流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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はい、新章1話目です。
我ながらこりゃ新章1話目だなあって感じに仕上がりました。

今回はゾル家との別れと、天空闘技場での出会いです。


天空闘技場の解体屋
34.シュッパツ×ト×シュラバ


 

 

 

 レンタル期間の2週間が超過しかけのトラックに乗り込んだジョネス、エルマ、メンチの3人はウィンドウを全開にして伝説の暗殺者一族達としばしの別れを惜しんでいた。

 

 指名手配犯との別れは本来なら惜しまなくてもいいと思うが、よく見たら全員前科持ちなので今更である(殺人、不法侵入、密漁、その他諸々)。

 

「シルバ、世話になったな。近いうちに面白い事始めっから良かったら便利に使ってくれ。あとかわいい子には旅をさせろ。オレとの合言葉だぜ?」

 

 ジョネスはそう言ってとあるホームページのCRコードを渡すと、トラックのエンジンをかける。シルバが手渡された紙を見て不満げな顔で言った。

 

「結局、好き勝手に引っ掻き回して行くだけか? こいつの詳細も教えて貰っていないし。お前はいつもそうだな」

 

「オレらの別れに涙が似合うか? どうせそのうちまた遊びに来るし、オレを殺しに来たらいつでも遊んでやるよ」

 

「お前に対する暗殺依頼は5割引だな」

 

「はっはっは!! じゃあな!! 最後に確認しとくか、合言葉は?」

 

「全部親父が悪い。かわいい子には旅をさせろ」

 

 シルバの隣でその合言葉を聞いていたゼノが首を傾げてクエスチョンマークを浮かべた。しばらくしてシルバから詳細を聞いたゼノは、怒った後に大笑いして最後には拗ねるという複雑な感情を見せたが、それはまた別の話である。

 

 運転席のジョネスを乗り越えてエルマが窓から顔を出した。

 

「お世話になりました!! キルアとアルカもまた遊ぼうね〜!!」

 

「姉ちゃんも元気でな、殺したい奴がいるならいつでもオレが殺してやるよ」

 

「お兄ちゃんかっこいい〜」

 

 キルアがニッと笑いながらエルマにそう返した。手を繋いでいるアルカに褒められて満足げな様子だ。

 

「相変わらず妹の前だとかっこつけちゃうんだね!! 二人ともかわいい〜♡」

 

「そんなんじゃねえよ!!」

 

 図星のキルアが顔を赤くして反論するが、ぎゅっとアルカに抱き付かれると更に真っ赤っかになって、それ以上は何も言わなくなってしまった。

 

「本当に良い経験が出来ました。ありがとうございます。でもおじいちゃん、私の胸ガン見してたの気付いてるからね?」

 

 メンチは常識人(露出狂の密漁者)なので、しっかりと頭を下げて形式的なお礼の言葉を述べた。一方で意地悪そうに笑ってマハに釘を刺す。

 

 いつも無表情で家族でも2年くらい肉声を聞けていない小柄な老人は、ビクッと体を震わせて珍しく感情を見せながら目を逸らした。

 

 包帯だらけのイルミがメンチを見つめながら口を開いた。

 

「また来て料理してよ。あんたのせいで料理をサボってた執事を折檻する事になったんだからね? あとオレと結婚しない?」

 

「どっちもゴメンよ!! 折檻はほどほどにしときなさい、料理で私に勝てないなんて当たり前なんだから。私は将来、リンネ様のように星をいくつも獲得する健全で立派なハンターになるの」

 

「……気付いてないの? ジョネスに付いて行ってる時点で、健全で立派なハンターから遠ざかってるよ?」

 

「……そんなはずは……。そうかも……」

 

 イルミの核心を突く一言にメンチがショックを受けて、考え込むような仕草をしながら何も言わなくなってしまった。

 

 ジョネスはそれを見て一つ笑うと、シルバに腕を回して微笑んでいるキキョウに顔を向ける。

 

「キキョウ!! いつでも流星街に帰って来いよ!! シズクに顔見せてやれ!! あと一言でいいから謝ってやれ!!」

 

「子供達が一人前になったらね。あなたがいるならあの子も安心だわ」

 

「オレはそんな立派なもんじゃねえって……。約束だぞ」

 

 とある世界線に則ると()を見せる事は出来ないのだが、キキョウが確かに約束した。ジョネスはそれを聞くと、ニイっと笑みを浮かべてアクセルを踏む。

 

 その時、こっそりと()()()()()乗客が乗り込んだ事には気付かなかった。

 

 

 

 

 

「あばよ」

 

 

 

 

 

 短い言葉を残して、解体屋はお宅訪問を終えた。

 

 

 

 

 

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「シルバー。3回まわってニャーって鳴いて?」

 

「っ!? フン!! ニャー!!」

 

「ぎゃはははは!!」

 

「ブフッ!!」

 

「いい加減にしろよキルア? 親父?」

 

「ごめんなさい」

 

「スマン」

 

「……お願いか……。……長男が()い人と出会える確率を上げてくれ」

 

「あい」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ドュワァ!! ミケ!? 何で!?」

 

「まだ不法侵入者扱い終わってなかったんだね……」

 

「ミケ〜!! 大丈夫!?」

 

「……トラックに轢かれたくらいで死ぬタマじゃねえよ。気絶してるだけだ。さっさと行こう」

 

「ジョネス、オレも入れてー?」

 

「ドュワァ!! イルミ!? 何で!?」

 

「親父に「家を出て世界を見て回ってこい」って言われたんだ。どこ行ったらいいか分かんないから、とりあえずジョネスに付いて行くよ。

 

 ……オレ、いらない子だったのかなあ?」

 

「……そんな事ねえって。シルバは言葉が足りん奴だな……」

 

「頭撫でないでよ。オレはもう子供じゃないよ?」

 

「一人だとどこ行ったらいいか分からない奴は子供だぜ?」

 

「あっ、変な飛行船飛んでる!! この家の上空って飛行禁止区域じゃないんだね!!」

 

「ゾルディック家ってパドキア政府とズブズブだからね」

 

「ドュワァ!! 1700!!」

 

「あの飛行船? レアなの?」

 

「記念飛行だ!! カメラ出せ!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 "野蛮人の聖地"とも呼ばれる格闘のメッカ、"天空闘技場"があるブルース市のとあるホテルの一室にて、「んがっ」と鼻ちょうちんを破裂させながら目を覚ましたゴリラがいた。

 

 ジョネスはふかふかのベッドの上で目を覚ますと、前世からの電波を受信して一言だけ呟いた。

 

「知らない天井だ」

 

 隣を見ると、髪を下ろしていつもと同じように馬鹿みたいな薄着で同じベッドに寝ているメンチの寝顔が見えた。手を出してしまったのかと思って一瞬動揺したが、昨夜の事を思い出して何の問題もない事を確認すると、枕元に置いてあったタバコを一本手に取って一服し始めた。

 

 昨日は天空闘技場のふもとで出店する予定のスポーツレストランの準備と手続きに手間取って、狙っていたホテルの部屋が一室しかとれなかったのだ。これ以上ホテルを探すのも面倒だったので、二人は渋々同じ部屋で寝る事を了承した。

 

 エルマとイルミには流星街の仲間達と合流するまで、自由行動を申し付けている。食べ物も宿も遊びも、自分で考えて行動するのはエルマにとってもイルミにとっても良い機会だろう。

 

 テレビを点けると、朝っぱらから天空闘技場の試合の再放送が行われていた。これは天空闘技場以外の娯楽が死んでいるブルース市ならではの光景だ。

 

 ゾルディック家のゼノお気に入りの"水曜日のダウントーン"のような番組がなぜ作れないのか、この野蛮人共め。そんな事をぼんやりと考えてジョネスは寝起きでボケた頭でぼんやりと画面の中の試合を眺める。

 

『流石、"死神"だあっ!! 身長2m越えの巨漢も難なく秒殺!! 未来のフロアマスターはこの男で確定か!?』

 

 画面に映る妙なメイクと服装をした男を見て「こいつ将来性あるな」と独りごちたジョネスは、タバコを吸い終わると、サービスとして部屋に置いてあったインスタントコーヒーを淹れた。

 

 

 

 

 

 その時、部屋のドアがノックされる音がした。

 

(ホテルのスタッフか? 何の用だか知らねえが、こんな早朝に訪ねて来るんじゃねえよ……)

 

 ジョネスは面倒臭そうにドアの前まで向かうと、そのままおもむろに部屋の入り口を開く。

 

 

 

 

 

「きちゃった」

 

 

 

 

 

 ドアを開けると、動き易そうなジャポン風の服に身を包み、ボリュームがある桃色の髪を頭の後ろで一つに結び上げた、大きな吊り目が特徴的な気の強そうな美少女がいた。

 

 というかマチがいた。

 

 ジョネスは一旦ドアを閉めた。

 

 ジョネスは振り返ると、ベッドの上で寝息を立てる馬鹿みてえな薄着の女を見て、血の気が引くのを感じた。

 

 部屋の外からドアノブを回そうと万力の如き力が加えられる。

 

「おッ おッ おッ!?」

 

 ジョネスがどこかの世界最強の生物のような情けない声を上げながら、ドアノブを全力で捻ってドアの向こうの変化系能力者(強化系寄り)に対抗する。

 

 ドアを無理矢理開こうとするゴリラと開かせないようにするゴリラの間で、先日のゴリラとイルミの手合わせより激しい攻防戦が繰り広げられる。

 

 最終的に諦めたジョネスがマチを部屋に招き入れて、彼女に思いっきり抱き付かれて胸元に頬擦りされた。

 

 その騒がしさに目を覚ましたメンチが二人の前に姿を見せて、ジョネスはそのまま社会的に死んだ。

 

  

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 本当はジョネスと一緒にいたかったが、期日までの自由行動を命じられてしまったエルマは、フォーティワンで買った3段重ねのアイスクリームを舐めながら繁華街を歩いていた。

 

「あの人ったら一人で行動しろって。子供じゃなくて一人前の女だって、私の事を認めてくれたって事だよね……。えへへへへ」

 

 エルマはクレイジーなほどのポジティブシンキングで満面の笑みを浮かべた。彼女はそのまま妄想が止まらなくなり、現実世界を見る事が疎かになる。

 

 目の前が見えなくなったエルマは不意に"壁"にぶつかってしまった。

 

 アイスがこべり付いたその壁を見上げると、そこにはフランケンシュタインの怪物のような風貌をした、長い耳たぶと顔に負った無数の傷が特徴的な、指に血が滲む包帯を巻いた大男がいた。

 

「わあっ!! ごめんなさい!! クリーニング代出します!!」

 

 エルマが慌てて謝ると、その頭にポンと手が置かれて、そのまま優しく頭を撫で付けられた。

 

 エルマが目を丸くしてその手の持ち主を見上げると、男はニッコリとジョネスを彷彿とさせる笑顔をエルマに向けて、優しげな声色で言った。

 

「悪ィな。オレのズボンがアイス食っちまった。次ァ5段を買うといい」

 

 どこかの大佐みたいな事を言った男は、エルマにお金を手渡すと、「嬢ちゃん良いオーラしてんな」と続けて、しゃがみ込んで目線を合わせて来た。

 

 

 

 

 

「オレは"フランクリン"だ。嬢ちゃんオレと一緒に来ねえか? 念使いならどうせ目的は天空闘技場だろ? 今ならジョネスって男に鍛えてもらえるぞ」

 

「えっ、ジョネスの知り合い?」

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 つい先日、酔った勢いで指を切り落としたクレイジーな男が、クレイジーな女とたまたま邂逅した。

 

 

 

 

 

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 生まれて初めて実家から暇を与えられてしまったゾルディック家の長男、イルミは生まれて初めて"ワクドナルド"なる世界一売れているハンバーガーを食べようと列に並んでいた。

 

 彼は暗殺以外の事はほとんど知らない世間知らずなので、自由にやれって言われても何をしたら良いか分からなかった。その為、今はとりあえず周りの一般人がやっている事を真似している状態だ。

 

(道端で食べるなら携帯食料(レーション)でいいじゃないか。何でこんな日持ちしない物を並んでまで食べなきゃいけないんだ?)

 

 うんざりする程の行列に並びながら、イルミはこの訳がわからない状況に半目になって「もしかしてハメられた?」と呟いたが、並ぶ事を決めたのは自分自身な事を思い出して、ジョネスへの八つ当たりを中止した。

 

 もう行列から抜けて、通りの向かいにある空いているコンビニなる物に行こうかとしたその時、イルミは自分のポケットの財布に手を伸ばす通行人を感知した。世間知らずとは言え本で読んだ事がある。これはスリっていう犯罪だろう。

 

 人のお金を盗むなんて何て悪い奴なんだ。イルミは素早く針を取り出して、自分の金を盗もうとした男を一瞬で殺さんとする。

 

 

 

 

 

「何でやねん!!」

 

 

 

 

 

 スリ師の男の頭に針が突き刺さる直前で、イルミと男は後ろに並んでいた女に同時に頭をひっ叩かれて地面に崩れ落ちた。

 

 スリ師は自分が殺され掛けていた事にも気付かず、犯行が見つかった事に怯えた表情で女を見上げ、イルミは何で邪魔したんだと咎めるような目で女を見上げた。

 

 太陽を背にイルミを見下して来た女は、ファストフード店にはあまりに似合わないおかしな格好をしていた。

 

 長い赤髪のポニーテールに鉢巻をした美少女は、胸にサラシを巻き、その上に下半身まで少し隠れる桜と龍が描かれた法被(はっぴ)を羽織って、ショートパンツと合わせている。

 

 なお、今ブルース市で何かのお祭りが行われている訳では無いし、そもそもこの国でお祭りの時にこんな格好をする文化は無い。

 

「あんた誰? 痛いんだけど」

 

「スられただけでノータイムで殺しに行く奴がおるか!! 流星街でも最近はおらんぞ!! このアホっ!! 腕を掴んで警察を呼んだらええやろ!!」

 

「……こいつオレの財布を盗ろうとしたんだよ?」

 

「ひっ、ひい!! すみません、勘弁して下さいっ!!」

 

「スリはこの国では軽犯罪や!! 私刑で死刑にしたらお前の方が犯罪者やないか!! ……まあ、よお考えたら証拠もないし、警察呼んでも意味ないか」

 

 少女はそう言うと地面に頭を擦り付けるスリ師の髪を掴んで、無理矢理頭を上げさせるとガンを飛ばしてドスの利いた声で脅し付けた。

 

「お前、舐めんとんのか? 盗る相手くらい考えろや。ウチが止めとらんかったらこの兄さんにブチ殺されとったぞ? 二度とウチの手を煩わせるな。分かったな!?」

 

 少女はそう言って相手の顔面をぶん殴ると、スリ師は鼻血を垂らしながら悲鳴を上げてどこかへ逃げ去って行った。

 

 イルミはそれを見て疑問の声を上げた。

 

「殴るのは犯罪じゃないの?」

 

「いきなり痛いとこ突くやん。犯罪に決まっとるやろ、まあそれくらい気にすんな。あっ、ウチ"サクラ"言います。よろしゅう頼むで」

 

「滅茶苦茶じゃん、論理が破綻してるよ。それならやっぱり殺そうよ。オレはイルミ」

 

「お前なあ、考え方が修羅過ぎるやろ。人が死ぬ闘技場がある癖に、ここは法治国家や。殺したら面倒やで?」

 

「……そういうものかな……」

 

「そんでお前何者や? さっきとんでもない殺気出しとったな。まるでジョネスのおっさんみたいやったで。さっき殺気……駄洒落になってるやん、ぷぷっ!」

 

「えっ、ジョネスの知り合い?」

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 その場に渦巻いていた別の何処かから来た力が、誰にも気付かれないまま、役目を終えて辺りに四散して行った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ジョネスに呼び付けられて流星街からブルース市にやって来たクロロは、とあるカフェのテラス席で、いつもと何ら変わりない平穏なコーヒーブレイクを楽しんでいた。

 

(ジョネスさんに呼ばれたのはオレ、マチ、シャル、フランクリン、フィンクス、フェイタン、サラサ。見事に系統別だな。おまけにマチの能力があれば強引に仲間に引き入れられると来た。今回はいつもより簡単に増員出来そうだ)

 

 シャルナーク、フィンクス、フェイタン、マチはジョネスの泊まっている宿に向かった。ロビーでマチが部屋番号だけを確認して最速ですっ飛んで行き、泊まっている人間が2人いる事に気付いた男3人が波乱の予感に爆笑している事は彼には知るよしもない。

 

 約束までまだ時間はある。古本屋に寄ってから闘技場に向かおう。そんな事を考えていたクロロだったが、その時、不意に背後から不穏なオーラを感じて、警戒しながら素早く振り返った。

 

 

 

 

 

「君、スゴくイイね♡ ボクと()らない?」

 

 

 

 

 

 そこには変態が立っていた。誰なのかはたぶん説明不要。

 

 

 

 

 




ジョネス逃げろ逃げろ。

フランクリンは子守が似合う。

イルミと謎のオリキャラが遭遇。一体何の為にまたオリキャラ出したんだ!?

クロロ逃げろ逃げろ。
どんな世界線でもクロロと彼は運命の人みたいですね。
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