗り付け、彼に向かって短機関銃(サブマシンガン)を乱射した。その弾がジョネスにダメージを与えたのかどうかは、もはや描写する必要も無いだろう。

 

 そして、辺りに置いてあった商品や自宅の壁が、長老会からの手配書で見覚えのある二人に滅茶苦茶にされた事にキレたジョネスが、彼らを殺さずにわざわざ拘束して、現在の状況になっている。

 

 穴を掘り終わったジョネスは、もがき苦しむ夫婦に近付くと、その腹部を強かに蹴り上げた。

 

「かぼぉっ!!」

 

「かっ!? おえええ!!」

 

 ビニール袋の中で嘔吐し、窒息寸前の二人をしばらく眺めた後、ジョネスはゴム手袋を装着して、夫婦の頭に被せられたビニール袋を破り取る。

 

 絶対絶命の窮地から脱出した二人は、未だに荒い呼吸を繰り返していたが、目の前に作り上げられた真新しい()()()()()を見て、戦慄した。

 

「お、おい待て。何をする気だ!?」

 

「せ、せめて殺してからにして!?」

 

 二人の絶叫も馬耳東風といった様に、ジョネスは何も言わず二人の髪を掴んで乱暴に穴の底に夫婦を投げ入れると、何の躊躇も無く、再びシャベルを手に取って、犠牲者の上に先程掘り起こした硬い土を被せ始めた。

 

 ()()されながら、怨嗟に塗れた言葉を吐き続ける二人の声が遂に聞こえなくなると、手袋を投げ捨てながらジョネスは無表情のまま独り呟いた。

 

 

 

 

 

「手遅れなんだよ」

 

 

 

 

 

 それは誰に向けた言葉だったのか。

 

 ジョネスは最近、顔を見せなくなった、数人のマチの友人達を思い浮かべて、滅茶苦茶になった工場の片付けを始めた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ある日のことである。

 

 シャリリリ!! シャリリリ!!

 

「く、くそぉ……。今日も駄目か……」

 

「……強過ぎるね……」

 

 研磨機で愛用の包丁を研ぐ怪人の前に、二人の少年が倒れ伏していた。今日こそ"工場"の主人をぶっ倒して、金目の物を全て頂こうと画策していた流星街随一の悪ガキ、フィンクスとフェイタンのコンビである。

 

 基本的にこの二人は、子供達の中で突出した強さを持つ、ライバルのウボォーギンに対抗するために、いつの間にか二人でつるみ始めた。

 

 気の合う二人にとって、そんな馴れ初めはもうどうでも良いのかも知れないが、とにかくこんな怪人に挑むときも一連托生だ。

 

 そんな二人を完膚なきまでに叩きのめした男は、包丁の刃を太陽に翳して、刃こぼれが直った事を確認すると、少しだけ髭を剃って切れ味を確かめる。切れ味に満足すると、包丁を空中でくるっと一回転させてからキャッチした。ジャグリングに失敗して完全に刃の部分を握っているが、不思議なことに手の平には傷一つついていない様だ。

 

「おっと、また刃こぼれさせる所だったぜ……」

 

 そう呟いて、照れ臭そうにポリポリと頭を掻くと、包丁の柄を握り直して眼前の二人に向き直った。

 

 

 

 

 

 殺される。

 

 

 

 

 

 フィンクスとフェイタンは覚悟したが、同時に、相棒と一緒に逝ける事に奇妙な充足感があった。所詮、この世界はクソで、誰が他人よりも早く脱出するかのレースか、誰が他人よりも長く生きるかのゲームでしか無い。生まれた時から過酷な環境に置かれて来た二人は、こんな状況でも何故か恐怖を感じなかった。

 

 

 

 

 

 彼らにとっての死神が、こちらに向かってゆっくりと歩を進めて来る。

 

 

 

 

 

 そして、包丁を懐にしまって、そのまま横を通り過ぎると、敷地の隅に建てられたガレージのシャッターを開けた。

 

「クソガキ共!! いつまで寝てんだ!? さっさと来い!!」

 

 その声に反応して、二人が何とか気力を振り絞って顔を上げると、工場に置いてある雑誌に載っていたような立派なバイクを押して、こちらに向かって来る死神の姿が見えた。

 

 まるでおとぎ話のように、死神が傷付いた旅人に語り掛ける。

 

「ほら、やるよ。好きなんだろ? いつも雑誌読んでるじゃねえか。クロロと違って、バカ丸出しだな」

 

 死神は事もなげにそう言い放った。

 

「……なん…で」

 

 息も絶えだえに絞り出したフィンクスの疑問に、死神はキレる。

 

「あぁっ、文句でもあんのか!? オレの特製だぞ!! 

 伝統の750ccに直管マフラー。……夜にオレん家の前で走ったら解体する(バラす)からな? 

 イカしたロケットカウルに、二人乗り用のエビぞりシート。……出来ればウボォーの馬鹿にぶちかましてやれ。

 ホーンもサイドもテールも変えてある。ウィンカーもクリアレンズだ。……良く考えりゃ流星街(ここ)だとウィンカーは必要ねえな。 

 仕上げにゴミ山がモチーフの塗装だ。……反骨精神に溢れてやがるぜ。

 ほら、持ってけ」

 

「……ワタシ達そんな事聞いてないね。どうしてだ?」

 

 フェイタンの言葉足らずな質問に、死神は一つ舌打ちをして答えた。

 

「乗り物は誰かが乗らなきゃ、意味がねえだろう?」

 

「……答えになってない……。何でワタシ達にくれるか?」

 

「……」

 

 死神は絶対に言いたくなかったことを無理矢理引き出されそうになっている事に、歯噛みして押し黙った後、少ししてから、しかめっ面で口を開いた。

 

 

 

 

 

「お前ら今日、誕生日だろうが? フィンクスは東地区で廃鉱夫やってたモハメドの息子だろ。フェイタンは北地区でクリーニング屋やってたリータンの息子だ。流星街の横の繋がり舐めんなよ? ちょっと長く住んでりゃ、大体分かってんだよ」

 

 

 

 

 

 二人は生まれて初めて知った生年月日と、生まれた日に物をくれるなんていう良く分からない文化が理解出来ず、結局、質問の答えになっていないと再び怒り出した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 流星街の一角に勝手に設けられた操車場で、とある一団が共食い整備した自動車やバイク、まだ使えそうなパーツを、次々とキャリアカーやトレーラーに積み込んで行く。

 

 全てが彼らの手を通じて、近年、経済成長著しい"カキン王国"に輸出される予定の商品だ。

 

 そんな一団に近付く影が一つ。

 

 Tシャツにジーンズという飾り気の無い格好をした、如何にもゴミ山の住人ですといった風情の男だ。

 

 国際的密輸組織"サブマリン"のメンバーは、不用意に近付いて来た人権も戸籍もない世界のゴミに対して、脅迫の言葉を投げ掛ける。

 

「ここで何してんだクズが!! こいつらの価値も分からねえてめえらが近付いて良い場所じゃねえんだよ!! 死にたくなきゃ尻尾巻いてお家に帰りやがれ!!」

 

 それでもなお歩みを止めない男を、"サブマリン"の荒事担当の大男達が取り囲む。既に一線を踏み越えた男がリンチされる様子を楽しむ為に、一同は一旦、作業の手を止めて、そのやり取りを下卑た視線で観察する。

 

 

 

 

 

「……"我々は何ものも拒まない、だから我々から何も奪うな"……か。結構かっちょいいな。3日間の会議(飲み会)の末に決まっただけはある。しかし、しかし……」

 

 

 

 

 

 恐怖からだろうか? 男は何事かをブツブツと独り呟くと、取り囲む大男達に向かって腕を振り抜いた。

 

「えっ?」

 

 男の腕の一振りで正面にいた大男の腹部が引き裂かれ内臓が露出し、そのままの勢いで隣にいた人間にまで、深く深く()()が突き刺さる。

 

 

 

 

 

「仕事が増え過ぎだろうが……!!!!」

 

 

 

 

 

 激怒したジョネスが、危機感がまるで足りていない密輸組織を蹂躙した。

 

 その後、正当な"取り分"としていくつかの車やバイクが彼の工場に運び込まれたのを、流星街の子供達は知る由もない。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ある日のことである。

 

 クロロはゴミ山に埋もれていた一本のビデオテープを、"教会"で自分と同じ境遇の子供達に向けて上映した。内容はキャプテン・マッスルでは無く、世界中で大人気の戦隊ヒーロー。"清掃戦隊カタヅケンジャー"の傑作回だった。

 

 仲間達と協力して、外国の言葉を自分達の言葉に吹き替えた内容だったが、クロロは声色を使い分けて、複数の登場人物を一人で演じ切るという離れ技を披露する。

 

 途中でビデオテープが再生出来なくなるハプニングに見舞われるも、彼のアドリブによって会場の心を掴み続けた。

 

 その結果、見事、今まで彼をイジめ続けて来た荒くれ者達の心をも掴んだクロロだったが、最初から最後まで彼を手伝ってくれた友人のサラサが、劇の後片付けの際にいつの間にか会場から消えている事に気付く。

 

 

 

 

 

 世界が変わる、瞬間だった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 教会でビデオが上映されている頃。

 

 煙と悪臭を放つ廃棄物の谷にて、道無き道を一台の車が走っていた。

 

 "何人殺したら終わるんだ?"と、とある怪人が呆れるくらいに、もう数え切れない程にいる、流星街の住人を狙った人攫い集団の一員である。

 

「この街も大分警戒が厳しくなってきやがったな……。

 遂に一人も攫えねえと来た……。

 だが流星街の()()に殺される前に、何とか上納分のノルマは達成できた……。ここでの狩りもそろそろ潮時にした方が身のためだ。

 最後に()()見つけたら、たっぷり遊んでいくか…くくく」

 

 人攫いの男がやっと命懸けの任務を終えられると、安堵の表情を浮かべた。それと同時に溜まっていた欲望が我慢し切れなくなり、二度と戻る事はないこの街での記念として、助手席の足元に置いた工具箱に入っている自慢の"道具"で、人生最高の楽しみを得る事に思いを馳せる。

 

 

 

 

 

 その時、車の目の前にふらりと大柄な人影が現れる。

 

 

 

 

 

 このままだと現れた()()の男を撥ね飛ばしてしまう。人攫いの男は、ブレーキを掛けようかと思ったが、良く考えたら流星街の人モドキなどに配慮はいらない事に気が付いて、眼前に現れた相手に向かってそのまま突っ込んで轢き殺すために、更にスピードを上げる。

 

 その間ずっと、男は片腕を猛スピードで突っ込んで来る車に向けて、こちらを見て棒立ちしているだけだった。

 

 

 

 

 

背負い妖(オバリヨン)

 

 

 

 

 

 "壁"に激突した車のボンネットがぺしゃんこに潰れ、フロントガラスが粉々に砕け散り、人攫いの男はそのまま車の外に投げ出された。

 

「シートベルトしめろよ、マジでな……。死なれたら困るんだよ」

 

 車に轢かれたというのにピンピンしている大柄な人影。ジョネスは事故った男に対して呆れた風にそう呟いた。投げ出された男を受け止めたジョネスはそのまま男を地面に降ろす。

 

「お、おう……? ありがとよ」

 

 状況が全く理解出来ない男は、動揺しながらも命を救われた礼を返した。ジョネスはポンポンと安心させる様に男の肩を叩く。

 

 

 

 

 

 そしてそのまま()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 突然の鋭い痛みに人攫いの男は絶叫する。ジョネスはそれを見ながら、何の感情も抱かせない低い声で言った。

 

「長老会からの依頼でな。ご同行願おうか」

 

 そのまま男の両手足の骨を素手で叩き折ったジョネスは、マルローの力を借りるために、男を担いだまま長老会の所有する建物に辿り着く。

 

 その後、5分も掛からず人攫い集団の本拠点が割れた。流星街の監視網が厳しくなり、もう収穫も少ないので撤収する準備をしている様だ。急がなければならない。ジョネスは倉庫に預けて置いたとっておきのトラックに乗って、仕上げの仕事へと急行した。

 

 

 

 

 

 人攫い集団の本拠地と化した廃ビルの前にトラックで乗り込んだジョネスは、それはそれは手厚い歓迎を受けていた。廃ビルの前にずらりと並んだならず者達が武器を構えて、ジョネスを半包囲している。

 

 拳銃(ハンドガン)散弾銃(ショットガン)短機関銃(サブマシンガン)突撃銃(アサルトライフル)。まるで武器の見本市だ。

 

 恐らくボス格なのだろう。人攫い集団の中から仕立ての良いスーツを着た男が、一歩、前に歩み出て言った。

 

「来ると思っていたよ、"狼男"。撤収する前に、君にはこのビジネスを台無しにしてくれた罰を与えなきゃねえ」

 

「とっとと尻尾巻いて逃げりゃ良いものを……。オレを待ち伏せしてたって事か」

 

「ここ数年で、君の肉弾戦の実力は良く分からされたが、ここは諦めたまえ。この距離からの一斉掃射なら、一瞬で蜂の巣だ。

 

 火力が違い過ぎるのだよ。火力が」

 

 男は己の優位を確信してそう言い放った。まあ、もちろんジョネスに銃弾なんて大して効かないのだが、彼にとっても少し面倒臭い状況なのは確かだった。掠り傷とか軽い打撲くらいのダメージは受けるかも知れない。

 

 だが、こんな事になるんじゃないかと思って、このトラックに乗って来たのだ。ジョネスがウィング式トラックの荷台を、上開きに大きく開け放つ。

 

 余談だが、最近、カシフニスタン内戦が終わったというニュースを聞いた。人権も国際法も無視する独裁国家だった中央政府への、宗教原理主義勢力の反乱であった。どっちに転んでも地獄みたいな政体同士の内戦だったが、サヘルタ合衆国としては同時多発テロ以降の宗教敵視から、秘密裏に相容れないはずの中央政府側を支援していたという噂だ。

 

 そこで使われたサヘルタ製の兵器は、証拠隠滅のためだろう。いつの間にかどこかに消えて、初めから存在しなかった事になったらしい。何とも不思議な話である。

 

 

 

 

 

「確かに火力が違い過ぎるな」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 ジョネスがトラックからひょいっと下ろして、人攫い達に向けて構えた、6本の砲身を持つ機関砲を見て、スーツの男は間の抜けた声を漏らした。

 

 "バルカン"である。

 

 "ミニガン"じゃなくて、航空機とかに積む20mmガトリング砲である。

 

「武器を間違えたかも知れねえな……。

 

 こいつは撃たれてから死ぬまでが早過ぎて、もはや痛くねえらしい。

 

 冥土の土産だ。オレからの最後の慈悲をありがたく受け取って、泣き喚きながら、全員仲良く、()()()()()()()()()()

 

 普通の銃声とは程遠い、紙を引き裂いたような音がしばらく続き、廃ビルと組織は完全崩壊した。

 

 

 

 

 

 後日、人攫い組織達のバックにいたマフィア達に向けて。大量のペットボトルが届いた。中はずた袋に梱包出来なかったのであろう、腐臭を放つ()()が、みっちりと詰められていたらしい。

 

 同時にとあるメッセージが同封されていた。

 

 

 

 

 

 "我々は何ものも拒まない、だから我々から何も奪うな"

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 その日の夕方、"例のアレ"こと"ジョネス"が工場に戻ると、中でマチも含めた子供達がそこら中にビデオテープを散らかして、あーでもないこーでもないと白熱した議論を重ねている光景に遭遇した。

 

「あっ、ジョネス。おかえり」

 

「マチ、一体何なんだこりゃ? コレクションを雑に扱われてちょっと今、キレそうなんだが」

 

 

 

 

 

 マチが言うには、教会での上映会が終わった後、ジョネスの工場になら"カタヅケンジャー"の他のビデオがあるはずだと思ったサラサが、この工場に忍び込んだ事が発端らしい。

 

 

 

 

 

 そして、案の定、ジョネスの倉庫にあった全話コンプリートセットを見つけて、興奮の余り現在進行形で騒いでいる他のメンバーを工場に呼び込んだのだとか。

 

(事情は大体分かったが、この散らかり具合は……)

 

 ジョネスがマジでキレる寸前なのを感じ取ったマチは、慌てて他のメンバーに協力を呼び掛けて、大急ぎでカタヅケンジャーの片付けを開始する。ジョネスはその姿を見てにわかに機嫌を直すと、渋々と言った面持ちでクロロ達に提案した。

 

「……片付けが終わったら飯にするぞ。もう遅いから、今日はウチで食ってから、そのまま泊まってけ」

 

 夜更かししてビデオを見れる事が確定したクロロ達は狂喜乱舞した。

 

 ジョネスはそれを見て、「うるせえ」と一言だけ言い残すと、肩を回しながらキッチンへと向かって行く。大仕事を終えて帰って来た所なのに、今日は大人数の夕食を用意する必要があるので、気合いを入れて作らなければならない。

 

 どっと疲れが出るも、自分のコレクションであれだけ盛り上がっている子供達を見て、決して悪くはない気分だった。

 

 コレクターの機嫌を取りたかったら、その蒐集品を出来るだけ褒めてやると良い。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ゴラァッ!! サラサァ!! オレの唐揚げにレモン掛けんじゃねえよ!! 解体する(バラす)ぞ!!」

 

 

 

 

 




前書きの"残酷な描写"を心配した? 世界が変わった瞬間でしたね。

子供達の視点では、頑なにイレギュラーであるジョネスの名前が描写されておらず、別世界からの干渉を受けつつも、原作通りに推移しようとしている世界線。

そして、ジョネスの視点では彼というイレギュラーの介入により、原作世界を捻じ曲げようとしている別の世界線。

最後のシーンで"例のアレ"がジョネスだと明言され、二つの世界線が収束してこの二次創作の世界線になる……。
みたいな超大作SFと叙述トリックが融合した様な、どう考えても素人が扱いきれる訳が無い内容を構想して書きましたが、案の定、失敗しています。草。
 自分の実力を正確に把握していないと、こういう事になるという教訓として、深く考えずにお楽しみ下さい。

……原作救済は達成できたんだから、この先、休載しても許して下さい。オナシャス。
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