流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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はい、遅れましたが投稿しときます。

今回はデートと、4戦目と、火災です。



40.ウツクシキ×ハ×ヘイキ

 

 

 

 しばらく前にハンサムな厨二病患者とハンサムな戦闘狂の変態ピエロがたまたま出会ったとあるカフェテラスにて、二人の男女が向かい合わせになってティータイムに興じていた。

 

「……前から思ってたんだけどさ、サクラってこの街に何しに来たの? 遊んでばっかで何もやってないじゃん」

 

「イルミも何もやってないやん?」

 

「……」

 

「……」

 

 イルミの素朴な疑問に対して、サクラが図星を突く答えを返した。二人の間に沈黙が流れる。

 

 お互いにズズッとコーヒーを一口啜った所で、旅行雑誌に目を落としていたサクラが顔を上げてイルミと目を合わせて言った。

 

「ウチはジョネスにオモろいモンがあるから来いって言われたんや。あの試合のことやろな。ついでに旅団の結成式という名目の宴会やるから、みんなで集まって馬鹿騒ぎしよって言っとったで? あのおっさん毎日宴会しとるよな」

 

 ちなみにジョネスの考えていた面白いものとは、天空闘技場の新機能を使った身内同士のバトル大会だったのだが、たまたまヒソカと出会ったことで趣向が変わっている。

 

 ヒソカが他の全員と戦うという彼の負担が大き過ぎる内容だが、本人が楽しんでいるのでヨシである。

 

 サクラが続けて言った。

 

「そんでたまたま街中でイルミに会って、すぐ人を殺そうとするお前を何となくほっとかれへんかったから、こうやって付いて来てる状況やな。天然さんで面白そうやったし」

 

「……オレは親父に家を出てけって言われたんだ。でも何をやればいいのか分からない……」

 

「家出じゃなくて追い出されたんや? 可哀想になあ」

 

「撫でないでよ。サクラはいつも殺すなって言うけどさ、君だって人殺しの匂いがぷんぷんするよ? 君は流星街の抱える念使いでそういう仕事もするんだろ。なのに何で?」

 

「仕事の時以外に殺すのはなあ、やっぱりちゃうで。"人間(ヒト)に迷惑をかけるな"って言葉知っとるか? ……いや、最初から人間のイルミに言うこととちゃうな……」

 

 サクラはそう言うと遠くを見て悲しげな目をして、何も言わなくなってしまった。

 

 イルミが疑問の表情を浮かべて聞き返す。

 

「何で仕事以外の殺しは駄目なの?」

 

「……それは……きっと"美しくて良い物"が忘れられんからや。それがあるから、やむを得ない場合しか人は殺したくないんよ」

 

 謎が深まるばかりのサクラの言葉に対して、イルミは無言で続きを促した。サクラは言いたくないものを言わされようとしていることに辟易としたが、何となくこの友人には打ち開けた方がいい気がして、ポツポツと語り出した。

 

「昔、残飯を漁ってる時に、肉を見つけた時は嬉しかったなあ。

 

 鞭で叩かれながら、体も足の裏もボロボロの状態でゴミ拾いして、やっとこさ雇い主に叩かれんで済む金目の物が見つかって、そらあ嬉しかった。

 

 街が変わって仕事が増えて来て、初めてケーキ食べた時も嬉しかった。

 

 ジョネスのおっさんに拾われて、念を使えるようになったのも嬉しかった。

 

 完成した第1緑地でみんなでバーベキューした時は、この時の為に生きて来たんやって思った。

 

 全部些細な事やけど、全部"美しくて良い物"やと思わんか?

 

 全ての人が、ウチと同じ"物"を抱えてる生きた人間やと思うと、無闇に殺したない。仕事なら何も考えんようにして平気で殺す癖に、ウチは傲慢やなあ」

 

「……その"美しくて良い物"を覚えてるから、サクラは人を殺さないようにしてるの?」

 

「そうや。そしてそれをいっぱい集めるのがウチのやりたいことやな。人間ならみんなそうやと思うで?」

 

 イルミは顎に手を当てて考え込んだ。サクラはやりたいことがあるから、同じくやりたいことがある他の人間を無闇に殺さないと言った。

 

 イルミにはやりたいことがないから、それが理解出来ない。

 

 それが理解出来ないということは、やりたいことがない人間ということになる。

 

 

 

 

 

 やりたいことがないイルミはやはり暗殺者にしかなれないのだ。

 

 

 

 

 

「……オレにはやりたいことがない……。ありがとうサクラ、覚悟が決まった。オレは実家に戻ることにするよ」

 

「……?」

 

 そう言って暗く鋭いオーラを浮かべるイルミを見て、サクラは首を傾げて指を差した。

 

 

 

 

 

 指し示した先には一杯のコーヒーがあった。

 

 

 

 

 

「やりたいことあるやん。ジョネスに付いて行きたかったんやろ? ミルキとゲームやりたかったんやろ? メンチの料理食べたかったんやろ? ヒソカの試合見たかったんやろ? コーヒーにアホほど砂糖入れたかったんやろ? 

 

 ……付き纏う面倒臭い女を殺さんかったやろ? 

 

 イルミも小さいかも知れんけど、"美しくて良い物"いっぱい持っとるよ? 天然さんをほっとかれへんで、ウチがずっと付いて行ったる。小さい物でええからちょっとずつ一緒に集めて行こ? 集まればきっといつか大きくなるよ」

 

 

 

 

 

 サクラはそう言って、満開の桜のような笑顔をイルミに向けて来た。

 

 この瞬間は"美しくて良い物"だと、イルミにも何故かはっきりと理解出来た。

 

 

 

 

 

 サクラは立ち上がってイルミの隣に座ると、旅行雑誌を開いて体を寄せて来た。長くてさらさらな赤い髪からふわりと良い匂いがした。触れていないのに温かな体温を感じる。

 

「イルミ、旅行せえへん? レインボードーロ好きなんやろ? これ見てみ、ベゲロセのカダナ自治州の虹色のオーロラ!! ウチも一回見てみたかってん!!」

 

「……そうだね、綺麗だ……。きっと"美しくて良い物"だ。でも行けないよ……。暗殺の仕事があるし……」

 

「……? ないやろ?」

 

「……そういやそうだ。でもジョネスに付いて行かないと……」

 

「付いて行かんでもええやん? イルミの自由やろ?」

 

「……それもそうだね。でも何で君と一緒に行かなくちゃいけないの?」

 

「あぁ〜!! ショック!! ウチらもう友達やろ!?」

 

「……トモダチ……」

 

 イルミはその言葉にショックを受けて、それ以上は何を言っても生返事しか返さなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 暗殺者に友達はいらない。

 

 幼い頃から自分に言い聞かせて来た言葉だ。

 

 その夜、イルミは元の自分に戻れなくなってしまうことが怖くなって、ミルキのパソコンからダークウェブにアクセスした。

 

 ブルース市内だけでもいくつかの暗殺依頼が見つかった。その一つを受注したイルミは準備を整える。

 

 出発する直前、何となく振り返って、ミルキの隣のベッドで爆睡しているサクラの顔を見た。

 

 

 

 

 

 何故か昼間のサクラの笑顔と言葉が頭から離れなかった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 幻影旅団の結成式が近付いて来て、流星街から世界に散らばっていた大勢の仲間達が集まって来た。

 

 イン・ユーテロの店内は身内だけで大盛り上がりだ。メンチは忙し過ぎてジョネスに構ってくれなくなった。それでも昼間はしっかりフェイタンに戦闘の手ほどきを受けているのだから、彼女は真面目で頑張り屋だ。過労死しないといいが。

 

 ジョネスがそんな無責任なことを考えながら、モニターが見下ろせるカウンター型の席で一人で飲んでいると、二人の男が近付いて来た。

 

「やあジョネス!! 久しぶり!!」

 

「マルロー、長老会の仕事はいいのか?」

 

 そう問われた茶色のローブにガスマスクの不審者は、「よっ」と言って、ガスマスクを外して料理とワインを頼むと、ジョネスに笑顔を向けて答えた。

 

「サヘルタ合衆国はもう折れるよ。昔から色々と流星街(ウチ)を使って後ろ暗いことをしてたオチマ連邦が渋ってるみたいだけどね。ライバルのサヘルタと足並みを合わせたくないってのもあるんだろう。幻影旅団を見て態度を変えてくれたら良いんだけど……。最悪の場合、太陽(ピカ)を使って教化(ポア)しなきゃね……」

 

 ピカを使ってポア。流星街の人間にしか分からない凄まじく不穏な単語が飛び出したが、ジョネスはそれを聞いて笑って言った。

 

「構わねえよ。世界中に念能力者のテロリスト予備軍が隠れてるんだ。いよいよケツに火がついたって訳だ。必要ならピカも使っちまえ。オチマがわざわざ生贄に志願してくれてるんだ。流星街と喧嘩するとどうなるか見本をみせてやれ」

 

 その言葉を聞いて、マルローとは反対側のジョネスの隣に座ったオレンジ色の消防服を着た男が、こちらもガスマスクを外しながら言った。

 

火火火(ヒヒヒ)ッ!! 海の上で実験したときは最高だったな。あんな最高の炎は見たことねえ。首都(モサニコワ)のド真ん中で爆発する光景を想像するだけでイッちまうぜ」

 

「カサイ……、使わないで済むのが一番なんだからな? それに流石に首都でやらかしたら、あっちも後に引けなくなる。第2の都市(セイント・ペドロフスク)も歴史的な価値があり過ぎる。やるなら第3の都市(ノーヴリアンスク)だな」

 

「楽しみだ……」

 

 ジョネスはもう既にピカってポアる気でいるカサイを呆れたように見つめた。第2人格の彼はこれだから困る。他の人格の秘められた狂気が一身に集まっているのだ。彼の妻と子供はこの状態の彼の事も大好きなようだが、正直理解に苦しむ。

 

 その時、ジョネスは階下にいる子供連れの不審な男を見つけた。明らかに幻影旅団に加入する予定のメンバーではない。メンバー全員の名前と能力と顔を覚えているジョネスでも見覚えがない不審な男だ。

 

 そそくさと店を出ようとする男を"凝"で入念に観察する。手を繋いだ子供も含めて念能力者だ。

 

 大人の方は巧妙に隠しているが子供の方は隠せていない。心源流特有の歩法だ。

 

 ジョネスは隣にいるカサイに向けて一言だけ言った。

 

「カサイ、仕事だ。ネズミの処理を頼む。深夜から雨が降るらしいから早めに済ませろよ?」

 

「火火ッ、了解。子供もか? 子供に優しいジョネスおじさんよ?」

 

 ジョネスと同じく不審な男に気付いていたカサイが問い掛ける。第2人格の彼は、自分の子供以外に容赦するような輩じゃない。だからこそ任せられる仕事というものがある。

 

 ジョネスはおぞましい色のオーラを揺らがせて、暗く沈んだ目で答えた。

 

 

 

 

 

「当たり前だろ。二人とも()()()()だ」

 

 

 

 

 

 待ち切れないといった風に足早に席を立って、店の外に出て行ったカサイを見て、マルローが「ふふっ」と笑った。

 

 流星街の大人組は()るときは()る狂った男達である。

 

 にわかに会場が騒がしくなる。モニターに目を向けると、第4試合が始まる所だった。

 

「ジョネスはどっちに賭けたの?」

 

「決まってんだろ? あのステージじゃヒソカはキツい。平地よりはマシだろうがな」

 

「だね〜」

 

 

 

 

 

 ジョネスゲーム:第4試合。

 

[ヒソカ=モロウvsフランクリン=ボルドー]

 

 ステージ:第5特殊リング[水上基地]

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 水が張られた巨大なプールの上に、複雑な足場が組み上げられている。ユニバーサルランドのウォーターシティを大規模化させたような造形だ。

 

 試合が始まると同時に、ヒソカに向けてどこからともなく大雑把に乱射された念弾が殺到した。射線状にあった建造物が蜂の巣になって半壊する。

 

(この威力♤ 放出系か♧)

 

 飛んで来る念弾を察知したヒソカは咄嗟に走り回って何とか弾を回避しようとするも、水上の狭い足場のせいですぐに限界を迎えて追い詰められた。

 

 クレーンのような鉄骨に【伸縮自在の愛(バンジーガム)】を飛ばして、蜘蛛をモチーフにしたヒーローのようにスイングして別の足場に移った。

 

 ヒソカが大穴が開いた建物の隙間から、念弾を放った相手を確認した。

 

 不思議な事に両手の指先を落として銃口のようにパカっと開いた大男だ。ヒソカを見て獰猛な笑みを浮かべている。

 

 

 

 

 

「試合開始直後なら、ステージ全体から見たオレの対角線上にいるだろうとアタリを付けたが、正しかったみたいだな? 見つけたぜ、ヒソカ」

 

 

 

 

 

 ヒソカはそれを見て冷や汗を流した。思ったよりステージが広く、相手の男、フランクリンとの距離はまだまだ遠い。相手はヒソカが近付くまで固定砲台として待ち構えていればいいだけだ。

 

「弾幕ゲーで大往生ってか? せいぜい楽しんでくれよ」

 

 フランクリンの両手から新たにヒソカに向けて念弾が放たれる。

 

 

 

俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)

 

 

 

 ヒソカは再び素早く動いて、頑丈な遮蔽物を使いながら回避して、よりフランクリンに近い足場に飛び移ろうとする。  

 

 しかし、それは悪手だった。

 

 念弾を連射していたフランクリンの右腕が、突然「ガコッ」という音と共に開いて、今までより格段に大きな丸い念弾を発射した。

 

 

 

俺の両腕は迫撃砲(ダブルグレネード)

 

 

 

 放物線を描いて飛んだ念弾はヒソカが着地しようとしていた足場をコナゴナに吹き飛ばして、念弾の爆風と飛び散った足場の破片がヒソカの体に突き刺さってダメージを与えた。

 

 足場を失ってそのまま水の中に落下したヒソカは、水の抵抗で一瞬だけ動きが鈍くなる。

 

 右腕がグレネード用になったので、左手だけではあるものの、追撃として放たれたマシンガンの弾が、ヒソカの体に向けて連射された。

 

 ヒソカはせめて被弾面積を小さくする為に水面で体を縮こませた後、左腕と左脚に"凝"をしてその弾を防ぐも、大きなダメージを受ける。弾が当たった部分に浅くない傷がついて、噴き出た血が水面に流れ出した。

 

「ガハッ!!」

 

 衝撃で血を吐き出したヒソカの姿が、次の瞬間には勢いよく水中に消えた。

 

(念弾に特殊な効果は付いていないみたいだ♡ 当たったら後ろに弾き飛ばされるとか、スタート地点まで瞬間移動とかだったらどうしようもなかったけど♢ 近付きさえすればやりようはある♤)

 

 浅くないダメージを感じながらもヒソカは瞬時に思考を纏めた。恐らくフランクリンはただ破壊する為の念弾を撒き散らす能力者である。当たったら操作系で麻痺させたり、放出系で移動させられたりする嫌らしいタイプの能力者ではない。

 

 空中から近付く事の無謀さを悟ったヒソカは、プールの水底にバンジーガムを飛ばしてそれを急速に縮めると、そのまま水中に緊急退避した。

 

 屋外に設置されたリングだが、運が良い事に今日は日差しが強くて水面の光の反射が強い上に、ブルース市の水事情はそれほど良くなく水の透明度はそれほど高くない。

 

 水中ならフランクリンでもヒソカの位置を把握する事が出来ないだろう。バンジーガムを駆使して水中を高速移動して、何とか自分の間合いまでフランクリンに近付く作戦だ。

 

「あ〜あ、これじゃ見えねえな」

 

 ヒソカの位置を見失ったフランクリンは、右腕を「ガコッ」と鳴らして元に戻すと、己の腹に手を掛けて「ガコン」という音と共に扉のように割り開いた。

 

 腹の中には、時間を掛けて少しずつ操作系の念が込められた12本のステンレス製の"水筒"が、フランクリンの正面に向けて、頭のキャップ部分を覗かせながら収められていた。

 

 

 

俺の内臓は憤進弾(ワンダースミサイル)

 

 

 

 フランクリンの腹部から飛び出した12発の金属器が、水中に飛び込んで即席の魚雷と化した。

 

 水筒は中に詰まったオーラを消費しながら周囲の生物を感知する。やがて一人の人間を感知すると、そちらに向かって方向を変え、そのまま自動で追尾し始めた。

 

 迫ってくる12発のたっぷりと念が詰まった金属容器を見て、ヒソカは水中でバンジーガムを駆使して魚雷と化したそれらとの追いかけっこを開始した。

 

(まずは近付かなければ話にならない♢ 追尾する魚雷を躱しながらフランクリンに近付くルートを見つけ出す♡)

 

 ヒソカは魚雷の速度や追尾性能を確認しながら、ギリギリの隙間を縫ってフランクリンから程近い足場にまで辿り着く。

 

 辿り着く、その直前でフランクリンが笑顔で両手を水面に向けた。

 

 

 

 

 

「そこか」

 

 

 

 

 

 フランクリンは"円"の役割も果たす魚雷の追尾する方向を感知すると、水面に上がる前のヒソカの位置を予測してマシンガンを連射した。

 

 水中のヒソカはフランクリンの念弾と、追い掛けて来る魚雷と挟み撃ちにされる絶体絶命の状況に陥る。

 

 水上から飛んで来る念弾を察知したヒソカは、覚悟を決めると、足に"凝"をして、そばまで迫って来ていた魚雷の弾頭を踏み付けた。

 

 ヒソカは爆発の力を使って、片足を失いながらも、水中から一気にフランクリンのいる足場まで飛び出した。

 

 すぐさま失った片足をゴムで型取り攻撃を加える。

 

「ボクの間合いだ♡」

 

「勝つ為なら足さえ平気で捨てるか……!! 良いねえ……!!」

 

 ヒソカとフランクリンが水上に設けられた足場で激しい攻防戦を繰り広げる。しかしフランクリンは頑丈な体を持つものの、ヒソカに比べると接近戦での動きが鈍く、撃ち合う度に体中に浅くない切り傷が増えて行った。

 

 当然の如く、直接触れ合った部分にはガムが貼り付けられて行く。ヒソカの必勝パターンだ。ここからゴムの力で相手の体勢を崩して一気にトドメを刺す。

 

 と思った所で「ドガッ!!」という音と共に。ヒソカの目線の高さがガクッと下がった。フランクリンとの元々の身長差もあって、背後から太陽の光を受ける、空にそびえ立つ塔を、見上げるような形になる。

 

 ヒソカが下半身に目を落とすと、ゴムで型取っていた方も健在だった方も、両脚とも所々吹き飛んでどこかに消えていた。

 

 フランクリンはヒソカを見下ろしながら、ドアのように開いた膝を「カチャッ」という音と共に閉じる。

 

 

 

俺の両膝は散弾銃(ダブルショットガン)

 

 

 

 両膝から放射状に放たれた念弾でヒソカの下半身をズタボロにしたフランクリンは、そのまま両手の指先から念弾を連射して、足を破壊されて一瞬動けなくなったヒソカの両腕を破壊した。

 

「あばよ」

 

 フランクリンはそう短く言うと、縫い目が裂けるほどの大口を開いて、そこから超威力の念弾というか極太の念線を発射した。

 

 

 

俺の体は波動砲(シングルキャノン)

 

 

 

 放たれたビームはヒソカの頭に纏った"硬"を容易く貫く。ヒソカと彼の足の肉片は、そのまま緊急脱出して医務室へ高速で飛んで行った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 イン・ユーテロなるスポーツレストランから脱出した心源流の師範代"ファング"は、天空闘技場を使って念の指導をしていた弟子の"ギシ"の手を引いて、人気のない廃棄された住宅地を走っていた。

 

 巧妙に隠蔽された様々な情報を照らし合わせた彼は、この街で起ころうとしている大いなる陰謀の一端を察知して顔を青ざめさせた。

 

 あのレストランに集まっていた強力な念能力者達を見て、それは確信に変わる。

 

「すぐに本部道場とネテロ会長に伝えなくては!! 恐らくパリストンはこの街と闘技場を使って大きな遊びを計画している!!」

 

 勘違いとも言い切れない推測を語るファングを不安げに見つめながら、道着を着た少年、ギシはいつもとは違う真剣な表情の師匠の姿を見て、ゴクッと唾を飲み込んでから言った。

 

「師匠、一体副会長は何を?」

 

「恐らく天空闘技場で念能力者を大規模に育成して、一気にハンター試験に送り込む気だ!! 数年後には協専と合流して、プロハンターの過半数がパリストンの息が掛かった者になる!! 奴はネテロ会長をもしもの時に責任を取らせるお飾りにして、実質的にハンター協会の支配者に君臨するつもりだ!!」

 

「何て奴だ……!! 許せないっス!!」

 

 心源流拳法を学ぶ純粋な少年は、尊敬する最高師範を傀儡に貶めるばかりか、ハンター協会を利用して国際的に巨大な影響力を手に入れようとするパリストンの深淵なる陰謀に、歯をぎりりと鳴らして憤慨した。

 

 ファングはレストランでの光景を思い出して額に汗をかいた。既に念能力者は揃い始めている。パリストンが計画するXデーは近い。

 

 事前に気付けた事に安堵しつつも、ブルース市を脱出して情報を持ち帰るまでは安心出来ない。

 

 携帯は既に何者かのサイバーウイルス攻撃によって故障している。これは既にこちらの意図がバレている事を意味した。急がなければならない。

 

 

 

 

 

 その時、十字路の角から突然激しい光と炎が吹き荒れて、二人の師弟の行手を遮った。

 

 

 

 

 

 あまりの眩しさと熱量に目を開けていられなくなった二人は顔を腕で保護しながら、炎が収まるまでその場に立ち尽くした。

 

 「ザッザッ」とゆっくりとした歩みで曲がり角から現れたのは、オレンジ色の消防服を身に纏った、ガスマスク姿の男だった。

 

 男は二人の方にゆっくりと向き直る。するとそのまま持っていた鉄パイプを空に向けると、まるで火山のように激しい炎を噴射して、辺り一体を火の海に変えた。

 

「火ャ〜ハッハッハ!! 燃えろ燃えろ!! 全部燃えろ!!」

 

 男はそのまま鉄パイプを二人に向けて、地獄の如き業火を噴射する。

 

 

 

貧者の北爆(ナパーム・デス)

 

 

 

 ファングは咄嗟にギシを抱えると、思いっきり横っ飛びしてその炎を回避した。

 

 激しい炎を噴射した男、"カサイ"から先程まで二人がいた場所までの直線上の地面は激しく燃え盛って、あらゆる生物にとっての立ち入り禁止区域と化した。

 

「パリストンからの刺客……!! 炎を噴射する能力者か……!!」

 

「熱過ぎるっス!! これじゃ、まともに目も開けられない!!」

 

 ファングの言葉を聞いて、猛火の中から正気を失ったような叫び声が聞こえる。

 

 

 

 

 

「"炎を噴射"だあ!? 武闘家の発想だなあ!! そんなんじゃちょっと熱いだけだ、虫も殺せねえ!! オレの能力はな……

 

 

 

 

 

 "火のついた燃料(念料)"を投射してんだよ!!」

 

 

 

 

 

 パイプの先から"液体"に変化したオーラが、放出系の技術を使って勢い良く投射される。発火源はパイプの先に組み込まれた100円ライターだ。

 

 炎は"子供"の方を的確に狙って放たれた。

 

 純粋な強化系能力者であるファングは、何とか炎を掻い潜って接近することを考えていたが、炎に対抗する術を持たないギシを抱えて回避せざるを得ない。

 

 反応が遅れたせいで、ギシの足の先に炎が当たってしまう。

 

「ぎゃあああぁぁぁ!?」

 

 ギシの足に当たった燃え盛る液体は、ねっとりと張り付いてそのまま皮膚の表面で地面に滴り落ちずに燃え続けた。

 

 0.1秒後、Ⅰ度熱傷。表皮と角質層が破壊され、軽い痛みと熱さを感じさせる。

 

 0.5秒後、II度熱傷。表皮が完全に破壊され、有棘層、基底層、真皮、乳頭層、乳頭下層までダメージを受ける。激しい痛みと灼熱感を感じさせ足に激しい水ぶくれをもたらす。

 

 1秒後、Ⅲ度熱傷。真皮全層、皮下組織、最終的には骨まで達し、組織を黒く壊死させる。もはや知覚神経が焼き切られて痛みすら感じさせない。

 

 弟子の武闘家として再起不能となるレベルの火傷と、炎によってどんどん行動が制限されて行くフィールドを見たファングは、勝ち目が無い事を悟って逃走を決定する。

 

 燃え続ける足の痛みで気を失った弟子を抱えたファングは、全身を強化して全力で逃走を計る。

 

 カサイは高速で逃げ出す二人の背中を見て、背中に仕込んだパイプに火を着けて能力を行使した。

 

 背中のパイプから吹き出した炎の圧力で、カサイの体が宙に浮かんだ。そのまま高速で飛行して逃げ出す二人に迫る。

 

「管制塔聞こえるか!? 今から新しい生け贄を送る!! また昔みたいに魔女(せいじょ)()たえる宴をしよう!? 美しきボンゾを見せてくれ!!」

 

 カサイは様々な人格がノイズのように混ざって、支離滅裂なことを口走る。

 

 ファングが真後ろの上空から聞こえた声に振り返ると、そこには既に二人の目と鼻の先まで迫って、手に持った鉄パイプの先をこちらに向けるカサイの姿が目に入った。

 

 

 

 

 

「あぁぁいしてるんだぁぁぁ!! 君達をぉぉぉ!! 火ャアハハハハ!!」

 

 

 

 

 

 師弟は燃え盛る業火に巻かれて、この世から跡形も残らずに焼失した。

 

 

 

 

 

 これがただ一心に故郷と家族の未来を思って、ゴミ山を何とかしたいと思った心優しい男が、辿り着いてしまった能力と、そこから生まれてしまった悪魔の姿だ。

 

 そして、ジョネスとマルローとカサイは、流星街の仲良しおじさん三人衆として昔から有名である。

 

 ボケのジョネスとツッコミのマルロー。可変型のカサイで非常にバランスが取れていると評判だ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ジ「カサイはクレイジーだからあんなにインチキみたいに強力なんだよな。オレでも平地でよーいドンじゃ無理だ、生き物は火には勝てねえ。結局、念能力者は頭のおかしい奴が一番強い」

 

マ「ゴミ処理にも貢献してくれてるけど、あの人格は絡みづらいよねえ……。燃やす物を用意してあげないと、やがて見境なしになるなんて……」

 

ジ「あっ、ヒソカ死んだ。やっぱり無理だったな」

 

マ「あのステージでフランくん相手はなあ……」

 

ジ「粘った方だと思うが、同レベルの変化系の防御力だとどうしようもねえな」

 

マ「そういや、マチちゃんはどうだったの?」

 

ジ「それ絶対本人に聞くなよ? また泣き出すから……」

 

マ「負けたんだね……。あのヒソカくんって子、やるねえ」

 

ジ「だろ? 今のオレのお気に入りだ」

 

マ「うわあ……、お気に入りか……。酷い目に遭ってそうだね……」

 

 

 

 

 




変わったかと思うとすぐに戻る。
イルミは面倒臭い男ですね。果たして今後の行方は!?

オリキャラは忘れた頃に出てくる。
仲良しなおじさん三人衆です。

ヒソカはステージがキツかったね……。
極力ヒソカを勝たせようと思って書いてますが、流石に無理でした。

カサイの極悪能力。ジョネスでも状況次第で普通に死ぬ。
スプレー缶にライター付けただけじゃ、"火炎放射器"とは呼べない。

殺された師弟を誰かと酷似させて、無駄に読者を憂鬱にして行くスタイル。殺してやるぞパリストン……!!
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