流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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はい、今日は早かったでしょう。
もっと褒めてぇ……。

ただし確実に毎日投稿する訳じゃないからな。皆様が温かい感想をくれるから作者はやる気がカンストしているのです。

前回、メンチ死んだ? かわいい子は殺さないよ(ゲス外道)。

ジョネスは果たして本当に計画無しのアホなのか!?
お楽しみ下さい。

あと、メンチが何でこの密漁密林にいたかというと、密漁の為です。
嘘だろお前!?
将来シングルハンターになる女は頭がおかしい……。




23.サカナ×ノ×ショウライ

 

 

 

 心地良くないまどろみの中で、パチパチと激しく焚き火が弾ける音と、本能に訴えかけるような香りを感じた。このシェフは腕がいいな。料理を分かっている。泥抜きは念入りに行なったようだ。香草を組み合わせるセンスもいい。

 

「んっ」

 

 気絶していたメンチが目を覚ます。ぼやけていた視界が徐々に覚醒すると、親子のようなサイズ差の2人の男女が巨大な魚を料理している所が目に入った。

 

 彼女が目を覚ました事を背中越しに察知した大男が振り返ってこちらを見た。その顔を見てトラウマが再発したメンチの顔が真っ青に染まる。

 

「目ぇ覚めたか。案外長かったな」

 

「ひっ」

 

 覚えている。先程、川からいきなり飛び出して来たビッグフットだ。正義感から密漁者を検挙しようとした所、割って入って来たこいつにいきなり襲い掛かられ、メンチは手も足も出ずに完敗した。

 

 咄嗟に逃げ出そうとするも、手足を不思議な硬いオーラの塊で拘束されており身動き一つ取れない。全快だったら無理矢理抜け出せたかも知れないが、病み上がりで"纏"さえ不安定な状態の彼女には成す術も無かった。

 

「あ〜っ、メンチ!! 起きたんだ、おはよう!!」

 

 その怪物の影に隠れていた元気いっぱいな少女の顔を見て、これまたトラウマが再発した。

 

「ひっ」

 

 さっき対峙した密漁者だ。斬られれば斬られる程喜んで迫って来るイカれ具合を見せ付けられていたメンチは、彼女の笑顔を見るだけで恐怖から声を漏らしてしまった。

 

 その反応に少女は頬を膨らませて抗議する。

 

「何その反応? 友達が話し掛けてるのに悲鳴?」

 

「エルマ、何が友達だ。殺り合ったばっかの仲じゃねえか」

 

「えぇ〜、もう友達でしょ? ジョネスには経験ないの? 戦った相手と友達になる事」

 

「……」

 

 "ジョネス"と呼ばれた男はハッとしたような顔をして、オークションが終わった後に、手に入れたコレクションを自慢しに行こうと思っていた某暗殺一家の大黒柱の顔を思い浮かべて、「なるほど」と呟いた。

 

「理解した。それは友達だな」

 

「でしょ〜」

 

 よく分からない談笑を続ける2人の姿に毒気を抜かれたメンチは、もう諦めたといった様に仰向けに寝転がって、投げやりに問い掛ける。

 

「私の負けかぁ。口封じに殺しとかないの?」

 

「フン、殺す価値もねえな」

 

「またまた照れちゃって、流石に密漁した自分の方が悪いと思ってるから、罪悪感で殺さないんでしょ?」

 

「……」

 

 黙り込んでそっぽを向いてしまったジョネスの足を、指でつんつんと突っ付きながらエルマは笑ってそう言った。

 

 何とも微笑ましい光景に完全に力が抜けてしまったメンチは、なるようになれと寝返りを打って、2人に背を向けた。

 

 

 

 

 

 その時、信じられない物を目にした。

 

 

 

 

 中に水を入れて膨らませた天然ゴム製の携帯用水槽の中に、()()()()が長いヒレを美しく揺らがせながら、悠然と佇んでいた。

 

 しかも、2()()も!!

 

 メンチは縛られたまま、バッと飛び起きて芋虫のように這って水槽のそばに近寄ると、その魚をマジマジと見て確証を得た。

 

「ウッソ!? "アピロラルワナク"!? まだ絶滅してなかったんだ!! あんた達、早く拘束を解きなさい!!」

 

「何だ突然元気になって? 縛られたまま頑張って動くのは滑稽だな」

 

「メンチ、どうかしたの?」

 

「あんた達、こいつの価値が分かってないの!? 世界一美しく()()()()()()()魚の一つよ!!」

 

「……お前、まさか」

 

 水槽に顔を押し付けながら、目をキラキラと輝かせるメンチの姿を見て、ジョネスはこいつマジかって極限に呆れた顔を見せた。

 

 

 

 

 

「もう食べられないと思ってた!! 2匹いるんだから良いでしょ!? 調理して食べましょう!!!! 早く拘束を解けえええぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 暴走し始めたメンチを見て頭を抱えるジョネス。エルマは新しい友人の突然の醜態にゲラゲラと指を指して笑っている。

 

「ジョネス、解いてあげて良いんじゃない? これでもうメンチとも()()()だね。口止めの必要もなくなるよ?」

 

「……オイオイ、オレ達は密漁者だ。そいつらが捕獲した絶滅危惧種をあろうことか「食べる」それって「違法」って事だぜ?」

 

「遵法精神なんて好奇心に比べたらクソくらえよ。私は絶対にこの魚を「食べたい」の」

 

「ナアナア、こいつらはオレ達が商品として捕獲した物だぜ? 最低でも1匹は確保しとかなきゃならねえ。輸送中に何があるか分からねえんだ。念の為2匹確保しとくに越した事はない。 そして、お前は密漁者を見付けたら放って置けない「健全なハンター」で「正義の味方」だろ?

 

 いつかはプロハンターになって社会に大々的に名を売り出そうっていう有望な若手ハンターだろ?

 

 しかも! アピロラルワナクはゾマホ密林のレンジャー達が必死の保護活動を行っているにも関わらず、個体数は常に減少傾向にあると聞いている。

 

 活動しているレンジャーたちの日々の苦労は想像できねえ!!」

 

 

 

 

 

「私は『食べたい』。『食べましょう』」

 

 

 

 

 

「だから気に入った」

 

 

 

 

 

 このくだり何回やるんだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「「美味し〜い!!」」

 

「うめぇ、ここまでとはな……」

 

 拘束を解かれたメンチが変化系の"発"を駆使して、あっという間にアピロラルワナクを調理すると、そのまま3人は一心不乱にその美味すぎる魚を貪っていた。

 

 素材自体の味も良いが、それを引き立てているのはメンチの料理の腕である。ジョネス特製の"親父が作った究極の男飯"。みたいな料理は流星街の連中に大人気だったので、彼自身それなりに自信を持っていたのだが、流石にこのメンチの料理のような豪快さだけでなく繊細さを併せ持ったものを食べると自信を無くしてしまう。

 

 しかし、流星街の連中がもしジョネスとメンチの料理対決の審査員をしたら、ウボォー、ノブナガ、フィンクス、マチ辺りはジョネスの男飯に軍配を上げる。マチは強化系連中にしれっと混ざるな、君はゴリラか? 彼女は割とゴリラである。

 

 ちなみに腕相撲は全員に対してジョネスが圧勝する。ウボォーなら数秒耐えられるってレベルだ。クロロ辺りを足切りとしてそれより下なら腕を折られるって段階に達する。サラサが実際に腕を折られて全員がジョネスに対して非難轟々だった。

 

「驚いたぜ、良い腕してるな。メンチ、お前今年のハンター試験は受けるのか?」

 

「何よいきなり。そりゃ挑戦するつもりよ。年下の子に大ダメージくらった挙句に、ジョネスにコテンパンにされて自信無くしてるけどね」

 

「オレとエルマも受けるつもりなんだよ。それまで料理人としてオレに雇われねえか? やってほしい事がある。半年契約6億でどうだ? 実力に不安あるならエルマと一緒に鍛えてやるぜ? ハンター試験までに久しぶりに天空闘技場で能力者ガチャやるつもりだし」

 

 能力者ガチャとかいう意味不明で不穏な単語が飛び出したが、一方でメンチは破格の報酬とこれほどの実力者の指導を受けられるというメリットに心が揺らいで行くのを感じた。本職の料理人やるだけで1ヶ月1億か……。

 

 ジョネスは汚ねえ格好してる癖に金持ちだ。

 

 流星街という企業以上国家未満の経営者の一人で、一流の仕事人だからだ。

 

 メンチにはプロハンターになってからやりたい事が山ほどある。先立つ物は幾らあっても足りない。ほとんど了承する事を決めかけていたが、念の為、一番の懸念事項を確認した。

 

「私の仕事は"合法"?」

 

 既に密漁行為でジョネスの信頼は地の底に落ちていた。ジョネスは「テメェも同じ穴の狢だろ」と思ったが、自分の好きな事の為なら法律すら厭わないメンチの姿勢に好感を抱いていた事もあって言葉にはしなかった。

 

 ジョネスが心外だといった風に荒い鼻息を吐いて、具体的な仕事内容を口にした。

 

「まずは1ヶ月後のヨークシンシティのオークションで、オレと懇意にしているマフィアの所で料理人をやって貰おう。もちろんオレとエルマも食うぜ? マフィアが相手とは言え雇われの料理人だ。これは合法だな。

 

 一方でお前の料理の修行も兼ねて、オークション期間中だけ開催される"屋台市"にも出店しようか。こっちも売り上げ最高額は優勝賞金としてヨークシンシティから5000万進呈されるな。楽しそうだから手伝ってやるよ。これももちろん合法だ。

 

 その後はオークションで競り落とした"呪物"を自慢する為に、オレの友人のもとへ向かう。あいつらに任せると問題のある(毒入り)クソみたいな料理しか出てこねえから、オレとエルマとついでにあいつらにも何か振る舞ってやってくれ。これは……合法だな。

 

 後は天空闘技場で念の才能がありそうな奴を探し出して指導して恩を売る。その時に流星街の仲間呼ぶから一緒に指導してやるよ。そろそろ頭数3000人が揃うから、昔から構想してた"旅団"が結成出来そうなんだよ。これは……合法だな。

 

 ついでにタワーの麓で適当な居抜き物件買って飲食店を出そうか。"旅団"のコミュニティに使える場所が欲しかったんだよな。店内でデカいモニターで天空闘技場の試合流そうぜ? きっと楽しい店になる。試合はネットに上がってる動画で勝手に違法視聴できるが、お前が合法に拘るなら放映権はオレがちゃんと買おう。これはもちろん合法だ。

 

 それが終わったらハンター試験だ。3人で組んで確実に合格狙おうぜ? あの試験って無駄に人死に過ぎだろ、違法かもな」

 

 計画ゼロで適当に突っ走っている様に思えたジョネスの綿密な計画に、彼の事を良く知っているエルマは口をぽっかりと開けたまま放心した。

 

 数え切れないくらいのアウトローと関わる違法スレスレの計画だと察し切れなかったメンチは、自分の将来の事も考えてくれている気遣いに溢れた内容に、ワクワクと心底楽しそうな表情で歯を見せて笑い、ジョネスに言い放った。

 

 

 

 

 

「引き受けた。6億5000万だよ? 楽しそうだね」

 

 

 

 

 知らない大人に付いて行くなメンチ、君の将来が心配だ。

 

 

 




メンチ:変化系能力者
千徳厨房(クックアーミーガール)
自身のオーラをあらゆる性質に変化させる。
火力も形も自由自在な炎。熱伝導性が既存の物質を遥かに上回っている鍋。硬度も透明度も自由自在な水。世界各地のあらゆる調味料を再現したオーラ。ジャポン製の最高グレードを遥かに上回るあらゆる形の包丁。神域に片足を突っ込む、料理人にとって夢の如き能力である。

しかし、制約として料理にしか使えない。料理以外に使ったら尿路結石、心筋梗塞、群発頭痛の痛みを同時に受けた後、自身が過去行った調理を自分自身の体に受けて死に至る。
齢10代にしてこれ以外の生き方はしないという絶大な覚悟を伴った"発"である。

メンチ、お前重いんだよ!!

マチの腕相撲ランキングの位置は正直引く。
でもギャップがかわいいね。
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