流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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はい、書けました。文字数多めです。
今更ですが、違和感のある文章があったら大体何かのネタですので、ググってみて下さい。

今回は弟子と娘との宴会と、恐るべき厄災と、3戦目です。



39.シナガワ×ト×カイテン

 

 

 

 ブルース市のとある居酒屋にて、ジョネスが新しい念の弟子であり友人達に対して日々の修行の労をねぎらって宴会を開催していた。そして何故かマチも付いて来た。そしてもちろんジョネスの奢りである。というのも数度の失敗を繰り返したものの、4人の弟子がつい先日相次いで"纏"に成功したからだ。

 

 とりあえずは念能力者の仲間入りという訳である。ここからは人によって"絶"が難しいと言う者と、"練"が難しいと言う者に分かれて来るので、その辺を見るのもジョネスにとっては楽しみの一つである。

 

 ちなみに"凝"は誰にとっても難しい。

 

 テーブル席に腰掛けたジョネス、カストロとギド、リールベルト、サダソの仲良し3人組の間で和気藹々と今までの生い立ちや闘技場に来た経緯を語り合う。ちなみにこの仲良し3人組は共にジョネスの弟子になるまで接点が無かった。

 

 運命は確かに存在するようだ。つまりクロロとヒソカが出会ったのは実はジョネスのせいではない。聞いてるかクロロ?

 

 ジョネスは弟子達と話しながらも、変態に負けた悔しさが今になって出て来たのか、ジョネスの脚に縋り付いてしくしくと啜り泣くマチの背中を撫でて落ち着かせていた。

 

 なお彼女の目的は初めからジョネスに甘えることだった。試合が終わった後、他の仲間達の前ではキリッとした顔で「こういうこともあるわよ。当たり前じゃないか? 切り替えてこ」とか言っていたが、実は全然切り替えられていなかった。

 

「うぅ……悔しいよぉ……。あんなアホな格好の変態に負けるなんて……。あんないっつもニヤニヤニヤニヤとアホ面の……。語尾に謎の記号が付いてる気がするピエロに……。クロロで勃つ変質者に……」

 

「言い過ぎだろ。まあヒソカは強いから仕方ねえって。ほら、オレはお前に賭けてたんだぜ? その金を失っても惜しくないくらいナイスファイトだったぞ」

 

 ジョネスはそう言ってマチに賭けたチケットを見せた。

 

「……ジョネス……!! 大好き!!」

 

「はいはい」

 

 マチはキラキラと目を輝かせてすぐ元気を取り戻した。飲みの席での彼女は昔から情緒不安定だ。

 

 ジョネスは彼女が立ち直ったのを確認すると懐から5枚の紙を出して、その場にいる全員に手渡した。

 

「ちょっと面白い事しねえか? "水見式"をやらなくても系統が分かる方法があるんだよ。オレとマルローとクロロで作ったアンケートと思考テストを組み合わせた"系統チェック"だ。これの傾向で系統が分かるようになってる。確率はお前らがぶっ飛んだ奴じゃなけりゃ80%くらいかな?」

 

「ほう、面白そうだな」

 

「いいだろこれ? どんな"発"にするか妄想して酒の肴にしよう」

 

 マスクを外すと実はかわいい顔をしていたギドが興味を示す。他のメンバーも同意して全員に紙が配られた。

 

 少ししてから、最初に終わったのはマチだった。彼女はデータ集めの為に一度やった事があるので当たり前だ。

 

 ジョネスは解答結果を計算すると、その結果に目を丸くして驚いた。

 

「あれ? 前やったときは、強化要素の入った変化系だったんだがな。今回は微妙によく分からん要素まで混じってるぞ。こりゃ特質か?」

 

「ああ、多分あの糸のせいだね」

 

「ああ、アレかあ……」

 

 マチの【死川心中(アノヒト)】は明らかに変化系の範疇にない。具現化系かと言われたらそうでもないし、もちろん強化系ではない。

 

 ちなみに熱心にアンケートを書き込む目の前の4人にも、念を教える前に契約を結ばせている。内容は「私はジョネスに念を教えてもらう代わりに、幻影旅団に最低5年は所属し、最低30件以上の依頼を受けます。ただし死んだり、病気や怪我で動けなくなった場合はその限りではありません」である。これをギドとリールベルト間、サダソとカストロ間に結ばせた。

 

 違和感を感じただろうがこの能力、なんでもアリである。約束する当事者ではないジョネスや幻影旅団まで約束の内容に含まれているが、これが普通に通ってしまった。

 

 納得とか合意とかを無視した、かなり一方的な感情から生まれた能力だと言えるだろう。

 

 マチの「あの糸」という発言に4人は顔を青ざめさせて、約束を結んだ相手と互いに顔を見合わせた。

 

「マジで頼むぞ?」

 

「本当にな。お前大丈夫だろうな?」

 

「死んだら恨むからな、カストロ」

 

「恨むも何も2人とも死ぬんだって。本当に勘弁してくれよ?」

 

 ジョネスはとある封建国家の"5人組"制度の如く、一瞬で疑心暗鬼に陥る4人を見て「本当に酷い能力だな」と再確認した。

 

 ぼんやりと本当に酷い能力の持ち主を横目で見ると、目のハイライトが消えたマチがつんつんとジョネスを小指でつついて「分かってるよね?」と囁いて来た。凄く怖かったがジョネスはその問いに頷いて肯定の意を示した。

 

 マチは目に光が戻って、「えへへ」と溢して満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 凄く怖かった。

 

 

 

 

 

「そういやこいつらと同時進行で教えていた、ネッシーとデイジーと連絡がつかなくなったんだが……。一緒に教えてたゼパイルでもどこ行ったか分からないって言ってたし……。まさかな……」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ジョネスに念を教わっていた二人組の男女、"ネッシー"と"デイジー"はブルース市からの脱出を目論んで車を走らせていた。

 

「ケッ!! 何が"幻影旅団"だ。厨二か!! "纏"だけ教わりゃ十分だ。後は勝手にやらせてもらうぜ。5年もあのおっさんの手下だなんてやってられるか!!」

 

「こんな約束に強制力があるはずないわ。きっとただのハッタリよ。さっさとトンズラこいちゃいましょ」

 

 

 

 

 

 車内に「べべん」と存在するはずがない三味線の音が響いた。

 

 

 

 

 

 ジョネスから逃げ出そうとしていた男、ネッシーは瞠目した。

 

 つい先ほどまで自分は車を運転していたはずだ。だが今見ている光景は何なのか? 冷たい風が吹く薄暗い朱塗りの橋の上で、彼は1人立っていた。

 

 空は朧月夜で、この世の物とは思えない血のように赤い月が光を放っている。辺りの木造の建物は写真で見た事がある。ジャポンの風俗街、"遊郭"なる場所に酷似していた。

 

 

 

 

 

 無限に続く大通りの先から「シャリン」という音と雅な笛の音が聞こえて来た。

 

 

 

 

 

 いつの間にか"それ"はそこに立っていた。

 

 高下駄に色鮮やかな着物を身に纏った女だ。固めて膨らませた不思議な髪型に数多くの金色の簪を刺している。顔は何故か闇が掛かったように暗くてうまく認識出来ない。

 

 どれくらいの距離にいるかも何故か認識出来なかった。

 

 男が突然現れた人物を呆然と見つめていると、まばたきした瞬間に一瞬でワープしたかのように、気付いたら目と鼻の先に彼女は立っていた。

 

 

 

 

 

「ア゛ノ゛ビ ド  ト  ヤ゛グ ゾ グ ジ ダ ノ゛ニ゛」

 

 

 

 

 

 闇に隠されていた女の顔を見た男は戦慄した。病的なほど真っ白な顔をしわくちゃにしかめた、()()()()()がそこにいた。

 

 耳の後ろまで裂けた口から、肉食魚のような不揃いで鋭く尖った歯が覗いている。

 

 男は突然体が動かなくなると、空中に浮かび上がって大の字に拘束された。

 

 

 

 

 

「うお!? 浮いてる…す…すげえ」

 

 

 

 

 

 何とも呑気な声を上げた彼の体に、赤黒い疱瘡がそこら中に浮かび上がって、全身に激しい痒みと痛みをもたらした。

 

「がっ!? うがあああぁぁぁ!!」

 

 体を掻きむしろうとしても、空中に磔にされて指一本動かせない。女は鼻と耳から涙を止めどなく溢れさせて、苦痛にもがき苦しむ男の顔に唾をとばしながら、枯れた声で叫んだ。

 

 

 

 

 

「ニ゛グ イ゛ニ゛グ イ゛ニ゛グ イ゛ ウ゛ラ゛メ゛ジ ヤ゛」

 

 

 

 

 

 男の体の内側から突然出現した細長い針が、彼の体を刺し貫いた。そのまま体のそこら中から何本も針が飛び出して来る。

 

「痛っ!? あっ!! ひいいいぃぃぃ!!」

 

 針が体を刺し貫く度に男は絶叫するが、急所を外しているのか針が何本飛び出しても男が死ぬことは無かった。

 

 膿んだでき物の中身と血液を滴らせて、ヒューヒューと微かな息を漏らす死に掛けのハリセンボンに、女が先ほどとは打って変わって酷く悲しげな声で囁いた。

 

 

 

 

 

「アノヒト ト ヤクソク ノ カワワタリ」

 

 

 

 

 男の気管から肺、口から肛門までの全てに突然大量の水が溢れ出して、水死体のように男の体をパンパンに膨らませた。

 

 男は溺死寸前の朦朧とする意識の中で、朧げになる視界の中に白無垢姿の絶世の美女が涙を流す姿が見えた気がした。

 

 いつの間にやら鳴っていた鼓の音が、「ポポン ポン」と締めを告げる拍子で打ち鳴らされた。

 

 

 

 

 

 後日、とある川縁に駐めてあった車の中から、身元不明の二人の男女の死体が物理的に()()()()()()状態で発見された。

 

 世にも奇妙な()()の死体について厳重な情報統制が敷かれ、国際機関である外務省国際渡航許可庁の特務課が強制的に回収して行った。

 

 

 

 

 

 これにて終劇、死川心中。おあとがよろしいようで。

 

 本当に酷い能力だな。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 弟子達の結果が一通り出揃った。カストロは強化系、リールベルトは放出系、サダソは変化系だ。

 

「ギド、早く終わらせろよ」

 

「ちょっと待てって、オレはこういうの結構悩んじゃうタチなんだよ」

 

「下手に悩んだら的中率落ちるんだよ。むしろ直感で書いてけ」

 

 ジョネスが手こずっているギドにアドバイスすると、ギドは「そうか」と納得するように一言だけ答えて、書き込むスピードが格段に上がった。

 

 待ってられなかったので、その間に他の3人と雑談を始める。

 

 「カストロは強化系か。シンプルに肉体強化して虎咬拳使うだけでいいと、普通の奴ならそこで終わりだが……。だが良くねえよなあ?」

 

「……?」

 

「おいおい、お前は必殺技が欲しくねえのか? 特殊能力が欲しくねえのか?」

 

「いや、別に?」

 

「はあっ!? お前ウボォータイプか!! 話合わねえ!!」

 

 ジョネスは信じられないものを見るような目でカストロを見た。強化系にはたまにいる肉体強化一本で十分だと豪語する輩だ。ジョネスは何故か不機嫌になって「フン」と鼻を鳴らすと短く言った。

 

「好きにしてろ。どうせ勝てない相手に出会ったら、すぐに必殺技に逃げることになる。系統だけは間違えんなよ?」

 

「ジョネス、変化系ってどうなんだ? こないだのヒソカとそこにいるマチちゃんの試合見る限りでは、滅茶苦茶強そうだと思ったが?」

 

 左手を開いて前に置く構えが特徴的なカキン拳法を使うサダソは、ワクワクしながらジョネスに問い掛けた。

 

「ふふん、分かってるじゃないか」

 

 褒められて腕を組んで満足げな様子のマチを微笑ましく見た後、ジョネスは顎に手を当てて考えながらサダソに答えた。

 

「変化系は強いんだが……難しい……。一定以上のレベルにならないと器用貧乏なだけの応用が利くタイプか、使い道は狭いが最初から強力な特化型か、どっちかって印象だな。あと具現化系や操作系に比べると、戦闘タイプになりがちな癖に戦闘の難度が高い」

 

「う〜ん、確かに。何に変化させるって言われても選択肢が多過ぎて、パッとは思いつかないなあ」

 

「さっき言った例えで言うと、前者はヒソカ、マチ、エルマ辺りで、後者はフェイタン、カサイ辺りになる。試合見て参考にしてみろ」

 

「了解した」

 

「まあ結局、直感で決めるのが良いぞ。自分が好きな物とか、子供の頃してた妄想とか。アニメや漫画の好きな能力丸パクリするのも良い。変化系はそういうのがやり易いしな」

 

 サダソがストリーミングサービスに加入することを内心で決定した。この後、アニメにどハマりしてオタク格闘家になるのだが、それはまた別の話である。

 

「んで、リールベルトは放出系か……。放出系かあ……」

 

「えっ、何かマズイのか?」

 

 リールベルトは健脚を誇り、3人の仲良しなおじさんの中で一番 す ば や い 。いつかチーターになるだろう。

 

「いやそんな事ねえけど……。弾飛ばすか、高速移動するか、瞬間移動するか選べ、以上」

 

「えっ、それだけ?」

 

「……冗談だ。他の系統と組み合わせたら色々出来る。ゼノって爺さんはドラゴンの頭飛ばす能力だしな。空から無数に降らせたりも出来るらしい。やろうと思えばサメでもコモドドラゴンでも出せると思うぜ?」

 

 言葉のあやで、ゼノが空から無数のコモドドラゴンを放つ能力者だと、その場にいる全員に勘違いされたが、ジョネスはそれに気付かず話を続ける。

 

「言い忘れてたが、サダソもカストロも他の系統と組み合わせたら格段に可能性広がるぜ? たぶん瞬間移動するゴリラも作れる」

 

「瞬間移動するゴリラ作れるの!?」

 

 ジョネスが冗談で言った言葉にリールベルトが驚愕した。まさかそんなふざけた能力作る奴はいないだろう。実際にはいる。

 

「ジョネス、見てくれ」

 

 そうこうしている内にギドが系統チェックを完成させて、ジョネスに手渡して来た。

 

 ギドはボラジルのコマのように回転しながら放つ蹴り技が特徴的な格闘技、カポベイラの使い手である。空間認識力と頑強な足が自慢だ。

 

「お前も強化系か。あいつと気が合う訳だぜ。今度の試合応援してやれよ?」

 

 ギドは最近とある男と秒で仲良くなった。今では立派なベイセイバー仲間である。

 

 

 

 

 

 ジョネスゲーム:第3試合。

 

[ヒソカ=モロウvsフィンクス=マグカプ]

 

 ステージ:第2特殊リング[石柱遺跡]

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 テーブル席で観戦しているエルマは、相変わらずジョネスにくっ付きながらド直球の質問を投げ掛けた。

 

「ジョネス!! フィンクスの能力って何!?」

 

「マナー違反ね」

 

 フェイタンがエルマの頭をコツンと優しくチョップした。

 

 念能力者は"発"の内容を隠すものである。能力が知られる事は即、死に直結すると経験で理解しているからだ。

 

 まあ大して能力を隠そうとしないジョネスの影響を多分に受けている上に、スポンサーや身内しか見ていないとは言え、こうしてただの闘技場でバトルして手の内を公開しまくっているのがこいつらなのだが。

 

 メンチも気になったのか、デカいフライドチキンをボリボリと骨ごと食っているジョネスに目を向けた。

 

 ジョネスはフライドチキン食べ終わって、「ゲフッ」と何に憚る事もなくゲップをしてから口元を拭くと、何に憚る事もなく他人の能力をバラし始めた。さすがバラし屋である。

 

「腕を回せば回すほどパンチ力が上がる

廻天(リッパー・サイクロトロン)】だ。強化系能力だな。厳密に言うとパンチに使う筋肉と、拳に出力できる顕在オーラ量を強化してる。理論上はパンチ一発に潜在オーラ全部込められることになるな」

 

「言うな」

 

 フェイタンがジョネスの頭をゴスッと力強くチョップした。

 

「腕を回すって……、どんな感じに……?」

 

 メンチが考え込むような仕草でジョネスに問い掛けた。

 

 ジョネスは「何を言ってるんだお前は」というような目をメンチに向けてから、お手本にぐるぐると大きく腕を回した。

 

「普通にこんな感じに。子供の喧嘩だな」

 

「えっ!? 隙だらけじゃない!?」

 

 仲の良い相棒の能力が侮辱されたように感じて、フェイタンが鋭い目つきで反論した。

 

「……別に相手の近くで回す必要ないね。それにあいつ体術にさりげなく回す動き混ぜてるよ」

 

「いや、隙だらけだろ? でも強いぜ。見た目と性能とは裏腹に嫌らしい能力だな」

 

 隙だらけな事は否定しなかったジョネスの言葉を聞いて、フェイタンがガクッと首を落とした。エルマとメンチは単純な能力に"嫌らしい"という評価を下したジョネスを不思議そうに見つめる。

 

 察しの悪い2人に対して、ジョネスは呆れたように答えた。

 

 

 

 

 

「お前ら、パンチをチャージさせたくなかったらどうするんだよ? あいつに近付くだろ? 強化系のあいつに」

 

「あっ、そうか。それは嫌らしいね」

 

「……もし、溜められちゃったら?」

 

 もう話が終わったと思って、ビールを飲みながらモニターを見ていたジョネスは、メンチに問われた最後の質問に少し考えてから答えた。

 

 

 

 

 

「バトブラのホンキーコングみたいに、ノーモーションで突然大砲が飛び出して来る」

 

「「「なるほど」」」

 

 今までで一番分かり易い説明に、話を聞いていた3人の声が重なった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 第2特殊リング[石柱遺跡]はその名の通り、平地の上に長さも太さも異なる様々な石の柱が設置されているリングだ。ベゲロセ連合国のガッカリ世界遺産"ローリングストーンヘンジ"を大規模化させたような造形である。

 

 ヒソカは先日の森林リングでの戦いを再現するように、石柱に【伸縮自在の愛(バンジーガム)】を張り付けまくって、戦いの準備を整え始める。

 

 その時、ガムを張り付けた石柱の一つが轟音を立てて粉砕され、その瓦礫がつぶてとなって何本かの柱を更に崩壊させながら、ヒソカに殺到した。

 

 落ち着いて体にぶつかる瓦礫を"堅"で防ぎながら、粉砕された石柱の方を油断なく睨み付ける。

 

 やがてその土煙の中から腕を大きく回しながら一人の男が現れた。

 

 

 

 

 

「待ちわびたぜヒソカ……!! 今日はオレと遊んでくれるんだってな?」

 

「良いね♡ フィンクス、相手してくれる気満々って訳だ♤」

 

 

 

 

 

 ヒソカは軽口を叩きながらも、フィンクスが腕を回す度に拳のオーラが増幅して行くのを見て、一瞬で能力を見抜くと同時に最大限の警戒を見せた。

 

(腕を回すのを制約としてパンチ力を強化か♢ 強化系相手は辛いけど、これはこれで楽しいね♡)

 

 ヒソカはそれ以上腕を回させないように、トランプを投げ付けながら急接近した。

 

 目論見通り相手から近付いて来るのを見たフィンクスは笑みを深める。狙うは一発KOだ。

 

 回していない方の左腕で飛んで来るトランプを弾く。腕に浅く傷がついたが、お構いなしにこちらからも接近して急速に距離を縮めた。

 

 モニターで試合を見ていたクロロが呟いた。

 

「あ〜あ、くっつけられてるよ」

 

 トランプで切り掛かるヒソカに対して、フィンクスの右腕が振り抜かれる。

 

 

 

廻天(リッパー・サイクロトロン)

 

 

 

 ヒソカは放たれた超威力のパンチに対して、自分の背中につけたゴムを急速に縮める。そのまま後ろに高速で飛んで、人間離れした方向転換の挙動を見せて回避した。

 

(接近戦はフェイク♡ まずは腕のチャージを振り出しに戻させて貰うよ♧)

 

ヒソカは石柱に張り付きながら、全力のパンチが空振ったフィンクスを見て笑顔で挑発した。

 

「残念♡ 思ったより距離が遠かったねえ♢ 目が悪いのかな?」

 

 額に青筋を浮かび上がらせて、再び腕を回し始めたフィンクスに対して、先ほどフィンクスが振り払った左腕に、そのままこっそりと付着させていたトランプをゴムを縮めて再び彼の体に殺到させた。

 

 ヒソカ自身も新しくトランプを投げ付ける。

 

「しゃらくせえ!!」

 

 ゴムで縮んで体に再び殺到したトランプが体に突き刺さりながらも、フィンクスはアッパーの要領で地面を捲り上げた。

 

 土とそれに混じった石柱の破片が、新しく投げたトランプとヒソカを襲う。トランプは叩き落とされ、ヒソカが張り付いていた石柱が崩れ落ちた。

 

 ヒソカが石柱の破片でダメージを受ける。

 

 体勢を崩したヒソカに対して、土煙の中から飛び出したフィンクスがヒソカの目の前に姿を現す。

 

「オレの間合いだ!!」

 

「っ……♧」

 

 2人の間で接近戦が繰り広げられる。1回か2回ほど腕を回す動きが巧みに織り交ぜられた強化系のフィンクスの体術で、変化系のヒソカは押し負けて何箇所か打撲と骨折するダメージを受けた。

 

「くっつけられてやがる……」

 

 モニターでそれを見ていた男が、フライドチキンを骨ごとかじりながら呆れたように呟いた。

 

「これはマズいね♢」

 

「逃すかっ……よおっ!!」

 

 別の石柱に付けていたゴムを縮めて、緊急離脱しようとするヒソカに向けて、石柱を引っこ抜いたフィンクスが、そのままそれを野球のバットのようにして、離脱するヒソカを殴り付けた。

 

 ヒソカがまた一箇所骨折して、離脱しようとした方向とは別の方向に吹き飛んで行く。

 

 距離が離れたのを確認したフィンクスは、持っていた石柱をヒソカの方へ投げ付けてから、ヒソカを警戒しながらも腕を回してチャージを再開した。

 

 それをモニターで見ていたフェイタンがため息を吐いてから呟いた。

 

「フィンクス……くっつけられてるね……」

 

 遠くまで吹き飛ばされたことで、最初にそこら中の石柱に付けていたゴムが限界ギリギリまで伸びたヒソカは、自分の体をゴムパチンコの弾の要領で高速で飛ばし、石柱と石柱の間を目にも留まらぬ速さで移動してフィンクスに再び襲い掛かった。

 

「馬鹿が!! 接近戦じゃ分が悪いってことがまだ分からねえか!!」

 

 フィンクスは飛び掛かって来るヒソカに向かって、たっぷりとチャージした右腕でパンチを放つ。

 

 

 

 

 

 ()()()()()()

 

 

 

 

 

 フィンクスの右腕が後ろに向かって高速で引っ張られる。体勢を崩したフィンクスのパンチは、てんで的外れなあさっての空に向けて放たれた。

 

 ヒソカは先ほどの接近戦にて、フィンクスの右腕にくっ付けたオーラを彼の後ろの石柱に飛ばして、右腕と石柱を結んでいたのだ。

 

「フィンクスったら、あんなに激しく回しちゃって♤ 自分でゴムの力溜めてくれるんだもん♢ 笑っちゃうよ♡」

 

 フィンクスは破れかぶれに左脚で蹴りを放ったが、ヒソカは両腕の間にビヨーンとゴムシートのように伸ばしたオーラで勢いよく受け止める。

 

 そのまま左脚を包んだオーラをフィンクスの首の後ろ、右腕、左腕の順番に回して、フィンクスの体をトンッとこづいて地面に簡単に押し倒した。

 

 それをモニター越しに見たマチが目を見開いて驚きの声を上げた。

 

「捕縛術……!?」

 

 ヒソカは先の試合でマチの技術に興味を持って、少しネットで調べると、あっという間に捕縛術を中級程度までマスターしてしまったのだ。まさに戦闘の天才である。

 

 ゴムを振り解くのに苦戦しているフィンクスに向けて、打撲に骨折だらけでボロボロのヒソカが、それでもなお余裕そうに語る。

 

「今回はいっぱいトランプ使わされちゃったね♢ フィンクス、これは何枚目でしょう? そして今、一番上のカードを引いてみたらびっくり♤ なんとジョーカーでした♡」

 

 ヒソカは地面に寝転がってもがくフィンクスの首に向けて、"硬"を込めたトランプを振るった。

 

 

 

 

 

「答えはお死枚。チャンチャン♡」

 

 

 

 

 

 フィンクスが「やられたぜ」と笑みを浮かべて緊急脱出した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ジ「フィンクスは大技狙い過ぎだな」

 

フ「挑発されて"凝"が疎かになり過ぎよ」

 

エ「あっ、ヒソカ倒れたよ」

 

メ「ヒソカのが重症じゃない? 何箇所骨折してんのよ?」

 

ジ「勝者を緊急脱出させる機能なんてねえんだよ。制約だ」

 

フ「リングがボロボロね。大丈夫か?」

 

ジ「設備を直す能力者もいるぜ? 完成系を保存して壊れても元の形に戻すんだ」

 

エ「うわっ!? ヒソカ勃ってるよ!!」

 

メ「サイッテー……」

 

ジ「マセガキが……、そっとしといてやれよ。隠そうにも、もう動けねえんだろ」

 

フ「不特定多数にアレ見られるとかウケるね」

 

 

 

 

 




マチ……、愛される方にも都合ってもんがあってさ……。

ずっと書きたかった死川心中。〆の段。

五体満足な3人のおっさん。
ゼノ爺……。ゴレイヌさん……。念能力は何でもありっスね。

フィンクスは怖いよ。
ヒソカはステージに恵まれたね。
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