今回はジョネスズブートキャンプ、テロリストの自白、運命のくじ引きのち1戦目です。
ブルース市郊外でジョギングというには速すぎるペースで延々と走らされている何人かの男女の姿があった。
「ハアッ! ハァッ! ハァッ! もう無理! 死ぬ!」
「……ゼェ! ハァ! 私もそろそろ限界なんだが!!」
荒い息を吐きながら汗だくになって、既に意識が朦朧としているメンチとカストロの2人を見て、まだ元気そうなエルマは前方を走る大好きな男に呼び掛けた。
「ジョネス〜!! 2人の顔色やばいよ〜!!」
振り向いたジョネスは目に"凝"をして3人の様子を見て、筋肉や呼吸を丹念に観察して残酷にも喝破した。
「メンチは後10キロな!! カストロは8キロ!! エルマは……分かんねえな。子供の体力は無尽蔵か……。エルマはオレが走り終わるまで付いて来い!!」
「えぇっ!? それって告白!?」
「ちゃうわ!!」
エルマのトンチキな発言にいつもの如く瞬時にツッコミを入れたジョネスに対して、もう限界だと思っていたメンチとカストロから抗議の声が飛び出す。
「ギド達もミルキもとっくに終わってるじゃない!? 何で私達だけまだ走ってんの!?」
「"念"を教えてもらえると聞いたから付いて来たんだぞ!!」
ギド、リールベルト、サダソは同じくらいのタイミングで脱落した。仲良しか。仲良しだな。
ミルキは流石に幼い頃から厳しい訓練を受けて来ただけあって、もう少し粘ったが、体の重みはいかんともし難かったようで、敢えなく4番目に脱落した。
なぜか付いて来ていたイルミが、サクラの指示を受けながら倒れ伏すミルキを甲斐甲斐しく世話していた。ミルキは見た事がない兄の姿に鳥肌を立てながらも嬉しくて涙を流した。
「わァ……ア……」
イルミは「泣いちゃった!」と一言だけ呟くと、暗殺者の癖に泣き虫な弟に対してジト目を向けていた。
ジョネスはメンチに向けて怒鳴る。
「限界が人によって違うのは当たり前だろうが!! お前らがまだイケるなんてバレバレなんだよ!!」
「ぐうっ!!」
「戦闘を教える前にまずはフィジカルだ!! お前にはフィジカルが足りん!! エルマくらいで及第点だ!!」
メンチは念なしで試しの門を開けられなかった事を思い出して、悔しそうに歯軋りをした。
「カストロもな!! "念"とは精神力!! 健全な精神は健全な肉体に宿る!! まず1ヶ月は体作りだ!! やはりフィジカルが足りん!!」
「……」
武闘家として一理あると思ったのと、脳筋過ぎて反論しても意味が無い事を悟ったカストロはそれ以上何も言わずに指示された8キロを走り切った。
ジョネスはメンチとエルマにすぐに追い付くからそのまま走り続けるように指示を出すと、精魂尽き果てたカストロに近付いて栄養剤を手渡した。
「よし、カストロ。これ飲みながら10分以内に呼吸を整えろ。1ヶ月後に精孔を無理矢理開くが、"纏"が出来ずにオーラを使い果たしたら丁度そんな感じになる。この状態に慣れて回復する方法を体で覚えておくと、最低限死ぬ事が無くなるぞ」
「ヒュー、ヒュー」
ジョネスは多数の人体実験を経て確立した、安全なオーラの目覚めさせ方を説明すると、既に虫の息なカストロを強引に引き起こして栄養剤を飲ませる。
カストロに深呼吸をさせて落ち着かせたら、そのまま爆速で追いかけて、倒れているメンチとその場で足踏みをしているエルマに追い付いた。
ジョネスは一言だけメンチに言った。
「この後筋トレだからな?」
そのままミルキとメンチとエルマのフィジカル向上と、カストロ達の念を使う下準備を兼ねた特訓は1ヶ月ほど続いた。
既に念能力者であるミルキとメンチとエルマはひたすらしごかれただけだが、カストロ達にはトレーニングだけでなく、崖登りや念に関する座学、サバイバル、組み手などのジョネスが長年を経て辿り着いた、念を使う前の下準備が惜しげもなく施された。
ジョネスは奇しくもギド、リールベルト、サダソ、カストロの4人に、未来のとあるハンター試験で、"念を覚えるのに値する"と評価された人物達と同等の条件を達成させていた。
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時は少し前後して、ジョネスは天空闘技場で新しく導入するシステムの為にスタッフ達と話し合っていた。
「特殊地形リングの完成はいつ頃になる?」
「第2の石柱リング。第3の森林リング。第5の水上リングは完成しています。第4などの市街地リングに苦戦していますが、残りも1ヶ月以内には完成する見込みです」
ジョネスはその返答に笑みを浮かべた。平面のリングだけだとどうしても戦術が限られて来るし、最近ではマンネリ感が拭えない。特に念能力者ともなれば、開けた地形での戦いだと、特定の系統が一方的に有利になってしまう。
「"緊急脱出"の放出系。"可視化"の具現化系。"治療"の強化系と操作系。"修復"の操作系と具現化系。全員
「流石です、ジョネスさん。ここまで早く実現できるとは……」
「おう、これくらいなら余裕だ。後はテストプレイとして、"死神"とオレも含めた仲間達が各リングでやり合うぜ? どれも良い試合になるだろうから200階クラスでのギャンブルのテストも兼ねよう。ごく一部の富裕層にだけ声を掛けとけ」
「それが終われば後は遂に……!!」
興奮するスタッフ達に向けて、ジョネスは心底おかしそうに笑って言った。
「ああ、"念能力者"のるつぼ。"200階クラス"の完全一般公開だ。世界全体に"可視化"してぶち撒けてやれ。もちろん賭け金は青天井だ」
ジョネスはスタッフ達一人一人と固く握手をすると続けて言った。
「その次の日には、お前らの
それと同日に、対価さえ払えば何でもやる巨大念能力者集団。"幻影旅団"のホームページが世界に向けて完全一般公開される。特殊な回線なんて必要ねえ、一般人の家からでもネットカフェからでも見れるようになってるぜ。
速攻で畳み掛けたら誰にも止められねえ!! ワクワクして来たな!! オレらで世界に風穴を空けてやろう!!」
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スポーツレストラン、"イン・ユーテロ"のテーブル席にて、最初の対戦相手を決めるくじ引きが行われていた。それを穴が空くように見つめる変態ピエロ、ヒソカはもはや絶頂寸前だった。
ジョネスは集まった一同を見て笑いながら言った。
「安全対策は十分に整えた。何やっても死ぬ事はねえ。本気でやれ」
ジョネスが最初にくじに手を掛ける。
「えっ、君も引くの? ボク君とはやりたくないんだけど♢」
「えっ、駄目なの? オレはやりたいんだが」
当然のようにくじを引こうとするジョネスを見て、一気に萎えてどこがとは言わないが、しなしなになってしまったヒソカは、驚きの声を上げた。
しかし、戦いを提供する側であるジョネスの意見に反対できるはずもなく、更に面白そうだと思ったクロロ、フィンクス、フェイタン、フランクリン、マチがジョネスを囃し立てると、ジョネスは何の躊躇もなくそのままくじを勢い良く引いた
「あっ、オレ一番目だわ」
「……(白目)♧」
「「「ぎゃ〜はっはっはっは!! ヒソカ、ご愁傷様!!」」」」
何人かの笑い声が重なった。
「ヒソカ、ごめんな?」
クロロが明らかに悪いと思っていないニヤつきを見せながら、ヒソカに短く謝罪した。
「ジョネス、頑張って」
マチが目をキラキラと輝かせながらジョネスの手を握った。
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天空闘技場から"特別な娯楽"を紹介されたとある大富豪は、遊びで金を賭けた後、送信されて来た映像を見て驚愕した。
平たいリングの上で二人の男が向き合っている。
汚いシャツにジーンズの大男から"煙のような何か"が勢いよく吹き上がったかと思うと、ピエロのような男が対抗するように少し見劣りする"何か"を体に纏った。
大男が人間とは思えない程の高速で突貫して、"何か"を右手に集めたかと思うと、そのまま見るからに殺人的な威力でピエロを殴り付ける。
殴られたピエロは目にも留まらぬ速さで場外の壁に突っ込んで行った。ぶつかった壁がバラバラになって崩壊する。
これは死んだのでは? そう思ったが壁から頭から血を流したピエロが勢いよく飛び出して来た。
そして殴られた箇所から大男にまで伸びている"何か"を見つめると、訝しげな表情で何度か腕を振った。ピエロが冷や汗をかきながら短く言葉を発する。
「なぜ発動しない♤」
「さあな。体重が足りないんじゃねえか?」
大男はそう言うと、自分にはり付いている"何か"をおもむろに掴むと、綱引きのように思いっきり引っ張った。
縮ませようとしていた"何か"を引っ張られて、思いっきり地面からぶっこ抜かれたピエロは空中に投げ出されて、身動きが取れなくなってしまう。緊急用に天井にはり付けていた"何か"を起動させようとするも、天井の方を見ると、既に自分の上に飛び上がって"何か"を指先で切断する大男の姿があった。
「素手で切れるんだ……♧ 自信無くしちゃうな♢」
「そうか? けっこう頑丈にできてると思うぞ」
そのまま空中で自分と相手を結ぶ"何か"を手繰り寄せた男は、今度はピエロに向かって指先を思いっきり叩き付けた。
武器は持っていないはずなのに、ピエロは獣の鉤爪に引っ掻かれたような深い傷を負って激しく出血しながら着地した。ピエロは慌てて"何か"を背後に飛ばして離脱しようとする。
「くっ、武器は必要ないって訳だ♤」
空中に舞い上がっていたピエロの血が、何故か地面に落ちずに大男の"何か"に溶け込んで、そのままそれを増幅させる。
高速で離脱するピエロは絶望的な表情を浮かべた。
「楽しくなって来たなあ!! ヒソカァ!!」
大男は大笑いしながら自分の体を滅茶苦茶に引っ掻いて、自分自身からも大出血して更に身に纏う"何か"を増幅させて行く。
ピエロはふらつきながらも着地すると、大男に向かって"何か"を纏わせたトランプを数枚投げ付けた。
トランプが相手に接触する寸前で、目では捉え切れない程のスピードで動いた大男の上半身が一瞬消えたかと思うと、獰猛な笑みを浮かべながら口に咥えたトランプをむしゃむしゃと咀嚼する姿が目に入った。
「……っ♢」
ピエロは恐怖を感じて思わず後ずさるが、それを気にもせず大男が真正面から高速で突貫する。
再びトランプが何枚か投げ付けられるが、大男の体の表面で苦もなく弾かれて、そのまま近距離で接敵する。
2人の間で目にも留まらぬ激しい攻防が繰り広げられる。
「そもそも格闘技術も勝てないか♢」
「いや互角だろ? 系統の差だ」
ピエロは強く接触した部分がボキボキと鈍い音をたてて、次々と骨折させられて、すぐにうまく身動きが取れなくなってしまう。
いつの間についた傷か分からないが、両脚の太ももに丸くぽっかりと抉り取ったような大きな傷が付いているのも確認できた。太い動脈を断ち切られたのか、そこからも大量に出血して更に相手の"何か"を増幅させる。
大男はピエロの両腕を掴んで、そのまま握り潰して使い物にならなくした後、ぐっと半身になって、左手に膨大な"何か"を集中させる。
大男は指を揃えて貫手を作ると、ピエロの心臓に向かって全力で突きを放った。
「……だから嫌だったんだ……♢ 残念♧」
超威力の貫手がピエロの胴体を貫通してそのまま絶命させんとした瞬間に、ピエロの体が別の場所から来た2人の物ではない"何か"に包まれて優しく保護されると、高速で空を飛んでどこかへ消えて行った。
行き先は医務室である。
人外の超能力者同士の戦いを目撃したとある大富豪は激しく興奮して、すぐに天空闘技場に問い合わせた。詳細を聞いて歓喜する。あれはCGでも特撮でもなく実際に起こった事で、この世界で実際に起こり得る事なのだ。
"念能力者"同士のバトル配信とギャンブルが待ち切れなくなった大富豪は、天空闘技場への大規模な出資を決めた。
そして同じような富裕層達は世界中にいた。
ジョネスの念能力者育成法。人体実験を繰り返した結論が、最終的にハンター試験になったという話です。
こいつ遂に自白しましたよ。世界最大級のテロリストじゃねえか!!
くじ引きと試合。ヒソカは希望が全て通るとでも思ったか?
ヒソカ「あっ、一発で折れたッ♡」
ヒソカvs旅団だけで何試合書くつもりなんだ……。
他にも書かなきゃいけない試合はあるのになあ……。