新章一話目です。
皆様、アンケート回答ありがとうございます。
面白さを損なわないように自由にやる寄りで、原作を損なわないようにある程度守る事にします。正解は沈黙。
今回はパドキア旅行とジョネスから親友へのプレゼントです。
28.ミナト×ハ×トドケバショ
飛行船に乗ってパドキア共和国にやって来たジョネス、エルマ、メンチの3人は、空港の貸し倉庫で発送しておいた多数の"呪物"を回収すると、大きなケースに入れてそのままパドキア国際空港駅から列車に乗り継いだ。
「全く、この間ミンボに来たばっかだってのに、オレらは何回往復させられるんだ?」
「闘技場も近いし丁度いいじゃん。はむっ、美味しい〜!!」
ジョネスが経路に無駄が多い事を愚痴ると、その肩に擦り寄っていたエルマがメンチに作ってもらったクッキーを食べながら、やんわりとジョネスを宥めた。
3人は目的地で振る舞う料理の材料を調達するために、まずはパドキア共和国最大の中央市場があるスキージ港に向かっていた。
メンチは険しい山が多い独特で風光明媚な景色が続く車窓を眺めながら、横目にジョネスがそばに置いているドでかいケースに対して、冷や汗を流しながら苦言を呈す。
「ほんとにそれ持ち歩いて良いものなの? ……ヤバいオーラが複雑に絡み合って、直視したくないレベルなんだけど。そのケース自体がオーラに当てられて呪物になりそうね」
「結論から言うと持ち歩いて良いものではない(断言)。だがこれをあいつに自慢してから、オタク話をして楽しむのが今回の目的だ。これは外せないぜ? そしてケースが呪物になるかも知れないというのは普通に狙ってる」
「アホが……」
「メンチはオレがアホな事やると、ちゃんと指摘して罵倒してくれるのがいいよな。新鮮な感覚だ。そのままのお前でいてくれ」
ジョネスが自分を掴む鍵はそこにある。調子に乗り過ぎた時に「あなたは愚かな事をしていますよ」と言ってくれる人は貴重だ。いつでも元々の自分を取り戻せる。
ジョネスの人間関係は彼がそれを言う側である事が多い。自分を盲信する人間にだけ囲まれるのは危険だ。メンチを雇ったのはそういう事情もある。
「えっ、キモ……」
メンチの心無い一言にも、ジョネスは上述の理由で満足そうに頷く。すごくキモかった。
ジョネスに擦り寄っていた彼を盲信するエルマは、口の端にクッキーの食べカスをつけながら元気よく言った。
「ジョネスはキモくてカッコいいよ!! 結婚しよ!! メンチの料理も大好き!! メンチも結婚しよ!!」
「アホが2人……。ハア、先が思いやられるわ……」
3人は列車を乗り継いでスキージ港駅に辿り着くと、ジョネスのポケットから大金を費やして超一流の食材を仕入れる。メンチには目利きの知識まであるようだ。若いのにクソ有能だ。流石将来のシングルはモノが違う。ジョネスはまた散財したが、これを諌めてくれる人間はいなかった。
準備が整うと、大荷物を積める冷蔵・冷凍庫付きのトラックを借りて、当初の目的地へ向かった。エルマはやはり笑っていた。メンチは青い顔をしながらも覚悟を決める。
3人を乗せたトラックは"デントラ地区"の"ククルーマウンテン"に向けて走り出した。伝説の暗殺者一族、"ゾルディック家"の居城である。
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ジョネス達がスキージ港で食材を買い付けている頃。ハンター協会に一つの荷物が届いた。
ハンター協会の副会長、パリストンに直接宛てられた物であったが、"感染症の危険あり!!"とそこら中に貼り付けられた警告シールが目立つ"特級特殊化学用梱包"であり、密閉性、耐久性、荷物の耐衝撃性が最高レベルである"特級取り扱い注意用梱包"でもあった。
極め付けに中身は送った相手と送られた相手しか見る事が許されない"特級秘匿用梱包"であった。これは運送会社の人間も誰1人中を見ていない事を意味する。
しかし、ハンター達の総本山に送り付けられて来たというのは大問題だった。大勢のハンター達を狙ったNBC兵器によるテロかも知れないのだ。
ハンター協会の副会長がかけらも信用できない男である事も加わって、本人に知らせないうちに荷物を開ける事になった。運送会社の従業員達は、特級秘匿梱包なので必死にパリストン以外に中身を見せる事を食い止めようとしたが(社員の鑑)、ハンター達に取り囲まれて抵抗虚しく荷物を奪い取られてしまった(可哀想)。
感染症の危険があるという事で、たまたま本部にいた難病ハンターのチードル=ヨークシャーと、その弟子のウイルスハンターのサンビカ=ノートンが慎重に荷物を開封して行く。
その後ろでハンター協会会長のアイザック=ネテロと、ダブルハンターのライセンスを受け取る為にたまたま協会本部を訪れていたジン=フリークスが、何か面白そうだという面持ちでニヤニヤしながら開封作業を眺めていた。
そしてその中身が遂に露わになる。それを見たチードルはワナワナと怒りに震えて、サンビカはガタガタと恐怖に震えていた。
2人の肩の上からひょっこりと顔を出して中身を確認したネテロとジンは、床に転がって腹を抱えて爆笑し始めた。
「「ギャ〜ハッハッハ!!!! やべえ〜!!!!」」
箱の中には緑色の液体に浸かった、ウネウネとその身をくねらせる黒色の皮膚のような物が入っていた。
そばに添えてあった手紙には、デフォルメされたかわいらしい狼がパチッとウィンクしているイラストと、親友へのメッセージが書かれてある。
[闇のオークションで見つけました♡ "ゾバエ病患者の皮膚"です。競売にかけられる前に弾いといたよ♡ 後は適当にヨロシク♡]
手紙の送り主は思ったよりしっかり仕事をしていたようだ。全然よくない物をヨシッ!! と指差し呼称するのは現場ではよくある事である。
チードルは激しい怒りを込めて呟いた。
「"後は適当にヨロシク"って何よ……!! これを使って何を始めるつもりなの……!!
殺してやる……、殺してやるわパリストン……!!」
見た事がないほど怒り心頭なチードルを見て、弟子のサンビカはまたもや震え出した。
そんなチードルを見て、ネテロとジンはいよいよ笑いが止まらなくなって、笑い死に寸前の状況にまで追い込まれた。
「パリストンは天才だな!? おちょくる為だけにここまでやるのかよ!? 腹いてぇ〜!!!!」
「じゃろ!? あいつ面白えの!! 100歳越えて笑い死ぬわ!! ブワッハッハッハ!!!!」
この後、パリストンはチードルに詰められて、馬鹿の尻拭いの為に必死の弁明を行った。流石に疲れが見えたが、部屋のドアの隙間からネテロとジンがニヤニヤしながらこっそり覗いているのに気付いて、「2人が僕と遊んでくれている!!」と感じると、いきなり光輝くような笑顔を取り戻して、神懸かった口車でいつものようにチードルを丸め込んでしまった。
パリストンへのチードルからの好感度は更に下がった。最高のコメディショーを見せてくれたパリストンへのネテロとジンからの好感度は上がった。
良かったねパリストン♡ by狼親父。
ジョネスへのパリストンからの好感度は更に下がった。
しかし、本人達は認めないだろうが、4人の同類が思いがけず協力した前代未聞のコントだった。
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とある狼への4つ目の詩
[競りを終えた巾着を 今度は
だが紐は緩めた方がいい 親しい剃刀に喜んでもらえるから
犬同士の戯れで 山の剃刀の稚魚達と出会う
4つ目の求めは断らない方がいい 死神はあなたと裁縫箱を永遠の眠りに誘うのだから]
とある赤頭巾への3つ目の詩
[焼き菓子の味を忘れない事だ 御厨子は永劫にあなたの腹の友になる
赤頭巾は愚かにも付いて行く 行き付く先は狼と百足の腹の内かも知れないというのに
山の剃刀達とは親しくしよう 狼か達磨かどちらの腹の内でも貴方の未来に手段を与える
4つ目の求めは断らない方がいい 死神はあなたと達磨を永遠の眠りに誘うのだから]
不穏な終わり方……。
まあ察しがいい人にはバレバレか。
ネオンは念を理解してから能力が成長して、1ヶ月より先の情報もノイズのように予言に組み込まれていますね。まあ原作でも向かうなら東が良いとか書いてありますが……。
あと描写していませんが、ジョネスはエルマをハンター試験に連れて行く事をゼンジに了承させていますし、ゾルディック家にももちろんアポを取っていますよ。正門を通らないとねえ……。
パリ虐。みんな楽しそうやね。
ちなみにミルキは天空闘技場にいます。
時系列は大きく前後していないはず……!!