なんか書けました。
お仕事終了。ジョネス、でもなんか忘れてないか?
ゼンジと一緒に練った計画通り、夜の闇に紛れてミンボ共和国の海岸から高速船を出したジョネス達3人は、積み込んだ"商品"が死なないように細心の注意を払いつつ、2週間ほどかけてヨークシンシティ近郊の海岸を目指して航行していた。
商品が死なないように水温管理や栄養管理をするのにはメンチの能力が大いに役立った。彼女の能力は制約上料理以外に使えないはずだが、生け簀の魚を管理していると捉えれば立派な料理の範疇に入るというのは彼女の言だ。
ジョネスはこの現象を面白いと感じた。メンチの話を聞くに念能力は本人の解釈次第である。そうなると制約を破ったという判断は自分自身がしているという事になる。しかし、誓約としての罰を与えるのは誰なのか? まさか念の神様が雷を落としているとでもいうのか、馬鹿馬鹿しい。
つまるところ、念能力者は制約を破ると誓約として自分で自分に罰を与えるのだ。メンチの場合は変化系の極地とも言える自由自在な自分のオーラに激痛を与えられ、自分のオーラに調理されて死ぬ。
何とも不思議な話である。
そんな事をぼんやりと考えていたら、船室からエルマが顔を出して大きな声でジョネスを呼んだ。
「ジョ〜ネ〜ス〜!! けっこ……じゃなかった!! メンチがご飯できたって!! 早く食べよ?」
どうやらメンチは早速給料分の仕事をしてくれたようだ。ジョネスはエルマの声に答えて、足早に船室へ向かった。
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ヨークシンシティ近くの海上で、手はず通りにヴェンディッティ組の構成員に商品を引き渡したジョネスは、ゼンジに指定されていたマリーナに船を係留すると、エルマとメンチを引き連れて、ゼンジに仕事の終了を報告するために彼のアジトに向かった。
彼にメンチを紹介しなければならない。あわよくば彼女への報酬の一部をゼンジに負担して貰おう。そんな事を企てていた。
その時、道端で売っていたソフトクリームを舐めながらジョネスの後ろを付いて来ていたメンチから今更感のある質問を投げ掛けられた。
「ねえ……、不安になって来たんだけど、マフィアの雇われ料理人って本当に合法?」
「別に組にいる全員が犯罪者って訳でもねえんだよ。マフィアのアジトは外部から来たカタギで溢れてるぜ? それこそ料理人とか、執事とか、清掃員とか、事務員とか、庭師とかだな。
そもそもサヘルタ政府は嘆かわしい事にマフィア達とずぶずぶだからな。マフィア自体がかなり見て見ぬふりをされている」
メンチは微妙に納得が行っていないのか眉間にしわを寄せてう〜んと唸った。ジョネスはそれを見てさらに補足する。
「まあゼンジは気がいい男だから心配いらねえ。
違法なものはあんまり売らねえし(少しは売る)。
暴力は極力避けるし(たまにはする)。
女子供にも優しい奴だよ(妻と娘)」
「私のパパは世界一優しいよ!!
いっつも高い店で私に美味しい物を食べさせてくれるもん!!
マフィアだけど正義のマフィアでね、きっと必要悪ってやつだよ!!
街を守るために、いっつも(組織にとって)悪い事した人達を的確に叩いて回ってるんだ(粛清、始末、処理)!!
お仕事(麻薬、賭博、殺人)で稼いだお金で欲しい物何でも買ってくれるし、(構成員の)みんなに好かれてる私の自慢のパパなの!!」
「……2人がそこまで言うなら」
メンチは何か引っ掛かるものを感じていたが、とりあえず会ってみないと始まらないと覚悟を決めて、ジョネスとエルマに連れられて、ヴェンディッティ組のアジトに向かった。
アジトに着いた3人はゼンジの応接間の前まで辿り着く。そして、ジョネスが満を持して扉を開いた。ノックしろよ、本当に何なんだよこいつは。
「今回のてめえの尻拭いの為にオレがどんだけ奔走したと思ってんだ!! あぁっ!? 3億ジェニーと5人の命が失われたんだぞ!?」
「申し訳ございません!! 本当にありがとうございます!! ゼンジさんには本当に頭が上がりません……!!」
「このボケがっ!! 見え透いてんだよ、ゴマすり野郎が!!」
「ぐはあっ!! うあああぁぁぁ……!!」
ジョネスは扉をそっ閉じした。
メンチがジョネスに問い掛ける。
「ねえジョネス。今、土下座してるおじさんの頭を思いっきり踏ん付けてから、おじさんの手の甲に葉巻の火を押し付けてるハゲが見えたんだけど?」
「さあ、気のせいだろ?」
「パパ、かっこいい〜!」
ジョネスはしばらくしてから、もう一度扉を開けてみた。
「テメェを生かしてやってんのは、テメェの娘がオレの娘の妹分で有用な能力を持ってるからだ!! それだけだ!! 図に乗るんじゃねえよ愚図がっ!!」
「ぐへえっ!!」
ジョネスは扉をそっ閉じした。
「ねえジョネス。今、床に這いつくばってるおじさんに自分の靴を舐めさせた後、顔面を思いっきり蹴っ飛ばした、スタンガンを持ったハゲが見えたんだけど?」
「さあ、気のせいだろ?」
「パパ、凄〜い!」
更にしばらくしてから、部屋から出てきたボロボロのおじさんはジョネスとエルマを見て驚くと、深く頭を下げて言った。
「ジョネスさん、エルマお嬢様。ご無沙汰してます」
「随分こっぴどくやられたな……、ライト」
「私が悪いんです。ヘマしてゼンジさんを失望させてしまった……」
「ゼンジは媚売って来る人間が好きじゃねえからな。もっと自然体で接した方がいいぞ?」
「パパひどーい! まあよく考えたらライトの事はどうでもいいか。それより早くネオンを私の妹にちょうだい!!」
「……すみません。勘弁して下さい……」
そしておじさんは「失礼します」とだけ言い残すと、深々と頭を下げて、そのままふらつきながら帰って行った。
エルマはその後ろ姿に手を合わせて「南無ぅ」とか言っていたが、大して興味がないのか振り返ってすぐにジョネスに抱き付いた。
抱き付かれながら今度は不測の事態が起こらないように、コンコンと2回ノックして(便所じゃねえんだぞボケ)、ゼンジに確認を取る。
「おいゼンジ! オレだ、ジョネスだ。入っていいか?」
すると扉が勢い良く開いて、中から飛び出して来たハゲが号泣しながらジョネスに抱き付いた。
「ジョネスウウゥゥ!! 聞いてくれよ!! オレの…オレの可愛いエルマちゃんが!!
なお、彼が抱き付いている反対側にエルマが抱き付いている。
胸元に縋り付いておんおんと泣き喚くゼンジを見て、ジョネスは己のミスを悟り、素直に謝罪した。
「すまん、連絡するの忘れてた」
「私はここにいるよー!! パパ!!」
その後、今度は「良かった、良かったあ!!」とか言いながら今度はエルマに抱き付いておいおいと泣き出した。結局、ゼンジが泣き止むのに10分くらい掛かった。
その間、大好きな2人にサンドイッチされたエルマは心底幸せそうに、緩み切った笑顔を浮かべていた。
ゼンジがエルマに抱き付いて、エルマがジョネスに抱き付いて、手持ち無沙汰になったジョネスはメンチの方を見て、両手を広げて冗談めかして言った。
「メンチも抱かれるか? それでムカデ人間完成だ」
「はいセクハラ。2回目だからね」
ゾマホ密林でのパワハラに加えて、無意味な冗談でジョネスの彼女への悪行カウントが増加してしまった。
次話から多分オークションです。
もしかしたらその準備で終わるかも。