現代編です。皆様の温かい感想、評価を受けて、新しく書き上げた話になります。ジョネスがやらかしてしまった(原作改変)のは、何なのか。君達はその一端を知る。
本当は新章の1話目にする予定だったのですが、書いてる内に興が乗って、書きたい物を滅茶苦茶に詰め込んだため、時系列が怪しい話になってしまいました。深く考えずにお楽しみ下さい。
タコピー並の原作改変……。続きに困る模様。
これから前とか後に新しい話をぶち込むかも知れません。
読みたい話があったら活動報告にカキコ。
被保護者との最後の一夜(次に会う時は娘では無い)。
演じ過ぎて自分が分からなくなり、本物の
二本立てです。
お納め下さい。
ジョネスはいつか流星街から出て行く。
そんな噂が流れ始めたのはいつ頃からだったか。間違いなく、いつだったかジョネスがヨークシンシティでの大きな仕事を終えてからだろう。ジョネスは2種類の"呪物"を手に入れて以来、その妖気に魅入られた。
別に性格が凶暴になったとか、工場の仕事を辞めたとかではないのだが、何かにつけてはゴミ山を漁り、長老会に新たな報酬を催促し、外部の世界の情報を熱心に収集していた。彼が新たなコレクションを求めているのは明らかだった。
そして、流星街にいてはそれが叶わないのも明らかだった。
世界に捨てられた街で、そのような貴重な品が出回る筈がない。正確には本当に危険な呪物は流星街に廃棄されることも多いので、彼のコレクションは数を増していたが、所詮はただの運任せ。彼の希望を満たすほどの数には至らない。
流星街の人々は動揺した。ジョネスを失うかも知れないという段階になって初めて、どれだけの人間が彼を頼りにしていたか気付かされたのだ。
夜の工場にて、長いような短いような月日を経て、確かな絆を持つに至った義理の家族が、しめやかな雰囲気で食事をとりながら今後についての会話をしていた。
ジョネスから切り出された、街の外での活動を主体にしたいという事実上の家出宣言に、マチは悲しげな表情で俯いた。
「……工場の仕事はもう機械の転売だけじゃねえ。お前の服も売れてるし、最近は外から仕入れて、この街で売るだけの小売が仕事のほとんどだろう?」
「……そうだね。クロロ達もいるし、あんたがいなくても仕事は問題ないよ」
「武力的にもな、この街はもう心配いらねえ。外の仕事をいくつかやって分かった。あのバカ共は天才だ。その辺の念能力者なんて一蹴しちまう実力が既にある。お前も含めてな」
「……仕事とか……力とか……、そんなのは問題ない……。あたしだってそれは分かってるんだよ……。でもジョネス……あたし達があんたに求めてるのは……、そんなのじゃ……そんなのじゃ……!!」
「……? 釈然としねえな……」
俯いたまま涙をこぼすマチの姿にジョネスは首を傾げる。
流星街でやらなきゃいけないことは全部やったはずだ。全てを放り出して出て行くほど自分は薄情じゃない。不本意だが悪ガキ共は街を守れるほどに鍛えてやったし、長老会と協力して、街に仇為す者への報復体制をとにかく苛烈な形に整えた。マルローとクロロと協力して、街の
工場を経由して街全体の生活も徐々に向上している。以前から進めていた第二工場の立ち上げも、もうすぐ終わる。
第二工場はゴミ処理場だ。世界各国と表に出せない交渉を重ねている。表社会も裏社会も、世界は処分して欲しい物に溢れているのだ。必ず成功する、長老会とジョネス肝煎りの外貨獲得事業である。
鍵となる神の如き力を持つ具現化系能力者も育て上げた。
何なんだあの怪物を超えた怪物は? 掃除機が無限に物を異空間送りにするって、頭おかしいのか? 実際ちょっとおかしい子だが……。もはやこの街は核廃棄物も薔薇の不発弾も受け入れられるぞ? それがどれだけの利益を生み出すと思っている?
世界各国との繋がりができれば、その後は流星街の国際承認が待っている。世界が隠したい物を捨てる場所、弱味なんて幾らでも握れる。
念能力者の軍隊を抱える街が国際的に宙ぶらりんなんて、ハンター協会が放っておくはずもない。流星街は既にハンター協会の副会長と秘密裏に接触している。すごく良い人だった。依頼料を3割中抜きするだけで、人権も戸籍も無いオレ達の面倒を見てくれるなんて聖人か?
会長の方にもツテがある。外堀りを固めてからゾルディック家のゼノ経由で働きかけたら良い。
これ以上、オレに何を求めるというのだ?
しばらくの沈黙の後、長き渡る逡巡を経て、もう泣くのをやめたマチが顔を上げる。そして、ゆっくりと口を開いた。
「ジョネス、大好き。たまには帰って来てね」
マチは花が咲いたように笑って、そう言った。
「……おいおい、
「さあね? あんたがそう言うことも分かってたよ」
「……止めねえんだな…、家出」
「あたし達の都合で、ジョネスがやりたいようにやれないなんて、それこそ恩を仇で返すってやつだからね。あんたが一番嫌いなやつだ」
「良く分かってるじゃねえか。
「あははっ! そのジョークもしばらくお預けだね」
いつもの様に無意味でくだらなくて、でも確かに価値のある話をしながら、流星街の夜は更けて行った。
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図書館から明かりが漏れている。
もう閉館時間はとっくに過ぎている。
何度目だろう。ジョネスはもう怒ることも無い。
慣れたというのもあるが、
頼りげない少年だった頃から、彼のことは良く知っている。いつの間にか子供達のリーダーになり、いつの間にか超一流の念能力者となって、いつの間にかジョネスの手掛ける"仕事"を、その明晰な頭脳とカリスマで手助けするようになった。ジョネスにとっても慣れない、規模が大き過ぎる仕事の中で、もう何度彼に助けられたか分からない。
ゴミ山に独り、生まれる場所を間違えた男。
だが、こんなにも手が掛からない子だったのに、何故かジョネスにだけは普通の子供のように迷惑を掛け続けた。何度工場を無茶苦茶にされたか分からないし、彼のやらかした事の尻拭いだけで、どれだけジョネスが奔走する羽目になったか数え切れない。ジョネスの大事な
ジョネスが図書館内に入り、明かりの灯る場所へ向かうと、初めて工場にやって来た時と同じように、彼は悪びれもせず溢れんばかりの笑顔を浮かべるのだった。
「クロロ……、これで年100回目の訪問だな……」
ジョネスは呆れたように問い掛ける。名前を呼ばれた青年、クロロはその嬉しそうな表情とはちぐはぐな声色で答えた。
「久しぶりだな、ジョネス」
「……なんかデカい仕事だったのか? しばらくぶりだし、リーダーの演技が抜け切ってねえぞ」
「おっと。すみません、ジョネスさん。今日はあなたに会いたかったんですよ」
「もうお前の不法侵入は諦めてるから、大体無視してるんだがな?」
「今日は来てくれると思ってました」
クロロはいきなり真剣な顔になると、本題を切り出す。
「ジョネスさん、
「……いや、愛想が尽きた訳じゃないし、今生の別れって訳でもねえよ。マチにも勘違いさせちまった。頻繁に帰って来るつもりだ」
ジョネスが街中で重大に受け止められ過ぎている家出話をやんわりと訂正すると、クロロはどこか安心した様な表情を浮かべる。
「なあんだ、それは良かった。オレ、ジョネスさんにずっと聞きたかったことがあって、もう二度と真相を聞けないのかと思ってたんですよ」
「何だ?」
ジョネスが単刀直入に聞くと、クロロは笑いながら真剣なオーラを浮かべるという、無駄に器用な芸当を披露しながら、こちらも単刀直入に答えた。
「どうしてオレを、殺さなかったんですか?」
親しげな空気とは裏腹の物騒な質問に、流石のジョネスも面食らった。
「ジョネスさんには甘え過ぎました。冗談では済まされないくらいの迷惑を掛けたことも自覚してます。
そして、その人の本質がはっきりと出る特質系の"発"。オレの場合、他人の能力を永遠に奪い取るなんて悪辣極まりない物。生かしておいても碌なことにならないなんて、あなた程の人なら簡単に思い至ったはずだ」
クロロの"オレを殺してくれ"とも取れる様な言に、ジョネスは黙って耳を傾けるだけだった。クロロは堰を切ったように続ける。
「だと言うのに、あなたはオレを甘やかし、保護し、一人前になった後には、自分の抱える重大過ぎる仕事にオレを抜擢したばかりか、自分は巧みに仕事を抜け出して任せっきりにする始末。
……オレには理解できません。街を出る前に、今からオレを殺しておきませんか? 最後のチャンスですよ?」
出会う者、皆に慕われるクロロの、隠していた本音の自己嫌悪を前にして、ジョネスは一言だけ答えた。
「は?」
「えっ」
ジョネスは本気で首を傾げて、気の抜ける様な疑問の声を上げた。クロロはジョネスのその反応に、先程のお返しの様に面食らって、反射的に素の驚きの声が出た。
ジョネスはごほんと一つ咳き込んで気を取り直すと、これは誤魔化せねえなと覚悟を決めて、クロロの本気の質問に答える。
「お前の持ち込んで来る問題なんて、オレにしちゃ取るに足らないものだ。
オレを誰だと思ってんだ? 流星街最強の怪人、
お前らをボコして矯正するのもストレス発散になったし、結果的に将来の、いや、
クロロはジョネスの間の抜けた答えに呆気に取られるも、気力を振り絞って、まだ答えて貰っていない部分を指摘する。
「オレの念能力についてはどうなんだ? これがオレの本質なんだから言い訳出来ない……。自分が嫌になる……。
いつも隣にいてくれる仲間達が、本当はオレに能力を奪われる事を恐れているんじゃないか? 仲間達の笑顔を見る度に、いつもそんな事を思って、オレに媚を売るためだけの偽物のように思えてしまう。
教えてくれ、ジョネス。誰にも話してないけど……、オレの本当の両親は……盗賊だったらしいんだ……。
やっぱり泥棒の子供は、泥棒なんじゃないか……」
今まで誰にも言った事がない本音を話す事が怖くて、既に泣き出しそうになっているクロロを前に、ジョネスは一言だけ答えた。
「は?」
「……っ」
良く分からんやり取りで、遂に泣き出してしまったクロロに対して、ジョネスは本気で動揺して、ゆっくりと近付いて頭を撫で始めた。正直、考えを整理する時間が欲しかった。
(他人の念能力を奪う? 何言ってんだこいつは。てか何で泣いてんだ? いい年した大人だろ。マチといい、こいつといい、最近の若者は軟弱でけしからんな)
ジョネスがあらゆる時代、あらゆる地域で繰り返されて来たような思考を言葉に出そうか迷っていると、クロロはしゃくり上げながら、何とか最後の質問をジョネスに投げ掛けた。
「……ジョネスさんは、オレの能力を否定しないんだね。なんでですか?」
ジョネスは、またしても訳が分からないといった表情を浮かべると、クロロの頭を撫でたまま、ポリポリともう片方の手で頬を掻くと、クロロと視線を合わせて、問答に終止符を打つように強く言い放った。
「お前の能力は、制約が厳し過ぎると思わなかったか?
特に"相手に念に関して質問し、相手がそれに答える"って部分と、"本の表紙の手形と相手の手の平とを合わせる"って部分だ。
オレとの仕事で、散々経験しただろ? まるで契約だ……。それは基本的に相手との合意がなけりゃ達成出来ない条件だ。
お前の能力は"敵の能力を奪う能力"じゃなくて、"仲間の能力を集めて、自分だけが体を張って敵と戦う能力"だ。
何が永久に奪うだ。確か、能力は自由に返せるんだろ?
お前が昔、好きだった……。何だったか? "カタヅケンジャー"の最終回がそんな話だったよな? 確か、クリンレッドが仲間達の力を結集して、クリンレインボーになって世界を救ったよな?
お前は自分だけが傷付いて、仲間達を救おうとしてるんだよ。
それがお前の本質だ」
クロロはもはや、溢れ出る涙を止めることが出来なかった。
そんなクロロに対して、ガラにも無くいい話をしてしまったと感じたジョネスは、照れ隠しにまたもや悪態を吐く。この男と関わった人間は、3日くらいでそれがただの照れ隠しだと気付くのに、何故、無駄な行動を繰り返すのだろうか。
「お前が"発"を手に入れた時、内心、ガキ臭くて爆笑しちまったぜ。一緒に仕事して、制約が判明して行く度に、こっちは笑いを堪えるのに必死だ。
クールなツラしてる癖に、あんな子供騙しの戦隊モノが心の中の重要な部分を占めてるのかよ。
何が持ち主の心の闇に思いを馳せるだ。光にも目を向けないと、その能力を楽しみきれねえぞ」
仲間達を安心させるようないつもの笑顔が戻ったクロロが、相変わらずジョネスのことをからかう。
「……何でジョネスさんがみんなに愛されてるのか分かったよ。あんた馬鹿なんだね!!」
「10回目だぞ」
すっかり大人になったクロロの頭に、もう何回くらったかも分からない狼親父のゲンコツが落とされる。
相変わらず、ちっとも"念"の込もっていない優しくて温かい拳だった。
マチはかわいい(真理)。
クロロ救済(なお作者は休載)。
どれくらいかかるか分かりませんが、ストックが尽きたので、休載します(原作再現)。
安心して下さい。書くつもりはあります。
みんなで協力してH×H二次創作界隈を盛り上げて下さい。復活が早くなります。