流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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気付いたら50話!!
皆様いつも評価・感想・ここすき・誤字報告ありがとうございます。

今回は流星街の事件と、ハンター試験です。
試験側がほのぼの過ぎたので、不穏な流星街編も同時進行で進めて行きます。


50.ジケン×ト×シケン

 

 

 

 ジョネスが居酒屋で遊んでいる頃、国籍不明の軍用飛行船が突如流星街に飛来した。

 

 その爆撃機は街の上空を巡って様子見のように空爆を加えた後、どこかへ高速で飛び去っていった。

 

 この緊急事態に際して、長老会と旅団の中心メンバーが召集される。

 

「判別マークは消してあったし、識別信号にも反応が無かった。だがあれは露骨にオチマの飛行船じゃねえか」

 

「第一工場がバラバラだ……」

 

 ウボォーギンが眉をしかめてそう言った。隣にいたシズクが悲しげな顔で呟く。

 

「サヘルタは何と言ってる?」

 

「1週間後の街の国家承認と共に、オチマに強く抗議声明を出すと……」

 

「抗議声明!? それだけか!! ふざけるなよ!!」

 

「同盟国じゃないんだ。あいつらがこの街の為に血を流す訳ないだろう。しかし既に武器だけは送られて来てる」

 

「まるでコールドウォー時代だな。この街を使った代理戦争か」

 

 ガスマスク姿の集団が大きな机を囲んで白熱の議論を重ねる。その時、部屋に飛び込んで来た若い男が大きな声で叫んだ。

 

「報告!! 新たに飛来した飛行船から、完全武装の兵士達がパラシュート降下して来ています!!」

 

「地図に載っていない街を制圧した所で、何の問題も無いということか……」

 

「証拠隠滅と同時に新しい庭が手に入って一石二鳥って訳だ」

 

 クロロが激しい怒りを滲ませながらそう言った時、大長老が床に強く杖を突いて「ドンッ」という大きな音を立てた。

 

 全員の注目が集まる。

 

 

 

 

 

「報復だ」

 

 

 

 

 

 大長老が人間の物とは思えないしわがれた声色で言った。それに続くように部屋の中にいた人間達が次々に復唱する。

 

「報復だ」「報復だ」「報復だ」「報復だ」

 

「報復だ」「報復だ」「報復だ」「報復だ」

 

「報復だ」「報復だ」「報復だ」「報復だ」

 

「報復だ」「報復だ」「報復だ」「報復だ」

 

 ウボォーギンが「ゴホン」と大きく咳き込んで、その場を締めると大長老に向かって問い掛けた。

 

「オレらは乗り込んで来た兵士達を始末する。非常時用の行動要綱に則って東地区でゲリラ戦だ。オレが前線を指揮して、全体の指揮はクロロに任せる」

 

「何人か捕まえて来てね。集中治療拷問室と撮影の準備しとくから」

 

 マルローが目が笑ってない笑顔で明るく言った。

 

「大長老達も準備して下さい」

 

 クロロはそう言って真剣な表情を長老会に向ける。

 

 大長老が立ち上がっておぞましい色のオーラを揺らがせた。ウボォーギンとクロロですら、その存在感に気圧されて冷や汗をかいた。

 

 

 

 

 

「講和の使者はワシじゃ。儀式を始めよう、ワシの体に刻印を刻め」

 

 

 

 

 

 その瞬間、大長老は恐らく人間では無くなった。いや最も人間らしくなったのかも知れない。

 

 部屋にいる全員が跪いて、底知れない悪意の化身となった一人の廃棄物(にんげん)に向けて合掌した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 試験会場には異様な緊張感が漂っていた。

 

 言うまでもなく少し前にプロハンター相手に大暴れして会場を崩壊させたジョネスがいるからだ。

 

 どんな関係なのか分からないが、二人の少女を引き連れて試験官と一緒にタバコを吸いながら親しげに話をしている。

 

「相変わらず筋が良さそうなの連れてるじゃねえか。流石だなジョネス」

 

「伸び代ありそうだろ? こっちがメンチで、こっちがエルマだ」

 

「オレはモラウって者だ」

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

 二人が元気よく挨拶した。メンチはモラウの実力を察して微妙に猫被りモードだ。

 

「一次試験は体力テストか。あんたが決めたのか?」

 

「本来なら試験官が自由に決めていい。だがオレはある程度毎年の傾向に従って決めた」

 

「真面目だなあ」

 

「お前よりはな」

 

「はっはっは!! 違えねえ!!」

 

 ジョネスはそう言って笑うと、試験会場を見渡して出来そうな奴に目星を付ける。念能力者も数人混じっているようだ。

 

 モラウがそれに気付いて話のタネに気になった受験者を上げた。

 

「あのリーゼントの兄ちゃんと隻腕の兄ちゃんがいい感じだな。受かったらオレの仕事に誘ってみるつもりだ」

 

「オレはあのゴリラっぽい奴とネズミみたいなハゲが気になるな。旅団に誘ってみようかな」

 

「おいおい、脅迫するんじゃねえぞ?」

 

「オレを何だと思ってるんだ?」

 

「つい先日オレを脅迫しておいてその言い草かよ。この原爆中年」

 

「そう褒めるなよ。このグラサンダイバー」

 

 その時、そう言って親しげに体をこ突き合う二人の大男に近付く勇者の中の勇者が現れた。

 

 訝しげな顔をするジョネスの視線の先には、エルマとメンチに近付いて、両手に持った缶ジュースを渡そうとしている男がいた。

 

「君達試験初めてだろ? オレの名前はトンパ。もう何回も試験を受けてるんだ。分からないことがあったら何でも聞いてよ」

 

「私はエルマだよ!! よろしく!!」

 

「……メンチよ」

 

「緊張してるでしょ? お近付きの印にどうぞ」

 

 トンパはそう言って缶ジュースを手渡す。

 

「う〜ん、知らない人から受け取った物はなあ……。パパもそれで何回も毒殺されかけてるし」

 

「怪し過ぎ……。それにその缶飲んだ後ゴミはどうすんのよ? ここに捨ててくの?」

 

 下剤入りの缶ジュースを渡そうとしていたトンパは、二人の少女ににべもなくバッサリと断られた。

 

 冷や汗をかいて撤退しようとした男に、ゾッとするような殺気が当てられて後ろから首を掴まれた。

 

「オレにもジュースくれよ」

 

 昨日暴れていた明らかにやばそうな大男が、逃げようとしていたトンパの体の向きを無理矢理変えて、そのまま視線を合わせて来た。

 

 "詰み"である。

 

「い、いや……。あんたの口に合うような物じゃないと思うなあ」

 

「そう言うなよ」

 

 笑みを浮かべる大男、ジョネスはそう言ってトンパから缶ジュースを1本強奪すると、デコピンで缶の底に穴を開けて一息に中身を飲み干した。

 

「センノシドか? せめて無味無臭なの使えよ。クソ不味いぜ」

 

「あ、あんた……」

 

「さて、毒を盛られちまったなあ。当然の権利として仕返しさせて貰うぜ?」

 

 ジョネスはそう言ってトンパの顔を掴むと、もう1本の缶ジュースに穴を開けて、そのままトンパの口の中に流し込んだ。

 

「友達からあのエルマって子の面倒見るように頼まれてんだよ。そんでメンチの方は今のビジネスパートナーだ。よくも狙ってくれやがったな? そしてモラウの試験でこすい真似すんじゃねえ」

 

 ジョネスは真っ青になったトンパの顔を掴んだまま振り回して、壁に向かって投げ付けた。激しい衝撃でトンパは完全に伸びてしまった。

 

「ハア、殺してねえだろうな?」

 

 モラウは呆れながら尋ねた。試験が始まる前に騒ぎを起こす奴は毎年いるらしいが、今年のその枠はやはりジョネスだったようだ。

 

「ハンター試験に来る時点で有望な奴ばっかりだからな。今回の試験では出来るだけ人死にを出さないつもりだ」

 

 ジョネスはそう言って満足げに笑い返した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 一次試験は地下に設置されたアスレチックを使ったレースだった。参加者達は飛び石のように設置された柱の上をジャンプして突き進む。

 

「うわっ!! いきなり落ちてる人いるよ!?」

 

「死んだんじゃないの!?」

 

 エルマとメンチは柱の上を余裕で飛び越えながら、真っ逆さまに落ちて行った受験者を見て驚きの声を上げた。

 

 落ちた先は底の見えない暗闇で、地面に叩き付けられた音もしなかった。ジョネスは鼻をすんすんとさせて数回嗅ぐと、笑みを浮かべて言った。

 

「いや、血の匂いはしねえな。代わりにウレタンマットに使われる発泡促進剤の臭いがする。モラウは極力死人を出したくねえみたいだ」

 

「優しい人だね!!」

 

「あいつは甘いんだよ。だがそれがいい所だ」

 

 ジョネスはそう言いながら周りにいる参加者達を見た。気になっていたゴリラっぽい顔の男に話し掛ける。

 

「よう、あんた使えるんだな」

 

「……見られているのは知っていたが案の定来たか。オレはゴレイヌだ。使えるって言ってもあんたの足元にも及ばねえよ」

 

「オレはジョネスだ。そう言いながらちっともびびってねえな。いい目だ」

 

 そう言いながら二人は同時に天井に吊るされたロープに飛び移る。エルマとメンチも後に続いた。

 

「「アーアアー」」

 

「……それ言うルールでもあるの?」

 

「アーアアー」

 

 スイングしながら妙な掛け声を揃えたジョネスとゴレイヌに、すかさずメンチが突っ込んだ。エルマは二人と同じように掛け声を出しながらスイングした。

 

「世界のルールだろ? 馬鹿かメンチ」

 

「常識だろ? 何てロマンのねえ女だ。えげつねえな」

 

「メンチの冷め過ぎなとこ嫌〜い!!」

 

「私がおかしいの?」

 

 ロープからロープへ飛び移って大きな穴を超えた4人は、そのまま順調に丸太に掴まってローリングしたり、ジャンプして張られたネットに掴まったり、そり立った壁を登ったりして、そのまま何の問題もなくゴールの地上に出た。

 

「思ったより遅かったな」

 

 先回りしていたモラウが、バードカウンターとストップウォッチ片手にジョネスを茶化した。

 

「こいつらに合わせてやったんだよ。そもそもその気になれば壁を走れるから、アスレチックの意味がねえし」

 

「それもそうか……。来年からの試験官は大変だな。オレは今年終わらせといて良かったぜ」

 

 当番から逃げ続けている奴もいるが(ジン)、試験官役はプロハンター達の間での持ち回りである。基本的に自由過ぎるハンター達はこうしないとやりたがる奴がいないので、協会が決めた苦肉の策だ。

 

「モラウは何やってんだ?」

 

「先着150人が足切りラインだが、制限時間1時間でも足切りしようと思ってる」

 

「ああ、お前「ゴールを目指せ」としか言ってねえもんな。ちゃんと人数絞れるように考えてるんだなあ」

 

「2次試験もオレの担当だからな。人数多過ぎても面倒見切れねえよ」

 

「ちゃんと面倒見る気でいるんだな……。脱落者は簡単に見捨てられて、命を落とすって聞いてたんだが?」

 

 ジョネスの隣にいたゴレイヌが意外そうな声色でモラウに問い掛ける。モラウはニヤっと笑いながら返した。

 

「有望な若いモンがたかが試験で死ぬべきじゃねえよ。少なくともオレはそう考えてる」

 

 それを聞いていた、ジョネス達の少し後にゴールに辿り着いたリーゼントの男が、モラウに駆け寄ってキラキラとした羨望の目を向けた。

 

「オレもそう思うぜ!! なんて出来た人なんだ!!」

 

「お前誰だよ」

 

 冷静な一言で切り捨てられた男はガクッと首を落とした。気を取り直してから改めて自己紹介する。

 

「オレはナックルっす。あっちでチラチラこっちを見てるのは相棒のシュートです。モラウさん、よろしくお願いします」

 

「ちゃんと礼儀正しい人を見ると安心するわね……」

 

 メンチがジョネスをじろっと睨みながらそう言った。ジョネスは嫌そうな顔をして、こっちを見るなと視線を振り払うような仕草を見せた。

 

 ナックルは一瞬で尊敬する人になったモラウの眼中に、自分が全然無かったと思ってショックを受けていたが、実は勘違いで、モラウは受験者の中ではずっと彼のことを気にしていた。

 

 その時、遠くで見ていたシュートが震えながら恐る恐る近付いて、ナックルの袖を引っ張った。

 

「ナックル、駄目だ……。近付かない方がいい……」

 

「ああ? モラウさんにか?」

 

「違う、あの男だ……」

 

 視線の先にいたのは不穏なオーラを纏った見るからなヤバい男。当然ジョネスのことである。ゴレイヌと肩を組んで何やら勧誘の言葉を囁いている。ゴレイヌは心底迷惑そうにしていた。

 

「……この前大暴れしてた奴か……。確かに明らかに10人以上は殺ってそうだな……」

 

「……油断するな」

 

 警戒する二人を見て、モラウは顎をさすりながら「いいねえ」と溢した後、冗談めかして言った。

 

「あいつはジョネスってんだ。150人以上は殺してるんじゃねえか?」

 

「……知り合いなのか、モラウさん。どうしてあんな男と……」

 

「より大きな物の為に人を殺せる男だ。だからこそ信頼できる」

 

 新しく近付いて来た、出っ歯で頭頂部の髪がない性別不詳の小柄な影が諭すように呟いた。

 

 

 

 

 

「きっと大丈夫だと思うわ。あの人、誰よりも激しいのに、不思議と落ち着く心音をさせてるもの。隣にいる子達も安心してる。医者や教師には……向いてないかな……」

 

 

 

 

 




またキャラ増やした上に、同時進行で流星街編です。
作者に書けるのかよ……。

ハンター試験だけだとイマイチ刺激が足りないので書いた。
後悔はしていない。
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