流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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お納め下さい。

今回はマフィアハゲの独壇場と、ジョネスの地味に重要なお仕事回です。激レア能力者2人を適当に連れ回すんじゃない……!!

あと、次話のオークションが全くうまく書けません……。雑に終わるかも知れないけど、その時は申し訳ないです。



25.ヤトイヌシ×ト×ヤトワレ

 

 

 

 生き別れの家族同士の感動の再会がいち段落ついて、全くこいつらはいちいち面倒臭せえな……(誰のせいだよ)、とか考えていたジョネスは気を取り直して任務の達成を報告した後、自分の後ろで完全に猫を被ってニコニコしているメンチ(ホモと変化系は嘘つき)を、オークション期間中だけヴェンディッティ組で雇い入れることを提案する。おまけに6億の報酬を一部負担してくれとも提案する。ジョネス、ほぼ押し売りじゃねえか。

 

 それを聞いたゼンジはマフィアのボスとしての顔を覗かせて、ジョネスと同じく馬鹿みてえな格好してんなコイツ、と考えつつ無関係なセクシー料理人メンチを睨み付けた。

 

「料理人だあ? いくらジョネスの紹介だと言っても、簡単には認められねえぞ」

 

 メンチに対してゼンジの激烈な"胆"が突き付けられる。

 

 クソ度胸の楽観主義者の彼女といえど竦み上がってしまう威圧感で、メンチは完全に気圧されて少しふらついてしまった。

 

 ジョネスはそんなメンチの肩に手を置いて体を支えると、そのままポンポンと安心させるように叩きながらゼンジの問いに答えた。

 

「ゼンジ、御託はいいからまずはこいつの料理を食ってみろ。それで全てが終わるぜ」

 

「確かにな……。ジョネスがそこまで言うなら食ってやろうじゃねえか。だがオレだって『マフィアのボス』として、あらゆるハイグレードな『美食』を味わって来た男だ。相応に舌は肥えてる。

 

 いくら『才能』があろうが、まだ『ケツの青いガキ』の料理に感動する訳ねえよ……」

 

 

 

 

 

 30分後。

 

「美ン味アアアアァァァァイ!!!! 雇いましゅゥゥゥゥ!!!!」

 

 

 

 

 

 ゼンジの即落ち2コマがつつがなく終わった所で、メンチは無事オークション期間中の組織とジョネスの夕食を担当する事が決まった。

 

 ついでに"屋台市"にも出店したい旨をゼンジに伝えると、「よし分かった」と即答したゼンジが諸々の手続きと出店の準備をあっと言う間に終わらせてしまった。ゼンジが一晩でやってくれました。

 

 次の日の夕食を終えた後、「プロハンターになったらまた声を掛けてくれ。いつでもスポンサーやってやるぜ」とクールに言い残すと、颯爽とジョネスと一緒に夜の街に消えて行った。女の子と飲める店に行くつもりである。台無しだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 もうすぐヨークシンシティの"屋台市"が始まる。"屋台"と銘打っておきながら、普通に屋根も建物もしっかり建築された名ばかりの屋台が立ち並ぶガバガバ企画で、メンチは料理人として初めての挫折を味わっていた。

 

 企画書を読んだ数々の飲食店経営を手掛けているマフィアハゲが、その書類をパンパンと手で叩きながら数々のダメ出しを行っている。

 

 その隣で腕を組んでうんうんと唸っている狼親父は、よくわかってない癖にグラサンをすちゃっと中指で押し上げて「同感だな」とか抜かしていた。誰かいい加減こいつを何とかしろよ。

 

「何だこの値段は? メインストリートは一般の家族連れがメインの客層になる地域だぞ? こんな高級食材をふんだんに使ってどうする?」

 

「その食材と私の腕があれば、最高の料理になるわ。私は料理の質で客を呼んで、その評判で芋づる式に次の客を釣るの」

 

 マフィアハゲはグラサンをすちゃっと中指で押し上げて、メンチにとって人生の格言となる言葉を言い放つ。

 

「いいものなら売れるなどというナイーヴな考えは捨てろ」

 

「同感だな(よくわかってない)」

 

「なっ!?」

 

 マフィアハゲの経営者視点のシビアな発言にメンチは絶句した。思考停止で「同感だな」とか言ってる隣の人の言葉は読み飛ばして欲しい。

 

「客層に迎合しなくてどうする? 客はネットで価格帯を調べて、通りすがりは店の表にあるメニューを見て店に入るか判断する。お前は「客を呼んで」なんて抜かしたが、誰がこの店の最初の客なんだ?」

 

「だから……、美食を求める客が……」

 

「そんな客はこのエリアには来ない」

 

「同感だな(よくわかってない)」

 

「!?」

 

 メンチは生まれた時から繊細な味覚と料理のセンスに溢れ過ぎていた為に、高くて美味い店も安くて美味い店も自由自在に発見して楽しむ事ができた。これは彼女にとっての全くの盲点であった。

 

「それと、宣伝が全く足りてねえ。何だこれは? ヨークシンに昔からある老舗じゃねえんだぞ? あらゆる媒体を駆使してもっと目を引け」

 

「同感だな(よくわかってない)」

 

「宣伝は食べた客が勝手にやってくれるでしょ? 間違いなくこのエリアで飛び抜けて美味しい店なんだから? だってわた……」

 

「ヤツらは……」

 

 マフィアハゲがメンチの言葉を遮って勿体ぶって一言だけ言うと、メンチは咎めるような視線を向けた。仕草だけで続きを促すとゼンジはゆっくりと口を開く。

 

「ヤツらは料理を食ってるんじゃない。()()を食ってるんだ!」

 

「なっ!?」

 

「オレはお前が天才なのは一口で理解できた。しかし、たとえ世界最高の料理をこんな場所で提供しても、ヤツらは何も理解できねえよ」

 

「同感だな(よくわかってない)」

 

「……」

 

 メンチは俯いて黙り込んでしまった。ただ美味しい料理を作るという事しか考えて来なかった彼女には圧倒的にこういった経験が足りなかった。

 

 容赦なくマフィアハゲのダメ出しは続く。

 

「スタッフの質も今のままじゃ全く不足している……。こんな雇われ共にお前と同じ仕事を期待出来る訳ねえだろ? 小遣い稼ぎ程度に考えているガキ共には清掃すら安心して任せられねえ」

 

 マフィアハゲは、まだ"一流の料理人"でしかないメンチを戒めるように言い放った。

 

「「うまい料理」で満足しているのは、アマチュアに過ぎない。「うまい店」を目指してこそプロだ」

 

「同感だな(よくわかってない)」

 

 彼はメンチの事をどこまでも登って行く天才だと確信している。メンチの"料理のファン"であるマフィアハゲの厳しくも愛に溢れた言葉に、彼女は遂に俯いたまま泣き出してしまった。

 

 そんな彼女を見て、今までクールに「同感だな」としか言わなかった狼親父が気を遣って声を掛ける。

 

「店のスタッフで統一したこのユニフォームも問題だな……。

 

 

 

 

 

 乳デケえんだからいつもの格好して、男連中(オレら)の気を引けよ?」

 

「お前、後で()()からな?」 

 

 メンチがキレた。

 

「ごめん」

 

 

 

 

 

 流石に空気読めてなかった事を察したジョネスは、巨体を縮こめて遂に黙り込んだ。よくやったメンチもっとやれ。

 

 馬鹿のおかげで気を取り直したメンチだったが、マフィアハゲに目を向けて、疑問に思った事を口にする。

 

「あなたには私に足りてなかったものをこれでもかと教えて貰ったわ。でもどうしてここまでしてくれるの?」

 

 マフィアハゲは何を馬鹿な事を言ってるんだと鼻で笑って最後に言った。

 

 

 

 

 

「オレは「やる」というクライアントに、「やるな」という助言だけは絶対にしねえ」

 

 

 

 

 

「同感だな(よくわかってない)」

 

「もうお前黙ってろ」

 

 ゼンジもキレた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 メンチの店から出禁を食らったジョネスは、オークションに向けて次々と運び込まれて来る競売品に対して。「ヨシッ!! ヨシッ!!」と指差し呼称でお粗末で曖昧な判定を繰り返していた。誰かいい加減こいつを何とかしろよ、特にジョネス係のパリストン。

 

 オークションの競売品に危険な"呪物"が含まれていないかを鑑定する専門家として、親友のパリストン経由で"表"のオークションの仕事を、心の友のゼンジ経由で"地下"のオークションの仕事を兼任して引き受けていたのだ。パリストンはやっぱりクソだった。

 

 もちろんそれは表向きで実態は"品定め"のためである。

 

(あれは買っておこう。あれは絶対欲しい、買えなかったら絶対盗む)

 

「うわぁ〜!! "ゾバエ病患者の皮膚"だあ〜!! 再生阻害剤に漬けてるのにウネウネ動いてる!! かわいい〜!!」

 

 休憩中に不穏な事を考えている怪人とは裏腹に、特殊な薬品に漬け込まれた地下競売に運び込まれる予定の激ヤバな商品を見つめて、歓喜の声を上げている幼女の声が鑑定場に響いた。

 

 休憩しているジョネスの胡座を組んだ膝の上に、もはや相変わらず少女が乗っていて、猟奇的な己の趣味に没頭していた。

 

 ジョネスにとっても危険な今回の仕事の為に呼び出した、ヴェンディッティ組の下部組織である"ノストラード組"の組長の娘の"ネオン=ノストラード"である。特質系であり的中率100%の未来予知能力を持つ。

 

 多分こいつは神の子だ。

 

 というのもこいつは、現在のありとあらゆる情報を集めて"予測"するとか、目を瞑って10秒後の未来を"測定"するとか、まだ納得がいくようなレベルの能力の持ち主ではない。

 

 生まれた時から完全に神域に全身が浸かっている、何の脈絡もなく遥か未来を見通す"予言者"なのだ。

 

 "旅団"が完成したらノストラード組を全滅させてでも誘拐して、流星街(ウチ)のトップに据えようかと考えるくらいの人材である。

 

 "予言"だけしてもらって連れて来るつもりはなかったが、ジョネスが競売品を網羅する仕事をすると聞くと、セミのようにくっ付いて離れなくなったので仕方なく連れて来た。

 

 "予言"によるとジョネスは今回の仕事で死ぬ事は無い。

 

 だが念には念を入れて流星街から除念師を呼んでいる。どうせ2ヶ月後には天空闘技場で合流する約束だし、ほんの誤差である。

 

 

 

 

 

「ジョネス〜!! 次これ触ってみて!!」

 

「んなあ〜」

 

 

 

 

 

 大きな木箱を抱えた人影が、見覚えのある妙な鳴き声で鳴く念獣を引き連れて、ジョネスに呼び掛けた。

 

「多分これで最後!! メインの競売品は出揃ったよ!!」

 

 にっこりと太陽のように周囲の人間の心を照らす笑顔を浮かべて、流星街から呼んだ除念師の"サラサ"はそう言った。

 

 なお、最後の木箱の中身がとんでもない厄ネタで、ジョネスと凶暴化した獣人との怪獣バトルが始まる事をこの時の彼女は知る由もない。

 

 

 

 

 

 あと1週間で9月1日。ヨークシンシティで世界最大のオークションが始まる。

 

 

 

 

 




誰かジョネスを何とかしろよ。

サラサ:具現化系能力者。
愛の押し付け卯先(メイドイキバニー)
具現化系能力。
誰かにかけられた念を、身代わりの兎型の獣人を形取った念獣に押し付ける事で解除(除念)する。
かけられていた念が強力なほど、獣人は強力で凶暴になり、念をかけられていた人物に襲い掛かる。倒せば除念完了となる。強大な死者の念も押し付ける事ができるが、その場合は相応に獣人が強化される為、どっちみち本人は死ぬ事が多い。

サラサは子供の頃からこの獣人を具現化する可能性を秘めていたようだ。はっきりと自覚したのは、奇しくもとある"呪物"に触れて自身が念をかけられた時である。
他人の心(念)を理解するのは彼女の生来の才能だが、何故か彼女は死者の念を始めとした死者達の世界を覗く才能にも恵まれていた。ジョネスと同じく前世で何かあったのだろうか?

何故かあなたが押し付けられる側ですよ、良い匂いのふわふわ。
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