流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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ゴールデンウィークブースト中です。
交代勤務だから作者にはそんなに関係ないんですけどね。
全ては読者の為だ……!!

ハンター試験の解体屋編完結です。
ちょっと最後の話は章間を跨いじゃうんですけどね。

冨樫神がX更新されてましたね。
嬉しい。きっと作者の祈りが通じた。

どうせまた10話やって休載だろうけど、ファンにとっては偉大な一歩である。



56.カンノン×ト×コレカラ

 

 

 

 負けていたら(主にジョネスとネテロに)大笑いされていたであろう受験者達との勝負で、見事な勝利を収めたモラウとビスケは、ハンター協会によって貸し切りにされた天空闘技場の観戦室にて、モニターの中を真剣な表情で見つめていた。

 

 最終試験の試合は配信されておらず、この戦いを見るのも恐らくこの二人とウィングだけだ。

 

 ステージは天井の高さも所々で違う複雑に入り組んだ通路と、点在する大広間が特徴的な、機械的で煩雑な建物。第9リング[巨大工場]だ。

 

 動き易そうな格好に着替えて準備運動をするネテロとは対照的に、スタート位置について煙草で一服するジョネスは、妙に工場が似合っている男だった。

 

 二人には知る由もないが、彼はこういう場所が本職だったこともあるので当然である。

 

「……モラウ、ジョネスの能力は知ってる?」

 

 ビスケが緊張を紛らわすように問い掛けた。マナー違反だが、ジョネスの能力をあまり隠さないスタンスは、飲み会での会話である程度把握している。

 

 それなりに長い付き合いのモラウも、バレてもあまり問題がない能力であることと、本人に聞いたら即教えてくれそうなことだったので、ビスケの質問に素直に答えた。

 

「まずは指と歯を特別強力に強化する"狼男(ルナルナ)"。

 

 周囲で起きた出血で自分を強化する"流血鬼(ブラッディシプリン)"。

 

 最後に体重を強化する"背負い妖(オバリヨン)"だ」

 

「全てが強化系……か……。そして全てが戦闘にしか使えない、応用性の欠けらもない能力……。私とは正反対の考え方だわね」

 

 ビスケは一見愚かなそのラインナップを想像して、「ゴクッ」と唾を飲み込んだ。3種類能力が使えるだけでも珍しいのに、全てが強化系の特化型。

 

 アホだが間違いなく強い。強いのだ。

 

 一次試験の前の一悶着など、ネテロと戦おうとしている今この場と比べたら、遊びでしかなかっただろう。

 

 モラウが笑いながら言った。

 

「応用力と対応力を重視したオレとも正反対の考え方だ。

 

 念能力は戦闘に使えたら十分、強ければ手段はいくらでもある、強ければ取れる選択肢は無限に増える、強ければ死なない、いつまでも遊び続けることができる、だとよ。それを本気で信じてやがるし、それを結果で事実に変えやがる」

 

 ビスケは顎に手を当てて考え込むような仕草をしながら言った。

 

「ジジイは使う気かしら?」

 

「……分からん。だが使わなきゃ勝てんとオレは思う」

 

「その心は?」

 

 モラウは真剣な面持ちで答えた。彼なりに遥か年上の友人の悪癖を憂慮している故に。

 

(念使いで最強だったのは半世紀以上も昔……か……)

 

 能力は使わない? 相手の攻撃を待つ? 自身を卑下?

 

 

 

 

 

 ネテロは強過ぎて、ここ数十年、勝つ気で()れていない。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「複雑な建物じゃのう。そもそも場所を選ばにゃ能力は使いづらいか」

 

 工場をのんびりと散策しながらネテロはそう溢した。

 

 そう時を置かずして、建物のどこかから轟音が聞こえて来る。その爆発のような音は立て続けに何度も工場内に響き渡った。

 

 やがて"それ"がこちらに近付いて来ているのに気付くと、ネテロは心底愉快そうに笑った。

 

「"来い"と言わんでも来るか。その意気や良し」

 

 

 

 

 

 資材倉庫の壁が爆ぜた。

 

 

 

 

 

 壁に開いた大穴から飛び出して来たのは、もはや着ぐるみとも言えるほどのドス黒いオーラの皮を身に纏った狂戦士(ウールヴヘジン)

 

 その正体は既に自傷によって死にかけのジョネスだった。

 

 これには流石のネテロも面食らった。まだ何の戦いもしていないのに勝手に勝負が決まりかけている。

 

 だがここは天空闘技場。勝負が決まるのは()()()だけだ。

 

 そして、ジョネスは遊びでも何でもなくネテロを殺す気でやっており、彼は超人的な勘でその為の最適解を選び取った。

 

 

 

 

 

 ジョネスが出血多量で死亡判定を受けるまで残り1分。

 

 

 

 

 

 ジョネスはフェイタンの全開すら遥かに上回る、あり得ない程の速度でネテロに正面から突貫した。

 

 ネテロはその単純過ぎる軌道を見切って、先の先で攻撃を潰さんとする。

 

 ジョネスの腹に音速を越える正拳が突き刺さる。

 

 しかし、ジョネスは体重強化とオーラによる防御で吹き飛ぶことも怯むこともなく、そのまま相打ちでネテロの体に鉤爪を突き立てた。

 

 辺りに激しい出血が巻き起こる。

 

 そのまま二人の間で激しい攻防が繰り広げられた。

 

 ジョネスの荒々しい攻撃にネテロは技術でもって対応するが、人間相手を想定したその武術的な動きでは、全てに対応し切ることは難しかった。

 

 その上、どれだけカウンターを入れてもジョネスは一切怯まず、カウンターの上に更に相打ちのカウンターを重ねられるだけだ。

 

 神速の攻防を行う二人の周囲に血煙が漂う。

 

 ジョネスが蹴りを放つと、ネテロはその蹴り脚を掴んで、完璧なタイミングで神がかった投げ技を行使しようとした。

 

 しかし、掴んだ腕ごと防御を強引にぶち破られて、ネテロは血反吐を吐きながら工場の壁を何枚も突き破って吹き飛んで行った。

 

 ジョネスがにわかに地面を爆発させるように踏み込むと、その場から姿が掻き消える。

 

 ネテロが吹き飛んで行くのと同等の速度で追撃に移ったのだ。

 

 

 

 

 

 残り50秒。

 

 

 

 

 

 ようやく勢いが死んで、硬い何かに打ち付けられたネテロが、もう既に目前にまで迫っているジョネスに連撃を打ち込んだ。

 

 ジョネスは顔面に打ち込まれた正拳の一部をかじり取ると、ダメージを物ともせず、壁際に追い詰められたネテロの背後にあったその"壁"を殴り付けて、そのまま壁に大穴を空けた。

 

 独特な着臭剤の臭いが辺りを包んだ。

 

 ネテロは目を剥いて驚愕したが、ジョネスはお構いなしに地面を蹴り上げて金属片を高速で飛ばすと、ネテロの背後にあったプロパンガスのタンクに破片を打ち付けて火花を散らした。

 

 二人を巻き込んで激しいガス爆発が巻き起こり、工場に火の手が上がる。

 

 

 

 

 

 残り40秒。

 

 

 

 

 

 体を小さく纏めて被弾する面積を小さくしてから"凝"をして、何とか爆発をガードしたネテロは、全身に負った火傷を気にする余裕も無く、油断なくジョネスの姿を探した。

 

 爆発による煙の中から、当然のようにピンピンとして飛び出して来たジョネスは、両手に握っていたネジやナットを散弾のように投げ付けた。

 

 ネテロの体に細かい傷がつくが、彼はそれに構いもせず、ジョネスの動きだけをしっかりと見据えていた。

 

 本当に危険なものはそれだと、猿としての本能で理解できてしまったからだ。

 

 もはや四足獣の如く極端に低い姿勢を取ったかと思うと、そのまま超速で突っ込んで来るジョネスと対峙したネテロの心中は、久しぶりに感じたある一つの感情に支配されていた。

 

 

 

 

 

(……怖いぜ……)

 

 

 

 

 

 このままだと喰い殺されることを認めたネテロは、深く、深く祈りながら合掌した。

 

 

 

 

 

 残り30秒。

 

 

 

 

 

【百式観音 壱乃掌】

 

 

 

 

 

 ネテロの背後に突然現れた巨大な観音像から、神速の手刀が繰り出される。

 

 ジョネスは叩き潰されて地に伏し、そのまま動かなくなる。

 

 ことは無かった。

 

 観音像が消えた瞬間に超速で飛び出して、気付いた時には既にネテロの目と鼻の先にまで迫っていた。

 

 鉤爪が肩に食い込む。

 

(こいつはモツがまろび出るな)

 

 袈裟斬りにされる前にネテロが再び合掌した。

 

 

 

 

 

【百式観音 陸乃掌】

 

 

 

 

 

 観音像が横合いから張り手で弾き飛ばすような型を繰り出す。

 

 極限に硬くて極限に重い物にぶつかってしまった観音像の手が壊れた。

 

「は?」

 

 ネテロは信じられない光景に瞠目するも、ジョネスが張り手で怯んだ隙をついて、咄嗟に半歩分、体を引いた。

 

 肩から胸にかけて、深い傷がついていた。

 

 

 

 

 

「ひゃっはっはっは!! ひゃあははははは!! そんなもん隠してたのかよ!! 最高だ!! そのまま殺してくれ!! いや殺してやる!!」

 

 

 

 

 

 残り20秒。

 

 

 

 

 

 もはや塗れた血泥と渦巻くオーラで原形が分からなくなった怪物が、大笑いしながら3mほどになった深紅の鉤爪を激しく振るった。

 

 リーチを見誤っていたネテロの体がズタズタに切り裂かれる。

 

 吹き上がった血潮が怪物のオーラに溶け込み、更にその体を大きく錯覚させた。

 

 怪物が神速で踏み込むと、次の瞬間にはネテロの目の前に、頭を丸ごと齧り取ってしまいそうな狼の大口が現れた。

 

(……クソ野郎が……。怖いのう……)

 

 ネテロが合掌する。

 

 

 

 

 

【百式観音 伍拾乃掌】

 

 

 

 

 

 五方向からの五連撃でも、僅かにしか後退させられなかった。

 

 ネテロの額の皮膚がごっそりと齧り取られる。

 

 しかし、2発のクリーンヒットを受けて、ネテロの動揺と油断が消えた。

 

 怪物が振り回す5mほどに伸びた鉤爪を、百式の適切な型で捌き続ける。

 

 

 

 

 

 残り10秒。

 

 

 

 

 

 怪物は観音像の攻撃をくらった後、突然"絶"をした。ネテロが幻視していた巨大な怪物の姿が消失する。

 

 倒したかと思ったネテロが、一瞬の思考により隙とも言えぬほどの一瞬の隙を晒す。

 

 

 

 

 

 百式観音の隙は、合掌に有らず。

 

 

 

 

 

 隙はネテロが思考し、認識して、合掌をしようと決意する時間だ。

 

 

 

 

 

 ネテロは怪物のオーラが消えたから、もう追撃をやめようかと"思考"した。

 

 怪物が土煙の中から、口内に含んでいた血液を凄まじい腹圧を使い、高速で飛ばした。そして殺気が一切籠っていないが故にその液体は、ネテロの右目に確かに当たった。

 

 ネテロの"認識"が死んだ。

 

 ネテロの死角から"絶"のまま高速で近付いた怪物は、首筋への攻撃の瞬間にオーラを全開で復活させる。

 

 

 

 

 

 その時、貫手が合掌で優しく挟み込まれて止められた。

 

 "決意"は残っていた。

 

 

 

 

 

「見えんでも体に染み付いとるわい。後は経験じゃな」

 

「年の功だな。流石だ」

 

 

 

 

 

 怪物から人間に戻ったジョネスが、ニッと満面の笑みを浮かべた。

 

 祈りとは心の所作、ジョネスの手を取っていても何ら問題はない。ネテロの背後に観音像が現れる。ネテロはもうオーラも体力もほとんど残っていないジョネスを遠くに投げ飛ばした。

 

(まったく、戦いは楽しいぜ)

 

 

 

 

 

 残り1秒。

 

 

 

 

 

【百式観音 九十九乃掌】

 

 

 

 

 

 巨大工場が完全に崩壊し、ジョネスが緊急脱出した。

 

 

 

 

 

 ネテロは無茶な使い方をしたせいで、何本か破損してしまった百式観音の手を見て、冷や汗を垂らしながら呟いた。

 

「これ直るんじゃろうか?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 怪我人が多過ぎた為、ハンターライセンスの授与を兼ねた説明会が行われたのは更に1週間後だった。

 

 説明会の為にやって来たビーンズは包帯塗れのネテロを見て、ひっくり返って驚愕した。

 

「か、かかか会長!? どうなされたんですか!? 核攻撃ですか!!」

 

「いんや、違う。そいつにやられたの」

 

 ネテロは最前列に座っていたこちらも包帯塗れの男を指差して、笑いながらそう言った。ビーンズは不機嫌そうに頬杖を突く男を見てギョッとした。

 

 間違いない。こいつは最近ハンター協会事務員の仕事を3倍に増やしたジョネスとかいうクソ野郎だ。

 

 ジョネスはその厳しい視線を気にした様子もなく、立ち上がってビーンズに手を差し出しながら言った。

 

「早くライセンスくれよ。やりたいことが山積みなんだ」

 

 助け起こしてくれる訳ではなく、ライセンスの催促だった。ビーンズの中でジョネスの好感度がパリストン以下にまで下がった。

 

 親友同士の好感度レースは熾烈だ。

 

「はーやーくー!! 学校の出席日数がやばいの!!」

 

 ジョネスの隣に座っていたエルマまで便乗して騒ぎ出した。

 

 その隣のメンチは、ジョネスから自分の口座に振り込まれたボーナス付きの莫大な報酬金を前に、携帯の画面を見ながら完全に固まってしまっている。

 

 後ろの方ではモラウが新たに弟子になったナックルとシュートの二人と楽しげに談笑しているし、また別の方に目を移せば、ビスケがゴレイヌを自分の弟子に勧誘している。

 

 大人しいのはウィングとコーヤとセンリツくらいだ。

 

「いいハンターが揃っとるじゃろ?」

 

「あなたって人は……!!」

 

 ネテロのお眼鏡に適う奴らとは、どうしていつもこうなのか。ビーンズは新たなストレスの予感に頭を抱えた。

 

 しばらくしてからライセンスの授与が行われた。

 

 

 

 

 

「ジョネス=スタージャンク殿。あなたは[メテオール首長国]にて、自らが中心となり廃棄物処理事業を大いに発展させました。特に第一級劇物、テトラ水銀と劣化PCD綿の処理方法の確立は、世界の環境保全に多大な貢献をしました。よってここにシングルハンターのライセンスを授与します」

 

「マジで? いいの?」

 

「はいどうぞ。さっさと受け取って下さい」

 

「なんかオレだけ扱いがぞんざいじゃない?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 その後、無事ライセンスを受け取ったジョネスは、旅団への勧誘に失敗した同期達とホームコードを交換した後、1年以上行動を共にしたメンチとエルマに別れを告げていた。

 

「結構な時間付き合わせちまったな。ありがとう。だが無事に当初の目的のハンターライセンスは手に入れたし、後は自由行動だ」

 

「私とは雇用関係でしょ? こっちこそありがとうね。実力も伸びたし、コネも纏まった資金も手に入った。ハンターとしてのスタートダッシュが段違いだわ」

 

 既に行きたい場所も手に入れたい物も山盛りなメンチは、そこにいち早く届く手段を与えてくれたジョネスに対して、素直に礼を言った。

 

 ジョネスは照れ臭そうにポリポリと頬をかきながら答える。

 

「お前には才能がある。ほっといても伸びたさ。これからは色々とカオスな世界になるだろうから旅団をうまく使って活動しろ。オレにもいつでも連絡してくれ、金と気分と内容次第で何でもやるぜ?」

 

「ふふっ、それは何でもやるとは言わないでしょ。ばーか」

 

「5回目だぞ。確か5回目だ」

 

 ジョネスはそう言って豪快に笑うと、メンチとがっしり握手してそのまま送り出した。

 

「ジョネス〜!! 本当にお別れなの!? 私と結婚してパパの組に入ってよ!!」

 

 エルマが目をうるうるさせながらジョネスに抱き付いて来た。

 

「まだ言ってんのか? ……エルマ、勘違いしてるな。結婚しなくてもいつでも会えるし、一緒にはいられるんだぞ」

 

「どうして?」

 

 ジョネスはエルマの頭を撫でながら優しげな声で言った。

 

「オレもお前も生きてるからだ。どうとでもなるだろ? その上、オレ達は友達で同期のハンターで、お前の親とオレは親しい間柄だ。もしもお前が旅団に入ったら更に一緒にいる時間は増えるしな。

 

 ……オレから言っておくことは、生き急ぐな、とりあえず20歳(はたち)まで生きてみろ。だな」

 

「……20歳になったら、考えてくれるの?」

 

「……いや、どうだろ……。オレ忙しいし……」

 

「ばかあああぁぁぁ!!」

 

「……エルマからは1回目だな……」

 

 号泣するエルマを30分くらいかけて落ち着かせた後、迎えに来たゼンジの部下に彼女を預けて、「また会おうな!!」と力強く言い切ってからジョネスはその場を後にした。というか逃げた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 そこからの半年ほどは大忙しだった。

 

 まずは一旦流星街に帰ってマチとの約束を果たした。旅団の仲間達の前では凛とした態度を取っていたが、心の底では知り合いが大勢死んだ戦争がよっぽどショックだったらしい。

 

 再会した瞬間に抱きつかれて、そのまま1時間くらい離れてくれなかった。

 

 マチを落ち着かせてからデートして甘やかした後、新たな大長老となったマルローと協力して、街の復興と国の今後について計画を立てた。

 

 内政関係では廃棄物の処理容量の拡大と緑地の拡大と同時に、国際的な租税回避地(タックスヘイブン)として街を売り出して行こうと思っている。

 

 オチマ連邦を吹き飛ばした国に手を出す奴はよっぽどの馬鹿だろう。メテオール首長国は将来に向けて、サヘルタ合衆国の大企業と資産家達と日々、悪巧みを重ねている。

 

 それと同時にウボォーギンとクロロとシャルナークの頭脳メンバーにシングルハンターのライセンスを預けて、幻影旅団の信用強化を行った。

 

 闘技場での約束を果たせた上に、いきなりシングルのライセンスを取ったことを自慢できて、ジョネスも満足げである。

 

 当然、ジョネス一人の力で積み上げた功績ではないので、シズクやカサイやゴブを始めとした、廃棄物処理事業に貢献してくれた中心メンバーを集めて、盛大な宴会を開催した。

 

 シズクは大勢の兄貴分達や姉貴分達に神のように祭り上げられて、珍しく満開の笑顔を見せていた。きっとこの思い出は一生忘れないだろう。

 

 それが終わったらハンター協会本部があるスワルダニシティに戻って、念能力の秘匿が崩壊した新たな時代に対応する為、ネテロとパリストンとチードルの仕事を手伝った。

 

 ジョネスはプロハンター達の数が少数精鋭過ぎる上に、協会への忠誠もクソもなく、全員が好き勝手自由に行動していることを指摘した。

 

 世界各国との関係と信用の問題もあるので、ハンターライセンスを全員に与える訳にはいかないが、ハンター協会のサポートを受けながら命令次第でプロハンターに監督されながら動く、"準協会員"の発足と増員を行った。

 

 それと同時にネテロと大喧嘩してから、正式にハンター協会と心源流道場の事実上の統合を行った。人材の教育組織としてうってつけだったが故のネテロにとっての悲劇である。

 

 そもそもハンター協会はライセンスという権限を与えるだけで、V5を始めとした依頼者からの要請が来ても、プロハンター達を縛る拘束力など無く、簡単に依頼を無視してしまえるのだ。

 

 助け合いの人情と、真面目に何でも屋をやっている協専ハンターのおかげで成り立っていたシステムを、パリストンとチードルと一緒に刷新した。

 

 ライセンスの没収を始めとしたプロハンター達への拘束力を強化して協会の力を高めると、幻影旅団との依頼の奪い合いが本格化するが、競争は進化に最適だという信念のもと、協会と旅団のどちらからも嫌われる立場を存分に楽しんだ。

 

 ジョネスにしかやれない仕事は最高の娯楽だ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ハンター協会での仕事が一段落して、そろそろ逃げ出そうかと思っていた頃、とある仕事を頼んでいたセンリツが、スワルダニシティに新しく建設したジョネスと旅団の借宿を訪れた。

 

 センリツへの依頼は基本的に"闇のソナタ"関係か、彼女の体を元に戻す手段を探るかの二つである。

 

 前者は裏社会での探し物だが、後者は基本的にオカルト関係の調査だ。

 

 民俗学に興味があるシーラを始めとした、自腹で雇った旅団員をセンリツのパートナーにつけながら調査を進めている。

 

 ジョネスはセンリツを居間に通すと、紅茶を出してから進捗を尋ねる。

 

「そいつがギュドンドンド族の生き残りか?」

 

「ええ、一人だけ見つかったわ」

 

「"ボノレノフ"だ。よろしく頼む」

 

 体に空いた穴から音が鳴らないように、包帯で全身を包んだ男は頭を下げながら自己紹介した。

 

 彼は自身の経験から少数民族の保護活動に興味があるらしい。踊りと音楽でその身に精霊を宿すという噂を聞き付けたセンリツが、彼を探し当ててジョネスに紹介しようとしたのが今回の経緯だ。

 

「能力を見せて貰ったけど、念能力者としての彼のレベルとはとても合致していない、凄まじい威力の能力だったわ……」

 

「それがオカルトだ。詳細は知らないが、ボノレノフは確かに精霊を宿して能力を行使したのだろう」

 

「世界に点在する彼のような存在を調査して行くことが、私の体を治す鍵になるというのね?」

 

「闇のソナタの正体を探る鍵にもなる。それどころかそのオカルトと呼ばれているものを解き明かせば、人類史に名を残せるぞ?」

 

「……そんなことには興味が無いわ。分かってるでしょう?」

 

「ブレねえな。大好きだぜお前」

 

 二人の会話を黙って聞いていたボノレノフが不意に口を開いた。

 

「オレも仲間に加えてくれないか? 彼女の護衛を務めよう」

 

「いいのか? 全てが民俗学の分野という訳ではないんだが……」

 

「構わない。オレの一族が滅ぼされたのは、何も経済的な理由だけじゃない。きっと未知に対する恐れからだ……。是非とも彼女に協力したい」

 

「……仕事が増えちゃったじゃないの。世界のあらゆる未知を解き明かせって? 私が背負うには大き過ぎるわ……」

 

 いつの間にか話が大きくなり過ぎていると感じ、自信を無くして俯いてしまったセンリツに対して、ジョネスは笑いながら声を掛けた。

 

「お前一人でやれって言わねえよ。実はオレが所持する呪物コレクションと、お前の活動を統合させて、新しい事業を立ち上げようと既に準備してんだよ」

 

 ジョネスはそう言ってパソコンからセンリツの携帯へデータを送った。

 

「……何よ……これ……!!」

 

「……国が買えそうだな……」

 

 センリツは表示された協賛者の数と、集まった金額に目を剥いて驚愕した。画面を覗き込んだボノレノフも呆れたように呟いた。

 

「世界中の呪物の収集と管理。念能力では説明し切れないオカルトの解明。最終的にそれを理解・掌握・利用して"厄災"への対抗を目指す[SCP財団]だ」

 

 出資比率はジョネスからの500億ジェニーに始まって、新時代に入り、念能力について頭を悩ませる人々からの国家規模の投資や寄付により、天文学的な数値を叩き出していた。ジョネスがシングルハンターのライセンスを掲げて出資を募った所、念能力によって混乱する世界情勢と合わさって、予想以上の額が集まった。

 

「創設メンバーはセンリツ、オレ、シーラ、サラサ、ボノレノフになるな。やる気が出るように人類全てを肩に背負わせてやったぜ? やるしか無いなセンリツ。やらなきゃお前との縁はここで終わりだ。オレは他の奴らと組む」

 

 ジョネスから唐突に突きつけられた強制二択に対して、センリツはため息を吐いてから答えた。

 

 

 

 

 

「やるわよ。私、あなたほど割り切れてないのよね」

 

「確かにオレなら逃げるな。お前は善人だなあ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 パリストンに呼び出された個室の料亭にて、ジョネスは一人の男と面会していた。何故かネテロも真剣な表情で席に着いている。

 

「お疲れ様です。ジョネスさん!! 思ったより真面目に働いてくれましたね!! でもそのせいでボクの都合が悪くなっちゃいましてね。もう隠さず明かしちゃった方が早いと思ったんですよ!!」

 

「なんだ突然、藪から棒に。お前の頼みなら極力引き受けるけどよ……」

 

 相変わらず明るい笑顔でジョネスを迎えたパリストンに対して、ジョネスは直感で面倒臭い案件だと悟って渋面を浮かべた。

 

「この場にワシまで呼び出すとは……やっぱり苦手じゃ……。ジョネスはもう放っておけんか」

 

 対面に座る男を見て、ネテロは愚痴を溢した。

 

 パリストンは困った様子の二人を見て、最高に楽しそうな笑顔を浮かべると、容赦なく本題を切り出した。

 

「ですね〜。それでジョネスさんなら全部分かってると思うんですけど、こちらの方に関してのことです」

 

 ジョネスは酒瓶を傾けて中身を全部飲み干した後、対面に座るネテロと良く似た雰囲気の、長い顎髭が特徴的な男を見て、目をキラキラさせながら言った。

 

 

 

 

 

「関羽じゃん!! ……そんな訳ないか。それで……どちら様……?」

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 てっきり計画が全てバレていると思っていたパリストンが、珍しくうっかり間の抜けた声を漏らした。

 

 しばらくして、ジョネスがとぼけているだけだと悟ったパリストンは、気を取り直して改めてジョネスに問い掛けた。

 

「やだなあ、暗黒大陸への渡航を計画しているビヨンド=ネテロさんですよ。全部知ってるんでしょう?」

 

「……おい、パリストン。こいつ……」

 

 ビヨンドは最初はニヤニヤしていたが、問答が進むにつれ、パリストンが致命的な勘違いをしているんじゃないかと感じて、思わず冷や汗を流した。

 

 

 

 

 

「"ネテロ"? ……会長の息子か? "暗黒大陸"? ……マジで言ってんのか。不可侵条約違反だろ? 詳しく聞かせろ。そんで結局あんたどちら様?」

 

 

 

 

 

 ジョネスは何も知らなかった。

 

 バラし屋にバレて、突然、長年の渡航計画が瀬戸際に立たされたビヨンドとパリストンは、同時に滝のような汗を流した。

 

 アイザック=ネテロは爆笑していた。

 

 

 

 

 





ジョネスの最強フォーム、初手瀕死。

百式観音はおかしい。
ネテロ会長がメルエム戦レベルでオーラを研ぎ澄ましてたら、勝ち目はなかったですね。

メンチとエルマとの別れ。
メンチは原作介入しなくてもシングルになる天才である。

エルマ、長い間オリキャラに負担を背負わせてしまって済まなかった。成長したら見た目ゾン100のシズカさんみたいになるよ。ニコニコ笑顔の。

また華が消えた……。
次章はマチとシズクがいるから大丈夫だろう。

ガバガバ内政は深くツッコまないで下さい。
原作ハンター協会って何やってる組織なんだよ!!
V5の依頼は受けなきゃいけないらしいが、ゴンとキルアは自由に世界を飛び回ってて、召集とかされる気配はない。

センリツとボノ。シーラ。サラサ。
色々絡ませられるよ。例の一族とか……。
どうしようかな。

最後にパリストンのやらかし。
前話で何気に伏線として、百式観音に対応できるのはビヨンドとジンくらいだって書きましたが、ビヨンドの能力は特に考えていません。
ただ能力名は[蒼天航路]にしようと思っております。当たり前だろ?

ジンの能力は……個人的に思い付いています。
次章で多分出します。

次章は最後の飲み会の続きから始まります。
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