最新話をどうぞ。
イチャイチャする二人と、イチャイチャする仲間達です。
天空闘技場の医務室にて隣同士のベッドで、激闘を繰り広げたばかりの二人の男女が入院していた。
普通は戦った者同士は多かれ少なかれ遺恨が残ると考えて、ベッドは遠く離されるように手配されるのだが、対戦相手を抱き抱えて来た男が早々に隣のベッドを陣取ってそこから離れようとしないので、闘技場側も諦めて特例の措置が取られていた。
医療スタッフ達の生温かい視線を意に介さず、早々に回復した男ことイルミが隣のベッドのそばの椅子に座って、未だに眠っている女ことサクラの顔を無表情で見つめている。
医務室まで付いて来たミルキは、飲み物とかお菓子とかを買って来た後、イルミに対してニヤニヤと意地悪そうな顔を向けた。
イルミはそれを見て眉をしかめて嫌そうな顔をすると、しっしっと手を振って追い払った。「ふふっ」と笑い声を溢しながらも大人しく部屋を出て行った弟は、何とも人が出来た奴だった。
イルミがサクラの手を握りながらジュースを飲んでいると、ピクッと繋いだ手が動く感触があった。
「んん……」
起きたサクラはゆっくりと目を開くと、見下ろして来るイルミの安心したような僅かな微笑みを見て目を丸くした。少ししてから視線を落とすと、握られた手を見て顔を真っ赤にして、その手を振り解きながら飛び起きた。
「どわあっ!? ななな何しとんねんジブン!!」
「……? 手を繋いでただけだけど?」
「アホか!! それは好きなもん同士でやることやろ!!」
サクラは両手で自分の体を抱えて身を縮こませると、真っ赤な顔のまま警戒するようにイルミを睨み付けた。
「……オレは好きだけど? そのポーズかわいいね」
「ファッ!? 何でやねん!! ウチら友達やろ!?」
サクラは目をグルグルとさせながら、纏まらない頭で動揺してそう言った。
「友達じゃやだ」
ド直球な返答に「ほんまアホやな」と溢したサクラは、一周回って何だか冷静になって来て、イルミにジト目を向けた。
「その目もかわいいね」
「……ハア、お前なあ。強引過ぎるやろ? ウチの意思は無視か」
「……じゃあこうしようか。サクラ、オレを殺してよ」
イルミは顎に手を当てて考えながら、いつかのサクラのようなことを言い出した。その意味不明な発言にサクラは呆れたような顔をして答える。
「えぇ……何それ。イヤやけど?」
「殺さないの? じゃあ契約成立だね。これで恋人でしょ?」
「何でやねん!!」
サクラがイルミの頓珍漢な発言に力強くツッコミを入れた。それにも構わず、イルミは首を傾げながら話を続ける。
「サクラは自分を殺せって言ったじゃん? 自分の命をオレに預けてくれたんでしょ? じゃあ君の命はもうオレの物だ」
「何やその理論……。逆にこれでお前の命はウチの物やと? それならホンマに殺したろかな?」
「うん、そうだよ。オレの命は今君に預けた、殺してよ」
イルミはあっけらかんと言い放って笑顔を浮かべた。
「……ずるいなあ……。性格悪いで、殺さへんの分かってる癖に」
「家族によく"相当悪い"って言われるね」
「誇らしそうに言うな」
サクラがイルミの頭をぺしっと叩いて笑った。
「笑顔もかわいいね。どう? オレと付き合ってくれる?」
「あははっ!! もうやめてえや!! この天然さん!! ほんまおもろいやっちゃな!!」
サクラはそう言ってベッドに寝転がると、枕代わりに頭の後ろで腕を組んで、目をつぶって一息吐くと、しばらくしてから目を開いて満開の桜のような笑顔で言った。
「怪我が治ったら旅行しよっか!! 約束やで?」
イルミは向けられた笑顔を"美しくて良い物'だと感じて、しばらく固まった後、最後にもう一度先の問いに対して返答を促した。
「OKってことで良いの?」
「保留や保留。「自分を殺せ」なんて告白があるか、脅迫紛いの事すんな。男ならまず全力で惚れさせてみいやアホ」
「……そう……」
酷く残念そう顔をしたイルミが俯いた。サクラはその頭をポンポンと撫でながら最後に言った。
「楽しみやな、オーロラ」
「……良い言葉を思いついたら改めて告白するよ。モリオカートやりたくなって来たな。ミルキに持って来て貰おう」
「ふふっ、下手の横好きやな」
「サクラも下手くそでしょ?」
「絶対ウチのが上手い!! 戦いには負けたけど、モリカでは絶対負けん!!」
戦いもゲームもオレに負けた癖に。イルミはそう思って笑みを溢すと、何となく病室の窓から西の空を眺めた。その方角にはククルーマウンテンがある。
「何もかも完璧にはやれない……か……」
イルミはそう言って黄昏れた。
病室にとある大団長が突撃して来る10秒前のことである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夢にまで見た試合の前日、死神は夢を見た。
専属の庭師が綺麗に刈り取った四角い生垣に、彩り豊かな大きな花壇。噴水は太陽の光を受けて見事な虹を浮かばせている。
そんな宮殿のように立派な庭の真ん中に、その庭に見劣りしない豪華な邸宅が立っていた。
開いたガレージに10台以上の高級車がすし詰めにされているのが見える。
その家の子供に与えられた部屋は、それだけで庶民の邸宅のようだった。
専属の一流の家庭教師に使用人達。
玩具なんていくらでも買って貰えた。大好きないたずらシールなんて大人買いならぬ富豪買いだ。
お菓子も山のように買って貰えた。
そんな全てを与えられた子供は、豪華な庭を眺めながら大好きなチューインガムを噛んで、酷く退屈そうな表情をしていた。
全てを与えられても、きっと本当に欲しいものは手に入らないのを悟っていたからだろう。
何がきっかけかは分からないが、見知らぬ二人の男女が血溜まりの中に倒れ伏しているのが見えた。
子供の手にはナイフが握られている。
はて? 一体誰の記憶だろう。
何かを求めて当てどなく世界を流離う内に、路銀が尽きて行き倒れる。
仕方なく拾われたサーカスの一座で大道芸人としてパフォーマンスを見せるようになった。
大道芸の練習なんて全くいらない、一度見たら何でも出来るようになった。むしろ出来ない奴の気持ちが分からなかった。
そんなある日、不思議な力と出会った。
サーカスの座長に纏わりついているモヤ。念能力と言うらしい。
扱うのは難しいらしいが、1回やっただけでコツを掴んだ。この程度のことが出来ない奴の気持ちが分からなかった。
何がきっかけかは分からないが、見知らぬ男が血溜まりの中に倒れ伏しているのが見えた。
子供の手にはガムとゴムが握られている。
はて? これは何だったかな。死神は語らない。過去にあまり興味がないからだろう。
少年はその日の内にサーカスの一座を抜け出した。当てどなく放浪の旅を続ける。山で、街で、海で、飛行船で、船で、行く先々で何度か同じような血溜まりが見えた気がした。
少年はただ独りだった。それが自分に一番合っていると本能で理解していた。
死神は属さない。それが自分に最適で、孤独な自分が最強だと理解しているからだろう。
ある日、ある時、大好きな闘技場の街で、一人の男と出会った。
今まで見てきた中で最も輝かしいオーラを纏った黒髪の青年。強く興味を惹かれて彼と踊ってみたくなった。きっと死神とは正反対だったからだろう。
ほんの3ヶ月ほど前のことである。
死神、ヒソカは目を覚ましてシャワーを浴びると、どこで覚えたかも忘れたメイクを自身に施して、独り歩いて約束のリングへ向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時を少し前後して、いくつかの試合を見終わったイン・ユーテロの店内では、流星街の仲間達が集って盛大な宴会が行われていた。
お金は全て最近賭博の胴元として大儲けしたジョネスの奢りである。自分達の試合を利用して稼いだ金だとは知らない一同は、太っ腹なジョネスに尊敬の眼差しを向けた。
「ジョネス、かっこいい……」
「これが大人か……。あんたに貰ったバイク、今でも大切にしてるんだぜ」
「凄えな……。総資産いくらあるんだ?」
「……かこいいね」
マチ、フィンクス、フランクリン、フェイタンがジョネスを褒め称える。騙されるな若者達。それは君達とヒソカが稼いだお金だぞ。
ジョネスは最近、自分を舐めている気がする若者達に崇められてご満悦だった。こいつほんま。
機嫌が良くなったジョネスは、調子に乗って大盛り上がりの店内に新たなイベントを投下する。
嫌な予感を感じて、こそこそと店を脱出しようとしていたクロロを片腕ヘッドロックで捕まえると、そのまま店内で一番目立つモニターの前のステージに強引に連行した。
連行されながらも、ジョネスの力強い腕を触って何か昔を思い出して、微妙に嬉しそうにしていたクロロをステージに立たせると、ジョネスが店内に向けて大声で発言した。
「クロロ着せ替えショーの開幕だ!! 明日の試合のファッションをオレらで決めよう!!」
店内が盛大に沸いた。クロロは見せ物にされることが確定して絶望した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1時間後、クロロは集まって来た仲間達に、彼らが持ち寄ったあらゆる服を着させられていた。
「おおっ、これは凄え!! 侍だ!!」
ジョネスが舞台袖を見てその姿を絶賛すると、クロロが枝を咥えて顎をさすりながら登場した。始まってみれば結構クロロもノリノリだった。
ノブナガが持って来た着流しを身に纏ったクロロの姿に、店内から歓声が上がる。
素材が良いから滅茶苦茶かっこよかった。
クロロに続いて現れた自信満々なノブナガには、お目汚しの罪でブーイングが浴びせられた。当然キレ散らかしていた。
暴れ回るノブナガがジョネスに取り押さえられて、店内に爆笑の渦が広がった。クロロもみんなに「かっこいい、かっこいい」とちやほやされて笑っていた。
舞台袖に引っ込んで、新たな服に着替えたクロロを見たジョネスが、会場に向けて盛大なフリをブチかます。
「良いぞ!! クロロのイケてるツラが引き立ってるぜ!!」
現れたクロロは消防服にガスマスク姿だった。
「ツラ見えねえじゃん!!」
会場がドッと沸いた。
なお、ジョネスはギャグのつもりだったが、実はクロロはカサイからナパームを借りているので、試合のことを考えるとこの格好は悪くない選択肢だった。
その後もエジプーシャ風の謎BGMに、フィンクスの格好をしたクロロが登場して賛否両論が巻き起こったり、マチやメンチの格好をして大爆笑を掻っ攫ったりしたが、クロロの中で最終的な候補は2つに絞られた。
「う〜ん、これかこれが良いなあ」
クロロが2種類の一揃いの服を持って楽しそうに悩んでいた。
一つは何故か分からないが着るとみんなが笑ってくれる、背中に逆十字が描かれた黒いコートが特徴的な、通称"団長コーデ"。
もう一つは無地のシャツにジーンズを合わせた通称"ジョネスコーデ"である。クロロが着ると凄くかっこよかった。弘法筆を選ばずである。
ジョネスはそれを見て眉をしかめて言った。
「クロロ、残念ながら投票の結果は絶対だ」
「えぇ〜、オレが選んだらダメなの?」
「多数決だから仕方ないだろ。そもそも何でオレ風の服がお前の中で最終候補なんだ?」
クロロは手に持ったジョネスコーデを見て、「う〜ん」と言って少し考えてから言った。
「ジョネスがかっこいいからだね、昔から憧れてたんだ。やっぱりオレには似合わないかな……」
ジョネスはにわかに上機嫌になって笑うと、ガシガシと乱暴な手付きでクロロの頭を撫でた。
「……オレより似合ってるぜ。クロロはかっこいいな、みんなそう言ってる」
クロロも「痛いよ」と言って笑った。
ジョネスは持っていたケースをクロロに投げ渡した。店内の全員から大好評で、最多得票数を獲得した服装だ。
「それ着て来い。頼んだぜ"団長"」
ジョネスはそう言って舞台袖を後にすると、店内にいる全員を整列させて店の中に納まり切るように曲がりくねったジグザグな道を作らせた。
しばらくすると、ステージに髪を下ろして上下一揃いの黒いスーツを着たクロロが現れた。
店内から溢れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。どこかから聞こえた口笛に囃し立てられて、クロロが人で出来た道を歩み始めた。
列の一番最初にいたジョネスがクロロが自分の前を通り過ぎる瞬間に背中を叩くと、そのまま道を通る度に見知った顔から背中を叩かれて、クロロはその度に満面の笑みを浮かべて進み続けた。
列の最後の両脇に並んでいた、子供の頃から一番仲が良いシャルナークとフランクリンとがっちり拳を突き合わせる。
フランクリンが病室でのヒソカとの会話を思い出して、茶化すように問い掛けた。
「クロロ、"確実に勝つ"か?」
クロロはそのまま店の出口へと向かいながら背中越しに答えた。
「勝つさ」
そこにいる全員はクロロがこう言って負けた所を見たことが無い。
クロロはそう言い残して、仲間達と一緒に約束のリングへ向かった。
補足しておくと、試合は翌日なのでこの時はとりあえず泊まっているイン・ユーテロの3階の客室に向かっただけである。
クロロは颯爽と店の外に出てから店に入り直すと、スーツから寝巻きに着替えて普通に寝た。
ジョネスゲーム:第6試合。
[ヒソカ=モロウvsクロロ=ルシルフル]
ステージ:第7特殊リング[高層ビル]
イルミ、ベタ惚れじゃねえか。もう結婚しちまえ。
はい、ジョネスゲーム最終戦まで行かなかったです。
勿体ぶらせてすみません。
ヒソカとクロロの二人を対比させたかったんですよ。
クロロは勝つって言ったら勝ちますよ。
ヒソカとクロロはかっこいい。
クロロ=ルシルフル。
特質系能力者。
【
他者の"発"を借りて、自分の能力として使うことができる。借りた能力は具現化した本「英雄の極意」にストックされ、貸した相手はその能力を使えなくなる。
合意した相手の手の平を本の表紙の手形と合わせることで、相手の"発"を借りる。
右手で持った本を開く事でそのページに載った"発"を使う事が出来る。
【
具現化した2枚の栞を「英雄の極意」に挟むことで、挟んだページに記録されている"発"を本を閉じた状態でも維持・使用できる。また栞を挟んだページの能力と開いたページの能力を併用することも可能となる。
ヒーローは両手を使ってポーズを取らなければいけない。能力は2種類くらいは無いと寂しい。
【
条件を満たす事で相手の"発"を盗む。